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【ROAD TO 高校選手権】第33回若潮杯争奪武道大会レポート②決勝トーナメント1回戦~決勝

(2017年1月20日)

※ eJudoメルマガ版1月20日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】第33回若潮杯争奪武道大会レポート②決勝トーナメント1回戦~決勝
■ 決勝トーナメント1回戦(準々決勝)
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準々決勝、国士舘高の先鋒三谷大が足立学園高・武岡毅から崩上四方固「一本」。三谷は今大会ここまで全勝。

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勢いに乗る国士舘は次鋒・長島光希が古畑雄大から支釣込足「技有」

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足立学園高の中堅山本瑛介が酒井陸を攻める

国士舘高 - 足立学園高
(先)三谷大 - 武岡毅
(次)長島光希 - 古畑雄大
(中)酒井陸 - 山本瑛介
(副)清水雅義 - 白石勇人
(大)織茂友多郎 -上領教史郎

東京都で第一代表の座を争う二強と目される国士舘高と足立学園高がここで対戦。

国士舘は予選リーグを経てどうやらメンバーを確定。リーグ戦3敗の齋藤泰樹を外し、第1戦以降下げていた主将の長島光希と第2戦から入った大型1年生酒井陸を起用して布陣。一方の足立学園も予選リーグのメンバーから相山隼汰に代えて古畑雄大を入れる微調整を経てこの同地区対決に臨んだ。

盤面から事前に確実に得点が計算出来るのは足立学園のエース山本瑛介が座る中堅戦のみ。まずはこの1点を前提として国士舘がどこまでこのポジションの失点内容をスケールダウンさせることが出来るか。そして残るポジションで国士舘はどう2点を獲得するか、足立学園としてはどう我慢してリードを保ったまま5戦を終えるかが課題ということになる。

その第2トピックである「中堅以外」の争いで国士舘が意外なほどあっさり勝負の筋道を立てる。絶好調の先鋒三谷大がインターハイ60kg級王者武岡毅を横三角から抑え切って1分27秒崩上四方固「一本」獲得。次鋒戦も長島光希が古畑雄大を相手に開始早々大外刈を引っ掛けると戻るなり支釣込足に連絡して18秒「技有」奪取、そのまま横四方固に抑え込んであっという間に合技の一本勝ち。早くも勝利ラインである2点を積み上げる。

中堅戦は酒井陸が今期東京の無差別代表最有力候補である山本瑛介に怖じず、試合が始まるなり相手の胸をドンと突いて突進。1分過ぎに酒井の前技の戻りを狙った山本の小外刈が「有効」となるが酒井は以後も気持ちを切らず、奥襟を掴んで我慢の柔道を完遂。結果この一撃のみに損害を抑えて試合を終えることに成功し、山本勝利もその内容は「有効」に留まった。

国士舘高 2-1 足立学園高
(先)三谷大○崩上四方固△武岡毅
(次)長島光希○合技[支釣込足・横四方固]△古畑雄大
(中)酒井陸△優勢[有効・小外刈]○山本瑛介
(副)清水雅義×引分×白石勇人
(大)織茂友多郎×引分×上領教史郎

副将戦、大将戦は引き分けとなり、前衛3枚のスコアをそのまま反映する形でこの試合は2-1で国士舘の手に落ちる。国士舘の面々は予選リーグとは少々表情が異なり、確信に満ちた戦いぶりでいったいに動き良し。東京予選を前にしたこの試合の重要性が骨身に染みているという印象だった。戦力ではなくその覚悟と危機感の差がスコアに表れた一番と評しておきたい。

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東海大浦安高の先鋒・浜豊将が崇徳高・枇杷木勇樹から小内巻込「技有」

