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【ROAD TO 高校選手権】第16回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会男子マッチレポート②準決勝~決勝

(2017年1月4日)

※ eJudoメルマガ版1月3日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】第16回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会男子マッチレポート②準決勝~決勝
■ 準決勝
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準決勝開始を待つ大成高メンバー

大成高 - 木更津総合高
(先)三輪魁星 - 井上泰司
(次)藤鷹裕大 - 浅野史恩
(中)大西陸斗 - 坂東虎之助
(副)東部直希 - 伊藤大輔
(大)小田和紀 - 大淵泰志郎

木更津総合は配列を動かさず。今大会でレギュラーに抜擢した井上泰司と浅野史恩の2人に前衛を任せ、ポイントゲッターの坂東虎之助と大淵泰志郎の2枚を中堅と大将にセパレート配置した。

一方の大成は構成メンバーをそのまま、配列のみを変えて布陣。相手方の抜き役ポジション2つには、まず坂東に同学年の全国中学大会90kg級王者の大西陸斗、大淵には小田和紀を手当てした形。結果的には大駒の東部を、ポイントゲッター対決を避けてその隙間に捻じ込んだこととなる。

大成としては東部の1点獲得までは事前に織り込むことが可能。大将戦は観測厳しく、中堅戦も事前にいずれかの勝利を計算に入れるのは難しい。よって前衛2枚でなんとか1点が欲しいところ、これと東部の1点を合わせた2点獲得が勝利到達ラインとなる。一方の木更津総合としては坂東、大淵で何としても2点を獲得、他をしのいで失点「1」までで試合を終わらせてしまいたい。

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準決勝、大成高の先鋒三輪魁星が木更津総合高・井上泰司から小外刈「一本」

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次鋒戦、大成・藤鷹裕大と木更津総合・浅野史恩の技がかち合う

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勝負どころの中堅戦、大成・大西陸斗が木更津総合・坂東虎之輔から大外刈「技有」

先鋒戦は大成・三輪魁星が井上泰司を攻めに攻め、最後は内股から連絡した小外刈でみごと「一本」獲得。大成が目論見通り先制に成功する。

次鋒戦は大成・藤鷹裕大、木更津総合・浅野史恩ともに左組みの相四つ。55秒浅野に片襟の「指導1」、2分41秒に双方に「指導」が与えられて場が煮えるが、双方ともに以後の加速に失敗し3分25秒藤鷹に2つ目の「指導」が宣告されて以降はスコアの上積みなし。この試合は双方2つの反則ポイントを失う形で終わって引き分け。

中堅戦は大成・大西陸斗、木更津総合・坂東虎之輔ともに右組みの相四つ。かつて大成中で同僚であった両名であるが、始まるなり大西が意地を剥き出し、一瞬で相手の裏に抜け出すと片襟の右大外刈を引っ掛ける。一呼吸で致命的な位置取りを許してしまった坂東は回避のしようなく18秒「技有」。「一本」が宣告されてもおかしくない強烈な一撃だった。

おそらくは双方の手合わせの肉体的記憶をテコに一種意外な行動を為した大西が坂東の予測を上回ることそれ自体をエンジンに投げつけた、周囲にはその因測り難い興味深い一発。

以後は坂東が左袖釣込腰に小内刈、一本背負投と技を繋ぎながら前進、大西はこれを防衛するいわば殿戦を戦ううちに序盤の気迫がしぼみ始め、2分45秒には大西に「指導1」。しかし大西は坂東の攻めの勘どころをしっかり潰し、動的膠着を作り出してフィニッシュ。この試合は「技有」優勢で大西の勝利に終わり、スコアは2-0。分水嶺を獲った大成が俄然優位に立つ。

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副将戦は東部直希が伊藤大輔から小外掛「一本」

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木更津総合は大将・大淵泰志郎が小田和紀から支釣込足「技有」、合技の一本で一矢を報いる。

ここまで陣地を進めればあとは試合をまとめるのみ。副将戦は東部直希が伊藤大輔から小外掛「一本」を得て完勝。この時点でスコア3-0、大成が決勝進出を確定させた。

大将戦は小田和紀、大淵泰志郎ともに左組みの相四つ。1分25秒に大淵が腹を出して相手を持ち上げようとすると小田も真向からこれに応じ、相手の重心の下に潜り込もうとする「腹の出し合い」が現出。互いに崖の上でつま先立つような激しい投げ合いの末、大淵がこれを制して支釣込足「技有」、そのまま横四方固に抑え込んで合技の一本勝ち。木更津総合が一矢を報いる形で試合終了、スコア3-1で大成の勝利が決まった。

