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【ROAD TO 高校選手権】足立学園高が初の東京制覇、注目の”最終枠”は修徳高が獲得・第39回全国高等学校柔道選手権大会東京都予選男子団体レポート

(2017年1月30日)

※ eJudoメルマガ版1月30日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】足立学園高が初の東京制覇、注目の”最終枠”は修徳高が獲得
第39回全国高等学校柔道選手権大会東京都予選男子団体レポート
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第1シードの国士舘高が初戦に臨む

第39回全国高等学校柔道選手権大会(3月19日~20日)の都道府県予選もいよいよ大詰めの最終週、29日には開催地・東京で男女団体戦の予選が行われた。この稿では52チームが参加した男子団体戦の模様をレポートしてみたい。

例年の2枠に加え、昨年度本戦での決勝出場地区に与えられる2枠を独占した本年度東京男子の全国大会進出枠は合計実に「4」。しかし過去3代に渡って全国高校3冠全てを独占した東京都の今年度の競技レベルは、その反動というわけではないだろうが、過去ちょっと記憶にないほど高くない。東京都の上位イコール全国大会の上位という図式が通用する状況ではまったくなく、「バブルの直後だから」と自嘲する都関係者の声は妥当かつ率直なところだろう。最大の出場枠を確保した年がもっとも競技力が低いという、まことに皮肉なめぐりあわせとなってしまった。

そんな中、優勝候補の筆頭に挙げられるのはやはり国士舘高。スター選手が揃った過去2代と打って変わって小粒な陣容だが、我は国士舘なりというプライドと鍛え抜かれた試合力の高さ、そして前代の遺産であるシード権をテコに松尾杯と若潮杯の大型招待試合2大会で3位に滑り込む健闘を見せた。戦闘力も着々と増し、同時に全国大会のシード権の根拠となり得る「推薦せざるを得ない実績」を順調に積み上げつつある。全国的に2年生世代が不作で有力校少なき今年度の事情もあり、この都大会で第1代表の座を獲得すればシード権どころか論理上「四つ角」のAシードにピックアップされる可能性すらある。

対抗馬は足立学園高。エースの山本瑛介は招待試合シリーズで全国屈指というべき得点力を見せたばかりの大型選手であり、絶対的ポイントゲッターの保有という抜き試合レギュレーションの勝利条件にチームの特性が噛み合う。先週行われた東京都無差別の決勝では切所の判断ミスで意外な一本負けを喫してしまったが、これが上昇の糧となるか、はたまたあの日見せてしまった意外な弱気とシリーズ中徐々に「取り味」が減り始めていた現実に押しつぶされてしまうのか、正負いずれにこの影響が出るかがまず1つの鍵。続く分岐要素は、周囲が山本を生かしきれず成績を残せなかった招待試合シリーズの出来を踏まえて60kg級インターハイ王者・武岡毅ら強気の軽量選手がどこまで活躍するかと、明らかに今代の選手構成ではキーマンでありながら今シーズン一貫して元気のない白石隼人の復活の有無。

そしてこの両チームに続く日体荏原高までの3校が全国大会出場のいわば「圏内」、順位はともかく全国大会出場という観点からはほぼ安全圏に位置すると観測される。

残る1枠の争いがまことに熾烈だ。タレントの数で言えば、ポイントゲッター近藤駿介を軸に昨年度全国中学大会団体優勝メンバーである今田光星と中田航成、金野晃大の才能ある1年生3枚を擁する安田学園、大砲の保有という観点でいえば東京都無差別代表の戸髙竜之介を抱える八王子学園、チームワークと上昇機運を買うならば前週の個人戦で招待試合シリーズとは打って変わって個々が好パフォーマンスを見せた修徳高。この3校によるマッチレースとみておくべきだろう。

大会方式はトーナメント。決勝に進んだ2チームはその時点で全国大会進出が確定し、残る2枠は、準々決勝進出校によるレペチャージ方式(国際大会と同様)の代表決定トーナメントを勝ち抜いた3位校2つに与えられることとなる。

前年度実績から選ばれたシード校は国士舘(Aブロック)、修徳(Bブロック)、日体荏原(Cブロック)、足立学園(Dブロック)の4校。「残り1枠」の有力候補である2校については、抽選の結果安田学園が修徳の山(Bブロック)に、八王子学園が足立学園の山(Dブロック)に配された。

まずは有力各校の勝ち上がりを中心に、順位決定トーナメント参加資格のあるベスト8までの勝ち上がりを簡単に紹介してみたい。

■ 1回戦~準々決勝
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2回戦、国士舘高の先鋒渡辺将一が墨田川高・菅野哲平から背負投「一本」

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3回戦、国士舘高の先鋒三谷大が内股「一本」で5人抜き達成

Aブロックの国士舘は順調な滑り出し。初戦となる2回戦は先鋒から渡辺将一、酒井陸、織茂友多郎、長島光希、清水雅義という布陣で臨み、墨田川高を五人残しで斬って落とす。この試合は序盤の抜き役に指名された形の渡邊が期待に応え、相手とやりとりせず我儘に肘抜きの左背負投を連発。第1試合を横四方固、残り4試合をいずれも背負投「一本」で制した。

3回戦の工学院高戦は決戦兵力として後半に取り置くかと思われた73kg級の三谷大を先鋒に投入。絶対的な体格に欠ける三谷は「秒殺」連発とはいかなかったが、得意の横三角からの崩上四方固でまず2連勝、以降は内股「一本」、小内巻込「一本」、そしてこれも得意とする体落様に足を滑らせる大外刈「一本」でしっかり5人抜きを達成。軽量ながらあくまで全試合での「一本」獲得を譲らぬ、プライド溢れる戦いぶりで国士舘は視界良好。次戦の準々決勝では東海大高輪台高との対戦が組まれることとなる。

