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グランドスラム東京2016・第2日女子2階級(63kg級、70kg級)レポート

(2016年12月25日)

※ eJudoメルマガ版12月25日掲載記事より転載・編集しています。
グランドスラム東京2016・第2日女子2階級(63kg級、70kg級)レポート
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63kg級決勝、カトリン・ウンターヴルツァハーの左小外掛が嶺井美穂を捉え「有効」

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準々決勝、嶺井がトルステニャクから大内刈「有効」

■63kg級・優勝はウンターブルツァハー、2位の嶺井美穂は五輪王者トルステニャク破る快挙
(エントリー26名)

【入賞者】
1.UNTERWURZACHER, Kathrin (AUT)
2.MINEI, Miho (JPN)
3.TRSTENJAK, Tina (SLO)
3.PINOT, Margaux (FRA)
5.DAVYDOVA, Daria (RUS)
5.NOUCHI, Aimi (JPN)
7.HERMANSSON, Mia (SWE)
7.HAECKER, Katharina (AUS)

【日本代表選手成績】

嶺井美穂(桐蔭横浜大1年) 2位
能智亜衣美(筑波大3年) 5位
津金恵(筑波大3年) 2回戦敗退
荒木穂乃佳(兵庫県警) 2回戦敗退

第2シードのカトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)が決勝で嶺井美穂(桐蔭横浜大1年)を破ってワールドツアー6度目、グランドスラム東京では初めての優勝を達成。ウンターヴルツァハーは2回戦から登場すると、まず57kg級から階級を変更してきたばかりのキャサリン・ブーシェミンピナード(カナダ)に谷落2発の合技「一本」(3:55)で勝利、続く準々決勝では能智亜衣美(筑波大3年)を横四方固「一本」(1:55)で破ると、準決勝ではダリア・ダフィドワ(ロシア)を隅返「技有」からの片手絞「一本」(3:08)で撃破して決勝の畳へと駒を進めた。

もう一人の決勝進出者は前述の通り嶺井美穂。嶺井はノーシード位置からのスタートだったが、1回戦ではマグダレン・クルサコワ(オーストリア)を大内刈「一本」(1:51)、2回戦ではヤニカ・パスコーリノ(ブラジル)を上四方固「一本」(1:42)と快勝続きで準々決勝へと進出。最大の山場と目された準々決勝ではリオデジャネイロ五輪金メダリストのティナ・トルステニャク(スロベニア)とマッチアップ、この難敵に右大内刈「有効」で勝利すると、準決勝ではマルゴ・ピノ(フランス)を延長戦までもつれ込む耐久戦の末に大外返「有効」 (GS1:33)で下して決勝進出決定。

決勝戦は大枠嶺井のペースで進行したが、試合中盤にウンターヴルツァハーが左小内刈で「有効」を奪って勝利。嶺井は五輪王者トルステニャクの打倒という大仕事には成功したが、シニア国際大会での優勝はまたもお預けとなった。63kg級はリオデジャネイロ五輪時に代表田代未来(コマツ)以外に出場圏内の選手がおらずリザーバー不在に陥った階級で、国際大会上位戦線で常時戦い得る2番手選手の育成が急務だ。嶺井としてはぜひとも優勝してこの位置を確保したかったところだが、結果は2位。日本人選手としては最高位であるが、決勝で敗れた相手がトップ層からは一段落ちるウンターブルツァハーであること、首級を挙げたトルステニャクが実は日本選手にとっては戦いやすい相手でこれまで数々の打倒歴があること(※田代は過去3勝、鍋倉那美も今年6月のグランプリ・ブダペスト大会決勝で勝利している)を考えれば、今大会の成績は決定的な評価材料とまではなりにくい。2番手不在の状況は継続している、と考えておいたほうが良いだろう。

今年選抜体重別と講道館杯を制している能智亜衣美は前述の通り準々決勝でウンターヴルツァハーに敗退。敗者復活戦ではカタリナ・ヘッカー(オーストラリア)を僅か34秒の間に左小外刈で2度投げつける合技「一本」(0:34)で一蹴してみせたが、3位決定戦ではマルゴ・ピノの掛け潰れ戦術を前に最後まで相手を捉えることが出来ず「指導1」で敗れた。序列1番手に片手が掛かった状況であっただけに、こちらも非常に勿体ない結果。

