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【ROAD TO 高校選手権】猛追東海大相模を桐蔭学園が突き放す・第39回全国高等学校柔道選手権神奈川県予選男子団体レポート

(2017年1月24日)

※ eJudoメルマガ版1月24日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】猛追東海大相模を桐蔭学園が突き放す
第39回全国高等学校柔道選手権神奈川県予選男子団体レポート
この日こそが第39回全国高等学校柔道選手権予選の最大の山場。全国優勝の筆頭と目されるタレント集団・桐蔭学園高と、若潮杯を制覇して激しく追撃する古豪・東海大相模高の両雄が21日、神奈川県立武道館で行われた県予選でついに激突した。

「勝った方が全国優勝」とまで評される両雄の今期これまでの経緯はプレビュー記事で書かせて頂いた通り。10月の朱雀杯決勝では桐蔭学園が4-1の大差で勝利したが、この惨敗に奮起した東海大相模が全軍一丸となった徹底強化を図り急成長、12月初旬に行われた黒潮杯武道大会準決勝の再戦では代表戦にもつれ込む大接戦を演じ一気にシーンの真ん中まで戻って来た。

以後桐蔭学園は松尾三郎杯(23日)と水田杯(26日)でいずれも全国大会で最大のライバルと目される広島・崇徳高を破って優勝(※両大会とも東海大相模は不参加)。ほぼ桐蔭学園の優位固まったかに思われたが、東海大相模は若潮杯(27日・桐蔭学園は不参加)決勝でその崇徳を4-0という衝撃的な大差で破って優勝、激しく桐蔭学園にプレッシャーを掛ける。

そして年が明けた先週末、14日に行われた神奈川県個人予選では桐蔭学園が4階級を制する圧勝。一方の東海大相模は優勝者を1人も輩出出来ず、直接対決ではギリギリまで接戦を演じるも最後は桐蔭学園が投げて勝利するという場面が目立った。若潮杯で見せた東海大相模の勢いがやや減速し、桐蔭学園としては事故なく実力を発揮すればほぼ勝利が見えた感あり、一方の東海大相模は大事な場面で敢えて試合を壊しに行くような逆転要素が必要ということが判明した1日であった。

そして迎えるこの日は「神奈川県予選だけは別もの」とそれぞれの監督が口を揃える大一番。両軍はそれぞれもちろん山が分けられ、対戦予定は決勝である。

■ 1回戦~準々決勝
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3回戦、桐蔭学園高・湯本祥真が法政二高の高橋幸喜から内股で二つ目の「技有」

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準々決勝、東海大相模の先鋒山科良悟が日大藤沢高の中堅・藤村瑞輝から体落「一本」

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山科5人目で敗れるも東海大相模は次鋒石川智啓が小外掛「一本」で熊坂昇磨を倒して事態を収拾。

桐蔭学園は2回戦で相模田名高を五人残しで破り、3回戦(ベスト16)は先鋒の湯本祥真が法政二高の5人を1人で賄い四人残しの圧勝。準々決勝は武相高を相手にまたもや先鋒に送り込まれた湯本祥真が3人を賄い、続く千野根有我が2人を抜いてこれも四人残しの圧勝。余裕を持ってベスト4進出を決定した。

一方の東海大相模高は2回戦で茅ヶ崎高を五人残しで破って大会を滑り出す。続く3回戦(ベスト16)も新羽高を相手に抜き役の一である平下麟太郎が出動して五人を抜く圧勝。

大会の組み合わせは東海大相模のほうが厳しく、ここからは日大藤沢高、そして相洋高と手ごたえのある相手が続く。迎えた準々決勝の日大藤沢戦は先鋒に山科良悟が出動、サイズの差を技の切れ味とカンの良さでカバーし、「秒殺」とはいかないまでも順当に勝ちを重ねてまず4人を抜く。しかし5試合目が始まるなり日大藤沢高の大将・熊坂昇磨の突進を受けて背中に食いつかれ、ここからの展開で下から袖車絞を食らって「参った」。思わぬところで1点を失ってしまう。山科は体格のある相手にも強気に組むこと自体で流れを掴む長所を見せる一方、疲労すると突如中途半端な捨身技で流れを切る悪癖も消えず。若潮杯でチームと自身の上昇要因となった体力面にもやや不安をのぞかせた感あり。

しかしこの試合は続いて畳に上がった次鋒石川智啓があっという間の小外掛「一本」で収拾。東海大相模が凹凸をしっかり塗りつぶして準決勝進出を決めた。

■ 準決勝
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準決勝、桐蔭学園高の先鋒佐藤虎太郎が慶應義塾高の次鋒山内由大から大内刈「一本」