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3回戦、日体荏原高の先鋒小野里一将が駒場高・横川楓万から背負投「一本」

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2回戦、修徳高の先鋒川本昂享が専大附高・井上達哉から背負投「一本」

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2回戦、安田学園高の先鋒中田航成が駒大高・本木新大から袖釣込腰「一本」

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3回戦、八王子学園高の大将戸髙竜之介が正則学園高の副将佐藤法生から内股「一本」

Cブロックの日体荏原も無風スタート。前半の抜き役には66kg級の小野里一将が指名され、まず初戦は小野里が左背負投で4勝、左大外刈で1勝と5試合連続の一本勝ちでクリア。3回戦は都立駒場高を相手に再び小野里が左一本背負投「一本」、左大外刈「一本」、内股「一本」、肘抜きの背負投から繋いだ左小内刈「一本」、そして「指導2」の僅差優勢と5連勝を演じて無事ベスト8入りを決めた。逆側の山からは明大中野高が勝ち上がり、準々決勝でマッチアップすることとなる。

Bブロックの修徳、Dブロックの足立学園も凹凸はあるものの順当にベスト8入り決定。

Bブロックの安田学園は2回戦で駒沢大高を中田航成が投げまくって5人残し、3回戦では杉山寛恭を起用して東海大菅生高を4人残しとここまでは他を圧し、無事ベスト8入り。次戦で修徳高との大一番を迎えることとなる。

揉めたのがDブロックの八王子学園。2回戦は問題なく突破したが3回戦では正則学園高に食いつかれて大熱戦、1人差ビハインドで早くも大将戸髙竜之介が引っ張りだされることとなる。戸高は自軍の副将藤井海斗を破った佐藤法生を内股「一本」で抜いた後、大将戦では藤田真輝を相手に「有効」を失いながら辛くも「技有」優勢で勝利。エースの戦いぶり、そして周辺戦力の厚みと必須要素2つに不安を残したまま、次戦で足立学園高に挑むこととなる。

この時点で全国大会出場権獲得ラウンドに臨み得る8チームが決定。準々決勝は国士舘高、東海大高輪台高、修徳高、安田学園高、日体荏原高、明大中野高、足立学園高、八王子学園高によって争われることとなった。

■ 準々決勝
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もっとも注目される一番、修徳高対安田学園高のオーダーが開示される

組まれたカードは国士舘-東海大高輪台、修徳-安田学園、日体荏原-明大中野、足立学園-八王子学園の4試合。

このうち最注目はBブロックの修徳-安田学園戦。前述「残り1枠」を争うチーム同士の直接対決であり、組み合わせ上もこの試合の勝敗は代表権の帰趨にダイレクトに繋がる。なぜならば、この試合に勝利してベスト4進出を果たせば第3代表決定戦の相手は「1枠争奪」グループにランクされる八王子学園となることが濃厚、逆にここで敗れてしまえばたとえ第3代表決定戦に残ったとしてもマッチアップする相手は「確定グループ」の強豪である足立学園か日体荏原になってしまうからだ。後者のシナリオにおけるミッション完遂の難易度は前者とは比べようないほど高く、この準々決勝で勝利して第3代表決定戦も勝つ、つまり以後全ての相手を「1枠争奪」グループに押し込めることこそが代表権獲得への最短距離なのだ。

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修徳高の次鋒川本昂享が今田光星から開始18秒で鮮やかな右背負投「一本」を決める

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安田学園高は中堅近藤駿介が川本から「有効」奪取、辛くも1人を抜き返す

修徳高〇一人残し△安田学園高
(先)宮崎雷也×引分×杉山寛恭(先)
(次)川本昂享〇背負投(0:18)△今田光星(次)
(次)川本昂享△優勢[有効・浮落]〇近藤駿介(中)
(中)鈴木謙太朗×引分×近藤駿介(中)
(副)中村力也〇優勢[技有・袖釣込腰]△金野晃大(副)
(副)中村力也△優勢[有効・大外返]〇中田航成(大)
(大)仲島聖悟〇背負投(1:09)△中田航成(大)

修徳高が抜き役である宮崎雷也を、一方次鋒以降に重心を置いた安田学園がまず杉山寛恭を送り込んだ先鋒戦が引き分けに終わり、ここまでは安田学園に優位あり。

しかし第2試合は、73kg級の川本昂享が体格差を跳ね返し、ケンカ四つの今田光星の左払腰の戻りに素早く右背負投に潜り込む。今田ここで相手を抱える対応ミス、投げられながら左手を畳について逃れようとするが川本体ごと押し込んで「一本」。ここまで僅か18秒、鮮やかな一本勝ちで情勢は一気に修徳有利に振れる。

川本は続く第3試合も安田学園のエース近藤駿介を相手に粘りに粘る。ケンカ四つということもあって双方に片手の「指導」が累積、川本の意図通りに戦線は膠着。近藤の複数枚抜きが必須な情勢の安田学園は窮地に陥るが、近藤は残り33秒で勝利に必要な「2差」となる3つ目の「指導」を獲得。さらに抱き着いて勝負に来た川本をキャッチしながら回し浴びせて「有効」も追加し、しぶとく勝利して流れを取り戻しに掛かる。

しかし第4試合は修徳・鈴木謙太朗がまたもやケンカ四つの優位を生かして展開を減速に減速。「指導1」を取り合ったのみでこの試合は引き分けとなる。

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副将対決、修徳高の中村力也が安田学園高・金野晃大から袖釣込腰「技有」獲得