津金恵(筑波大3年)と荒木穂乃佳(兵庫県警)はともに2回戦敗退。津金は1回戦でムンクバット・ダヴァースレン(モンゴル)を右大外刈「一本」(2:58)で下して2回戦に進出も、2回戦ではマルゴ・ピノを相手になかなか技を仕掛けられず「指導1」優勢で敗れた。荒木は1回戦でダニエル・オリベイラ(ブラジル)に肘抜きの右背負投で2度投げつけての合技「一本」(1:59)で勝利、しかし2回戦ではカタリナ・ヘッカーを相手に、本戦終了間際の残り5秒に首抜きのミスを犯して「指導」失陥。「指導1」対「指導2」の優勢で敗れた。

嶺井と能智のコメント、プールファイナル結果、決勝ラウンドと日本選手全試合の結果および戦評は下記。

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63kg級入賞者。左から嶺井、ウンターブルツァハー、トルステニャク、ピノ。

嶺井美穂選手のコメント
「3回目の出場で、1回目と2回目は初戦で敗れています。あこがれの(決勝戦の)舞台を踏めたことは自分にとってプラスだと思います。(-トルステニャクに勝利したことについて)金メダリストに胸を借りるつもりで、自分の攻める柔道をやり抜こうと思いました。(-アピールになったのではないか)何度もチャンスがあるわけではないので、国際大会に選んでもらえるからには結果を残さないといけない。勝ち切れないのは課題です。(-今後について)一つ一つの試合の延長線に東京五輪が置けるように、全力でしっかりと準備をして、自分の攻める柔道スタイルを貫き通してどんな選手にも通用する柔道をしていきたいです。東京五輪で金メダルを取ります。」

能智亜衣美選手のコメント
「1回戦から思ったように出来ていなかったので、今の実力ではメダルが取れないのが現実だとわかりました。(-2回戦で最後に投げを決めたことについて)相手が自分の好きなように組ませてくれない中で、それでも投げたり『指導』を取っていかなければいけない。相手が出てきたところに内股を合わせられましたが、前半の相手があまり組み合わない時間を攻めきれなかったので、そういうところが課題です。(-今後について)4月の選抜体重別と皇后杯で、自分でチャンスを掴むしかないと思います。来年の世界選手権を考えるとこの大会で結果を残すことが重要でした。その点では全然自分をアピール出来ていません。チャンスを貰っているのに掴むことが出来ない自分の甘さがすごく悔しいです。選抜体重別で優勝することが絶対で、皇后杯で力の強い重量級相手に組み手と技で向かっていく姿勢を見せることが大切だと思います。」

【プールファイナル結果】

[準々決勝]

嶺井美穂○優勢[有効・大内刈]△ティナ・トルステニャク(スロベニア)
マルゴ・ピノ(フランス)○優勢[指導2]△ミア・ヘルマンソン(スウェーデン)
カトリン・ウンターブルツァハー(オーストリア)○横四方固(1:55)△能智亜衣美
ダリア・ダフィドワ(ロシア)○優勢[有効・小内巻込]△カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)

【準決勝ラウンド以降結果、戦評】

[敗者復活戦]

ティナ・トルステニャク(スロベニア)○小外掛(0:41)△ミア・ヘルマンソン(スウェーデン)
右相四つ。開始早々、トルステニャクが場外際の左一本背負投で「有効」を先行。直後、ヘルマンソンが放ったクロスグリップの右大内刈をトルステニャクが首を抱えた左小外掛に切り返して「一本」。トルステニャクが格の違いを見せつけ3位決定戦進出。

能智亜衣美○合技[小外刈・小外刈](0:34)△カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)
能智が左、ヘッカーが右組みのケンカ四つ。ヘッカー両袖で粘る構えを見せるが能智は握らせたまま左小外刈で押し込み「技有」を獲得、ここまで僅か12秒。ヘッカー続く展開では釣り手で深々と背中を握るが能智は持たせたまま相手の重心を巧みにコントロール、体重の戻りを捉えて左小外刈で抜き上げ、さらに崩れた相手を押し込み「技有」を追加。試合時間は34秒、合技「一本」で試合決着。能智が圧勝で3位決定戦へと駒を進めた。

[準決勝]

