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グランドスラムパリ2017・第1日女子4階級(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)レポート

(2017年2月16日)

※ eJudoメルマガ版2月14日掲載記事より転載・編集しています。
第1日女子4階級(48kg級、52kg級、57kg級、63kg級)レポート
グランドスラムパリ2017
■ 48kg級・ジョンボキョンが決勝でムンクバットに雪辱、近藤亜美はジョンに連敗で3位に終わる
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ムンクバットとジョン・ボキョンによる決勝戦

(エントリー25名)
【入賞者】
1.JEONG, Bokyeong(KOR)
2.MUNKHBAT, Urantsetseg(MGL)
3.KONDO, Ami(JPN)
3.NIKOLIC, Milica(SRB)
5.FIGUEROA, Julia(ESP)
5.MOSDIER, Anais(FRA)
7.CLEMENT, Melanie(FRA)
7.LI, Yanan(CHN)

決勝はグランドスラム東京と同カード、第1シードのムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)と、第2シードのジョン・ボキョン(韓国)による優勝候補同士の対戦となった。この日は両者好調、ムンクバットは袖釣込腰が良く決まり、2回戦のカン・ユジュン(韓国)戦を隅返「技有」で突破した後の2戦はいずれもこの技で得点。まず準々決勝はアナイス・モスディール(フランス)を袖釣込腰「技有」からの後袈裟固、準決勝は難敵ジュリア・フィギュロアを袖釣込腰で「技有」、さらに「一本」と立て続けに2度投げてしっかり決勝進出を決めた。

一方のジョンも五輪からの好調を継続。2試合を「技有」優勢で勝ちあがった後の準決勝、山場の近藤亜美戦をわずか25秒の横落「一本」で快勝して決勝まで進んだ。

しかし両者胸のすくような勝ちぶりであった準決勝までとは一転、前回対戦でも大接戦であった決勝は互いの実力を良く知る両者が浅く斬り合いながらひたすらチャンスを待つという、動的膠着の消耗戦。最終的には「指導2」ずつを失って迎えたGS延長戦の結果、ジョンが「指導3」で優勝を勝ち取ることとなった。ジョンはムンクバットに「指導1」対「指導2」で敗れたグランドスラム東京の借りを早速返した形。

昨年前半までBグループの選手であったジョンは五輪の大躍進以降自信をつけた様子で戦いぶり一変、明らかに一段強くなった。一方のムンクバットも五輪でメダルなしという悔しい結果を経て逞しくなった感ありで、双方あの激戦がしっかり血肉として生きている印象。

日本代表の近藤は前述の通り準決勝で敗退。この日まで近藤はジョンに2勝1敗、直近の対戦(2015年アスタナ世界選手権準決勝)では左の「韓国背負い」で「有効」を奪われて敗れている。上り調子にあり明らかに羽化寸前のジョンは以後も面倒な相手になることは確実、世界選手権での再戦を考えればここで勝って少なくとも精神的な優位を得ておきたいところであったが、結果はもっともやってはいけない秒殺一本負け。近藤の特徴である勝ち負けのハッキリしたところが悪い目に出てしまった格好で、控えめに言って収穫多き大会と総括するのは難しい。グランドスラム東京では渡名喜風南がムンクバットに敗れており、日本勢は階級トップを走るこの2人のグループにジリジリ序列上の差をつけられ始めているという印象を受けた。3位を確保して体勢を立て直した近藤の、次戦の奮起に期待したい。

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48kg級入賞者。左からムンクバット、ジョン、近藤、ニコリッツ。

【準々決勝】

ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)〇後袈裟固(2:04)△アナイス・モスディール(フランス)
ジュリア・フィギロア(スペイン)〇横四方固(2:21)△リ・ヤナン(中国)
ジョン・ボキョン(韓国)〇優勢[技有・背負投]△メラニー・クレマン(フランス)
近藤亜美○優勢[技有・谷落]△ミリカ・ニコリッツ(セルビア)

【準決勝】
ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)〇袖釣込腰(2:21)△ジュリア・フィギロア(スペイン)
ジョン・ボキョン(韓国)〇横落(0:25)△近藤亜美

【3位決定戦】
近藤亜美〇優勢[技有・内股]△アナイス・モスディエール(フランス)
右相四つ。常に引き手を先に得る近藤が世界カデ3位、18歳の若手モスディールを終始圧倒。右袖釣込腰、一本背負投の形に腕を抱えた右大外刈、右小内刈、右足車に右払巻込と大技を連発する。特に2分過ぎに放った右小内刈はモスディエールが一瞬で裏に転がり落ちるポイント級の技だったが、着地寸前に身を捻られたこの技をはじめ、いずれも取り切れず。とはいえ立っても寝ても攻め続ける近藤の優位は誰の目にも明白、モスディエールには58秒、そして3分23秒と2つの「指導」が累積する。3分38秒、モスディールが右背負投に座り込むと近藤は相手の右外側に体をかわし、左で抱えながら左内股の形で脚を跳ね上げ「技有」を獲得。このポイントを持ったまま試合を終えて3位を確保した。

ミリカ・ニコリッツ(セルビア)○優勢[技有・大内返]△ジュリア・フィゲロア(スペイン)
ニコリッツが左、フィゲロアが右のケンカ四つ。ニコリッツは奥襟を得て終始優位に試合を展開、強引な左釣込腰で度々フィゲロアを大きく崩す。58秒にニコリッツが左内股でフィゲロアを畳にはわせると、主審はフィゲロアに1つ目の「指導」を宣告。以降もニコリッツが一方的に攻めまくる。1分57秒、劣勢のフィゲロアは抱き付きの左大内刈で勝負に出るが、ニコリッツはこれを受け止めると大内返でひねり倒して「技有」を獲得。残り1分を過ぎるとニコリッツは掛け逃げまがいの左外巻込で時間の消費を図り、3分20秒にはニコリッツに偽装攻撃の咎で「指導」が与えられる。残り10秒でニコリッツに2つ目の「指導」が与えられるが時既に遅し。そのまま試合が終了し「技有」優勢でニコリッツが3位を獲得することとなった。