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中田航成が中村力也から大外返「有効」

これが大きな分水嶺、流れを再びジワリと自軍に傾けた修徳はポイントゲッターである東京都無差別3位の中村力也が登場。中村が右相四つの金野晃大の釣り手を徹底して絞り落としながら一本背負投で攻めると、我慢しきれなくなった金野が釣り手不十分のまま右大外刈に打って出る。中村得たりとばかりにこれを大外返に切り返して1分3秒まず「有効」獲得、続いて1分46秒には右袖釣込腰「技有」も追加する。持ちさえすれば力を発揮できる金野は前進に前進、ついに釣り手を得た2分3秒に中村を内股に捕まえるが、あと一歩の回旋が足りずこれは「有効」。なおも金野は猛攻、最終盤は完全に試合は金野ペースとなり中村に偽装攻撃による「指導」が与えられるが、中村最後まで踏ん張り切ってタイムアップ。この試合は「技有」優勢で中村が逃げ切り、修徳は1人差のリードを作り出して安田学園の大将中田航成を引っ張り出すことに成功。

体が大きく燃料消費の激しい中村はこの時点で既に疲労困憊、しかし必死で畳に立ち続ける。中田は冷静に足技で体力を削り、2分1秒には我慢し切れなくなった中村が中途半端な「一本大外」に打って出ることとなり、中田これを返して「有効」獲得。中田はさらに足技を入れて、上下にあおってとあくまで相手の体力を削り続け、残り25秒で中村に2つ目の「指導」。この試合は中田の「有効」優勢による勝利に終着した。

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大将戦は修徳・仲島聖悟が鮮やか背負投「一本」、中田航成を畳に沈めて決着

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修徳の大将は55kg級全日本ジュニア2位の仲島聖悟。中田との体格差は隠すべくもなく、いかに試合巧者といえども、無差別にあってもむしろ体幹と体力を武器に骨太く戦う中田に対しての不利は否めない。つまり1人差ビハインドで登場した中田にとってはこの大将対決カードに辿り着くこと自体が既に勝利のシナリオの範疇にあり、前戦の「無理をせずに削り続ける」試合はこのバックグランドがあったゆえ。あとは動き鋭いが軽量の仲島を、「まず固定」する技で一発投げつければ良い。

仲島は左背負投で先制攻撃、中田右内股を仕掛けて一発捕まえようと試みるが仲島やはり動き鋭く透かし返し、中田のバランスを崩して譲らず。この攻防以後中田の攻撃やや鳴りを潜め、そして次の矢いかにという状況の中盤戦、仲島の方が一段ギアを変えて左背負投に潜り込む。準備アクションなしの加速に一瞬置き去りの中田、気付いた時にはその股中に仲島を抱えてしまう最悪の状況。当然もはや避けようはなく、仲島が左前隅に走り込んで体を捨てると一回転、豪快な「一本」。

修徳サイドは大歓声。試合時間1分9秒、劇的な投げ一発で全戦が終了。スコア一人残しを以てこの試合は修徳の手に落ちることとなった。

安田学園はメンバーも充実、近藤の「有効」、金野の「有効」、中田の「有効」と具体的なポイントも3つ得て、かつ「置き大将」(体格を考えれば)とも取れる仲島を畳に引っ張り出すことにも成功している。持ち味である育成の射程距離の長さゆえ一貫して柔道の質も良く、勝利のチャンスは十分にあった。

しかしここぞという分水嶺を獲ったのはことごとく修徳。全軍に対するこの試合の重要性の浸透度という点でまず遥かに相手の上を行き、かつ、粘る場面では粘り、勝負する場面では躊躇なく飛び込んでと勝負の綾を理解し切った素晴らしい試合ぶりであった。今田を相手にした川本、中田と対峙することとなった仲島の軽量2選手が勝利して試合を終えるなら「投げて一本」以外にはありえず、浅く傷つけて以後の反撃を耐える展開はありえない。まさしくこれしかないという仕事の完遂ぶりといえよう。安田学園には見えていないものが修徳の側には見えている、どころか既に具体的な方法論として長年練り上げられていたという、チームとしての経験値の差が大きく出た試合という印象だった。これで修徳は全国大会出場権獲得を「しっかり戦えば手が届く」距離まで引き寄せ、逆に安田学園は地獄のロードというべき逆側レペチャージラウンドへ真っ逆さま。僅かなディティールの違いが大きく結果に跳ね返った一番だった。

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織茂友多郎が金崎森治から崩上四方固「一本」、これで国士舘の勝利が確定

国士舘高〇三人残し△東海大高輪台高
(先)渡辺一将〇優勢[有効]△片桐一希(先)
(先)渡辺一将×引分×百井健二郎(次)
(次)酒井陸〇浮落(2:32)△神谷大智(中)
(次)酒井陸×引分×高石陽生(副)
(中)織茂友多郎〇崩上四方固(2:17)△金崎森治
(副)長島光希
(大)清水雅義

今年度から福岡政章新監督を迎えて競技力上昇中の東海大高輪台が粘るが、国士舘は着々加点。最後は織茂友多郎がもっとも厄介なエース金崎森治を崩上四方固「一本」に斬って落として決着。スコア三人残しで国士舘がベスト4進出を決めている。

日体荏原高〇三人残し△明大中野高
(先)森大将〇優勢[僅差]△室谷勇汰(先)
(先)森大将〇優勢[有効]△鎌田陽路(次)
(先)森大将〇袖釣込腰(0:40)△塚原康平(中)
(先)森大将〇優勢[有効]△岡崎大将(副)
(先)森大将△横車(0:53)〇間瀬太紀(大)
(次)塚本綾×引分×間瀬太紀(大)
(中)内藤彪雅
(副)村上朋也
(大)菅原孝希

日体荏原が明大中野高を一蹴。ここまで汗かき役を務めた小野里一将がベンチに下がり、先鋒に指名を受けた森大将が4連勝。1敗で次鋒のエース塚本綾が出動することとなったが、まずまず瑕疵なくベスト4進出を決めた。昨季大活躍を演じながらシーズン一貫して元気がない塚本はこの試合も引き分け、今後の出来が気になるところ。