嶺井美穂○優勢[有効・大外返](GS1:33)△マルゴ・ピノ(フランス)
右相四つ。地力に勝る嶺井に対して、ピノはリーチの長さを活かし組み手を徹底管理することで対抗。引き手で突いて距離を取り、さらに左の担ぎ技に掛け潰れて手数での優位を演出する。試合中盤、ピノに奥襟を持たれた嶺井は片襟の位置に釣り手を置いていったん距離を取る。この際嶺井は襟を掴んでいなかったが、2分4秒、片襟の咎で嶺井に「指導」が宣告される。これを受けた嶺井は一段ギアを上げて組み際や不十分な状態からでも積極的に技を仕掛け、これを起点に十分な組み手を作ると圧を感じたピノを度々畳に這わせる。試合時間の経過に従って地力の差が展開の差となって表れ始め、3分41秒、ついにピノに「指導」。試合はGS延長戦へと突入する。延長戦でもピノは徹底的に嶺井の釣り手を絞るが、嶺井も不十分な組み手ながら足技と前進圧力で展開を譲らず動的膠着が続く。1分過ぎからピノ優位の時間が続き、「指導」を警戒した嶺井が釣り手を絞られたまま右大内刈を仕掛けるとピノが大内返。嶺井は大きく崩れるが腹這いで凌いでノーポイント。直後の展開、優位を作りながら「指導」を奪えない展開に業を煮やしたピノが左大外刈で勝負に出ると、嶺井は投げ合いに応じて大外返。体の伸び切ったピノは勢い良く飛んで「有効」。辛抱強く戦った嶺井がみごと決勝進出を果たした。

カトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)○片手絞(3:08)△ダリア・ダフィドワ(ロシア)
左相四つ。相四つ横変形からウンターヴルツァハーは巴投、ダリアが右小内巻込を繰り出し互いに攻めあう展開が続く。終盤、もつれ際にウンターヴルツァハーが隅返で「技有」を奪取、そのまま片手絞「一本」に仕留めて決着。

[3位決定戦]

ティナ・トルステニャク(スロベニア)◯優勢[有効・一本背負投]△ダリア・ダフィドワ(ロシア)
トルステニャクが右、ダフィドワが左組みのケンカ四つ。ファーストコンタクトでトルステニャクが左一本背負投「有効」を先行。以降、トルステニャクは右組みから左一本背負投を狙う得意の形で試合を展開し、連続で技を仕掛けるとダフィドワに「指導」が宣告される。終盤にもトルステニャクは崩上四方固で「有効」を追加。この抑え込みが解けた時点でほとんど残り時間はなくそのまま試合は終了となった。トルステニャク、実力差を見せつけて3位を確保。

マルゴ・ピノ(フランス)○優勢[指導1]△能智亜衣美
ピノが右、能智が左組みのケンカ四つ。ピノは肘抜きの右背負投で座り込むことを続け、見た目の手数を積み続ける。能智は小外刈を当てるが牽制の域を出ず、1分2秒、能智に消極的との咎で「指導1」。以降も能智が組み手の手順を踏む間にピノは左右の背負投に座り込む先手攻撃を続けて手数の優位を演出。片手技も多く有効打とは認められないが、能智はなかなか展開を取り戻すことが出来ない。2分27秒、能智が放った組み際の左内股は威力あり、ピノ1回転するも伏せて「待て」。以後の展開で能智が引き手で袖の外側、釣り手で高い位置を持つほぼ完ぺきな組み手を作る場面が訪れるがピノが釣り手で上から背中を叩くと能智は組み手をリセットせざるをえず、あっさりチャンスは潰える。結局捕まえきれぬままタイムアップ、能智は惜しくも表彰台を逃した。

[決勝]

カトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)○優勢[有効・小外刈]△嶺井美穂
嶺井が右、ウンターヴルツァハーが左組みのケンカ四つ。ウンターヴルツァハーが背中を抱き、嶺井が右背負投で凌ぐ展開が続く。1分過ぎ、嶺井が切れ味鋭い右大内刈でウンターヴルツァハーを大きく崩すがノーポイント。さらに続く展開でも嶺井がウンターヴルツァハーの右小外刈を右大内刈で切り返して畳に這わせる。試合のペースは完全に嶺井と思われたが、直後にウンターヴルツァハーが嶺井の首を巻き込んで強烈な左小外刈。あわや「一本」かという強烈一撃だったが、嶺井は体を捩ってなんとか「有効」にとどめる。リードを許した嶺井は以後ペースを上げて追い上げにかかるが、「指導1」を奪い返したのみでタイムアップ。結果「有効」優勢でウンターブルツァハーが優勝を決めた。嶺井は試合の大部分を支配しながら惜しくも表彰台の頂点に手が届かなかった。