【決勝】
ジョン・ボキョン(韓国)○GS反則[指導3](GS2:17)△ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
左相四つ。お互いに釣り手を絞り合う膠着状態が続く。1分41秒にムンクバットが右袖釣込腰を仕掛けるとジョンが指を負傷。しばし試合が中断する。試合が再開して以降も展開は変わらず、時々どちらかが両袖の右袖釣込腰を仕掛ける程度で深く斬り込む場面はなし。2分50秒には両者に「指導」、3分17秒にも両者に2つ目の「指導」が与えられるが、様相大きく変わらず本戦の4分間が終了。優勝の行方はGSの延長戦へと持ち越される。延長戦に入るとムンクバットが先手の担ぎ技で手数を稼ぎに掛かるがジョンも譲らず。1分を過ぎたあたりからジョンがペースを一段アップ。ムンクバットは得意の寝技で攻め込み拮抗を演出するも、GS2分17秒にムンクバットに3つ目の「指導」が与えられ試合決着。

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2回戦、近藤亜美がブガーニィから背負投で2つ目の「技有」獲得

【日本代表選手勝ち上がり】

近藤亜美(三井住友海上)
成績:3位

[ 2回戦]
近藤亜美〇優勢[技有・大外巻込]△メロディ・ブガーニイ(フランス)
近藤が右、ブガーニイ左組みのケンカ四つ。
組みたい近藤、いなしながらチャンスを探したいブガーニイという構図。近藤は一本背負投崩れの右大外刈、さらに組み付きながらの右小外刈で積極的に取りに出、ブガーニイは一本背負投フェイントの左出足払に奇襲の右外巻込で対抗する。中盤、近藤が右払巻込に出るとブガーニイはガッチリ抱き留めて「待て」。直後近藤が右大外刈を放つと前段で感触があったかブガーニイ再び抱いて耐える致命的なミス、近藤しめたとばかりに投げ切って大外巻込「技有」獲得。以後は一方的、残り40秒には近藤が相手をめくりながら肩固、これは8秒で「解けた」となったがブガーニイは疲労困憊。残り1秒、近藤が片襟の右背負投で完全に投げ、「一本」級の「技有」追加。ここで終了ブザーが鳴る。

[ 準々決勝]
近藤亜美○優勢[技有・谷落]△ミリカ・ニコリッツ(セルビア)
右相四つ。タイプ的に重なるところのある両者、ともに奥襟を得ては右払巻込を仕掛け、組み負けては横落を仕掛けてと類似の技を出し合い試合が進行。両者積極的に技を仕掛けるものの、どれも不十分な組み手からの技のためポイントには至らず。3分3秒、場外際でもつれ合ったところからニコリッツが左釣込腰を仕掛けると、近藤はこれを谷落で返して「技有」。以降近藤は相手の釣り手を絞って攻撃のきっかけを与えないままクロージング。「技有」の優勢で準決勝進出を決めた。

[ 準決勝]
近藤亜美○横落(0:25)△ジョン・ボキョン(韓国)
近藤が右、ジョンが左組みのケンカ四つ。近藤が探りの右内股を仕掛けると、その戻り端にジョンが左方向への横落に飛び込む。懐深くまで潜り込んでの一撃に近藤は堪らず吹っ飛んで「一本」。試合時間は僅か25秒、ジョンが決勝進出を決めた。

[ 3位決定戦]
近藤亜美〇優勢[技有・内股]△アナイス・モスディール(フランス)

※前述のため戦評省略

■ 52kg級・五輪王者ケルメンディ復帰戦を飾る、角田夏実は2位入賞で国内序列一番手の座をキープ
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五輪以来の試合となるケルメンディ、初戦はエカテリーナ・グイカを大外返「一本」に仕留める

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準決勝、ケルメンディはアンジェリカ・デルガドから左釣込腰「技有」

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決勝、ケルメンディは角田夏実から大内返で「技有」を奪う

(エントリー24名)
【入賞者】
1.KELMENDI, Majlinda(KOS)
2.TSUNODA, Natsumi(JPN)
3.KRASNIQI, Distria(KOS)
3.KUZIUTINA, Natalia(RUS)
5.DELGADO, Angelica(USA)
5.GNETO, Astride(FRA)
7.MENEZES, Sarah(BRA)
7.MIRANDA, Erika(BRA)

この大会から実践復帰の五輪王者マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)が順当に優勝。全試合一本勝ちとはいかなかったが要所でいかにもこの人らしいパワフルな投げを披露、2回戦のエカテリーナ・グイカ(カナダ)戦は大外返「一本」、準々決勝のアストリーデ・ネト(フランス)戦はGS延長戦の左内股「技有」、準決勝のアンジェリカ・デルガド(アメリカ)戦は背中をひっつかんでの左釣込腰「技有」に左内股「技有」でそれぞれ勝利して決勝進出。決勝ではグランドスラム東京を制して勢いに乗る角田夏実(了徳寺学園職)を大内返「技有」で下してしっかり優勝を決めた。ネト戦で見せた内股は相手が斜めに崩れた瞬間胸を合わせながら引き起こし、浮落の形で押し込んだパワー溢れる非常に「らしい」一撃。コンディションが整わぬゆえか「一本」奪取への貪欲さに欠けるきらいはあったものの復帰戦としては上々、王者ケルメンディ健在を見せつけた大会であった。

角田夏実は2位入賞を果たした。講道館杯とグランドスラム東京を制した角田は大会開始前の時点で世界選手権代表レースの暫定一番手。東京大会には海外勢に強豪の影がほとんどまったくなかったが国内トップ4人が出場した国際大会を制した事実は大きく、これで今大会ツアーの上位常連たちと伍してメダルを獲得すれば代表奪取ほぼ確実というところまで序列を上げることが出来るはず。そしてこの階級においては、「ケルメンディ以外に負けない」ことが国際大会派遣における合格ラインであり、決勝まで進んだ時点でこのミッションは達成されたと考えるべきだろう。世界大会におけるメダル奪取の基準点となり得るナタリア・クズティナ(ロシア)との対戦が実現しなかったこと(クズティナが準々決勝で敗退)は実力アピールの観点からは少々もったいなかったが、決勝のケルメンディ戦をフルタイム戦い切ったという内容上の上積みもあり、まず文句のない結果と評するべきだろう。最後は巴投しかない、そして必ず寝勝負をして来るとすべての対戦相手に読み切られた上でなおこの技で投げ、極め、抑えた技術バリエーションの豊かさと、最大の長所である「立ちから寝」の移行スピードの速さは見事であった。