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山本瑛介と戸髙竜之介による第6試合

足立学園高〇二人残し△八王子学園高
(先)武岡毅〇背負投(2:39)△櫻井怜央(先)
(先)武岡毅×引分×嘉部拓郎(次)
(次)川田武史△合技(1:50)〇山田征弥(中)
(中)山本瑛介〇合技(0:37)△山田征弥(中)
(中)山本瑛介〇優勢[僅差]△藤井海斗(副)
(中)山本瑛介×引分×戸髙竜之介(大)
(副)白石隼人
(大)吉井拓実

修徳-安田学園に続く準々決勝の注目対決は足立学園が快勝。八王子学園の大将に戸髙竜之介が置かれることを読み、万が一にも流れが相手方に振れないようにエース山本瑛介を前出しして中堅に配置。目論見通り山本の2勝1分けで試合を終わらせてしまった。

戸髙で勝負を掛けたい八王子学園は勝負どころ自体をそもそも作らせてもらえなかった。力に勝る相手に対し超オーソドックスオーダーを組んだこの姿勢で、勝負慣れした全国大会常連校を崩すのはさすがに無理があった。このオーダーは同格同士、この試合が今まで経験のない未知の領域に踏み込むという歴史的なハンデを負っての一番であることまでを考えれば自軍優位の力関係があって初めて機能すべきもの。両軍どちらも本気の勝負どころで格上を倒すにいかにすれば良いか、という具体的な上昇装置を企図せずに臨んだこの戦い方は少々思考停止の感が漂う。修徳に敗れた安田学園同様、正面から単に力比べを挑み、そして「見えていないものが見えない」まま試合を終えたという印象であった。あるいは以後の戦いの組み合わせを考え、敢えて無理な勝負を挑まずに終えたという観察すら可能であるが、であれば次に繋がる「負け方」を考えるべき。以後に希望が持ちにくい一番であった。

■ 第3、第4代表決定トーナメント1回戦
安田学園高、八王子学園高がともに勝利。しかし両校ともに失点し、八王子学園は一時ビハインドを負うなど決して万全の試合ではなかった。双方最後の勝負の場である第3、第4代表決定戦に向けて勢いをつけるというところまでには至らなかったという、少々閉塞感のある戦いぶり。

安田学園高〇一人残し△東海大高輪台高
(先)杉山寛恭〇優勢[有効]△林俊凱(先)
(先)杉山寛恭〇優勢[技有]△片桐一希(次)
(先)杉山寛恭△優勢[僅差]〇高石陽生(中)
(次)今田光星〇内股(2:04)△高石陽生(中)
(次)今田光星×引分×百井健二郎 (副)
(中)奥谷優佑△優勢[技有]〇金崎森治(大)
(副)近藤駿介×引分×金崎森治(大)
(大)金野晃大

八王子学園〇一人残し△明大中野高
(先)山田征弥×引分×室谷勇汰(先)
(次)嘉部拓郎△腕挫十字固(1:01)〇鎌田陽路(次)
(中)五十嵐輝×引分×鎌田陽路(次)
(副)藤井海斗〇上四方固(2:18)△岡崎大将(中)
((副)藤井海斗△優勢[僅差]〇間瀬太紀(副)
(大)戸髙竜之介〇合技(2:06)△間瀬太紀(副)
(大)戸髙竜之介〇反則(1:10)△嶌田空良(大)

■ 準決勝
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準決勝、修徳高の次鋒・宮崎雷也が三谷大から支釣込足「技有」獲得

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長島光希が宮崎を崩上四方固「一本」で止める

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修徳は副将中村力也が長島光希から袖釣込腰「一本」、試合をタイに戻す

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熱戦は国士舘大の副将織茂友多郎の上四方固「一本」でどうやら収束

国士舘高〇一人残し△修徳高
(先)三谷大〇優勢[僅差]△川本昂享(先)
(先)三谷大△合技[支釣込足・横四方固](2:02)〇宮崎雷也(次)
(次)渡辺将一△優勢[有効・支釣込足]〇宮崎雷也(次)
(中)長島光希〇上四方固(0:55)△宮崎雷也(次)
(中)長島光希〇支釣込足(0:13)△鈴木謙太朗(中)
(中)長島光希△袖釣込腰(1:34)〇中村力也(副)
(副)織茂友多郎〇上四方固(0:50)△中村力也(副)
(副)織茂友多郎×引分×仲島聖悟
(大)清水雅義

大熱戦。今季一貫して斬り込み隊長役を務める三谷大が僅差優勢で勝利して試合は国士舘ペースかと思われたが、修徳の次鋒・宮崎雷也が支釣込足を閃かせた瞬間から勝負の流れが一気に変わる。この技で三谷から「技有」を獲得した宮崎はそのままガッチリ抑え込んで合技の一本勝ち、どころか続く渡辺将一をも支釣込足「有効」で破って1人差のリードを作り出す。

国士舘はここで前週の個人戦から息を吹き返した主将の長島光希が畳に残った宮崎、そして続く中堅鈴木謙太朗を「一本」で破って逆転、今度は1人差のリードを作り出す。しかし「取るか取られるか」の長島の資質がこの場面で悪い方向に出てしまい、第6試合は修徳のポイントゲッター中村力也が間合いを十分測っての袖釣込腰一発、豪快な「一本」。

あるいは修徳勝利もあり得るのではと思われる乱戦だが、第7試合は国士舘の副将織茂友多郎が得意の寝技に中村を嵌めてしっかり一本勝ち。これで試合はどうやら見えた感あり、最終戦は織茂がリスクなく仲島聖悟を引き分けで止めて、この試合はスコア一人残しで国士舘がモノにすることになった。