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準決勝、嶺井がピノから大外返「有効」

【日本代表選手全試合結果、戦評】

嶺井美穂(桐蔭横浜大1年)
成績:2位


[1回戦]

嶺井美穂○大内刈(1:51)△マグダレン・クルサコワ(オーストリア)
右相四つ。嶺井が右支釣込足でクルサコワを伏せさせ、寝技に繋いで崩上四方固で抑え込むが体勢不十分で取り逃がしノーポイント。1分35秒、嶺井がガップリ組み合った状態で右大内刈から右内股と連絡し「有効」を奪取。奮起したクルサコワ思い切り奥襟に叩きに来るが、嶺井は体を回しながら背中を叩いて迎え撃ち、右内股で投げつけ「一本」。嶺井は得意の接近戦で力を発揮し余裕の勝ち上がり。

[2回戦]

嶺井美穂○上四方固(1:42)△ヤニカ・パスコーリノ(ブラジル)
嶺井が右、パスコーリノが左組みのケンカ四つ。懐の深いパスコーリノが釣り手で背中を掴むと、これを嫌った嶺井は掛け潰れてしまい49秒「指導1」失陥。しかし、直後の展開で嶺井は右払腰を仕掛けてパスコーリノを伏せさせ、間を置かずに寝技を展開して上四方固「一本」。リードを許すもすぐさま逆転、嶺井があっさりミスを収拾して形で準々決勝進出決定。

[準々決勝]

嶺井美穂○優勢[有効・大内刈]△ティナ・トルステニャク(スロベニア)
右相四つ。審判の「はじめ」の声と同時に両者勢い良く飛び出し相手に組み付く。嶺井はすぐさま右内股と右小外刈を仕掛け、続いて組み際の右内股でトルステニャクを大きく崩す。これはポイントが想起される一撃であったが、投げ際に釣り手が離れてしまいノーポイント。以後も両者攻撃の手を休めることはなく、トルステニャクが左一本背負投を狙うと嶺井は右内股でこれを迎え撃つ。この形の攻防が続いたのち、トルステニャクはいったん組み手の手順を変更して右奥襟を持って嶺井を伏せさせ寝技を展開、引き込んで腕挫十字固を狙う。さらに直後、トルステニャクは組み際に奇襲技の谷落で嶺井を大きく崩しあわやポイントという場面を作り出す。この技は拘束が甘く嶺井が体を捩ってノーポイントとなったが、形上トルステニャクの技で終わる展開が続いたことで1分33秒嶺井に「指導」宣告。リードを得たトルステニャクは加速、組み際の左一本背負投や右内股で嶺井を攻める。このままトルステニャクのペースで試合が進行すると思われたが、2分13秒、トルステニャクが仕掛けた組み際の谷落を嶺井が受け止め右大内刈に切り替えして「有効」奪取。ビハインドとなったトルステニャクはここから左組みにスイッチしてスクランブルをかけるが、嶺井は臆せず前に出て受け切り、トルステニャクの追撃を2つ目となる「指導」のみにとどめてクロージング。嶺井が「有効」優勢で勝利し準決勝進出を決めた。

[準決勝]

嶺井美穂○優勢[有効・大外返](GS1:33)△マルゴ・ピノ(フランス)
右相四つ。地力に勝る嶺井に対して、ピノはリーチの長さを活かし組み手を徹底管理することで対抗。引き手で突いて距離を取り、さらに左の担ぎ技に掛け潰れて手数での優位を演出する。試合中盤、ピノに奥襟を持たれた嶺井は片襟の位置に釣り手を置いていったん距離を取る。この際嶺井は襟を掴んでいなかったが、2分4秒、片襟の咎で嶺井に「指導」が宣告される。これを受けた嶺井は一段ギアを上げて組み際や不十分な状態からでも積極的に技を仕掛け、これを起点に十分な組み手を作ると圧を感じたピノを度々畳に這わせる。試合時間の経過に従って地力の差が展開の差となって表れ始め、3分41秒、ついにピノに「指導」。試合はGS延長戦へと突入する。延長戦でもピノは徹底的に嶺井の釣り手を絞るが、嶺井も不十分な組み手ながら足技と前進圧力で展開を譲らず動的膠着が続く。1分過ぎからピノ優位の時間が続き、「指導」を警戒した嶺井が釣り手を絞られたまま右大内刈を仕掛けるとピノが大内返。嶺井は大きく崩れるが腹這いで凌いでノーポイント。直後の展開、優位を作りながら「指導」を奪えない展開に業を煮やしたピノが左大外刈で勝負に出ると、嶺井は投げ合いに応じて大外返。体の伸び切ったピノは勢い良く飛んで「有効」。辛抱強く戦った嶺井がみごと決勝進出を果たした。