今シリーズから52kgに階級を上げたサラ・メネゼス(ブラジル)は2勝2敗で7位、早くも階級変更後初の入賞を達成した。今大会はシード選手のギリ・コーヘン(イスラエル)に勝利(左小内刈「技有」)し、敗れたアンジェリカ・デルガド戦も一時は左背負投「技有」でリードするなどなかなか逞しい戦いぶり。2回戦敗退に終わった前週のヨーロッパ・オープンソフィア大会に比べれば一段階段を登ったと評して良いのではないだろうか。デルガドには大外刈で押し込まれた末の小外掛「技有」に右背負投を捩じり返されての隅落「技有」といずれも力技で2ポイント失陥、コーヘンにも後半2つの「指導」を奪われ、敗者復活戦ではアストリーデ・ネト(フランス)に「指導3」を失うなどパワー、スタミナともにまだまだではあるが、攻撃時の瞬間燃焼力はやはり高い。今後も注目しておきたい。

昨年コソボの2番手として非常な存在感を発揮していたディストリア・クラニスキは今回も好調、図太い戦いぶりで前週のヨーロッパオープン・ソフィアに続く3位入賞を果たした。今年はツアー上位常連として定着するところまでは間違いないかと思われる。

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52kg級入賞者。左から角田、ケルメンディ、クラスニキ、クズティナ

【準々決勝】

マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)〇GS技有・内股(GS0:18)△アストリーデ・ネト(フランス)
アンジェリカ・デルガド(アメリカ)〇優勢[技有・隅落]△サラ・メネゼス(ブラジル)
角田夏実〇GS横四方固(GS1:08)△エリカ・ミランダ(ブラジル)
ディストリア・クラスニキ(コソボ)〇GS指導2(GS1:35)△ナタリア・クズティナ(ロシア)

【準決勝】

マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)〇優勢[技有・釣込腰]△アンジェリカ・デルガド(アメリカ)
角田夏実〇優勢[技有・巴投]△ディストリア・クラスニキ(コソボ)

【3位決定戦】

ナタリア・クズティナ(ロシア)○(1:31)△アンジェリカ・デルガド(アメリカ)
右相四つ。デルガドの右奥襟に対してクズティナは左構えで対抗する。51秒、クズティナは左背負投でデルガドを伏せさせると素早く背中側に捲り返して寝技を展開。そのまま崩上四方固で抑え込んで「一本」。自分のフィールドに優位な体勢で勝負を持ち込んだクズティナが隙を見せずに勝利、しっかり表彰台を確保した。

ディストリア・クラニスキ(コソボ)〇送襟絞(1:00)△アストリーデ・ネト(フランス)
右相四つ。クラニスキが奥襟を叩くとネトは左構えで防御の構え、ひたすら腰を突いて耐えるが頭を下げたままあっさり畳を割ってしまい25秒場外の「指導」。続くシークエンスもクラニスキが引き手で襟、釣り手で奥襟を叩いて強気に攻め、右体落で転がすなり素早く「腰絞め」を試みる。絞まった瞬間ネト全く耐える様子なく激しくタップ、「一本」決定。ネトは抵抗なしの「参った」の後に突如激しく悔しがって見せるというまったくの醜態、今回も意地のない戦いぶりで大会を終えた。

【決勝】

マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)○優勢[技有・大内返]△角田夏実
ケルメンディが左、角田が右組みのケンカ四つ。ケルメンディは一貫して奥襟を叩く強気の組み手。角田は巴投から引き込んでの寝技を試みるが、ケルメンディはまったく崩れず。1分23秒、角田に引き込みの咎による「指導」が与えられる。以後角田は主戦武器の巴投がなかなか出なくなり、ケルメンディは激しく奥襟を叩いて前へ。角田は脇を突いて間合いを確保しチャンスを伺う。2分32秒、角田がクロスグリップの左大内刈で勝負に出るが、ケルメンディの奥襟がしっかり生きておりケンケンの都度角田は逆に下げられてしまう格好。ケルメンディは前に弾き返す形で捩じり落として決定的な「技有」獲得。ここからケルメンディが組み手のペースを落とすと角田も何故かペースダウン。3分39秒に両者に「指導」が与えられたが、あるいは次の対戦を考えたか角田は得意の巴投を最後まで封印。反撃らしい反撃のないまま試合時間が終了し、ケルメンディの優勝が決まった。

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ケルメンディとの決勝を戦う角田

【日本代表選手勝ち上がり】

角田夏実(了德寺学園職)
成績:2位

[1回戦]
角田夏実○腕挫十字固(2:44)△アメリー・ギウ(フランス)
角田が左、ギウが右組みのケンカ四つ。引き手の探り合いが続き、両者に片手の咎で「指導」が与えられる。この「指導」を受けてギウが引き手を持つ構えを見せると、角田は反応良く先んじて引き手で袖を得て巴投。最後は両足で相手の体を跨いでコントロールして「技有」獲得。しかし、1分33秒に角田はギウが仕掛けた組み際の左小内巻込で転んでしまい「技有」失陥、あっさり勝負は振り出しへと戻る。2分31秒、角田は組み際の右背負投で「技有」を奪うとすかさず腕挫十字固に移行。回転しながら腕を極めるとギウは堪らず「参った」。角田が持ち味の立ち技から寝技への移行の早さとシナリオの豊かさを存分に発揮、みごと初戦を突破した。

[2回戦]
角田夏実○優勢[技有・大内刈]△ユリア・カザリナ(ロシア)
角田が左、カザリナ右組みのケンカ四つ。片手の攻防が続き、角田は常に押し込んで出足払に小外刈とひとまず有利に試合を組み立てる。しかしあまりに双方組み合わない時間が長くなり、両者に片手の「指導」。奮起した角田は続くシークエンスを小外刈と巴投を組み合わせて意欲的に攻めるも、ポイントの予感は漂わず。それでも強気に両襟から奥襟を叩くとカザリナあっさり畳を割って2分8秒場外の「指導2」。続く展開、力関係の優位を確信した角田が両袖から左大内刈で前に出て場外で投げ切り「技有」。以後は動的膠着、双方に得点の予感ないままタイムアップ。