大成高 3-1 木更津総合高
(先)三輪魁星○小外刈(2:37)△井上泰司
(次)藤鷹裕大×引分×浅野史恩
(中)大西陸斗○優勢[技有・大外刈]△坂東虎之助
(副)東部直希○小外掛(1:02)△伊藤大輔
(大)小田和紀△合技[支釣込足・横四方固]○大淵泰志郎

前述の通り分水嶺は中堅戦。この日序盤で2敗を喫している大西であるが、この試合ばかりは譲れないとばかりに素晴らしい気迫と瞬発力を見せた。失点した大将・小田も敗れたりとはいえ相手方のポイントゲッターに試合をまとめに掛かるのではなく、投げ合いに堂々応じての結果。既にチームの勝利が決まっていること、相手方のエースとの対戦であること、自身がチーム内でレギュラーを争う立場であること、そして錬成期の大会であることなどのバックグランドを考えればこれは試合態度としてはむしろ買える。大成にとってはほぼ文句なしの一番であったはずだ。

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準決勝を待つ桐蔭学園高の面々

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桐蔭学園と崇徳は3日前の松尾杯決勝に続く対戦

桐蔭学園高 - 崇徳高
(先)佐藤虎太郎 - 枇杷木勇樹
(次)湯本祥真 - 神垣和也
(中)関根聖隆 - 長岡季空
(副)千野根有我 - 兼藤仁士
(大)村尾三四郎 - 安井彪翔

松尾杯決勝での対戦から中2日、この時点で今季高校柔道界の東西を代表する強豪同士がこの準決勝で再びマッチアップ。

双方2枚ずつ抱えるポイントゲッターの位置がまず第1のポイント。

その中でも最初に注目すべきは中堅戦で関根聖隆と長岡季空のエース級同士がぶつかっていること。間違いなく全国大会本番の上位対戦の様相を直接左右する一番である。力の絶対値だけを考えれば双方事前に得点を織り込むことは難しいが、関根、長岡ともに相手の相性と関係なく駆け引きを塗りつぶして無理やり自分の技に入る、いわば「自分の世界」だけで戦う我儘なタイプであり、かつ緻密なディティールの差異をテコに相手の虚を突くような一撃が得意な難剣タイプ。これを考えればいずれかが得点を挙げる可能性も十分あり、そしてもし得点となればそれはそのままこの試合の行方を決めてしまう可能性が非常に高い。

桐蔭学園もう1人のエース・村尾三四郎は崇徳高の5番手である安井彪翔とマッチアップ。安井は試合の押し引きを心得た攻撃型の好選手だが、力関係と相性を考えればここは村尾の得点を織り込んでおいて間違いないところ。

一方崇徳のダブルエースの一である神垣和也は湯本祥真とマッチアップ。湯本は66kg級の選手ながら体幹強く試合運びも巧み、かつ体格差を一発で跳ね返す左右の担ぎ技も得手である。松尾杯決勝の対戦では長身の枇杷木勇樹を凌ぎに凌いだ末チームを勝利に導く「一本」をマークしており、いかな神垣といえども苦戦は必至。神垣勝利の可能性自体は高いが、相当にもつれる試合になるはずだ。

とここまでがポイントゲッターポジションの読み。副将戦は巨漢千野根有我に、腰が重く試合運び巧みな兼藤仁士がマッチアップしておりここは引き分け濃厚。先鋒戦は前回対戦の雪辱に燃える枇杷木勇樹に、湯本と同じく軽量で担ぎ技が得意な佐藤虎太郎という顔合わせ。ここも戦ってみるまで様相測りがたい顔合わせだが、勝利した側に大きく試合の針が振れる分水嶺の一番と考えられる。

双方の勝利ラインはおそらく2点。桐蔭学園は大将戦で、崇徳は中堅戦のポイントゲッターポジションでまずしっかり1点を得ることが肝要。このミッションの難易度は崇徳の方が高いが、星勘定の土台となるこの2ポジションでの得点の有無とその内容が第1のポイント。この上に、勝利に必要なプラス1点をどこで、どのように積み上げるかが勝敗を分けることとなる。