[決勝]

嶺井美穂△優勢[有効・小外刈] ○カトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)
嶺井が右、ウンターヴルツァハーが左組みのケンカ四つ。ウンターヴルツァハーが背中を抱き、嶺井が右背負投で凌ぐ展開が続く。1分過ぎ、嶺井が切れ味鋭い右大内刈でウンターヴルツァハーを大きく崩すがノーポイント。さらに続く展開でも嶺井がウンターヴルツァハーの右小外刈を右大内刈で切り返して畳に這わせる。試合のペースは完全に嶺井と思われたが、直後にウンターヴルツァハーが嶺井の首を巻き込んで強烈な左小外刈。あわや「一本」かという強烈一撃だったが、嶺井は体を捩ってなんとか「有効」にとどめる。リードを許した嶺井は以後ペースを上げて追い上げにかかるが、「指導1」を奪い返したのみでタイムアップ。結果「有効」優勢でウンターブルツァハーが優勝を決めた。嶺井は試合の大部分を支配しながら惜しくも表彰台の頂点に手が届かなかった。

能智亜衣美(筑波大3年)
成績:5位


[1回戦]

能智亜衣美○内股(2:13)△セナタム・オラピン(タイ)
能智が左、オラピンが右組みのケンカ四つ。能智が釣り手を奥襟に入れるとオラピン肩車で掛け潰れ、これに対し1分47秒偽装攻撃の「指導」。直後、能智は組み手を完成させるとすかさず左内股で投げ「一本」。一発を狙い過ぎて技出しが遅い感はあったが、おおむね順調な立ち上がり。

[2回戦]


能智亜衣美○優勢[技有・内股]△スー・チャン(中国)
能智が左、スーが右組みのケンカ四つ。能智が足技と左内股で相手を崩し続け、残り51秒でついに「指導1」を奪取。さらに試合終了間際、スーが前に出てきた所に左内股を合わせて「技有」も追加。危なげなく勝利を決める。

[準々決勝]

能智亜衣美△横四方固(1:55)○カトリン・ウンターヴルツァハー(オーストリア)
左相四つ。ウンターヴルツァハーが釣り手を背中に入れると能智は左内股を掛け潰れて回避を試みる。しかし寝際の隙を突かれて横四方固で抑え込まれ、痛恨の「一本」失陥。能智は敗者復活戦へと回る。

[敗者復活戦]

能智亜衣美○合技[小外刈・小外刈](0:34)△カタリナ・ヘッカー(オーストラリア)
能智が左、ヘッカーが右組みのケンカ四つ。ヘッカー両袖で粘る構えを見せるが能智は握らせたまま左小外刈で押し込み「技有」を獲得、ここまで僅か12秒。ヘッカー続く展開では釣り手で深々と背中を握るが能智は持たせたまま相手の重心を巧みにコントロール、体重の戻りを捉えて左小外刈で抜き上げ、さらに崩れた相手を押し込み「技有」を追加。試合時間は34秒、合技「一本」で試合決着。能智が圧勝で3位決定戦へと駒を進めた。

[3位決定戦]

能智亜衣美△優勢[指導1] ○マルゴ・ピノ(フランス
ピノが右、能智が左組みのケンカ四つ。ピノは肘抜きの右背負投で座り込むことを続け、見た目の手数を積み続ける。能智は小外刈を当てるが牽制の域を出ず、1分2秒、能智に消極的との咎で「指導1」。以降も能智が組み手の手順を踏む間にピノは左右の背負投に座り込む先手攻撃を続けて手数の優位を演出。片手技も多く有効打とは認められないが、能智はなかなか展開を取り戻すことが出来ない。2分27秒、能智が放った組み際の左内股は威力あり、ピノ1回転するも伏せて「待て」。以後の展開で能智が引き手で袖の外側、釣り手で高い位置を持つほぼ完ぺきな組み手を作る場面が訪れるがピノが釣り手で上から背中を叩くと能智は組み手をリセットせざるをえず、あっさりチャンスは潰える。結局捕まえきれぬままタイムアップ、能智は惜しくも表彰台を逃した。

津金恵(筑波大3年)
成績:2回戦敗退


[1回戦]