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枇杷木が浜の片襟背負投を振り返して抑え込みに入り込む

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長岡季空が畠山龍弥から縦四方固「一本」

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神垣和也が鈴木俊から裏投「一本」

崇徳高 3-1 東海大浦安高
(先)枇杷木勇樹△優勢[技有・小内巻込]○浜豊将
(次)兼藤仁士×引分×髙橋倫太郎
(中)長岡季空○縦四方固△畠山龍弥
(副)神垣和也○裏投△鈴木俊
(大)安井彪翔○優勢[技有・裏投]△山中堅盛

第2試合は予選リーグの勢いそのままに東海大浦安がまず先制。先鋒の浜豊将が枇杷木勇樹の深い懐に潜り込み、体を激しく捩じる小内巻込で「技有」奪取、さらに腕挫十字固を狙ってやる気十分。枇杷木は動きの良い相手を間合いに収められずに苦労していたが、中盤ついに浜を捕まえて「抑え込み」の宣告を得る。しかし抑え切れずに14秒で「解けた」、これは「有効」に留まりそのまま浜の優勢勝ちが確定する。

続く次鋒戦にポイントゲッターの高橋倫太郎を突っ込んでいる東海大浦安にとっては理想の展開。このまま一気にリードを広げたいところだが状況を心得た崇徳・兼藤仁士はここでしっかり引き分け、試合をいったん落ち着かせることに成功。

崇徳は続く中堅戦から得点ブロックを組んでおり、中堅長岡季空、副将神垣和也とポイントゲッター2枚がいずれも「一本」で連続加点してあっさり逆転。さらに大将戦では安井彪翔が山中堅盛から裏投「技有」を奪ってダメ押し。崇徳が絶対的な駒数の差で東海大浦安を突き放し、通算スコア3-1で勝利を決めた。

東海大浦安は黒潮旗以降大会出場の度にチームの勢いが増している感あり。千葉県にあっては木更津総合高がここ2代に渡って全国大会で上位に絡み続け、今代も大淵泰志郎と坂東虎之助のポイントゲッター2枚を擁して抜き試合レギュレーションでは有利と目されている。しかし全体の勢いは個々の底上げ明らかな東海大浦安の方がどうやら上。髙橋、山中、浜と良くも悪くも意外性のある駒が揃うチームの性格に「挑む立場」という立ち位置も噛み合うはずで、千葉県予選では非常に面白い試合が期待出来そうだ。

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神戸国際大附高の副将近藤樹が篠塚空から払腰「一本」

神戸国際大附高 3-1 東海大福岡高
(先)西本翔×引分×津嘉山崇
(次)上田虎徹△優勢[有効・外巻込]○岩川優輝
(中)丸山晃志○内股△崔宇辰
(副)近藤樹○払腰△篠塚空
(大)福井優駿○後袈裟固△荒木海人

神戸国際大附が塗りつぶすような迫力の柔道で東海大福岡を押し切った。先鋒戦で東海大福岡の斬り込み隊長・津嘉山崇を西本翔がまず引き分けで止め、1点ビハインドで迎えた中堅戦からは丸山晃志、近藤樹、福井優駿の重量級3枚の連続一本勝ちで一気の逆転。神戸国際大附はエース村上抜きで見事若潮杯ベスト4という高みまで辿り着くことに成功。

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平下麟太郎が白鴎大足利高・村山雄士郎を攻める

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石川智啓の裏投「一本」で圧勝劇完成

東海大相模高 4-1 白鴎大足利高
(先)鳴海勝成△優勢[僅差・指導3]○長島斥弥
(次)松谷竜馬○大外返△浅沼亮太
(中)笹谷健○優勢[技有・大内刈]△吉田功二
(副)平下麟太郎○優勢[有効・払腰]△村山雄士郎
(大)石川智啓○裏投△岩瀬裕希

東海大相模が白鴎大足利に快勝。先鋒戦は落としたものの次鋒戦ではチームの中ではバイプレイヤー役の松谷竜馬が身長197cmの浅沼亮太から大外返「一本」で見事な勝利。絵面の良さにチームの意気この上なく揚がる中、さらにここから笹谷健、平下麟太郎のポイントゲッター2枚が着実に加点。最後は石川智啓が岩瀬裕希を1分0秒豪快な裏投「一本」に仕留めて圧勝劇完成、スコア4-1で東海大相模が準決勝進出を決めることとなった。