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先鋒戦、崇徳・枇杷木勇樹が桐蔭学園・佐藤虎太郎の背負投を返す。佐藤は身を捩じってノーポイントで逃れる。

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次鋒戦、神垣和也が湯本祥真から左内股「一本」

先鋒戦は桐蔭学園・佐藤虎太郎が左、崇徳・枇杷木勇樹が右組みのケンカ四つ。佐藤が左背負投、枇杷木が右体落で攻め合って様相は一進一退。枇杷木が首をほとんど両手でつかんで、あるいは上から背中を叩いて圧を掛けてこの膠着から抜け出しに掛かる。中途で帯を掴み続けてしまい枇杷木に「指導」が与えられるが、枇杷木は内股を中心に攻め続けて中盤から試合の流れをほぼ掌握。組み手に粗いところがある枇杷木の戦いぶりに、崇徳ベンチからは「(釣り手の)ヒジ!」「大内(刈)!」と中盤以降細かく叱咤が飛び、その甲斐あって佐藤の側に次々「指導」が累積。佐藤は残り30秒を切ってから横車、あるいは右一本背負投崩れの大外刈を見せるが枇杷木いずれも捌き、あるいは返して自身の攻撃に変換し続けフィニッシュ。結果この試合は枇杷木の僅差優勢勝ちに終着する。

次鋒戦は桐蔭学園・湯本祥真が右、崇徳の神垣和也が左組みのケンカ四つ。縺れるかと思われたこの試合だったが神垣は落ち着き払って試合を進行。右の担ぎ技を交えながら背筋を伸ばして悠揚主導権を握ると、1分32秒にまず作用足を差し入れておいての左内股一閃「一本」。

神垣、曲者・湯本をまったく問題にせず。崇徳はこの時点でスコアを2-0に伸ばして俄然優位、試合は関根聖隆と長岡季空のエース級同士がマッチアップする中堅戦へと引き継がれる。

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長岡季空が右背負投で関根聖隆を転がし、一時は「有効」が宣せられる

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関根聖隆が左一本背負投で長岡季空から「技有」

中堅戦は関根の左袖釣込腰でスタート。関根はなおも激しく前に出るが長岡はその出端を捉えて右背負投に潜り込む。関根転がり34秒これに「有効」が宣せられるが副審2人のアピールでこれは取り消しとなる。

以降攻防はやや膠着し、1分31秒双方に「取り組まない」咎による「指導1」。この後試合が動き始め、2分12秒には関根が組み際にタイミング良く一本背負投の形に腕を抱えた左大外刈。これを耐え切った長岡も右背負投であわやポイントという場面を作りだし、試合はまさしく一進一退。

1分54秒、関根が左一本背負投崩れの左大内刈。これで長岡の動きをいったん止めるとさらに本命の左一本背負投に入り込む。関根が得意とする腕を抱える形を中心に据えた技の展開、長岡は一の矢の大内刈を受けた際に足が止まってしまい、続いて襲来した担ぎを受けきれずに転がってこれは「技有」。

窮地に陥った長岡スクランブルを試みるが関根は組まず、いなして心憎いまでにその意図に付き合わず。機を見ては組み際の左一本背負投で攻め返し、相手が出てくれば両袖で封じてと巧みに時間を消費し、残り17秒には双方に「指導」が与えられるところまで試合展開を減速させる。関根が左一本背負投を仕掛けたところでタイムアップ、最後まで関根ペースは覆らず桐蔭学園が「技有」優勢で1点を返す。

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兼藤仁士と千野根有我による副将戦

副将戦は桐蔭学園・千野根有我、崇徳・兼藤仁士ともに右組みの相四つ。千野根は釣り手をクロスに、あるいは奥襟を叩いて大外刈を狙うが兼藤はその圧をかい潜って左への担ぎ技で攻める。ともになんとか1点が欲しい、特に後衛を考えればなんとしてもここで1点もぎ取って試合を終わらせてしまいたい崇徳にとってはこの上なく重要な試合だが、千野根は兼藤のタイミングの良い担ぎ技にことごとく乗らず。2分47秒双方に「指導1」。以後も兼藤は片襟を差した右背負投、左背負投に、右一本背負投崩れの小内刈と良い技を連発するが腰の高さと崩しの深さが噛み合わない印象で千野根を投げるところまでには至らず。結局この試合は引き分けに終わる。