津金恵○大外刈(2:58)△ムンクバット・ダヴァースレン(モンゴル)
津金が右、ムンクバットが左組みのケンカ四つ。開始早々、津金が右内股で「技有」を奪いリード。2分28秒に「指導」を追加すると、片袖の右大外刈で相手を畳に沈め「一本」。格下を問題にせず初戦突破。

[2回戦]

津金恵△優勢[指導1]○マルゴ・ピノ(フランス)
右相四つ。ピノが組み際の左一本背負投と右背負投で先手を取り、技が出ない津金に1分23秒「指導」。津金は取り味のある右大外刈に右内股と繰り出すが山場を作るには至らず、「指導1」のビハインドのまま試合終了。

荒木穂乃佳(兵庫県警)
成績:2回戦敗退


[1回戦]

荒木穂乃佳○合技[背負投・背負投](1:59)△ダニエル・オリベイラ(ブラジル)
荒木が右、オリベイラが左のケンカ四つ。オリベイラが上から背中を抱き、荒木が下から突いて距離を取るという構図。試合は荒木が一貫して優勢で、1分30秒には肘抜きの右背負投を巻き込むように決めて「技有」を獲得。直後の展開、荒木はオリベイラの左内股に肘抜きの右背負投を合わせて合技「一本」。

[2回戦]

荒木穂乃佳△優勢[指導2]○カタリナ・ヘッカー(オーストリア)
右相四つ。21秒、荒木の組み手を嫌って場外に出たヘッカーに故意に場外に出た咎で「指導」が宣告される。中盤、荒木はヘッカーの両袖を抑えて前進に次ぐ前進、「場外」による「指導」を狙う。しかし主審は的確に状況を裁定、1分35秒荒木の側に押し出しの「指導」が与えられる。以降は荒木優位のまま最終盤まで動的膠着が続く。このまま延長戦突入かと思われたが、本戦終了目前の3分55秒、ヘッカーの奥襟を嫌った荒木が「首抜き」のミスを犯し致命的な「指導」失陥。荒木は抱き付きの右大内刈でスクランブルをかけるがそのままタイムアップ。「指導1」対「指導2」の優勢で荒木の予選ラウンド敗退が決定。

■ 70kg級・新添左季が国際大会初優勝、決勝で新井千鶴を破る
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決勝、新添左季が新井千鶴を足車で攻める

(エントリー23名)

【入賞者】
1.NIIZOE, Saki (JPN)
2.ARAI, Chizuru (JPN)
3.MAEDA, Naeko (JPN)
3.RODRIGUEZ, Elvismar (VEN)
5.ONO, Yoko (JPN)
5.ZUPANCIC, Kelita (CAN)
7.POSVITE, Fanny Estelle (FRA
7.MATNIYAZOVA, Gulnoza (UZB)

【日本代表選手成績】

新添左季(山梨学院大2年) 優勝
新井千鶴(三井住友海上) 2位
前田奈恵子(JR東日本) 3位
大野陽子(コマツ) 5位

講道館杯王者の新添左季(山梨学院大2年)が新井千鶴(三井住友海上)との決勝戦を制して優勝。シニア国際大会初出場でいきなりグランドスラム東京というビッグタイトルを手にすることとなった。

新添は1回戦でバーバラ・ティモ(ブラジル)を左内股「有効」で下すと、2回戦ではパワーが売りの難敵マリーイヴ・ガヒエ(フランス)を豪快な左内股「一本」(1:01)で一蹴。準々決勝ではエルヴィスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)を「指導1」優勢で破ってベスト4入りを決める。準決勝は前田奈恵子(JR東日本)とマッチアップ、奥襟を持って試合を優位に進め「指導2」対「指導3」の優勢で勝利して決勝進出決定。

一方第1シードの新井は2回戦から登場すると、ヨウ・ジェユン(韓国)を崩上四方固「一本」(2:06)で下す順調なスタート。勝負どころとなった準々決勝の相手は毎回苦戦を強いられる大野陽子(コマツ)であったが、新井はこの難敵を延長戦の末鮮やかな左内股「一本」(GS1:21)で突破。続く準決勝ではツアーで「表彰台の番人」というべき位置にある中堅選手ケリタ・ズパンシック(カナダ)を横四方固「一本」(3:34)で下してぶじ決勝へと駒を進めることとなった。