国士舘はこの時点で全国大会代表権を獲得。2敗という凹みあれど、長島の取り味に織茂の仕事ぶりと長所もまた見えた一番であった。

一方の修徳は大健闘。3つの一本勝ちを以て国士舘の喉元に刃を突きつけ、敗れはしたがチームの雰囲気はむしろ上がり目。チャレンジステージである全国出場1度目のチャンスは逃したが、本命と狙う第3代表決定戦に万全の構えで臨むことに成功したと総括出来る、好一番であった。

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第1試合、足立学園高の武岡毅が日体荏原高・内藤彪我から隅落「技有」

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武岡は内巻込「有効」も追加

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菅原孝希が武岡を激しく攻める

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副将同士のエース対決、山本瑛介が塚本綾から小外掛「一本」

足立学園高〇二人残し△日体荏原高
(先)武岡毅〇優勢[技有・隅落]△内藤彪我(先)
(先)武岡毅△優勢[僅差]〇菅原孝希(次)
(次)上領教史郎×引分×菅原孝希(次)
(中)白石隼人×引分×村上朋也(中)
(副)山本瑛介〇小外掛(1:03)△塚本綾(副)
(副)山本瑛介〇合技[大内刈・横四方固](2:30)△森大将(大)
(大)吉井拓実

足立学園は前衛2枚に60kg級の選手を入れる、非常にこのチームらしい布陣。エースの山本瑛介に関しては抜き試合のセオリーである大将配置を回避、決着を一段早めるべく、そして日体荏原勝利の筋書きである「塚本綾が暴れまくる」シナリオに早い段階で蓋をしてしまうべく副将に前出しするという陣形で構えた。一方の日体荏原はしかし、塚本に差分を作り出す前衛の抜き役ではなく勝負役とまとめ役を担わせるべく副将に配置。

いずれ日体荏原としては山本に対して1人でも多く人数を手当すべく前半のリードが必須の試合であるが、ここで足立学園の先鋒武岡毅が大仕事。手足が長くどこから技が飛んでくるかわからない相四つ長身の曲者・内藤彪我の釣り手を徹底管理、内藤がならばと過程を飛ばして払巻込に手を流そうとした瞬間一段早く体ごとのアクションを起こして決定的な隅落「技有」獲得。さらに残り40秒では右一本背負投を抱かせておいての内巻込「有効」も追加、まさしく快勝でチームに貴重な先制点をもたらす。武岡は続く菅原孝希に僅差の優勢で敗れたが、次鋒上領教史郎が菅原を引き分けで止めて試合は拮抗。分水嶺となる中堅同士、白石隼人と村上朋也の対戦は引き分けに終わり、タイスコアのまま勝負は副将同士のエース対決に持ち込まれる。

この試合は山本が右、塚本が左組みのケンカ四つ。体格はもちろん山本が上だが前代に全国の大舞台で名だたる巨漢たちに大立ち回りを演じた塚本であれば体格差を跳ね返す可能性も十分あり。塚本は今季ここまで後ろ重心で止めに来る相手に持ち味を殺されることが続いているが「どちらも取らねばならない」この関係があれば得意の担ぎ技が決まるバックグランドは十分揃っているともいえる。

しかし山本は自信満々、「指導1」を得た直後の2分3秒抱き着きながらの右小外掛に打って出ると完全に体を拘束された塚本両足を天に向ける勢いで吹っ飛び文句なしの「一本」。

ここでどうやら勝負あり。最終戦は山本が一本勝ちを果たしてこの試合は終了、準決勝第2試合はスコア二人残しで足立学園の手に落ちることとなった。足立学園はこの時点で全国大会進出を確定、日体荏原は第3、4代表決定戦に回ることとなった。

■ 第3、第4代表決定戦
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修徳高の次鋒・仲島聖悟が櫻井怜央から素晴らしい切れ味の内股透「一本」

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最終戦は戸髙竜之介に中村力也がマッチアップ

修徳高〇一人残し△八王子学園高
(先)川本昂享△優勢[有効・払巻込]〇櫻井怜央(先)
(次)仲島聖悟〇内股透(0:28)△櫻井怜央(先)
(次)仲島聖悟〇背負投(0:41)△山田征弥(次)
(次)仲島聖悟×引分×嘉部拓郎(中)
(中)鈴木謙太朗×引分×藤井海斗(副)
(副)中村力也×引分×戸髙竜之介(大)
(大)宮崎雷也

修徳、会心の試合。先鋒戦は「指導3」まで奪って勝利目前の川本昂享が櫻井怜央に残り36秒で払巻込「有効」を失い逆転負けという苦しい出だしだったが、続く第2試合では仲島聖悟が鮮やかすぎる内股透「一本」で畳に残った櫻井を「秒殺」。居合抜きとでも言うべき技の鮮やかさでスコアだけでなく畳上の雰囲気までも完全にリカバーさせ、続く第3試合も僅か41秒の背負投「一本」で山田征弥を畳に沈める。競技力的な力関係、そして実際のスコア以上にこの2発で試合は大差がついた感あり。仲島が次戦を引き分け、中堅鈴木謙太朗が八王子学園の2番手戦力である藤井海斗と引き分けたところで実質試合は終了したと言える。最終戦は前週の無差別個人準決勝でギリギリまで戸髙を追い込んだ実績のある中村力也が担ぎ技を連発、中盤に「指導1」を得る盤石の試合ぶりで相手にほとんどチャンスを与えないまま引き分け。結果修徳高が一人残しでこの大一番に快勝、見事東京都代表の座を掴むこととなった。

55kg級の選手ながらこの日の仲島の好調を見極めて抜き役として前衛に投入、戸髙に対してはサイズと担ぎ技があって相性的にも力的にも計算の立つ中村を副将に配して手当て、万一抜かれた場合もこの中村で戸髙の体力を削りに削って、宮崎の機動力で「指導」を奪おうという三段構えの、しかも極めて現実的な布陣。作戦ピタリとはまった快勝劇だった。