[準々決勝]
角田夏実〇GS横四方固(GS1:08)△エリカ・ミランダ(ブラジル)
左相四つ。角田は出足払に巴投、さらに小内刈に巴投。足技と捨身技を絡めた得意の組み立てで攻めるが担ぎ技を連発するミランダが手数でまず優位に立つ。ミランダは二段の左一本背負投に「振り子巴」と取り味のある技も繰り出して中盤以降加速。終盤やや苦しくなった角田は担ぎ潰れた相手を引き上げて膝車を仕掛ける好組み立てを見せるが、ミランダこれも左腰車に切り返して優位を継続。試合はそのままGS延長戦へ。延長もミランダが片手の左背負投を連発して手数優位を取り掛かるが、角田横方向への巴投で叩き落とすなり上手く被って横四方固。この試合も立ち技から寝技の移行の早さという長所が最後に生き、「一本」で勝ち抜け決定。

[準決勝]
角田夏実〇優勢[技有・巴投]△ディストリア・クラスニキ(コソボ)
角田が左、クラニスキ右組みのケンカ四つ。クラスニキ奥襟を叩き、引き手不十分ながら右足車、さらに呼び込みながらの鋭い出足払で角田を大きく崩す。続いて引き手で襟、釣り手で奥を持って圧力を掛けるパワーを生かした密着志向、角田は小外刈を当てながら反抗の機会を伺う。1分過ぎに角田が巴投、クラニスキ1度は耐えるが角田は両足の甲を相手の膝裏に入れ、脚を伸ばしながら引き込み回して「技有」獲得。ここからクラスニキは腰を抱いて密着を狙う積極的な組み手を加速、猛然と追い上げに掛かる。角田はクラスニキの腰技と足技を使い分けての内と外からの攻めに手を焼くが、しっかりとこれを凌ぎきってクロージング。「技有」優勢で決勝進出を決めた。

[決勝]
マイリンダ・ケルメンディ(コソボ)○優勢[技有・大内返]△角田夏実

※前述のため戦評省略

■ 57kg級・新鋭クォンが新ルール追い風に番狂わせ連発、芳田司は3位に終わる
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決勝、クォンはルスヴォから左体落で2つ目の「技有」獲得

(エントリー23名)
【入賞者】
1.KWON, Youjeong(KOR)
2.RECEVEAUX, Helene(FRA)
3.GNETO, Priscilla(FRA)
3.YOSHIDA, Tsukasa(JPN)
5.GJAKOVA, Nora(KOS)
5.SILVA, Rafaela(BRA)
7.BEAUCHEMIN-PINARD, Catherine(CAN)
7.OJEDA, Aliuska(CUB)

優勝候補は日本代表の芳田司(コマツ)と地元期待のエレン・ルスヴォ(フランス)の若く技が切れる2人。これにムラ気の権化であるリオ五輪王者ラファエラ・シウバ(ブラジル)のコンディションが良ければ対抗し得る可能性あり、というのが事前評であったが、優勝の栄に輝いたのは意外や意外、ノーシードで大会をスタートした21歳のクォン・ユジョン(韓国)。この選手は2013年世界ジュニア選手権で予選ラウンド敗退、ワールドツアーデビュー戦の2014年グランプリ済州は初戦敗退、2戦目であった2016年12月のグランドスラム東京でも2回戦で石川慈にあっさり敗れている、つまり国際的にはまったく無名の選手である。それがシウバ、芳田、そして地元の大声援を受けたルスヴォと大物3人を立て続けに投げて優勝をさらったのだから、驚きと呼ぶほかはない。

この日のクォンの戦いぶりと一気の頂点登攀劇は、新ルールを目いっぱい使っての勝利と評することがひとつ可能。初戦はロラ・ベナロチェ(フランス)を相手にGS延長戦まで粘りに粘って最後は消耗し切った相手から腕挫十字固「一本」、勝負どころのシウバ戦は試合が始まるなり左片襟を差して釣り手一本を持ち続けたまま足技で浅く牽制、続いて引き手を握ると本命の左背負投に飛び込むという我儘な組み立てで僅か15秒の「一本」、最大の敵と目された芳田司との準決勝は「指導1」を失ったまま形勢不利が続いたがこれも粘りに粘ってビハインドのままGS延長戦を耐え切り、消耗戦の中で背負投に飛び込むと既に体力を失った芳田を伏せたところから無理やり押し込む「技有」獲得で勝ち抜けた。「指導」を貰っても粘ってGS延長戦に持ち込み、互いが消耗して力関係がリセットされたところでの一発に賭けるというのは今大会随所に見られた新ルール下勝ち抜け方法論の一である「スタミナ戦」の典型例であり、シウバ相手に片襟という一方通行の組み手を続けて、「片襟背負い」というもっとも強烈な技に繋げたのは「変則組み手でも攻撃準備とみなされれば継続」という新ルールのキモをまさしく生かしたものであると言える。泥臭さ最大値の決して見目よい戦いぶりではなかったが、ルールを最大限に使って勝利にこだわったこれぞ韓国選手という興味深い勝ち上がりであった。この戦い方は格下が強者にチャレンジする際の方法論として、新ルール下のトレンドの一潮流となること確実と考えておくべきだろう。

強国日本とフランスでそれぞれ「リオ後」の一番手と目された芳田とルスヴォはともに突き抜けられず。ルスヴォは準決勝まで全試合一本勝ちで好調であったが、シウバと芳田を倒したクォンの勢いを止められず無念の決勝敗退。階級を上げて来た同国の52kg級リオ五輪代表プリシラ・ネトを鮮やかに投げて国内の序列は保ったものの、昨年前半の勢いを考えれば失速気配は否めない。以後の57kg級戦線の混戦を想起させる、意外な様相の大会であった。