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佐藤は続く永沼伴得も小外刈「一本」、3試合連続の「秒殺」を決める

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次鋒賀持喜道が古澤翼を支釣込足「一本」に仕留めて勝負あり。桐蔭学園は無敗、全ての試合を2人目までで賄って決勝進出決定。

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東海大相模の先鋒松谷竜馬が相洋高・相田勇司から内股「技有」

桐蔭学園高〇四人残し△慶應義塾高
(先)佐藤虎太郎〇体落△小野佑眞(先)
(先)佐藤虎太郎〇大内刈△山内由大(次)
(先)佐藤虎太郎〇小外刈△永沼伴得(中)
(先)佐藤虎太郎×引分×大野啓輔(副)
(次)賀持喜道〇支釣込足△古澤翼(大)
(中)関根聖隆
(副)湯本祥真
(大)村尾三四郎

桐蔭学園はこの試合も快勝。73kg級の個人代表権を獲得している先鋒佐藤虎太郎がまことに躍動感ある柔道を披露し、3人連続の「秒殺」一本勝ちであっという間に相手の副将までを畳に引きずり出す。ケンカ四つとなった4戦目は片手柔道が増えて引き分けに終わったが、続く第5試合では次鋒賀持喜道が慶應義塾高のエース古澤翼を前技フェイントの支釣込足一発、あっという間の「一本」に仕留めて勝負あり。ここまで無敗、選手の損耗も少なく万全の状態で決勝を迎える。

東海大相模高〇二人残し△相洋高
(先)松谷竜馬〇優勢[技有]△相田勇司(先)
(先)松谷竜馬×引分×荒井竜河(次)
(次)宮原峻汰×引分×谷竜太(中)
(中)笹谷健〇優勢[有効]△吉田陽翔(副)
(中)笹谷健×引分×浪花優輝(大)
(副)平下麟太郎
(大)石川智啓

相洋のラインナップのうち厄介なのは66kg級全国代表の先鋒相田勇司だが、松谷竜馬は動き鋭い相田のペースに嵌らず、最後は作用足を突っ込み二段の内股、体格差を生かしてしっかり「技有」獲得。これで東海大相模が先制に成功。

相洋の前に張られた「蓋」を取り去ったことでこのまま東海大相模が一気に走ってもおかしくないところだったが、相洋高はここで粘ることこそ自軍のプライドとばかりに畳にしがみつき続ける。松谷は続く荒井竜河に引き分け、さらに中堅に座った巨漢宮原峻汰も谷竜太を相手に引き分けてしまい、副将のエース笹谷健の出動を仰ぐこととなる。

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東海大相模は中堅笹谷健が出動、相洋の副将吉田陽翔から大外返「有効」

笹谷は粘る吉田陽翔を大外返に捕まえ「有効」を得るが以後は安全運転で試合を進めてポイントの積み上げないまま優勢勝ち。最終戦は浪花優輝から「指導1」を奪ったもののこの試合も引き分けてフィニッシュ、最終スコア二人残しで勝負を決めた。

失点こそなかったが決勝直前に笹谷が2戦フルタイムを戦い、前戦では山科が5試合戦って4勝も最後は「参った」で1敗。地力の高さ明らかも勢いをつけるところまでは至らなかったという印象。

しかし冒頭語った通り、長年の因縁ある決勝カードはまったくの別もの。他を寄せ付けずに勝ち上がった両校による、業界最注目の最終試合がいよいよ開始されることとなる。

■ 決勝
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抜群の出来で決勝まで勝ち上がって来た桐蔭学園、決勝では村尾三四郎を先鋒に投入

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東海大相模は大将にエース笹谷健を置く盤石の布陣

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決勝が開始される

開示されたオーダー順は下記。

桐蔭学園高 - 東海大相模高
(先)村尾三四郎 - 石川智啓(先)
(次)千野根有我 - 平下麟太郎(次)
(中)湯本祥真 - 山科良悟(中)
(副)賀持喜道 - 宮原崚汰(副)
(大)関根聖隆 - 笹谷健(大)

ともに大将にエースを置く抜き試合レギュレーション王道の布陣。これを土台に桐蔭学園は副将に賀持喜道を置いて得点ブロックを形成、先鋒に「先制役」を担うべく村尾三四郎を派遣した。一方の東海大相模は笹谷の前衛に「止める」札の重石として巨漢宮原崚汰を投入、先鋒に石川智啓、次鋒に平下麟太郎を並べて置くことで前衛に「2枚で1人差リード創出」を目指す得点ブロックを置いた。