この日の大会ベストチームは間違いなく修徳。新シーズンスタート時点での戦力は東京都の5番手か6番手評価が妥当なものであったと思われるが、「4枠」のモチベーションをテコにチーム一丸となって徹底強化。招待試合シーズンも成績こそ残らなかったがどうやらチームはしっかり成長、久々「冬に伸びる修徳」の面目躍如の年になったのではないだろうか。率直に言っていまだ戦力は脆弱であるが、いかにして勝負を得るか、どのようなルートで全国大会に登攀するか、その意思統一ぶりと実践力の高さは見事の一言。現状チームが出せるものを全て出し尽くした、そして「どう出させるか」を知悉したゆえの全国大会出場権獲得であった。チームワークと育成力で一段も二段もパフォーマンスを上げる、かつて出世期に見せていた本来の修徳らしい戦いぶりであったと総括したい。

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第2試合、日体荏原高の先鋒菅原孝希が安田学園高・杉山寛恭から大内返「有効」

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内藤彪我が金野晃大から小外刈「一本」

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内藤は安田学園のポイントゲッター近藤駿介から小外刈「有効」、2人抜きを果たす

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中堅村上朋也の合技「一本」で試合終了、日体荏原が全国大会の切符を確保

日体荏原高〇三人残し△安田学園高
(先)菅原孝希〇優勢[僅差]△中田航成(先)
(先)菅原孝希〇優勢[有効・大内返]△杉山寛恭(次)
(先)菅原孝希△優勢[僅差]〇金野晃大(中)
(次)内藤彪我〇小外刈(1:41)△金野晃大(中)
(次)内藤彪我〇優勢[有効・小外刈]△近藤駿介(副)
(次)内藤彪我△大外刈(2:53)〇今田光星(大)
(中)村上朋也〇合技[内股・後袈裟固](2:45)△今田光星(大)
(副)塚本綾
(大)森大将

第2試合は意外なまでの大差となった。日体荏原はこの日ここまでの戦いで、投げよりも局面局面に体の力を染みさせていくタイプの菅原孝希が現在の東京都の選手トレンドの中で「効く」という手ごたえを得たかこの選手を過たず先鋒に投入。これが非常に効いた。

安田学園は前戦で取り置いた中田航成を先鋒に投入する覚悟ある布陣だったが、長所である体の強さで菅原に競り負けてしまい35秒、1分9秒と「極端な防御姿勢」で2つの「指導」を失陥。中田猛攻もその技はクロス組み手の一発に限られ次第に減速。2分41秒には双方に「取り組まない」反則が宣告されるという組み手圧力志向の消耗戦はそれ自体が完全に菅原のフィールド、中田が持ち前の技一発を出せないままこの試合は僅差の優勢で日体荏原の手に落ちる。

こうなればシナリオは完全に日体荏原。中田という「蓋」をクリアした菅原は続く杉山寛恭を僅差の優勢で抜き、息が切れた第3試合は金野晃大の足技攻撃に「指導」2つを失って屈したものの、第4試合は続いて畳に上がった飛び道具・内藤彪我の不思議な間合いの柔道が正統派の金野に噛み合い、二段の小外刈見事に決まって「一本」。内藤は続く安田学園のポイントゲッター近藤駿介にも自分のペースで柔道を展開、どうしても取らねばならない近藤の焦りに乗じて前技フェイントを効かせた右小外刈で決定的な「有効」を奪って2人抜きを果たす。

この時点で日体荏原のリードは実に「3」。第6試合は内藤が試合終了直前に息切れ、今田光星が相手の頭を抱えた大外刈「一本」で勝利して安田学園が一人を抜き返すが、第7試合は村上朋也が残り30秒で消耗した今田から内股「技有」、そのまま場外で後袈裟固に抑え込んで合技の一本勝ち。

戦前は第4代表の有力候補であった安田学園ベンチはさすがに色なし。この試合はスコア3人残しという大差で日体荏原が制することとなった。日体荏原、しっかり全国大会の代表権を確保。

■ 決勝
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決勝が開始される

国士舘高 - 足立学園高
(先)三谷大 - 武岡毅(先)
(次)長島光希 - 上領教史郎(次)
(中)酒井陸 - 白石隼人(中)
(副)織茂友多郎 - 吉井拓実(副)
(大)清水雅義 - 山本瑛介(大)

勝敗を読み解く盤面解錠のカギは、やはり足立学園の大将・山本瑛介の存在。山本がフレッシュな状態で畳に上がれば今代の国士舘メンバーでこれに勝利し得ることは難しいはずで、足立学園としては最低でもタイスコアで試合を進めて山本1枚で勝負を決める状況を作ることがなにより肝要。一方の国士舘は投げることが出来ずともこの日既に相当量の試合をこなしている山本を疲弊させて、「指導」差で畳から弾き出してしまいたいというのが現実的に手が届くほぼ唯一のプラン。幸いというべきか、国士舘が後衛に置く織茂友多郎と清水雅義はいずれも大型相手に我慢が出来、かつ連続攻撃の効くファイタータイプ。まずは前でたとえ「1差」であってもリードを得て、この2人を続けて山本にぶつけることが肝要だ。キーマンは若潮杯の同じ顔合わせで一本勝ちを果たしている三谷大と、しぶとい相手にも組み手をリセットしての支釣込足一発で取って来る可能性のある長島光希の2人。

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先鋒戦、足立学園高・武岡毅が国士舘高・三谷大から小外掛「有効」

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第2試合、長島光希が奥襟を叩いてきた武岡を支釣込足で捩じり落とす

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上領教史郎が長島相手に健闘、引き分けをもぎ取る

先鋒戦はしかし、前回対戦で敗れている武岡毅が意地を見せる。まず「取り組まない」咎による「指導」1つをリードすると先んじて前回屈した寝技に持ち込み、腹固の形で腕を抱えてめくり返しを試みる積極的な先制攻撃を為す。自身のフィールドに土足で踏み込まれた格好の三谷は怒気を発して得意の三角絞から崩上四方固、「抑え込み」の宣告を得るが武岡逃れて「解けた」。