決勝は新添が新井の釣り手を徹底して封じる形で試合が展開。開始早々に両手で袖を切った咎で新井に与えられた「指導」がそのまま決勝点となり、「指導1」対「指導2」で新添が勝利することになったた。新添は2回戦のガヒエ戦での豪快な左内股「一本」以降は投技によるポイントはなし。左内股を警戒する相手に十分な組み手を作らせてもらえない状況が続いたが、相手の警戒心を心理的圧力として利用してあくまで強気の組み手を展開、相手に組み手でミスを犯させることで試合を優位に進めた。新添はワールドツアー初参戦にしていきなりのビッグタイトル獲得、トップ選手が復帰してくるであろう冬季欧州シリーズでどこまで結果を残せるか非常に楽しみだ。

準優勝の新井は依然として長い低迷から抜け出せていない様子。技一発の威力十分の新井は自分の形になれば強いが、そこに至るまでの手立てのなさがネック。近年は「手立てのなさ」を自覚すること自体で自滅している感すらある。今大会でも自分の形を作れずに決めきれない試合が続いたが、準決勝の大野戦では苦しんだ末に今までの新井らしからぬ冴えた組み立て(戦評を参照願いたい)から左内股に繋いで、かつての出世期を思わせる鮮やかな「一本」を見せてくれた。ここ4年の中でもっとも素晴らしい数秒間であり、新井が一段階段を上るきっかけになり得る攻防であったはず。これがピンポイントでたまたま出た形なのか、それとも低迷から抜け出すきっかけを掴みつつあるということなのか、今後の戦いぶりを注視したい。

前田は大野との3位決定戦を制して3位。1回戦でエステル・スタム(ジョージア)を「指導1」で下すと、2回戦では今大会海外勢ナンバーワンの難敵キム・センヨン(韓国)と対戦。この試合ではしぶとさが売りのキムのお株を奪う巧みな戦いぶりを披露し、この大一番を「指導2」対「指導3」で制して準々決勝進出。準々決勝ではグルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)を「指導1」対「指導2」で破ってついにベスト4入りを決めた。準決勝では片襟に厳しい審判傾向もあって新添の前に「指導2」対「指導3」で敗れたが、3位決定戦では延長戦に入ってからの猛攻により大野にGS「指導2」(GS2:05)で勝利、見事表彰台登攀を果たした。

講道館杯準優勝の大野は前述の通り新井と前田に敗れて5位。2回戦はアンナ・ベルンホルム(スウェーデン)に横四方固「一本」(1:27)で快勝したが、準々決勝で新井に左内股「一本」で敗戦。敗者復活戦ではファニーエステル・ポスヴィト(フランス)を「指導2」で破ったが、。迎えた3位決定戦では前述の通り前田に敗れて表彰台に手が届かなかった。敗れた2試合では良い組み手を作っても技を出すことが出来ず、そのスタイルは投げることではなく組み手の優位確保が終着点と評されても仕方のない「積極的消極柔道」。リオ五輪以来の投げを重視する審判傾向下にあってこのスタイルでは当然なかなか試合を決めることが出来ず、結局延長戦に入ってから明確に投げを狙ってくる相手の前にことごとく苦杯を喫した形だ。

日本選手のコメント、プールファイナル結果、決勝ラウンドと日本選手全試合の結果および戦評は下記。

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優勝の新添左季

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70kg級入賞者。左から新井、新添、前田、ロドリゲス。

新添左季選手のコメント

「レベルの高いシニアの国際大会に出るのが初めてなので、優勝出来たことがすごく嬉しいです。1試合1試合が厳しい試合だったので、少しの差でも勝ち抜くことが出来て良かったです。(-今後について)良いスタートを切れたと思います。もっと自分の得意な技を沢山作って、きれいな技を掛けて勝ちたいです。4年後はまだはっきりしていないですが、五輪に出ることを目標にします。」

新井千鶴選手のコメント
「(-決勝戦について)組み手の部分で『指導』を取られてしまいました。余計な反則をもらった自分のミスです。年下に負けてしまいましたが、これから自分が70kg級の代表として抜けていくためにはしっかり倒して優勝することが大事だったと思います。『指導』という形で勝負がついてしまいとても情けないです。これまで初戦敗退など安定しない試合が続いていましたが、今回は決勝まで行けました。ここから這い上がっていくつもりで、年下年上に関係なく、今回の決勝のような試合ではなく、もっと攻めていく柔道をしていきたいです。(-東京五輪に向けて)ここからがスタートですが、一つ一つ戦っていくことで繋がっていくと思います。今日の敗戦を反省して自分を磨いて強くなっていきたいです。」