スコア2-1で崇徳高がリードを保ったまま、勝敗の行方は大将戦に委ねられる。

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村尾三四郎が大外刈、自身の両足を空中に置きながら安井彪翔を投げつけ「一本」

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大将戦は桐蔭学園・村尾三四郎が左、崇徳・安井彪翔が右組みのケンカ四つ。桐蔭学園が勝利するためには村尾が一本勝ちする必要があるが、力関係を考えればスコア上はビハインドながらこの時点で優位に立つのは桐蔭学園。

村尾は左大内刈と左内股で威圧しながら巧みな釣り手操作で試合を優位に進め、58秒安井に「指導1」。村尾はさらに内股、大外刈、左小外刈に体落と間断なく技を仕掛け続けて、1分46秒には安井に2つ目の「指導」が宣告される。

この試合の勝利ポイントを得た村尾だが、チームの勝利にはまだ足りずと表情を変えず淡々と攻撃継続。左大内刈で崩し、あとは「一本」を獲るのみとそのまま縦四方固を狙う。安井足を絡んで耐え切り、「待て」。この時点で経過時間は2分19秒、残り時間は1分19秒。

寝技で時間を消費することに成功、安井が粘り切る気配も漂い始めたこの直後のシークエンスで村尾が勝負に出る。左内股で頭を下げさせると続けて本命の左大外刈。遠間から刈り足を伸ばして膝を狙った初動の段階では間合いが遠く感じられたが、引き手の牽引を効かせて相手の動きを止めると、手ごたえを感じたが軸足で跳ねてその裏に乗り込む。それでも外側に逃れようとする安井の左脚の裏にいったん刈り足を着いて両脚を踏ん張り、ここで決め刈り込み。抱えようとした安井もろとも自身の両足が畳から浮く躍動感あふれる一撃、安井吹っ飛び文句なしの「一本」。

盤面の読み通り逆転完結。桐蔭学園が2-2の内容差で崇徳を振り切って決勝進出を決めた。

桐蔭学園高 ②-2 崇徳高
(先)佐藤虎太郎△優勢[僅差]○枇杷木勇樹
(次)湯本祥真△内股(1:32)○神垣和也
(中)関根聖隆○優勢[技有・一本背負投]△長岡季空
(副)千野根有我×引分×兼藤仁士
(大)村尾三四郎○大外刈(1:37)△安井彪翔

中堅戦のエース級対決の結果が大きかった。関根が長岡から獲ったことは、この試合のみならず全国大会におけるチームの評価と再対戦を考える上で非常に大きい。崇徳に連勝したことで全国大会の第1シード獲得がいよいよ見えて来た感もあり、桐蔭学園にとっては得るものの大きかった試合。

一方の崇徳にとっても、神垣が湯本を問題にせぬ凄味を見せつけ、松尾杯で敗れた枇杷木も失地回復。中堅戦のエース対決もも変則技のディティール1つでスコア上は敗れてしまったが決して力負けしたわけではない。結果として敗れはしたものの、評価を大きく落とすような試合ではなかった。依然全国大会の「四つ角」級の戦力厚い強豪であり、今後の伸びしろ豊かな好チームであると評しておきたい。

結果決まった決勝カードは、

大成高 - 桐蔭学園高

となった。黒潮旗大会決勝の再現カードである。

■ 決勝
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大成高は黒潮旗に続き桐蔭学園に連勝を狙う

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松尾杯に続く優勝に挑む桐蔭学園高

大成高は黒潮旗大会に続きシリーズ2つ目のタイトルを狙う。同大会で獅子奮迅の働きを見せたエース東部直希を押し立て、今大会は2回戦で東海大高輪台高(東京)を4-1、3回戦で近大福山高(広島)を2-1、準々決勝で埼玉栄高(埼玉)を1-1の内容差、準決勝は木更津総合高(千葉)を3-1で破って決勝進出決定。

桐蔭学園高は松尾杯に続くシリーズ連勝が掛かる。同大会に続きポイントゲッター賀持喜道を負傷で欠きながらもその勝ち上がりは高得点圏で安定、2回戦で古川工高(宮城)を5-0、3回戦で千葉経済大附高(千葉)を4-1、準々決勝で四日市中央工高(三重)を3-0、そしてこの日もっとも注目を集めた崇徳高(広島)との準決勝は2-2の内容差で勝利して決勝へと勝ち上がって来た。