ここから武岡が加速、右小内刈を深く差し込んで自身のスピード優位を確認すると、2分を過ぎたところで右大外刈から素早く左小外掛に乗り込む大技。二段加速した形の素早い攻撃に三谷たまらず仰け反りこれは「有効」。

奮起した三谷得意の右体落で武岡を転がしあわやポイントという場面も作り出すが、武岡は続いて三谷が起こした大外刈のモーションにいち早く反応、相手が片足になった瞬間先んじて大外刈に飛び込むなどスピード優位を存分に生かした、そして危険な組み立てで攻め続ける。結局この試合はこのまま終了となり武岡の「有効」優勢による勝利が決まった。以降の盤面を考えると、そのままこの「1差」が試合を決めることになりかねない、まことに大きな先制点。

しかし、不安定感を併せ持ちながらともあれチームで最も取り味のある長島光希を次鋒に配していたことが国士舘に幸いした。体格差を生かすことが巧みな長島は開始早々に抱きかかえるように支釣込足、武岡が尻餅で着地するとそのまま横四方固に抑え込んで36秒電車道の「一本」獲得、試合はタイスコアに戻る。

第3試合は60kg級の上領教史郎が健闘。開始するなり長島が支釣込足で大きく振って来るが、上領心得て耐え、以後は絞り、担ぎを仕掛けてと丁寧に試合を展開。互いが相手の技の起こりに自身の技を合わせる打ち合いが続き、上領の目論見通り試合はエキサイティングなまま、しかし明らかに停滞。典型的な動的膠着が続いたこの試合は引き分けに終わった。

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酒井陸が白石隼人に圧力

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織茂友多郎と吉井拓実による第5試合

第4試合は分水嶺になり得る中堅同士の対決、国士舘高・酒井陸、足立学園高・白石隼人ともに右組みの相四つ。体格に大きく勝る酒井が支釣込足に小内刈で先制攻撃、白石しっかり釣り手を絞って試合を組み立てるが十分持った場面でもなぜか具体的攻撃が出ず、ほとんど攻められないまま1分12秒双方に「指導」が与えられることとなる。酒井は奥襟を叩いては右払腰の大鉈を振るうが両手を離して空回りしてしまう中学時代からの悪い癖がここで立て続けに顔を出し、2分10秒偽装攻撃の「指導2」失陥。疲れの見える酒井は横腹を見せる巨艦という体、もはや陥落の可能性十分に見えたが白石は片手技に終始し、間合いを取ったまま思い切った奥襟確保も取り味のある攻撃もことごとく躊躇。足立学園サイドからは再三「なぜ行かない?」「なぜビビる?」と叱咤の声が上がるが白石は最後までアクセルを踏まず、残り3秒に掛け潰れて「指導2」を失い試合終了。この試合は結局引き分けに終わった。

足立学園の我慢のしどころと目された第5試合は国士舘・織茂友多郎と足立学園・吉井拓実ともに右組みの相四つ。織茂は片襟の体落に釣り手を効かせての小内刈、さらに片襟の右背負投と取り味のある技を連発。しかし吉井は勝負どころと覚悟したか展開を譲らず、釣り手を持つなり思い切った右大外刈に飛び込む。明確に投げることを企図したこの技をきっかけに攻防は加速、織茂が片襟の右大外刈を仕掛けて吉井がこれを返しかかるなどいつポイントが生まれてもおかしくない情勢となる。ここで吉井の前進掌握行動が実を結び、織茂思わず両手で相手の釣り手を切り離す痛恨のミス。これ以前に相似の行動があったこともありこれは即座に「指導」。以降攻防は少々停滞、残り1分を過ぎてから織茂が再び片襟の大外刈と背負投のコンビネーションで激しく攻めて吉井にも「指導」ひとつが宣告されるが、以降ポイントの積み上げはなし。この試合は吉井がミッションを果たす形で引き分けに終わった。

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大将対決、山本瑛介がケンケンの大内刈で清水雅義を攻め込む

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山本の大外刈に清水が谷落で食いつく

というわけでタイスコアのまま試合は大将戦に突入。国士舘・清水雅義、足立学園・山本瑛介ともに右組みの相四つ。事前予測として想起されるのは体格に勝る山本が圧力をテコに一発技で攻め続けて、一方清水が担ぎ技の連続攻撃に活路を見出すという構図だが、序盤は双方が横変形に構えて極めて慎重。主審早い判断で28秒双方に「指導」。

山本得意の支釣込足で大きく崩し、続いて清水の左一本背負投を潰すと右大内刈から右大外刈で投げに掛かる。明らかに具体的に投げに行った一発だが清水が抱き着いて谷落を試みると、山本振り向いて距離を出し清水が畳に落ちて「待て」。足立学園・徳原勉監督からは「返されるか取るかハッキリしろ!『指導』は要らん!」と激しい激が飛ぶ。

直後山本の支釣込足に清水が崩れ、1分55秒清水に2つ目の「指導」。しかしここから清水は左一本背負投を連発、山本はこれを潰し、返し、自身も右一本背負投を仕掛けと付き合ううちに徐々に消耗。最終盤は明らかに疲労して持ち前の胸をつけての一発を放つ馬力をもはや失い、一方清水も燃料を消費し尽くしたという印象でポイントの予感漂わないままこの試合は引き分け。全戦終了してスコアに差はつかず、優勝の行方は代表者1名による決定戦に委ねられることとなった。