総合戦力に勝る桐蔭学園としては村尾で先制、リードを保ったまま試合を進めて出来得れば副将賀持喜道までで試合を終わらせてしまいたい。大将・関根聖隆がここまで笹谷に全勝であることを考えればたとえシナリオが狂っても大将対決で勝負をつければ良いが、自軍優位の前評判の中追われる立場で迎える「1試合ですべてが決まる」ギャンブル要素が跳ね上がる舞台創出は可能な限り避けたいところ。先週の個人戦で関根が笹谷に粘りに粘られて「指導」差の優勢勝ちにその内容を抑えられていることも考えれば、笹谷に1試合させて消耗を強いてから関根を送りだすところまでが合格ラインと言える。

一方の東海大相模側から見た現実的な勝利ラインはまさしく「個人の対決にチームの勝敗が掛かる」場のプロデュースという一点に掛かる。村尾を最前衛に突っ込んだ桐蔭学園が、もしここでリードを奪えずばその危機感は跳ね上がり、以後の動きも硬くなろうというもの。村尾を消費させること、「先鋒村尾」の意図を空回りさせたうえで得点役の平下を送り込むことが何より肝要。出来得れば1人差のリードを得て、副将の巨漢宮原で関根を疲れるだけ疲れさせた上でエース笹谷を送り込みたい。

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石川智啓は村尾三四郎と組み合う時間を最小限に、クロス組み手の一方的な技で体格差を生かしに掛かる

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石川が釣り手をクロスに入れた大外刈

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組み合えば村尾のペース、足技を連発して中盤は完全に試合を支配

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というわけでいきなり最重要マッチ、先鋒対決は桐蔭学園・村尾三四郎と東海大相模・石川智啓ともに左組みの相四つ。石川はサイズがあって体の力強く、しかも村尾にとっては相四つという体格差出やすく組み手の巧拙が表現しにくい関係。石川は村尾の技術を出させぬうちに試合の趨勢を決めようと肩越しクロスに釣り手を入れての支釣込足で攻める。しかし村尾まったく揺るがず、弾き返して崩すと迷わず横三角。黒潮旗大会では大成高・藤鷹裕大から、そして前週の個人戦では東海大相模のレギュラー松谷竜馬から「参った」を引き出した村尾の代名詞的な決め技に場内大いに沸くが、これは石川耐えきり「待て」。

双方相四つ横変形で平行に近い形で対峙。石川またもや釣り手をクロスに入れて体格差を生かす手、間髪入れず大外巻込を入れるが村尾は相手を裏に抜けさせたまま立って耐えきり「待て」。組み合えば体格差を苦にしない村尾、しかし大きい側の石川が組み手の手順をスキップ、実は組み合わぬまま「組んでいる」形を作るという体でこれを封殺するという展開。

直後村尾手立てを変えて組み付きながらの左内股、これをきっかけに組み手を完全に支配すると、相手に持たせず自分が奥襟と袖を持つ一方的な組み手を完成させる。村尾のフィールドで戦うことを嫌った石川圧を受けて畳に屈し、1分47秒石川に偽装攻撃による「指導」。これでペースを取り戻した村尾続く展開でもいち早く奥襟を得、足を飛ばし続けて投げの間合いを測り続ける。いつ本気の投げが飛んでくるかわからない「作り」を張りっぱなしの村尾のプレッシャーに耐えきれなくなった石川が思わず「首抜き」、直後小内刈を連発して反則不成立を狙うが主審冷静に試合を止めて石川に2つ目の「指導」。これでついに試合決着ラインまで反則ポイントが積みあがる。村尾残り40秒までは積極的に投げの形を作りに行くが、石川が最後の抵抗とばかりにクロスの大外巻込など体を生かした大技を振るい始めると無理はせず、そのままタイムアップ。この試合は村尾の「指導2」による僅差優勢に収着した。

桐蔭学園が目論見通りにまことに貴重な1点先制。しかし今季ここまで村尾の豪快な投げが決まることでペースを掴んで来た桐蔭学園の勢いを東海大相模が減速させたという側面もあり、シナリオを完全に引き寄せたとまでは言い難し。以後の展開予断ゆるさぬ状況。