オーダー順は下記。

大成高 - 桐蔭学園高
(先)大西陸斗 - 村尾三四郎
(次)東部直希 - 千野根有我
(中)小田和紀 - 佐藤虎太郎
(副)藤鷹裕大 - 湯本祥真
(大)三輪魁星 - 関根聖隆

黒潮旗の対戦から大成は弓削凜月(→小田和紀)、桐蔭学園は賀持喜道(→佐藤虎太郎)をそれぞれ外しての布陣。大成はエースの東部をポイントゲッター級が配される可能性が低い次鋒に突っ込み、桐蔭学園はダブルエースを先鋒と大将にセパレート配置、先制して我慢、最後にダメ押しというシナリオを選んだ。

2-2の代表戦決着であった前回の対戦での得点者は大成が東部直希(本戦で千野根有我、代表戦で村尾三四郎から一本勝ち)と大西陸斗(賀持喜道から優勢勝ち)、桐蔭学園が村尾三四郎(藤鷹裕大から一本勝ち)と関根聖隆(弓削凜月から一本勝ち)。

前回と対戦が被る次鋒戦は、その際の様相から言っても再び大成・東部直希が「一本」を得る可能性が高い。また先鋒戦はおそらく桐蔭学園・村尾三四郎が、大将戦は桐蔭学園・関根聖隆がそれぞれ勝利する可能性が高いと考えて良いはず。このポイントゲッターポジション3つの星勘定では2-1で桐蔭学園が上回る。

力関係がマップされていないのは前回出ていない2人がマッチアップする中堅戦と、未対戦カードである副将戦。バイプレイヤー同士の中堅戦は小田和紀の体格とパワーに佐藤虎太郎が担ぎ技で抗するという構図だが、組み手に粗さのある小田が佐藤の緻密な試合運びを塗りつぶすことは難しく、これはむしろ大成にとっては防衛ポジションになるのではないだろうか。

副将戦も身長184㎝の藤鷹を送り込む大成が体格に勝るが、これも実はなんとか凌がねばならない前線の凹み。湯本祥真は66kg級ながら松尾杯決勝では崇徳・枇杷木勇樹の高身長をものともせず決定的な「一本」を奪っており、階級差あれどもまだ柔道が粗い1年生の藤鷹は狙い目。ただし藤鷹は今大会も度々担ぎ技で決定的な位置まで潜り込まれているが地力の高さと直ぐな姿勢で弾き返し続けてここまで失点ゼロの2得点。湯本がこの藤鷹の体の強さというハードルを乗り越えられるかどうかポイントだ。一方の藤鷹は現実的に湯本を投げつけるだけの技は練れておらず、圧力を効かせての「指導」奪取でなんとか試合を作っていきたいところ。

というわけでポイントゲッターの「当たり」、バイプレイヤーポジションの相性ともに前回対戦では敗れている桐蔭学園が形勢有利。ポイントゲッター級の枚数にそもそも勝ることもあり、各人がキャパシティ内の仕事をこなせば十分勝利ラインに到達出来ると見ておいてよいだろう。

一方の大成としては黒潮旗同様東部の1点をテコに試合を塗りつぶし、たとえ代表戦にもつれ込んででも勝利を得たいところであるが、村尾を大西、関根を三輪が止めることは率直に言って相当ハードルが高い。相性的に不利とみなされる中堅、副将ポジションで点を積み重ねるしか勝利のシナリオが見えてこない苦しい配置と言える。もし「エース1枚」という戦力構成で桐蔭学園を倒すのであれば本来本戦の段階からエース同士の対決を狙った配置を行うべきだが、準決勝の様相からこの日の東部では「エースでエースを潰す」戦いは難しいと踏んだのか、どうか。

つまり大成にとっては平均値の戦いでは勝利ラインにはどうしても1点足りず、どこかで力以上の結果を出して試合を壊しにいかねばならないゲームのはず。見方を変えれば、ここまでロースコアゲームで勝利を続けて来た大成に全国大会で躍進するだけの爆発力が内包されているか、その潜在能力が試される一番であるとも言える。

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先鋒戦、村尾三四郎が大西陸斗から内股でまず「技有」

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村尾は凄まじい連続攻撃、展開を切ること許さず取り味のある技を連発

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村尾の大内刈「一本」で桐蔭学園が先制に成功

先鋒戦は大成・大西陸斗が右、桐蔭学園・村尾三四郎が左組みのケンカ四つ。村尾は左内股と左小外刈で開始から意欲的に攻め、40秒には狙いすまして鋭い左内股。大西が耐えるとそのままもろとも縦回転に体を捨て、早くも決定的な「技有」奪取。