白鴎大足利は小林慶大に代わって出場の村山雄士郎が粘ったことが好材料。しかし、一発のある吉田と岩瀬がまたもやある水準以上の相手には突如脆さを見せた形で、チーム全体の傾向である横腹の弱さはやはり解消ならず。全国大会でシードが有力視される好チームであるが、本番での上位勝ち上がりにはこのあたりがカギとなりそうだ。

結果決まった準決勝カードは、

国士舘高 - 崇徳高
東海大相模高 - 神戸国際大附高

の2試合となった。

■ 準決勝
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三谷大と兼藤仁士による先鋒戦

国士舘高 - 崇徳高
(先)三谷大 - 兼藤仁士
(次)長島光希 - 枇杷木勇樹
(中)酒井陸 - 長岡季空
(副)清水雅義 - 神垣和也
(大)織茂友多郎 - 安井彪翔

国士舘は招待試合の慣例に従ってオーダー順を動かさず。崇徳はこれを踏まえて前衛を微調整、これまで一貫して先鋒を務めて来た枇杷木勇樹を次鋒に下げ、要石的な役割を担ってきた兼藤仁士を先鋒に突っ込んだ。一発があるが懐に潜られると脆さのある枇杷木は、下から潜るように戦って寝技が効く三谷には相性が悪い可能性があるが、オーソドックススタイルかつ軽中量級の長島が相手であれば存分にその力を発揮できるはず。かつ、うるさい三谷の柔道を塗りつぶすには腰が重くかつ試合運びの巧い兼藤は適役であり、これは非常に巧みな布陣。

戦力の厚さからすれば崇徳の勝利自体は既定路線。国士舘としては大型1年生の酒井が当代切っての抜き役である長岡にどこまで頑張れるか、またファイタータイプの清水が崇徳ダブルエースの一である神垣を止め得る、あるいはその持ち味である連続攻撃が相手の陣地を侵食するところまで効くかどうかの見極めが今後に向けて非常に大事。

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先鋒戦、国士舘高・三谷大が突如加速、兼藤仁士から内股「有効」獲得。

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長島光希が枇杷木勇樹から小内巻込「技有」、一時はリードを得る

というわけで崇徳優位が予想された先鋒戦はしかし意外な展開となる。右相四つ、しかも体格に劣る三谷が残り1分で突如奥襟を叩き、兼藤の頭が下がるか早いか思い切った右内股一発。大胆な作戦に周囲が息を呑んだ時にはすでに兼藤が畳に転がるという体のこの速攻が見事に決まって三谷が鮮やか「有効」獲得。この場面まで二本を持ち合って兼藤とやり取りを続けただけでも大健闘であったが、周囲の納得のさらにその上を行く覚悟と自己評価の高さに会場大いに沸く。三谷はそのまま残り時間をしっかり戦い切って自軍に貴重な先制点をもたらす。

これぞ斬り込み隊長という三谷の戦いぶりに勇気を得たか、続く次鋒戦では長島光希が枇杷木勇樹を相手に29秒一本背負投崩れの右小内巻込で「技有」獲得。一気に崇徳を突き放しに掛かる。

しかしここが勝負どころと見た枇杷木は血相を変えて突進。長島は徐々に後退を余儀なくされ、1分半には枇杷木が思い切った右大内刈、長島が抱えたところをさらに一歩押し込んであわやポイントという場面を作り出す。