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57kg級入賞者。左からルスヴォ、クォン、芳田、ネト。

【準々決勝】

エレン・ルスヴォ(フランス)〇優勢[技有・大内刈]△アイウスカ・オジェダ(キューバ)
プリシラ・ネト(フランス)〇内股(1:47)△ノラ・グジャコヴァ(コソボ)
クォン・ユジョン(韓国)○背負投(0:15)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)
芳田司○GS技有・縦四方固(GS0:50)△キャサリン・ブーシェミンピナード(カナダ)

【準決勝】

エレン・ルスヴォ(フランス)〇内股(1:47)△プリシラ・ネト(フランス)
クォン・ユジョン(韓国)○GS技有・背負投(GS2:04)△芳田司

【3位決定戦】

芳田司〇優勢[技有・小外刈]△ノラ・グジャコヴァ(コソボ)
芳田が左、長身選手のグジャコヴァが右組みのケンカ四つ。手先の組み手争いを経てグジャコヴァが釣り手で激しく奥襟を叩く。しかし芳田間を置かず釣り手操作巧みに左小外刈、35秒「技有」を獲得する。前段奥襟を叩かれたゆえか、芳田続くシークエンスでは釣り手操作を効かせてグジャコヴァの動きを完全封殺、一応組んでいるが何も出来ない状況に追い込まれたグジャコヴァに1分39秒「指導」。以後も芳田はグジャコヴァの釣り手をしっかり管理するが、2分半過ぎに「サリハニ状態」を牽制に利用したグジャコヴァに奥襟を許し、内股で伏せさせられてしまう。これをきっかけに試合は少々泥沼化、残り46秒には双方に消極的との咎で「指導」が与えられるに至る。手順を飛ばしてくること確実の長身選手相手に長い時間の殿戦を戦うこの展開は少々きついところだが、芳田粘り強く以後の時間を戦い切ってタイムアップ。

プリシラ・ネト(フランス)○優勢[技有・背負投]△ラファエラ・シウバ(ブラジル)
左相四つ。組み手争いが続いて30秒、両者に「指導」が与えられる。ネトは奥襟を持っての前進圧力と前襟での担ぎ技という2つのモードを使い分けながら試合を展開、1分58秒には右背負投で股中に潜り込み「技有」を獲得する。投げられたシウバはネトの残った腕を取って得意の腕挫十字固を狙うが、あと一歩というところでネトに体を跨がれて凌がれてしまう。ここが試合の分水嶺、シウバ逆転の気配は以後急速にしぼんだ感あり。2分50秒、シウバはネトに飛び付きの腕挫十字固を仕掛けるが、腕の拘束が甘く反対に寝技で時間を消費されてしまう。「待て」の時点で残り時間はわずか20秒。シウバは左内股で最後の勝負に出るが、押し込まれてしまい内股透「技有」。大観衆は熱狂、ネトが地元の声援に応えてしっかり3位を獲得した。

【決勝】

クォン・ユジョン(韓国)○優勢[技有・小外刈]△エレン・ルスヴォ(フランス)
クォンが左、ルスヴォが右組みのケンカ四つ。クォンは腰を持ってルスヴォを伏せさせ、横三角で攻め立てる。一方のルスヴォも奥襟を得てクォンを潰すと回転しながら腕挫十字固を狙ってお返し。観客大いに沸くが、腕が伸び切らずこれは「待て」。1分27秒、クォンは両袖で膠着を作ると切れ味鋭い左小外刈で「技有」を獲得する。ここからクォンは襟下から持って担ぎ技での先手掛け潰れ作戦を開始。焦ったルスヴォが不用意に前に出てくると、3分27秒に左体落で「技有」を追加するという好スパイラル。残り時間はほとんど残されておらず、以降はポイントの変動がないまま試合終了。番狂わせを連発したクォンが見事表彰台の頂点へと上り詰めた。

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3位決定戦、芳田司がノラ・グジャコヴァから小外刈「技有」

【日本代表選手勝ち上がり】

芳田司(コマツ)
成績:3位

[2回戦]
芳田司○優勢[技有・左足車]△テレザ・ストル(ドイツ)
芳田が左、ストルが右のケンカ四つ。足を飛ばながらの腹の探り合いが続き両者に「指導」。1分55秒、芳田は浅い左内股でストルを場外に追い詰めると、縺れ際に左足車で「技有」を獲得する。以降も芳田は左内股を中心に攻め続け、残り30秒でストルに2つ目の「指導」。このまま試合が終了し、芳田が「技有」優勢で勝利した。

[準々決勝]
芳田司○GS技有・縦四方固(GS0:50)△キャサリン・ブーシェミンピナード(カナダ)
芳田が左、ブーシェミンピナードが右組みのケンカ四つ。芳田が下から、ブーシェミンピナードが上から釣り手を持って組み手を展開。芳田が圧を掛けて場外に押し込むと相手は左背負投で掛け潰れ、1分43秒にブーシェミンピナードに偽装攻撃の咎で「指導」が与えられる。2分40秒には横落で掛け潰れたブーシェミンピナードに2つ目の「指導」が累積。以降ポイントの変動はなく、本戦の4分間が終了。勝負はGSでの延長戦へともつれ込む。芳田が脇下を持って場外に追い込むと、ブーシェミンピナードは巴投で引き込んで展開を切りに掛かる。芳田は落ち着いて相手の足を乗り越えると、縦四方固で抑え込む。途中で逃してしまったものの、この抑え込みが「技有」となり芳田が勝利。準決勝進出を決めた。

[準決勝]
芳田司△GS技有・背負投(GS2:04)○クォン・ユジョン(韓国)
左相四つ。左右の担ぎ技で攻めてくるクォンに対して芳田はしつこく寝技を展開して対抗。寝技で主導権を握ることであくまで展開を渡さない。2分10秒には両手で芳田の組み手を切った咎でクォンに「指導」が宣告される。芳田は組み際の左小外刈でクォンを何度も崩すがポイントには至らず。結局、両者投技のポイントがないまま勝負は延長戦へ。延長戦に入ると芳田は左大外刈で追い込んでクォンを畳に伏せさせ寝技を展開、腕を取って腕挫十字固を狙う。芳田は様々な方向に腕を捻って極めにかかるが、あと一歩極めきることが出来ずにこの攻防は「待て」。GS2分4秒、クォンが左背負投で一度は潰れながらも強引に芳田を転がすと、ジュリーは確認の結果これを「技有」と判断。芳田はチャンスで試合を決めきれないまま、「技有」のGS優勢で敗れた。