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代表戦、山本が織茂の小内刈を返して「有効」

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山本は大外返で「有効」を追加

国士舘は1試合休ませた織茂を選択、足立学園はもちろん山本を畳に残して代表戦がスタート。

両者右組みの相四つ。織茂片襟の右大外刈で先制攻撃を為すが山本は両襟で引き寄せておいての大内刈、さらに右大外刈に思い切り乗り込んで上から目線で投げに掛かり、場内は大熱狂。山本、50秒過ぎには意を決してケンケンの右大内刈で激しく追いかけ一気に勝負を決めに掛かる。これは下がりに下がった織茂が最後は後ろ回り捌きの前技を仕掛けた体で巧みに吸収して攻防を終えるが、この山本の思い切りが続く展開に効く。状況不利を感じた織茂が一本背負投の形に腕を抱えた右小内刈、少々無理して取りに行ったこの技を山本抱えて返しついに谷落「有効」を獲得。このまま寝勝負を展開した両者を主審が「待て」で止めた時点で経過時間は1分25秒、残り時間は2分35秒。

もはや行くしかない織茂は片襟の大外刈に背負投、さらに背負投で大きく振って相手の裏に進出する崩し技を駆使して得意の寝勝負に持ち込まんと奮闘。2分12秒には山本に「指導」ひとつが宣告される。

しかしリードを得た山本はこれまでと異なり相手が良く見えている模様。残り50秒、織茂がノーステップの右大外刈を引っ掛けるとこれを待ち構えて抱き返しまさしく勝負の行方を決定づける「有効」を追加。

直後スクランブルに出た織茂に片襟の「指導」、最終盤スタミナの切れた山本に偽装攻撃の「指導」が宣告されたが大勢は動かずタイムアップ。この試合は山本が「有効」優勢で勝利し、同時に足立学園が初の東京都大会団体制覇を成し遂げた。

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優勝決定の瞬間を迎える足立学園高

足立学園高〇代表戦△国士舘高
(先)武岡毅〇優勢[技有・小外掛]△三谷大(先)
(先)武岡毅△横四方固(0:36)〇長島光希(次)
(次)上領教史郎×引分×長島光希(次)
(中)白石隼人×引分×酒井陸(中)
(副)吉井拓実×引分×織茂友多郎(副)
(大)山本瑛介×引分×清水雅義(大)
(代)山本瑛介〇優勢[有効・谷落]△織茂友多郎(代)

足立学園がほぼ目論見通りに山本1枚の力をしっかり生かした試合。前半で粘り、山本の勝利がそのままチームの結果に反映する状況を作り出した時点でプランは八分通り完成していた。60kg級の選手が2人レギュラーに入るという軽量チームでありながらの激戦区東京制覇はまさしく賞賛に値する。

国士舘は力負け。小粒なチームを鍛えて全体の平均値は上がったが、抜き試合レギュレーションの特徴であるエース1枚の保有がある強豪を殺し切るところまでは錬磨が至らなかったということになる。

さて、これでほぼ行方が見えかけていた高校選手権のシード権争いは混沌。招待試合シリーズで成績を残した国士舘が後退、一方成績を残し切れなかった足立学園が本戦と同じレギュレーションで行われる都大会で国士舘を破って優勝という評価要素がクロスする難しい事態となってしまった。これを主催者がどうシードに反映するかは非常に興味深い。

力的にはベスト8シードが妥当だが招待試合シリーズで成績を挙げ、この都大会を取れば四つ角シードもあり得た国士舘。一方シリーズの不調でシード権奪取の可能性がなくなり掛けていたがここで国士舘の上に出、自軍がレギュレーションに噛み合うことをしっかり示した足立学園。おそらくこの日を以て両者がともに8シードの線上に挙がり、来週末の近畿大会団体戦の結果と内容次第で「四つ角」の有無が決定するというところでないだろうか。

いずれ、力的には今季の東京勢の上位進出は非常に厳しいところ。開催地の意地を見せるべく足立学園と国士舘、そして日体荏原と修徳の4校がこれからどこまで力を上積んでくるか、大いに期待したい。

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優勝の足立学園高

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準優勝の国士舘高

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第3位の日体荏原高

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第3位の修徳高

【入賞校】
(エントリー52チーム)

優 勝:足立学園高
準優勝:国士舘高
第三位:日体荏原高、修徳高

足立学園高・徳原勉監督のコメント
「東京はしぶといチームが多くて大変、たまたま勝っただけです(笑)。メンバーに2人60kg級の選手がいて、勝負になるかどうかはこの2人の頑張り次第。山本が出るまでチームが我慢出来れば行けるかなと思っていました。ただ2人とも大きい選手ともしっかり稽古を積んでいるので投げられる不安はなく、心配は『指導』だけでしたね。山本は先週の個人戦で負けたのがいい方向に働いて今日はしっかり仕事をしてくれたと思います。(-年末年始にかなり厳しい合宿を組んだと聞きましたが?)1月5日まで、元旦も休みなしで14日間の合宿を張りました。その甲斐があったなと思います。ただ、これから1度ゆっくり休ませてあげないとですね(笑)。今年のチームは小さいですが、山本を中心に皆がまとまっているのが良いところ。若潮杯で指を脱臼してしまった白石の状態が戻ればもう一段上の戦いが出来ると思っています。(-本番の目標は?) モノが小さいですから、ベスト8、いや、4に入れれば良いかなと思います(笑)。」


【準々決勝】

国士舘高〇三人残し△東海大高輪台高
修徳高〇一人残し△安田学園高
日体荏原高〇三人残し△明大中野高
足立学園高〇二人残し△八王子学園高

【第3・4代表決定トーナメント1回戦】

八王子学園高〇一人残し△明大中野高
安田学園高〇一人残し△東海大高輪台高

【準決勝】

国士舘高〇一人残し△修徳高
足立学園高〇二人残し△日体荏原高

【第3・4代表決定戦】

修徳高〇一人残し△八王子学園高
日体荏原高〇三人残し△安田学園高

【決勝】

足立学園高〇代表戦△国士舘高



文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版1月30日掲載記事より転載・編集しています。

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