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平下麟太郎と村尾による第2試合

桐蔭学園ベンチからはおそらく選手間の共通理解事項である「2人目の戦いかたよ!」という声が掛かり、第2試合がスタート。畳に残った村尾三四郎、平下麟太郎ともに左組みの相四つ。平下勢いよく突進、釣り手で奥襟を叩くと村尾は頭を下げられ苦しい形。村尾なんとか顔を上げるが平下は内股で積極攻撃、村尾ならばと平下を立たせず横三角に食いつくが取り切れず「待て」。経過時間は58秒。

平下またもや勢い良く奥襟を叩き内股、大内刈、さらに内股からの巻き込みと取り味十分の大技を連発。内股巻込を受けた村尾再び横三角で展開にブレーキを掛けるが、「待て」となったところで主審に立ち勝負の展開にさかのぼって村尾に1つ目の「指導」。平下ここぞと突進、引き手で村尾の袖を織り込み、奥襟を叩いて露骨に圧力。一方的に持たれた村尾が体を屈したまま耐える形が続くが、主審は平下のブロッキングあるいは村尾の防御姿勢いずれも取らずにウォッチ。ここでは得点動かず、村尾は取り味のある大外刈を一発見せて息を吹き返してこのまま試合終了。第2試合は引き分けに終わり、桐蔭学園の1人差リードは継続。

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千野根有我が巨体に似合わぬ鋭い動き、ノーステップの大外刈を次々撃ちこむ

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1分17秒の大外刈。投げ切れなかったがこの直後山科に「指導」。

第3試合は身長185cm、体重135kgの巨人千野根有我と81kg級の強者山科良悟がマッチアップ。山科は今大会度々見せている巴投で先制攻撃も千野根揺るがず、どころか千野根は組み合うなりノーステップで刈り足を引っ掛ける大外刈、引っ掛けるなり軸足で相手の裏まで飛んで思い切り山科を投げに掛かる。スロースターターである千野根が「いきなり殺しに来た」この技は意外の感あり、侵入を許した山科慌てて後ろに回避して肢を外し、転がり伏せて「待て」。

千野根は余程気持ちを作って来たのか、その集中力と思い切りは凄まじい。続いてノーステップの右大外刈で裏に乗り込まんとする大技を2連発、さらに支釣込足を挟んで三の矢の右大外刈。山科振り回されながらもさすがのバランスの良さを見せ、3発目には千野根が軸足で前に出る瞬間を狙ってなんと前に向かって振り返す強気。ここで「待て」、経過時間は55秒。

体のある千野根の突貫行動に山科さすがに警戒、先に相手の釣り手を抑えて千野根の勢いを減速させ、巴投に飛び込んで主導権奪回を測る。続く展開では釣り手を得た千野根が再び右大外刈に乗り込んでどうやら勝負のポイントは明らか、桐蔭学園サイドから「釣り手だぞ!」と激しい叱咤が飛ぶ。ここで受けに回った山科に場外の「指導」。経過時間は1分41秒。

ガップリ首を捕まえた初弾が脅威レベルとしては最高値、以降は山科が巧みに釣り手を外してことごとく回避して来たわけだがそれでも千野根の攻撃行動は止まらず。燃費の激しい重量級選手がここまで大技を連発すれば勢いが落ちそうなものだが、千野根は巨体に鞭打ってあくまで攻撃を継続する。山科が強気に釣り手を脇から差すと支釣込足の形で蹴って剥がし、再び引っ掛ける形で大外刈。これは引き手が襟を掴んでいたこと、そして山科が徐々に慣れ始めて瞬間釣り手を外していることもあって投げ切れなかったが、直後の2分43秒ついに山科に「指導2」宣告。残り時間は1分17秒。

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千野根が払腰、山科待ち構えて返しあわやポイント。

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山科引きずり回すように右内股、場内は大歓声。

千野根気持ちを切らずここで右払腰に打って出るが、奮起した山科釣り手でその巨体を抱えて思い切り返しにかかり、あわやポイントという場面が現出。さらに脇を差しての右小外刈、千野根が返そうと体を起こすと大内刈で振り回す。残り28秒では間合い十分の右内股を叩き入れ、場内は大熱狂。

さすがに燃料を燃やし尽くしたか千野根はもはや棒立ち。しかしここを譲るわけにはいかずとなんとか踏ん張り切り、結局この試合は引き分け。千野根が「指導」2つを得ての僅差優勢でこの試合に勝利し、桐蔭学園が2人差のリードを作り出すことに成功した。山科は終盤猛攻を見せたが、最序盤にリスクを顧みず大技を連発し「投げに行った」千野根の強気スタートが最後まで効いた形。投げることこそできなかったが山科の覚醒を遅らせたこの猛攻、肚の括りっぷりこそが最大の勝因だった。