以降も村尾の攻撃は衰えず。引き手争いに持ち込んで試合を減速させようとする大西の意図に付き合うことなくあくまで前進、一方的な組み手を作り出しては左内股、左大外刈に左大内刈と取り味のある技を仕掛け続ける。1分21秒大西に「指導1」、以後も村尾は落ち着いた表情で大外刈、内股、送足払、小外刈と両手を離さぬまま技を継ぎ続ける。牽制ではなくいちいちがまともに食えば即「一本」になりかねない危険な技であり、かつ体を捨てて試合を切ることなく、投げ切れぬとなればホームポジションに体を戻して次の動きでまたもや大技を狙うというまことに骨の太い攻め。ルーティンワークでなく相手の移動と技の作りがしっかり連動し、いちいち的確に釣り手の手首が返るその様はまるで引き立て稽古を行うかのよう。

2分41秒大西に2つ目の「指導」。展開を切れず、一方的に持たれたままこの技の放列に晒され続けた大西に掛かった精神的な圧力は尋常なものではないはず。続く展開で村尾が左内股から振り返りざまの大内刈に連絡するとついに大西の気持ちの糸が切れ、背中から激しく畳に落ちて「一本」。

試合時間2分58秒。相手の心を折った上で結果も得る、単なる「一本」に留まらない凄味漂う村尾の勝利で桐蔭学園が先制に成功。

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千野根有我が東部直希を攻める

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東部が千野根から小外掛「技有」

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佐藤虎太郎が小田和紀から右袖釣込腰「有効」

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間合いを掴んだ佐藤は再び袖釣込腰で「技有」も獲得

次鋒戦は大成・東部直希が左、桐蔭学園・千野根有我が右組みのケンカ四つ。自軍ベンチから「少しでも長く」との激を受けた千野根は釣り手で背中、引き手で襟を掴んで果敢に内股を仕掛けるが東部はまったく動ぜず。1分過ぎに深く脇を差して誘うと、千野根思わず大内刈の形で右足を差し入れて応じる。東部一歩踏み込んで左小外掛、膝を挙げながら抱え上げると千野根の巨体がグラリと裏に崩れて「技有」。東部はそのまま横四方固に抑え込んで盤石の「一本」。試合時間2分28秒、シナリオ通りに大成が1点を返す。

中堅戦は大成・小田和紀が右、桐蔭学園・佐藤虎太郎が左組みのケンカ四つ。開始早々佐藤が右袖釣込腰に潜り込み12秒「有効」を獲得。座り込まれた段階では小田は焦らず、またいだまま前に出て潰そうとしたがこれは明らかな対応ミス、両手を離さぬ佐藤もろとも右前隅に崩れ転がって肩から落ちる形となってしまった。

大成ベンチからは「勉強して来い」と激励が飛ぶが、間合いを掴んだ佐藤は33秒再び右袖釣込腰に潜り込む。小田まったく同じく両脚で佐藤を挟んで耐えることとなるが、確信があるぶん佐藤の技が深い。佐藤が前に走ると右前隅にもろとも転がることとなり、決定的な「技有」。

佐藤はさらに片襟を差しての左背負投に右袖釣込腰、両袖を得ての左袖釣込腰と左右に担ぎ技を連発。57秒に「指導1」を失った小田はなんとか圧力の掛かる形を作ろうと試みるが奥襟を得るたび佐藤は圧をずらしながら先んじて担ぎ技に飛び込み、小田はまったくきっかけを掴めない。

しかし残り1分を目前にして小田がついに光明を見出す。圧を掛けて相手の頭を下げ、佐藤が動くその出端に支釣込足を合わせて崩し、2分57秒佐藤に「極端な防御姿勢」で「指導1」。奮起した佐藤すぐに背負投を放つが小田は待ち構えて思い切り返し、あわやポイントという場面を作り出す。