この攻防から明らかに流れが変わり1分44秒には枇杷木が組み際の右大外刈、長島が応じたところを刈り落として「一本」獲得。これでスコアは1-1、内容差で崇徳が逆転。

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酒井陸が長岡季空と粘りの試合を展開

中堅戦は酒井陸が右、長岡季空が左組みのケンカ四つ。長岡は左体落に左内股と取り味のある技を放ちながらじわりと前進するが、酒井の巨体を前にやや慎重。酒井は要所で引き手を切って形をリセット、長岡に手順を踏ませることで結果として試合を膠着させることに成功する。中盤長岡打開を狙って奇襲の横落も見せるが崩し切れず、残り41秒となったところで双方に2つ目の「指導」が与えられるところまで試合は減速。最後は長岡の背負投を酒井が潰して送襟絞を狙う形のまま終了ブザー、中堅戦は引き分けに終わった。結果は引き分けだが、長岡を止めた国士舘の側に盤面やや傾く内容。

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崇徳高・神垣和也が清水雅義から右背負投「有効」

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神垣が裏投「一歩」で再逆転

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大将戦、織茂友多郎が片襟の右大外刈で「有効」、安井彪翔を一時リード。

副将戦も国士舘が意地を見せる。崇徳・神垣和也が開始早々に右背負投で「有効」を得て順行運転、清水雅義はケンカ四つの神垣に組み止められて小さくなってしまい波乱の予感は薄かったが、2分7秒「技有」獲得で逆転。さらに以後の神垣の猛攻を凌ぎに凌いで見せ場を作る。揉めた試合はしかし3分15秒、神垣の強引な裏投「一本」で再逆転決着。崇徳が決定的な勝ち越し点を得ることとなった。

内容差までを考えると既に勝敗は決したわけだが、畳に残る不穏な空気に国士舘が巧みに乗じて試合をかき回す。織茂友多郎が1分6秒一本背負投崩れの大外落に打って出て安井彪翔から「有効」を獲得。しかし安井は2分34秒に織茂の小内刈を抱き返して「有効」を奪回、結局この試合は引き分けとなり通算スコア2-1で崇徳の勝利が決まった。

崇徳高 2-1 国士舘高
(先)兼藤仁士△優勢[有効・内股]○三谷大
(次)枇杷木勇樹○大外刈(1:44)△長島光希
(中)長岡季空×引分×酒井陸
(副)神垣和也○裏投(3:15)△清水雅義
(大)安井彪翔×引分×織茂友多郎

結果としては崇徳が順当勝ち。しかし兼藤から取り、枇杷木を転がし、長岡を止め、神垣を投げ、安井を刈り落としてと5人から実に4つの攻撃ポイントを得た国士舘が大いに意地を見せた試合でもあった。国士舘としては次回の対戦に向けて、一つ大きな手ごたえを得た一番ではなかったかと思われる。戦力に比すれば3位という成績は上出来以上、予選リーグの敗退によって汗を掻くことを厭えばあっという間に水準以下に落ちるという正しい自己認識と危機感を醸成し、かつ内容は尻上がりで最後は崇徳に大善戦。収穫多き1日だったのではないだろうか。

一方の崇徳も、これだけ食いつかれながら結果として落としたのは先鋒戦僅か1試合のみ。個々の責任感の強さと骨の太さ、地力の高さがあらためて明らかになった一番であった。
シーズン開幕当初長岡と神垣の得点力がクローズアップされることが多かった同校であるが、シリーズを通してみると長岡と神垣、さらに兼藤と揃えた3枚が張る地力ラインの高さと、横腹弱いながらも爆発力のある枇杷木と安井のバイプレイヤー2人を合わせて作り出す「総体」の強さがその売りであることが良く分かる。試合の都度個々に凹凸ありながらもその層の分厚さ自体で勝ち切るチームへと印象が変わった感あり。

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松谷竜馬が丸山晃志を攻める

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平下麟太郎が西本翔から2つ目の「有効」獲得

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東海大相模高の大将・山科良悟が福井優駿から支釣込足「一本」

東海大相模高 3-0 神戸国際大附高
(先)松谷竜馬×引分×丸山晃志
(次)平下麟太郎○優勢[技有・内股]△西本翔
(中)笹谷健○小外刈(2:02)△上田虎徹
(副)石川智啓×引分×近藤樹
(大)山科良悟○支釣込足(1:45)△福井優駿