服装を直し、次の戦いに備える千野根は疲労困憊。ここで桐蔭学園の指針は明確、「1秒でも長くだぞ!2人目の戦い方だぞ!」と千野根の大きな背中に叱咤の声が飛ぶ。

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宮原崚汰は組み勝っては足技で千野根の足元を崩す、状況を良く弁えた試合ぶり

第4試合は千野根が右、宮原崚汰が左組みのケンカ四つ。状況をよく心得た宮原は開始から左内股を3連発して千野根の体力を減殺。最後の1発は潰れてしまったが、この手合わせで千野根の疲労具合を肌で感じたか、続く展開では千野根の頭を下げさせると敢えて大技を仕掛けず近い足を支釣込足の形で蹴る崩し技。足元を蹴られた千野根ドウと畳に屈し、34秒偽装攻撃の「指導」。

続く展開でも宮原が大きく振ると耐えきれない千野根抵抗なく畳に屈する。しかしここで宮原は内股を掛け潰れてしまい、投げ切れず。苦しい状況の千野根にベンチからは「立ってればいいの!」と激励の声が飛ぶ。宮原が大外刈に払腰と攻めると58秒千野根に「指導2」。以後も宮原は敢えて潰れず、そして相手を潰さず二本持ち続けたまま腰を切るフェイントとあおり、足技で千野根の体力を削り続ける。1分16秒、そして1分24秒と立て続けに偽装攻撃による「指導」が宣告されて試合は終了。第4試合は「指導4」の反則を以て宮原の勝ちに終わった。桐蔭はリードを1つ減らし、スコアは再び1人差に縮まる。

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湯本祥真は出し入れ激しく担ぎ技を連発、宮原を一方的に攻める

第5試合は桐蔭学園の中堅湯本祥真が宮原に対峙。凄まじい体重、体格差のある試合だがこの試合はしのぐ側に戦いやすいケンカ四つ。湯本は片手で、あるいは引き手を拾って、あるいは足技から繋いで右の担ぎ技を連発。遠い間合いを周回し、呼吸を読ませないまま一気に懐に潜り込んでくる湯本を宮原明らかにもてあまし、度々深いところまでの侵入を許してしまう。ならばとまず奥襟を叩こうとするそのアクションにも湯本は右背負投を合わせて攻勢、宮原が大きく崩れた場面は1度だったがあまりの手数差に2分3秒宮原に「指導」。
以後も湯本はペース落とさず担ぎを連発。しかし宮原は「崩れない」こと自体に方策を見出し背筋を伸ばして受け続け、決定的な2つ目の「指導」宣告には至らない。深く入ってきたら捕まえ返そうという宮原の迫力も効き、湯本攻め続けるも試合を壊すところまでは踏み込まず。この試合はこのまま引き分けに終わった。

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圧力は笹谷健に分があり、賀持喜道の頭が下がる

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笹谷は賀持の技に鋭く反応、ケンケンの大内刈を撃ち返して場外まで激しく賀持を追う

いよいよ東海大相模はエースの大将笹谷健が登場、副将を送り込む桐蔭学園はこの要衝に賀持喜道を置いており、ともにどこからでも「一本」が狙える攻撃型二人による第5試合は激戦必至。

両者左組みの相四つ。前週素晴らしい内容で81kg級代表権を獲得したばかりの賀持に対し笹谷はのっけから強気。大内刈から大外刈と大技を繋ぎ、応じた賀持が大外刈を打ち返すとこれをきっかけにかえって組み手の形を一段レベルアップ、圧力を掛けて賀持を潰す。潰れた賀持に対し32秒偽装攻撃の咎による「指導」。

賀持釣り手で横襟を得るが笹谷は袖釣込腰様に腕を捌いて剥がすと、賀持の体の戻りに合わせて万全の形で奥襟奪取。窮した賀持大内刈を打って打開を図るが笹谷曖昧に体勢を変えることを許さず大外刈で投げに出て、かつ奥襟確保を譲らず。苦しい体勢の賀持は笹谷の支釣込足を受けたタイミングで首を抜いてしまい、慌てて払腰を仕掛けて事態の無効化を図るも主審流さず、1分34秒首抜きの咎による「指導2」。