どうやら小田が佐藤の柔道に慣れ始めた気配だが、ここで中断があり佐藤は間合いを取り直すことに成功。再開後、佐藤は小田の横移動に合わせて取り味のある横落を繰り出し、この試合初めて見せる勝負技にやや小田に振れかけていた試合の流れは再びリセット。残り14秒、小田が膝車で佐藤の動きを止めて大きく崩し、佐藤に「指導2」。勢いを得た小田は前進、逆らわず畳を割った佐藤に残り4秒で「指導3」が与えられるがここでタイムアップ。小田が戦い方を掴み掛けたが時すでに遅し、先に一刀浴びせた佐藤が「技有」優勢で勝利し桐蔭学園が勝ち越しに成功。

中堅戦は大成・小田和紀が右、桐蔭学園・佐藤虎太郎が左組みのケンカ四つ。開始早々佐藤が右袖釣込腰に潜り込み12秒「有効」を獲得。座り込まれた段階では小田は焦らず、またいだまま前に出て潰そうとしたがこれは明らかな対応ミス、両手を離さぬ佐藤もろとも右前隅に崩れ転がって肩から落ちる形となってしまった。

大成ベンチからは「勉強して来い」と激励が飛ぶが、間合いを掴んだ佐藤は33秒再び右袖釣込腰に潜り込む。小田まったく同じく両脚で佐藤を挟んで耐えることとなるが、確信があるぶん佐藤の技が深い。佐藤が前に走ると右前隅にもろとも転がることとなり、決定的な「技有」。

佐藤はさらに片襟を差しての左背負投に右袖釣込腰、両袖を得ての左袖釣込腰と左右に担ぎ技を連発。57秒に「指導1」を失った小田はなんとか圧力の掛かる形を作ろうと試みるが奥襟を得るたび佐藤は圧をずらしながら先んじて担ぎ技に飛び込み、小田はまったくきっかけを掴めない。

しかし残り1分を目前にして小田がついに光明を見出す。圧を掛けて相手の頭を下げ、佐藤が動くその出端に支釣込足を合わせて崩し、2分57秒佐藤に「極端な防御姿勢」で「指導1」。奮起した佐藤すぐに背負投を放つが小田は待ち構えて思い切り返し、あわやポイントという場面を作り出す。

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終盤小田が攻め返し、「指導3」まで奪回。

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藤鷹裕大と湯本祥真による副将戦

副将戦は大成・藤鷹裕大が左、桐蔭学園・湯本祥真が右組みのケンカ四つ。湯本が肘抜きの右背負投を中心に攻め、感触を掴んだ37秒には身長差に怖じず右内股で跳ねる大胆な攻めを見せるが、1分過ぎに試みた座り込みの右背負投に藤鷹が良いタイミングで左内股を合わせると以後はやや慎重。藤鷹が前進し、1分40秒湯本に「取り組まない」咎の「指導1」。

大枠試合を優位に運びながら自分が「指導」を失ってしまった湯本は奮起、藤鷹の頭を下げさせ、帯を掴んでの右内股を放つが藤鷹これまでの試合と同じく体幹の強さだけで耐え切り崩れず。内股の打ち合いとなった最終盤には藤鷹が極端に腰を引いて防御する場面も訪れるが、とうとう双方に決定打はなし。この試合は引き分けに終わり、桐蔭学園のリードが継続したまま試合は最終戦へと引き継がれる。

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関根聖隆が三輪魁星から左一本背負投「一本」

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迎えた大将戦は桐蔭学園のエース関根聖隆が三輪魁星を圧倒。「肩で当たれ!」とのベンチの叱咤に応えて狭い間合いからぶつかるように担ぎ技を狙い続け、38秒には左一本背負投崩れの大外刈であわやポイントという場面を作って一方的な攻勢。

そして53秒、狙いすまして左一本背負投に入り込み、「一本」奪取でミッション達成。目論見通りダメ押しの1点獲得、桐蔭学園が3-1で勝利し優勝を決めることとなった。


桐蔭学園高 3-1 大成高
(先)村尾三四郎○大内刈(2:58)△大西陸斗
(次)千野根有我△合技[小外掛・横四方固](2:28)○東部直希
(中)佐藤虎太郎○優勢[技有・袖釣込腰]△小田和紀
(副)湯本祥真×引分×藤鷹裕大
(大)関根聖隆○一本背負投(0:53)△三輪魁星

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桐蔭学園ベンチは手を叩き、しかし落ち着いて関根の勝利を見守る

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準決勝、千野根有我が村尾三四郎の肩を叩いて試合場に送り出す