準決勝第2試合は東海大相模が完勝。先鋒戦の引き分けを受けた次鋒平下麟太郎が西本翔から大外刈「有効」に内股「技有」と連取してまず先制。さらに中堅笹谷健が体格差に怖じずに接近戦を挑んで上田虎徹から小外刈「有効」さらに再度の小外刈で「一本」奪取を果たす。中盤に張った得点ブロックで目論見通り2点獲得に成功した形の東海大相模は続く副将石川智啓の引き分けで勝負を決めてしまうと、大将戦ではこの試合から再び起用された山科良悟が得意の支釣込足一発で福井優駿から「一本」を奪ってトドメ。終始自軍のペースで試合を運び続けて最終スコアは3-0、最高の形で決勝への勝ち上がりを果たすこととなった。

今代の神戸国際大附高は大型を揃えたがやや緻密さに欠け、大味な印象が残った。ただしどの選手も前進圧力と技一発一発の迫力は十分であり、長所も短所も似通った、その共通項の存在自体が「育成力の高さ」というこのチームの特徴と脅威をよく表しているかと思われる。ここに試合が上手く取り味のある村上が入ればかなりチームは締まるはず。シード権獲得は射程圏内、まずは村上が復帰するであろう近畿大会での戦いぶりに注目しておきたい。

結果決まった決勝カードは予選Cブロックの再戦、

崇徳高 - 東海大相模高

となった。

■ 決勝
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桐蔭学園高と並んで今季の本命と目される崇徳高

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上り調子の東海大相模高は予選リーグのリベンジに挑む

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決勝が開始される

戦前予想された強豪2校による決勝対決。開示されたオーダー順は下記の通り。

崇徳高 - 東海大相模高
(先)枇杷木勇樹 - 松谷竜馬
(次)安井彪翔 - 平下麟太郎
(中)神垣和也 - 笹谷健
(副)長岡季空 - 石川智啓
(大)兼藤仁士 - 山科良悟

顔合わせが予選リーグ(崇徳が2-1で勝利)からずれ、対戦相手が重複するカードは1試合もなし。

まず注目しておくべきは両軍のポイントゲッター2枚それぞれの配置。中堅戦で神垣和也と笹谷健のエース級同士がマッチアップしており、長岡季空は副将戦で石川智啓と、平下麟太郎は次鋒戦で安井彪翔とそれぞれ「取るべき相手」であるはずのバイプレイヤーと顔を合わせている。崇徳の長岡、東海大相模の平下がしっかり取ることが大前提で、この土台に上積むべき中堅戦における抜き役同士の対決結果が勝利の行方を分けるというところ。大将戦はここまでの戦いから考えると安定感ある兼藤を線の細い山科が崩すことは難しいとみておくべきで兼藤の側がやや優位。しかし得点を織り込むまでの差はなし、切れ味あるが線の細い枇杷木と安定感ある松谷が戦う先鋒戦も事前に得点を計算しておくまでの決定的要素には欠ける。つまりは両軍のエース合わせて4枚が3戦の中に入り乱れる中盤3ポジションの結果がそのまま試合を決めると見ておくべきだろう。

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先鋒戦、東海大相模高の松谷竜馬が「やぐら投げ」を試みる

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松谷は「やぐら」の矛を収めるなり右背負投に飛び込む強気の組み立て、見事「一本」獲得

先鋒戦は崇徳・枇杷木勇樹が右、東海大相模・松谷竜馬が左組みのケンカ四つ。枇杷木は得意の大外刈と支釣込足で先制攻撃を試みるが、松谷は怖じず、どころかまことに大胆。左への「やぐら投げ」で距離を詰めると降りるなり右背負投に担ぎ上げるという強気を乗算した組み立てで枇杷木を畳に叩き落し、鮮やか「一本」獲得。