[3位決定戦]
芳田司〇優勢[技有・小外刈]△ノラ・グジャコヴァ(コソボ)

※前述のため戦評省略

■ 63kg級・強者2人の「ビースト化」さらに加速、パワーの時代は今後も継続確実
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63kg級決勝の二強対決、トルステニャクが「一本大外」でアグベニューを大きく崩す

(エントリー23名)
【入賞者】
1.TRSTENJAK, Tina(SLO)
2.AGBEGNENOU, Clarisse(FRA)
3.PINOT, Margaux(FRA)
3.WATANABE, Kiyomi(PHI)
5.NOUCHI, Aimi(JPN)
5.RENSHALL, Lucy(GBR)
7.DAVYDOVA, Daria(RUS)
7.MINEI, Miho(JPN)

リオデジャネイロ五輪金銀メダリストのティナ・トルステニャク(スロベニア)とクラリス・アグベニュー(フランス)の二強が他を圧して決勝進出。トルステニャクは2回戦でボルド・ガンカイッチ(モンゴル)から右内股で2つ、左一本背負投で2つと実に4つの「技有」を得てまず初戦突破。準々決勝はルーシー・レンシャル(イギリス)を横四方固「一本」で下し、マルゴ・ピノとの準決勝は左小内刈「技有」に抱分「技有」と系列異なる技で2度投げつける大暴れ、危なげなく決勝進出決定。一方のアグベニューはまずメリアム・ブジャオウイ(チュニジア)からいわゆる「肩三角」で「技有」、さらに崩上四方固「一本」と奪って五輪復帰戦を飾り、準々決勝は粘る日本代表・能智亜衣美(筑波大3年)を「指導3」の反則で畳から退ける。準決勝は早稲田大所属の2015年度学生王者渡邊聖未 (フィリピン)から小外掛「技有」を得て勝利し、ライバル・トルステニャクの待つ決勝へと駒を進めこととなった。

決勝は互いの意地とパワーがぶつかり合う迫力の一番。アグベニューが前に出てはトルステニャク得意の左一本背負投を振り回し返して前半は優位、しかしいったん袖を絞って試合を落ち着かせたトルステニャクが中盤以降はパワーと泥臭さをミックスさせた機関車スタイルで畳を席捲、最後は左の「一本大外」から縦四方固に繋ぎ、捻じ伏せるように抑え込んで「一本」。力で力を制したという体で五輪後初のツアータイトル(復帰戦のグランドスラム東京は3位)を獲得した。

上野順恵、そして後継者として期待された阿部香菜が畳を去った「ロンドン-リオ期」中盤から完全にパワーファイター全盛となった63kg級だが、今後もこの傾向続くことは確実。このトレンドを牽引した主役であるトルステニャクとアグベニューの2人は五輪を経て戦い方が枯れるどころかさらにフィジカルの逞しさを増し、筋肉の鎧の「盛り」が一段厚くなった印象。この2人がパワー全開で戦う決勝は咆哮が聞こえてきそうな迫力、まさに「ビースト」2人によるデスマッチの様相であった。五輪代表を務めた田代未来に次ぐ若手を育てるべく意欲的に人材を送り込んでいる日本であるが、このトップ選手2人の「ビースト化」加速に追走するまでのスピード感にはそれでも欠ける。一頃田代を擁してトップの背中を捕まえかけた日本であるが、率直に言って彼我の差はさらに開いていると感じざるを得ない。複数の有望選手を投入した今回同様、積極的な育成と派遣の継続を望みたい。

日本の嶺井美穂は7位と結果的には振るわず。マルティナ・トライドス(ドイツ)を破る殊勲を挙げながらマルゴ・ピノの新ルールを生かした、粘りに粘って力関係がリセットされるところまで消耗したのち一発を狙う「スタミナ戦」に屈した。ただしこの日の4戦はいずれも「持てば投げる」という迫力と技の威力で相手を圧し続けており、地力が水準点に達すればいきなり勝ち始める目も十分あるのではと思わせた。敗者復活戦のルーシー・レンシャル(イギリス)相手の敗戦は余計であったが、全てを「表の目」に変えるのではないかと期待させるジャンプ要素を内包したその試合内容は興味深い。今後に大いに期待したい。

逆に能智亜衣美は一定の力ありも戦いぶり煮え切らず。こちらは3位決定戦に敗れて最終順位は5位であったが、順位はともかく、階級中位の「序列」の波にガブリとそのまま飲み込まれてしまいそうな大人しさ、戦いのスケール感の小ささが気になった。緻密だがその破綻少なき丁寧さによって、かえってみずからのブレイクの可能性も潰してしまっている感あり。出世期に国内大会の要所で見せて来た大胆さが欲しいところ、少々閉塞感のある戦いぶりであった。

トーナメント全体としては何と言っても渡邊聖未の健闘が大きなトピック。数年来なぜか国際大会ではまったく力を発揮できず早期敗退が続いていたが、この日は初戦を抜けると呪いを解かれたがごとく一気にベスト4まで登攀。中途ではヤン・ジュインシュア(中国)を破る大物食いも果たした。準々決勝、3位決定戦と相手に恵まれた面はあるものの、地元アグベニューとフルタイム戦ってのグランドスラムパリ3位入賞は見事の一言である。

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63kg級入賞者。左からアグベニュー、トルステニャク、渡邊、ピノ。

【準々決勝】

ティナ・トルステニャク(スロベニア)〇横四方固(2:42)△ルーシー・レンシャル(イギリス)
,マルゴ・ピノ(フランス) GS大内返(GS2:31)△嶺井美穂
クラリス・アグベニュー(フランス)〇反則[指導3](3:24)△能智亜衣美
キヨミ・ワタナベ(フィリピン)〇優勢[技有・送足払]△ダリア・ダヴィドワ(ロシア)