奮起した賀持ステップを切っての左大外刈一発。賀持得意の大技、まことに取り味のある一撃だが笹谷表情を変えずに大外返に吸収すると左大内刈を打ち返し、ケンケンで場外まで激しく追って「待て」。持ちあえば圧力で苦しくなり、勇気を出して仕掛ければかえって危うい目に遭ってしまう賀持はまことに苦しい状況だが未だ気持ちは折れず、思い切った左大外刈で相手の裏に乗り込み、ケンケンの左大内刈を見せてあくまで攻め合いから降りない。2分31秒には支釣込足を撃って突進、笹谷の引込返に大外刈を合わせてあわや「一本」級の投げを見せる場面も現出。

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笹谷の払腰は「一本」級も「待て」の後で無効

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ついに笹谷の大内刈が炸裂、「一本」

しかし笹谷の側もひるむ気配全くなし。得意の「やぐら投げ」で賀持を持ち上げると、なんとか畳に降りた相手を激しく場外まで追い、勢いそのまま隣の試合場で豪快な払腰一閃。完全に「一本」級であったがこれはもちろん場外で無効、しかし攻めても攻めても表情を変えずに投げで試合を決めに来る笹谷の意欲と地力に賀持いよいよ陣地を譲りつつある気配あり。

2分41秒今度は笹谷に首抜きの「指導」。これで勝敗に直結する「2差」のアドバンテージはなくなったわけだが、ここまで優位に立ちながらなかなか試合を決められなかった笹谷がこの「指導」失陥を機にエンジン全開。直後、組み際に左大内刈を叩きこんで賀持を捕まえる。賀持反応良く半身に腰を捩じって受けるが笹谷による上体の拘束は完璧、体を開かれた賀持たまらず背中から落ち、この決勝両軍通じて初めて生まれた攻撃ポイントは文句なしの「一本」。

組めば圧、思い切って攻めれば却って激しい投げが飛んでくる笹谷の前についに粘戦の賀持陥落。一時は2人差まで離れたこの試合はついにタイスコアとなり、そして最終第7試合、大将同士の対決にすべてが委ねられることになる。

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関根聖隆は開始早々「一本大外」から一本背負投に繋ぐ組み立てで図太く攻める

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笹谷が関根の「一本大外」を待ち構えて抱え上げ返し、あわやポイントという場面が現出

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関根が片襟の背負投で攻め込み、ラッシュを続ける

大将対決は桐蔭学園・関根聖隆、東海大相模・笹谷健ともに左組みの相四つ。関根は手先の組み手争いからまず一本背負投の形に腕を抱えた左の「一本大外」で投げるか投げられるかの大勝負に打って出る。前週の個人戦では笹谷がこの技に対して一歩前に出て踏ん張り返すことで関根の技を封じる橋頭保とした因縁の技であるが、関根はもっとも取り味があるこの技で、かつ明らかに投げに出てこの経緯など気にする気配まったくなし。

関根今度は引き手を織り込んでおいての左背負投、さらに再び左の「一本大外」に飛び込むが待ち構えた笹谷加速して返しに掛かり、両者縺れて崩れる。危うく関根がポイント失陥という場面であり、場内は大歓声。経過時間は1分2秒。

関根は片襟の左背負投でまたもや思い切り投げに掛かり、笹谷は前週同様外側に回り込む形で回避。そしてこれがこの日の分水嶺、関根なんとさきほど返されかかった「一本大外」を思い切り一撃、踏み込み深い覚悟のある技に笹谷大きく崩れ、あわやポイントというところで回り伏せてなんとか回避。直後笹谷に「指導1」。

勢いを増した関根、釣り手で片襟を掴んで上下にあおり左背負投、さらに左一本背負投を2連発するが冷静に捌いた笹谷素晴らしいタイミングの左内股に吸収して場内は大歓声。しかし関根はこれを立ったまま止め、再び勝負技の左「一本大外」。明らかに待っていた笹谷思い切り返し、関根崩れて「待て」。

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2度危機に陥った関根だが攻撃意欲は止まず、「一本大外」で笹谷は尻餅

勝負技を返され掛かること2度。しかし関根は仕掛けることであくまで流れを掴みに掛かり、これまでの担ぎと落差をつけた座り込みの左一本背負投、さらに3分2秒またもや思い切り左「一本大外」に入り込む。あまりの強気をさすがに笹谷予期しかねたか後方に大きく崩れ、いったん完全に両足が畳から離れる放物線軌道で尻餅。

このあわやポイントかという「一本大外」の一撃が2度目の分岐点。笹谷奥襟を叩くが加速の掛かり切った関根は左一本背負投を3連発、3発目で笹谷を背中に載せることに成功。最終盤ということもありやや手数にフォーカスした感あり、深く入ったこの3発目も投げ切るには至らなかったが直後の3分41秒、主審ついに笹谷に2つ目の「指導」を宣告。