開始僅か24秒、会場は意外な展開にどよめきに包まれる。一種「普通に」試合に入った崇徳と、ここで勝つほか全国大会出場すらなしと腹を括って己を追い詰めた東海大相模のテンションの温度差がそのまま表れたようなこの一撃で、東海大相模が先制に成功。

次鋒戦は崇徳・安井彪翔が右、東海大相模・平下麟太郎が左組みのケンカ四つ。序盤は引き手争いが続いて35秒安井に「指導1」。

後衛に神垣と長岡の強力2枚が控える安井は万が一にも試合を壊さぬよう極めて丁寧に試合を構築。一方の平下も少々意外なほどに慎重で結果試合は膠着することとなる。平下は度々内股で攻めるが深く踏み込む場面は少なく、3分5秒双方に「指導」。以後ポイントの積み上げはなく、結局この試合は引き分けに終わった。

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笹谷健が「やぐら投げ」を試みるが神垣和也が小外掛のクサビを入れてしっかり止める

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笹谷が投げ合いを制し、左内股「一本」

ポイントゲッター同士がかち合う中堅戦は神垣和也、笹谷健ともに左組みの相四つ。格上と目される神垣は序盤から積極的、引き手を先に得て片襟の大外刈に背負投と鉈を打ち込むように重たい一撃を呉れ続け、31秒笹谷に「指導1」。

奮起した笹谷は得意の「やぐら投げ」を試みるが神垣先んじて小外掛を引っ掛けてしっかり潰し、さらに組み際に今度は自らが「やぐら投げ」の大技、降りた笹谷を小外刈で場外まで追い掛ける大攻勢。笹谷いったん形を変えて両袖を試みるが神垣は抱き着いての大外刈で剥がし、あくまで優位を譲らず。

しかし神垣が為したこの迫力の連続攻撃に晒され続けてなお、笹谷からその目の光は消えず。2分5秒に思い切って左内股に飛び込むと体の力に勝る神垣自信満々に抱き留めるが、あくまで退かない笹谷むしろチャンスとばかりにもう一段体を回し、食いついた神垣を投げ切って豪快な「一本」。

戦況一気に東海大相模へ。神垣のいずれも「一本」に直結するタフな技を全て受け切り、しかもあくまで投げで勝負を決めた笹谷の強気に会場大いに沸く。結果ポイントゲッター対決を制した東海大相模が2戦を残してスコア2-0と大量リードを得ることとなった。

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石川智啓が長岡季空に小外刈、腹をつけて幾度もつば競り合いに長岡を誘う

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長岡が石川の小外掛をかわし、左に浮落「技有」

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石川が支釣込足「技有」

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石川は左小外掛で2つ目の「技有」獲得、ここに東海大相模6年ぶりの若潮杯制覇が決まった。

副将戦は崇徳のエース長岡季空、東海大相模の石川智啓ともに左組みの相四つ。リードを背に受けた石川は得意の小外刈で積極的に前に出るが、長岡落ち着いて一旦形をリセット。1分22秒には小外掛から突進して来た石川にいったん膝を着かせ、左に回して浴びせ浮落「技有」奪取。

長岡は自信満々、以後も試合を決めるべく支釣込足、背負投に小外掛と次々取り味のある技を繰り出すが、石川はあと半歩の寄せを許さず、徳俵に足を掛けるようなギリギリの我慢を続けていずれも耐えきる。どころか中盤以降は長岡と腹をつけ合うことを厭わず密着しての小外刈を打ち続け、むしろこの危ういバランスの取り合いステージに相手を引きずり込み続ける冒険柔道。長岡は石川に図太く受けられ続けるうちに技の歯車が狂い始めた感あり、常に「一本」を狙う一発一発の重さゆえか自身の消耗も激しい様子で、2分40秒からのシークエンスでは一方的に組み手を得たにも関わらずなかなか勝負に出れず明らかに疲労。