【準決勝】

ティナ・トルステニャク(スロベニア)〇優勢[技有・小内刈]△マルゴ・ピノ(フランス)
クラリス・アグベニュー(フランス)〇優勢[技有・小外掛]△キヨミ・ワタナベ(フィリピン)

【3位決定戦】

キヨミ・ワタナベ(フィリピン)〇腕挫十字固(3:36)△ルーシー・レンシャル(イギリス)
右相四つ。レンシャルは奥襟を叩いて圧力志向、片襟も交えながら右大内刈を中心に攻めて試合を構成。一方の渡邉は巴投、浮技に横車、肩車など駆使して体ごと得意の寝技に持ち込もうという柔道。引きずり込まれたレンシャルその都度嫌がって立ち上がるが、これにも渡邉は片襟を握って引き込み、足を刈り、股中から裏に抜けて背中に抱き着いてとあらゆる手段で畳に沈めに掛かる。残り40秒を過ぎたところでレンシャルが巻き込み潰れると渡邉すかさず寝技を展開、立ち上がって逃れようとしたレンシャルの腕を捕まえて腕挫十字固。中腰になり掛けたレンシャル再び畳に落ち、位置関係を縦に入れ替えて逃れるかに思われたが中途で腕を伸ばされ「参った」。2015年度全日本学生体重別王者の渡邊、見事グランドスラムのメダル獲得に成功。

マルゴ・ピノ(フランス)○GS反則[指導3](GS1:30)△能智亜衣美
ピノが右、能智が左組のケンカ四つ。お互いに遠い間合いで組み手を展開し、技の効く間合いに入らないまま時間が経過する。形上ピノの左袖釣込腰で終わる展開が続いたことで2分33秒、能智に「指導」が与えられる。しかし以後も膠着が続き、3分44秒に両者に「指導」。このまま本戦が終了し勝負はGSの延長戦へともつれ込む。この時点で累積警告はピノが「1」、能智が「2」。ピノは「指導」1つまで失っても良いが、能智は「指導」を1つでも受けると即試合終了という状況だ。延長戦に入るとさすがに両者とも技を仕掛け始め、これまでより近い間合いでの攻防が行われる。GS1分30秒、能智が左内股を仕掛けたところで主審が試合を止めて両者に「指導」を宣告。この時間帯攻めを企図していたのはむしろ能智の側であり、「待て」の直前に攻撃を見せたのも能智。少々性急な判断であったが宣告の取り消しはなく、ここで試合終了。ピノの3位が確定した。

【決勝】

ティナ・トルステニャク(スロベニア)○縦四方固△(3:37)クラリス・アグベニュー(フランス)
アグベニューが左、トルステニャクが右組みベースの両組み。トルステニャクは、まず右組みをベースに試合を展開。20秒、トルステニャクが左一本背負投に掛け潰れると、待ち構えたアグベニューは強烈な浮落。トルステニャクは危うく捲り返されそうになるも、辛うじて腹這いで着地する。以後もアグベニューの前進圧力に対してトルステニャクは防戦一方、掛け逃げすれすれの左一本背負投で凌ぎ続けるが、1分21秒ついに偽装攻撃の咎で「指導」が与えられ、会場は大いに沸く。正面から与しては分が悪いと判断したトルステニャクは、両手でアグベニューの袖を絞っていったん膠着を演出。アグベニューが引き手を手繰りに来ると隅返で大きく崩し、相手に向いていた流れを自身の側へ引き戻す。この攻防に手ごたえを得たトルステニャクは直後の展開でも奥襟を得て隅返、さすがに警戒されてポイントには至らなかったが、またもや相手を大きく崩すことに成功する。ここに至って流れは完全にトルステニャク、左の「一本大外」でアグベニューを伏せさせると、抱えた腕を引き込んで寝技を展開。足を抜いて縦四方固で抑え込むと上体を完璧に極められてしまったアグベニューはもはや為す術なし。「ビースト」同士の戦いは馬乗りのマウンティングという端的な絵で決着、3分37秒にブザーが鳴ってトルステニャクの優勝が決まった。

【日本代表選手勝ち上がり】

能智亜衣美(筑波大3年)
成績:5位

[2回戦]
能智亜衣美〇優勢[技有・浮落]△バルドルジ・ムングンチメグ(モンゴル)
能智は左組み、バルドルジは左組みベースで右にスイッチしながら試合を展開。序盤は両袖の攻防が続き、打開を期した能智が引き手で袖、釣り手で奥襟を掴むとムングンチメグ露骨に嫌って両襟に戻す。手ごたえを得た能智が奥襟を叩きながら大外刈を入れるとムングンチメグ膝を屈し、偽装攻撃の「指導1」。捕まえれば大丈夫と踏んだ能智、強気に奥襟を叩いて左小外刈から左内股に繋ぐと右構えで受けたムングンチメグは右小外刈の形で谷落に体を捨てる。しかし拘束効き切らず、能智浴びせ返して「技有」獲得。続けての抑え込みは逃がしてしまったが以後も能智は危なげなく試合を展開。2分24秒、能智が奥襟を叩くとムングンチメグ右で帯を掴んで対応、この態勢長く続きムングンチメグに「指導2」追加。以降スコアの積み上げなくタイムアップ。

[準々決勝]
能智亜衣美△反則[指導3](3:24)〇クラリス・アグベニュー(フランス)
左相四つ。アグベニューは定石通りまず引き手を確保し、奥襟を狙いながら左大外刈で先制攻撃。能智はこれに対し、自分が引き手を得ることこそ肝要と両手を駆使してアグベニューの左釣り手に対峙、一本背負投の形に腕を抱き込み、あるいは両手で手繰ってと徹底的にここに拘りながら足技を繰り出す。しかし主審厳しく観察、1分8秒両手で相手の組み手を切り離した咎で能智に「指導1」。しかし少々の反則で最前線の勝負どころを譲るわけにはいかじと、能智はこの両手で手繰っての引き手獲得にあくまでこだわる。アグベニューの組み立ての癖と力関係、そして新ルールを意識したなかなか興味深い戦術であったが、両手の絞り込みを確認した主審は能智に2つ目の「指導」。アグベニューはここから明らかに一段加速、引き手を得ては強引に大外刈、大外巻込、大外落と連発。能智が釣り手をしっかり落としているため効果的な技にはならなかったが主審この猛攻を採って能智に3つ目の「指導」を宣告し、試合終了。