残り時間は僅かに19秒。スクランブルを掛けるしかない笹谷は釣り手をクロスに入れる一発狙いに打って出る。状況を考えれば的確なカードであったが関根は図太く耐え切り、残り11秒で笹谷に片襟の「指導3」が宣告されてこの時間限定エクストラステージは終了。そのまま試合は動かず関根の僅差優勢勝ちが確定、かくて今年度最激戦区・神奈川の代表権は桐蔭学園の手中に収まることとなった。

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優勝決定、殊勲の大将関根を迎え入れるチームメイト

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終了の挨拶後も笹谷は失意で立ち上がれず

桐蔭学園高○1人残△東海大相模高
(先)村尾三四郎○優勢[僅差]△石川智啓(先)
(先)村尾三四郎×引分×平下麟太郎(次)
(次)千野根有我○優勢[僅差]△山科良悟(中)
(次)千野根有我△反則○宮原崚汰(副)
(中)湯本祥真×引分×宮原崚汰(副)
(副)賀持喜道△大内刈○笹谷健(大)
(大)関根聖隆○優勢[僅差]△笹谷健(大)

桐蔭学園高・高松正裕監督が戦後のっけに語った「自分たちに少しでもおごりがあったら勝てなかった」との観察はまさしく妥当。大接戦であった。

しかしまずひとつ、桐蔭学園の総合力勝ちと評しておきたい。スコアと試合の推移だけを見れば、たとえば先鋒戦の中盤石川があと「指導」1つの失陥を食い止めれば、あるいは第2試合で「指導」を奪った平下にもう1シークエンスの連続攻撃を為す体力があれば、あるいは第3試合終盤に見せた山科の猛攻があと1分早ければ、など「たられば」は尽きないが、それは勝負の常。オーダー順の多少の読み違えも含め、こういう細かなシナリオ分岐を含めた総体の「地力」で桐蔭学園が上であったと解釈するべきだろう。

そしてその最大の勝因は保有戦力の良さにあらず、メンタルの強さにこそあると喝破したい。得点必須の第1試合で、得意とする組み合うステージでの勝負を拒否され、体ごと引き分けに来た大型選手石川からあくまで「指導」をもぎ取った村尾、自身の体力のなさと横腹の弱さを十分知りながらも、試合が始まるなり巧者山科に対し体を投げ出して具体的に「一本」を取りに行った千野根、そして何より勝負技の「一本大外」をターゲットにされていることを熟知しながら掛け捲ることでそのマークを剥がした関根。いずれも随所にしみこんだ強気を駆動することで、単なる地力以上の高い勝負力を発揮していた。

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試合終了直後、試合を総括する高松正裕監督

関根に関しては戦後、高松監督と関根本人の2人にそれぞれ「(「一本大外」を仕掛けるのは)怖くないのか?」と質問を試みた。前週ここまで圧倒的な取り味を誇った関根が笹谷相手に接戦に持ち込まれたのは「一本大外」を封じることが突破口と喝破されていたからであり、今回の最前線はまさしくそこであったはずだからである。高松監督は「返しを狙われるのは想定内の当たり前、そこで仕掛けなければ今後のあいつの柔道人生はない。狙われてもその上を行って投げることが出来るようになってはじめて一流」と語り、さらに続けて極めて具体的に技術的課題を語った。関根は「そこで退いたら嵌る。怖くないけど、技術的課題が見つかった試合。(どの技も投げに行くのは)結局、『一本』で勝ってしまうのが一番早いから」と平然。個性派の役者を揃えたメンバーの良さは勿論のこと、この全軍に染みた「強気でいることが当たり前」の姿勢こそが全国大会における桐蔭最大の売りになることだろう。

柔道の質の良さも見逃せない。この日笹谷の地力とあくなき投げへの執念に根負けした形の賀持は圧を掛けられて全戦線に渡って苦しい状況を強いられたが、それでも常に「一発入れば勝負をひっくり返せる」という期待感を抱かせる取り味のある柔道を披露。大接戦、攻撃ポイントなしの決勝にあってもチームを貫くその「質」の良さは色あせることがなかった。2年生世代が全国的に不作と言われる今季にありながら、全軍が結果と内容をともに求めるその姿勢は、ここ数世代でも出色なのではないだろうか。