長岡の攻めが止まったこのタイミングでいまだスタミナ十分の石川が積極前進。残り26秒、奥襟を叩かれながらも引き手で脇を差して迎え撃つと腹を出して支釣込足一発、首を抱えた左を効かせてなんと「技有」を奪って勝負をタイに持ち込む。後は決めるだけの状況から一転、後のなくなった長岡は会場の不穏な空気に背中を押されるように残り14秒で相手の首裏で両手をクラッチ、強引に左小外刈を打ちこむがこれは明らかに焦りが生んだ悪手。相手が良く見える立場の石川しっかり迎え撃ち、股中に残った相手の左脚を刈るように抱き浴びせて劇的な左小外掛「技有」獲得。

僅か十数秒で2つの「技有」が生まれ、なんと長岡までが陥落。石川が合技「一本」でこの難敵を下す殊勲、この時点でスコアは3-0。ここに東海大相模6年ぶりの若潮杯制覇が決まることとなった。

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大将戦、兼藤仁士が山科良悟から一本背負投「技有」

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山科が兼藤の小外刈を透かし、右内股を合わせて「有効」

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山科は兼藤の背負投を後ろに引き倒し逆転の「技有」獲得

大将戦は崇徳高・兼藤仁士、東海大相模高・山科良悟ともに右組みの相四つ。開始早々の14秒に兼藤が自信満々右一本背負投に飛び込んで「技有」獲得。さらに一本背負投の形に腕を抱えた小内刈、左一本背負投とこれまた取り味のある技を連発して攻めに攻める。

実力、そして相性の差は歴然と思われたが山科粘り強くこの難敵に対峙、どうやら試合が落ち着き始めた1分45秒には兼藤の小外刈を透かしながら瞬間内股の形で浴びせ返しなんと「有効」を奪回することに成功。

あとは仕留めるだけの楽勝ムードから一転、あくまで退かぬ山科にポイントまで失ってしまった兼藤は怒気を発して一段加速、強引な左背負投で勝負に出るが山科その焦りを見透かしたかのように一瞬間合いを作ると後ろにグイと引き落とす。頭を引っ張られた形の兼藤逆らえず背中から畳に落ちこれは「技有」、山科はそのまま上四方固に抑え込んで合技「一本」まで辿り着く。チームの勝ち負けを度外視して淡々自分の仕事をこなそうとした兼藤をじらし、焦らせ、戦いの熱量を上げることを強いた山科の完勝であった。

これで5戦が終了。スコア実に4-0、それも長岡、神垣、兼藤という崇徳の看板3枚をいずれも「一本」で下すという凄まじい内容で東海大相模が勝利を収めることとなった。

東海大相模高 4-0 崇徳高
(先)松谷竜馬○背負投(0:26)△枇杷木勇樹
(次)平下麟太郎×引分×安井彪翔
(中)笹谷健○内股(2:03)△神垣和也
(副)石川智啓○合技[支釣込足・浮落](4:53)△長岡季空
(大)山科良悟○合技[谷落・上四方固](2:32)△兼藤仁士

東海大相模の体のタフさと勝利への貪欲さは異常であった。招待試合シリーズで強敵を意外なほどにあっさり投げつけ続けて来た神垣、長岡、兼藤の強力トリオによる重量感ある投げを弾き返し続け、しかも凌ぐだけでなく全て投げ返して「一本」に辿り着いた後衛3枚の試合ぶりはまさしく圧巻。

東海大相模が決勝トーナメントで比較的組み合わせに恵まれ勢いづいていたこと、また一方の崇徳が5日で3大会をこなす過酷な日程下にあり前日の水田杯もフルメンバーで戦い抜いたばかり、その疲労が閾値を超えてしまっていたという事情はあったが、そのようなバックグラウンドが些事に思われるほどのタフな試合ぶりであり、黒潮旗で見せた「上がり目」が本物であることを確信させる素晴らしい試合内容であった。10月の朱雀杯で見せた脆さは微塵も感じられず、もはや東海大相模は当時と全く別のチームの感すらあり。