桐蔭学園の快勝。揃えた枚数、そして個々の仕事ぶりとほぼ文句なしの一戦であった。

桐蔭学園はこの冬季シリーズでチームとしての完成度を急速に上げた感あり。各人が自分の柔道の特性とチーム内での役割を理解し、総体としてしっかり「戦線」が張れている。湯本、佐藤の試合巧者タイプだけでなく小回りの利かない千野根までが自身の長所と弱点を理解して、5戦全体を俯瞰して戦えていることは大いに評価すべき。各校戦力整わずまだ自軍戦力の見極めに時間と労力を費やしている今代の高校柔道界において、戦力はもちろんその練度において他を頭ひとつ引き離しつつあると見ていいだろう。

村尾、賀持がまだ力をどう得点に昇華すべきか測りかねていた前代の金鷲旗時はもちろん、個々の力はあるが戦い方に凹凸激しく戦線の意思統一感に欠けていた10月の朱雀杯時とはもはや全く別のチームだ。黒潮旗の敗戦はもちろんのこと、賀持の戦線離脱が生んだ危機感がこの一体感の醸成と自己理解に寄与していることは間違いない。賀持負傷という大事件すら少なくとも現時点では「結果的には吉」のシナリオに変換することに成功しているわけで、非常に良い風を背に受けている印象だ。

次なる課題は東海大相模との決戦待ち受ける神奈川県予選を無事に勝ち抜けること。桐蔭学園としては大成と崇徳に勝利しての松尾杯・水田杯連覇は為すべき仕事を全て為し、しっかりプレッシャーを掛けた形。あとはその東海大相模が参加する27日の若潮杯で他強豪校と東海大相模の力がどうマップされるか。シリーズを締めるこの大会が、神奈川県予選、そして全国大会の様相を決める最大の曲がり角だ。

敗れた大成は黒潮旗に続いてその地力の高さとともに、決定的な枚数の不足を見せてしまった感あり。全国大会の上位対戦を勝ち抜くには東部に迫るポイントゲッター級の輩出はもちろん、東部自身にも明らかにあと一段のレベルアップが必要。武道館に姿を見せるときにどれほどまで力をつけているか、その成長に大いに期待したい。

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優勝の桐蔭学園高

【入賞者】

優 勝:桐蔭学園高(神奈川)
準優勝:大成高(愛知)
第三位:木更津総合高(千葉)、崇徳高(広島)
優秀校:近江高(滋賀)、埼玉栄高(埼玉)、四日市中央工高(三重)、市立習志野高(千葉)

最優秀選手:関根聖隆(桐蔭学園高)
優秀選手:村尾三四郎(桐蔭学園高)、東部直希(大成高)、大淵泰志郎(木更津総合高)、神垣和成(崇徳高)、牧本聡真(近江高)、西願寺哲平(埼玉栄高)、關龍聖(市立習志野高)、石川大夢(四日市中央工高)

高松正裕・桐蔭学園高監督のコメント
「(-大会を振り返って?)、関根のポイントゲッターとしての絶対性が確認出来たこと、選手が仕事を理解し始め、ペース配分が出来てきたことが収穫です。穴が穴でなくなって来たかな、とは思います。(-チーム成長の因は?)うーん、本当に簡単な課題、例えば『負けても戦い切る』とかそういうことを個々に1つ与えて、それをしっかりクリアすることを続けられているというのはあります。あんまり要求しても出来ないので、あくまで手の届くことを、1つずつ(笑)。繰り返すうち、試合ごとに、こうやれば勝てるという感触が選手の中に出来上がって来ていることは感じます。(-雰囲気が良いですね?)そうですね。明るいチームです。千野根と関根がよく喋り、村尾がつつくという感じです。(-県予選に向けて手ごたえが得られたのでは?)結果は結果で、もうこれはおしまいです。神奈川県予選というのはまったく独特。今年は強い、というチームが負けてしまったことも、負かしたこともありますので一切油断は出来ません。これからしっかり頑張ります」


【準々決勝】

大成高(愛知) ①-1 埼玉栄高(埼玉)
木更津総合高(千葉) 1-0 近江高(滋賀)
桐蔭学園高(神奈川) 3-0 四日市中央工高(三重)
崇徳高(広島) 3-0 市立習志野高(千葉)

【準決勝】

大成高 3-1 木更津総合高

桐蔭学園高 ②-2 崇徳高


【決勝】

桐蔭学園高 3-1 大成高


文責:古田英毅

※ eJudoメルマガ版1月3日掲載記事より転載・編集しています。

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