この翌日、広島では桐蔭学園の最大のライバルと目される崇徳高が宿敵・近大福山高の追撃を振り切ってぶじ代表権獲得。同県内に強敵を抱える本命2校の出場が決まり、いよいよ今季の全国高校選手権の地勢図が明確になって来た。

組み合わせ抽選(2月18日)までに残る大イベントは、東京都予選団体(1月29日)、近畿大会団体(2月4日)、そして招待試合シリーズを締める福島・魁春旗大会(2月11日)の3つ。引き続き、熱い視線をもってその戦いを見守りたい。

入賞者と準決勝以降のスコア、桐蔭学園高の高松監督と関根主将、東海大相模高・水落健太監督のコメントは下記。

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優勝の桐蔭学園高

【入賞者】
(エントリー41チーム)

優 勝:桐蔭学園高
準優勝:東海大相模高
第三位:慶應義塾高、相洋高

【準決勝】

桐蔭学園高○四人残し△慶應義塾高
東海大相模高○二人残し△相洋高

【決勝】

桐蔭学園高○1人残△東海大相模高)

桐蔭学園高・高松正裕監督のコメント
「さすが東海大相模というべきか、本当に厳しい試合でした。自分たちに少しでもおごりがあったら絶対に勝てなかった。戦力が上だと周囲に言われていましたが、そういう油断が少しでもあったら相手に巻き込まれてしまっていたでしょう。挑む気持ちが徹底出来た、そのぶんで得た『指導3』でした。(オーダーについて?)笹谷選手が先鋒で来ると読んでの村尾でしたが、どうなっても流れ的には余裕がないな、と。(-安定感のある佐藤選手ではなく千野根選手を起用しましたね?)ここに来て千野根が良いんですよ。1人相手なら負けないだけの体力がついてきた。まずは全国大会までに1人を抜いて次で分ける体力をつけることですね。賀持は気の弱さが出てしまいましたが、まさしくそこが課題。関根はエースとしてしっかり仕事をしてくれました。生活面はまだまだですが、柔道だけは全幅の信頼を置いています(笑)。(-関根選手の大外刈は狙われていましたが、その技で投げに行きまくった。彼は怖くないんでしょうか?)返しを狙って来るのは想定内、当然のことです。しかしそれで怖がってしまったら彼のこの先の柔道人生はありません。狙われても投げることでしか成長出来ませんし、そこで投げるのが一流です。(-全国優勝を狙えるチームを預かって、どんな気持ちで戦いましたか?)なんというのか、こういうチームに巡り合えたことがうれしいです。いつも東海大相模が強くて『勝てば金星』みたいな状況でしたが、『勝たせなければいけない』というプレッシャーは今の私には初めての経験。監督として肝っ玉を鍛える機会だとも思っていました。全国大会に向けてようやくスタートラインに立てました。桐蔭学園はまだ三冠の獲得がありませんので、三冠を狙う『挑戦者』という気持ちを大切に、選手と二人三脚でやっていきたい」

桐蔭学園高・関根聖隆選手のコメント
「神奈川を勝って、ようやくスタートラインに立てます。先週の個人戦が終わったあと、監督と選手で相手のオーダーをいくつか考えて、それがバッチリ当てはまりました。なので展開に不安がなく、準備万端で臨めました。ただ、勝てたことはいいのですが、試合を見ていてまだまだ成長出来るチームだなと感じました。(-相手が返しを狙っていたけど、あくまでその技で思い切り投げに行き続けましたね。怖くないですか?)怖くはないし、怖がって掛けなかったらかえって相手のペースに嵌ってしまいますから。一発一発投げに行くのは、一本で勝ってしまうのが結局一番楽なので。(-まだまだ成長出来るとのこと、個人的な課題は?)相四つでも勝負どころの試合では片手で投げに行ってしまうのですが、自分としては組んでも出来るし稽古では二本持って柔道している。これを高いレベルの試合でも出来るように、しっかり組んで投げられるようにしたいです。全国大会では必ず優勝します。」

東海大相模高・水落健太監督のコメント
「前で勝負の流れが向こうに行ってしまいました。この代は笹谷のチームなので、大将笹谷は決めていました。(-想定外の試合はありましたか?)敢えて言えば、先鋒戦。夏に戦ったときの良い場面が頭に残っていましたが、そうしたい状況に相手を乗せ切れませんでした。春は出番がなくなってしまいましたが、インターハイ予選までにまた一段強くなります。かつて井上康生の代、春は東海大相模が全国優勝したが夏は桐蔭学園に県で阻まれました。今度はうちが、それを出来るように頑張ります」



文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版1月24日掲載記事より転載・編集しています。

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