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優勝決定の瞬間を迎える東海大相模ベンチ。来る神奈川県予選の激戦に思いを馳せてかその表情は意外に冷静。

そして戦後インタビューに応じた水落健太監督がチームの成長の分水嶺としてまっさきに挙げたのは、まさしくその朱雀杯だった。桐蔭学園に1-4の大差で屈したあの決勝を振り返って曰く「なんとかなると思っていたところが、なんとかならない現実を突きつけられた。そこから『すべてを見直そう』と練習を一から変えた」とのこと。もしこのまま東海大相模が上り続けて桐蔭学園を凌ぐようなことがあれば、あの「朱雀杯の惨劇」は今年の高校柔道界の大きな分岐点として語り継がれることになるだろう。それほどこの3か月の変化は大きい。ここ数年大事な一番で踏ん張れぬことが定番となりつつあったチームがその性格自体から変わってしまったのではないかと思われるほどの、劇的な「戦いの質」の変化が見られた。

水田杯と松尾杯を制してプレッシャーを掛けて来た桐蔭学園に対し、崇徳から4点を奪っての若潮杯制覇という最高の形で圧を掛け返した東海大相模。両校いずれも間違いなく全国制覇に最も近いところに位置するチームであるが、今季神奈川に許された全国大会出場枠は僅かに1校のみ。1月21日に行われる神奈川県予選は、全国大会制覇の行方をダイレクトに左右する大一番となることだろう。

東海大相模の成長、崇徳の地力の高さ、国士舘の意地とそれぞれ非常に興味深いトピックを残して第33回若潮杯争奪武道大会は終了。冬季シリーズはこれでクローズ、招待試合サーキットもあとは代表決定後に行われる福島・魁春旗大会(2月11日)を残すのみ。1月に行われる強豪各県の予選結果、そしてブロック大会の結果を楽しみに待ちたい。

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優勝の東海大相模高

【入賞者】

優 勝:東海大相模高(神奈川)
準優勝:崇徳高(広島)
第三位:国士舘高(東京)、神戸国際大附高(兵庫)

東海大相模高・水落健太監督のコメント
「尻上がりに良くなった、とは言えますがこのチームはスロースタートなところがある。黒潮旗もそうだったのですが、トーナメントであれば今日は予選リーグの段階で負けているわけで、これは大きな課題ですね。(-県予選では桐蔭学園との決戦が待っていますね?)桐蔭学園さんは大きな招待試合を3つ勝っていて、黒潮旗も代表戦次第では獲っていたから実質4勝。うちはここで勝ってようやく精神的に五分と思っていたのでやっぱり優勝出来て良かったですし、決勝の勝ち方は非常に大きいですね。笹谷のプライドの高さは頼もしいし、乗ると強い石川が自信をつけて来たことは何よりの好材料。(-体が強くなって数か月前とは別のチームに見えますが、稽古内容に変化は?)転機は朱雀杯ですね。『なんとかなるだろう』と私も生徒も皆ぼんやり思っていたところが、なんとかならない現実を目の前に突きつけられた。全てを一から見直しました。毎日ガッチリ、軽量級は10km、重量級もかなりの距離を走り込んで体を作って来ました。地力を上げる稽古を年越し合宿まで積んで、あとは具体的な桐蔭学園対策です。やるべきことを全てやって21日を迎えたいと思います。監督になって初めてのタイトル獲得、手ごたえを感じた1日でした」

【決勝トーナメント1回戦(準々決勝)】

国士舘高(東京) 2-1 足立学園高(東京)
崇徳高(広島) 3-1 東海大浦安高(千葉)
神戸国際大附高(兵庫) 3-1 東海大福岡高(福岡)
東海大相模高(神奈川) 4-1 白鴎大足利高(栃木)

【準決勝】

崇徳高 2-1 国士舘高
東海大相模高 3-0 神戸国際大附

【決勝】

東海大相模高 4-0 崇徳高

※ eJudoメルマガ版1月20日掲載記事より転載・編集しています。

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