[敗者復活戦]
能智亜衣美○反則[指導3](3:14)△ダリア・ダヴィドワ(ロシア)
能智が左、ダヴィドワが右のケンカ四つ。1分30秒、能智が左内股で攻め込むとダヴィドワに1つ目の「指導」。さらに2分28秒には能智の組み手を嫌ったダヴィドワに2つ目の「指導」が与えられる。能智は足を出しながら組み手を展開。奥襟を得て横変形で圧を掛けると、この形を嫌ったダヴィドワが膝をついて展開のリセットを図る。一度は試合が再開されるが、主審はすぐに試合を止めてダヴィドワに3つ目となる「指導」を宣告。「指導3」の反則で能智が勝利した。

[3位決定戦]
マルゴ・ピノ(フランス)○GS反則[指導3](GS1:30)△能智亜衣美

※前述のため戦評省略

嶺井美穂(桐蔭横浜大1年)
成績:7位

[1回戦]
嶺井美穂〇GS崩上四方固(GS0:41)△ステファニー・トレンブレイ(カナダ)
嶺井が右、トレンブレイ左組みのケンカ四つ。トレンブレイが片手の左背負投と右一本背負投で先制攻撃。1分過ぎには奥襟圧力で完全に嶺井を沈黙させる場面も作って手数、展開とも優位。なかなか組ませてもらえない嶺井は片手の右大外刈、掴みかかりながらの右払腰などで攻めるがトレンブレイはいずれも崩れながらすかさず担ぎ技に変換して優位を譲らず。しかし嶺井が粘り強く攻め続けるとトレンブレイは残り30秒過ぎから明らかに疲労。GS延長戦、嶺井は釣り手一本を引き寄せながらの膝車で蹴り崩し、すかさず引き手で抱え込んで畳に転がすと崩上四方固。相手の左肘を拘束、体で右肩を殺し続けて抑え切り「一本」。

[2回戦]
嶺井美穂〇優勢[技有・裏投]△マルティナ・トライドス(ドイツ)
嶺井が右、トライドス左組みのケンカ四つ。嶺井は始まるなり釣り手を背中に入れながら右体落を放ちやる気十分。しかし地力に勝るトライドスは両襟で圧力、組み潰された嶺井は頭が下がり続けてしまい54秒「極端な防御姿勢」で嶺井に「指導」。しかしこれは直後トライドスのブロッキングによる「指導」に訂正される。これを受けたトライドス手立てを変えて組み付きながらの左大外刈、嶺井が一歩下がると振り上げた足をそのまま左小内刈の形に入れて「サリハニ状態」を作ってしまうという得意の組み立て。これを軸にした小外刈、体落、引込返が効き、中盤圧を受けて潰れた嶺井に偽装攻撃の「指導」。トライドスはさらに同様の組み立てから立って寝てと攻めまくり、2分47秒には嶺井に偽装攻撃の「指導2」。もはや勝敗決する寸前、嶺井にとっては希望薄い試合であったが、残り1分を切ってから大逆転。トライドスがこれまで頼り切っていた「左大外刈を晒しながらの左小内刈」形態に飛び込んでくる瞬間を狙い、両足で踏ん張って抜き上げ裏投「技有」。慌てたトライドス以後も猛攻、しかし嶺井耐え切ってそのまま勝利。ほとんど全ての時間帯を失いながら一発で逆転した嶺井の粘りと勝負勘光る試合であった。

[準々決勝]
嶺井美穂△GS大内返(GS2:31)〇マルゴ・ピノ(フランス)
右相四つ。嶺井の技と正面から渡り合うことを嫌うピノは先んじての右背負投、さらに嶺井の釣り手襲来に合わせた左一本背負投に座り込むことを繰り返す戦術派柔道。ポイントの予感は僅少だが、しかし嶺井がこれにある程度ついて行ってしまうため、展開は手数に勝るピノが優位となる。嶺井は1分30秒の大内刈、最終盤の大外刈と組み付きながらの技で大きくピノを崩すが、いま一歩でポイントには至らず。試合運びのピノ、一発の予感は嶺井という構図のまま試合はGS延長戦へ。延長もこの図式は変わらず、ピノが大枠手数で優位に試合を運ぶが、嶺井は組み付きながらの大外刈で2度チャンスを作って展開を取り戻す。GS2分31秒、業を煮やした嶺井またもや組み際を狙って片襟の大内刈に打って出るが待ち構えたピノ鮮やかに返して「一本」。嶺井は敗者復活戦へ。

[敗者復活戦]
嶺井美穂△優勢[技有・払巻込]〇ルーシー・レンシャル(イギリス)
右相四つ。手足の長いレンシャルは奥襟を叩き、圧力を掛けながら小内刈で蹴り崩し続けてまず展開を取りに掛かる。頭を下げられ続けた嶺井、23秒極端な防御姿勢の咎で「指導1」失陥。レンシャルは以後も懐の深さを存分に生かして展開を優位に運び、嶺井は苦しい柔道が続く。しかし嶺井は中盤奥襟を叩きながらの右大外落で相手を大きく崩して感触を得ると、続く展開でも奥襟を得ながらの右大外刈一発、レンシャルに尻餅を着かせてあわやポイントというところまで攻め込む。深く入りさえすれば十分投げが効くということが確認出来た形であったが、レンシャルはここで奮起。まず片襟の右大内刈で嶺井の動きを止めると、瞬間釣り手を離してクロスグリップに組み直し思い切った払巻込。密着状態からまともにこれを食う形になった嶺井たまらず転がり「技有」。以後嶺井は猛攻、残り38秒、残り3秒といずれも偽装攻撃の咎でレンシャルに「指導」が与えられるが逆転には至らず。レンシャルが3位決定戦進出を決め、嶺井の最終成績は7位に留まることとなった。


本文:古田英毅
戦評:古田英毅/林さとる

※写真は権利者の許諾を得て掲載しています

※ eJudoメルマガ版2月14日掲載記事より転載・編集しています。

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