前田奈恵子選手のコメント

「(-3位獲得について)すごく嬉しいです。(-自分の柔道が出来たか)組み手と足技を徹底しすぎて大技が全然掛けられなかったので、(この反省を)次に繋げていきたいです。(-結果について)それは素直に嬉しいです。(-今後について)しっかり一つ一つ勝ち上がってアピールできるように頑張っていきたいです。(-東京五輪について)優勝目指して頑張りたいと思います。」

大野陽子選手のコメント
「(-3位決定戦ついて)今はよくわからないです。勝つという気持ちで挑みました。(-何が足りなかったか)色々体力など全部足りなかったと思います。(-力を出し切ったか)全力で戦いました。(-4年間の始まりの大会だったが)2020年を意識して大切な試合だと思って戦いました。(-悔やむことは何か)悔やむとしたら、なんですかね。今はわからないです。(-今後について)出し切る気持ちで戦って、出せてたかどうかはわからないですが、この負けを生かて次に繋げることしかないと思います。どんな形でも、どんな相手でもどんな状況でも勝つことが大切だと思います。いつでも勝つという気持ちを強く持っていきたいです。」

【プールファイナル結果】

[準々決勝]

新井千鶴○内股(GS1:23)△大野陽子
ケリタ・ズパンシック(カナダ)○優勢[有効・谷落]△ファニー エステル・ポスヴィト(フランス)
前田奈恵子○優勢[指導2]△グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)
新添左季○優勢[指導1]△エルヴィスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)

【準決勝ラウンド以降結果、戦評】

[敗者復活戦]

大野陽子○優勢[指導2]ファニー エステル・ポスヴィト△(フランス)
大野が左、ポスヴィトが右組みのケンカ四つ。序盤にポスヴィトのみに「指導」が与えられ、以降はお互い深く技に入ることが出来ないまま着々時間だけが経過する。残り時間30秒にポスヴィトの出足払で大野が大きく崩れあわやポイント失陥かという場面があったが、大野はなんとか腹這いに落ちてノーポイント。以降はポスヴィトに偽装攻撃による「指導」が与えられたのみで試合終了。「指導2」優勢で大野が3位決定戦進出を決めた。

エルヴィスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)◯反則(1:44)△グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)
ロドリゲスが右、マトニヤゾワが左組みのケンカ四つ。1分44秒、ロドリゲスが右内股を仕掛けたところでマトニヤゾワが足を触ってしまいダイレクト反則負け。ロドリゲスが3位決定戦進出。

[準決勝]

新井千鶴○横四方固(3:34)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
左相四つ。相四つ横変形で互いに決め手がないまま終盤まで試合が進行。3分過ぎ、ズパンシックが左大内刈でぶら下がるように掛け潰れたところを新井がめくり返して横四方固。17秒間抑え込んだところでズパンシックが「参った」を表明して試合は決着、新井が決勝進出を決めることとなった。

新添左季○優勢[指導3]△前田奈恵子
左相四つ。リーチに勝る新添が先んじて奥襟を確保する展開が続き、42秒、これを嫌った前田に片襟の咎で「指導」が与えられる。2分10秒にも同様の形で前田に2つ目となる「指導」が与えられ、ここまでは完全に新添のペース。しかしここから前田が奮起し前に出ながら奥襟を取り攻勢、2分52秒に「指導」1つを奪い返す。次の展開でも前田は攻勢を維持するが片襟のまま攻めてしまう痛恨のミス、3分26秒反対に3つ目の「指導」を失ってしまう。再び「指導」2つ分のビハインドとなった前田はペースを上げて攻め続け3分56秒には新添から2つ目の「指導」を奪うも時既に遅し。このまま試合が終了し、「指導2」対「指導3」で新添が決勝進出を決めた。

[3位決定戦]

前田奈恵子○GS優勢[指導2](GS2:05)△大野陽子
左相四つ。序盤に前田が左外巻込で潰れたところを大野が引き込んで寝技を展開するが、ここは前田が凌ぎ切り「待て」。以降は奥襟を持って密着を志向する大野を前田が組み手と掛け潰れの技で凌ぐ展開が続く。1分39秒、両者に「取り組まない」咎での「指導」宣告。これ以外に特筆すべき動きがないまま時間が経過し、試合はGS延長戦へ。延長開始早々、本戦とは打って変わって積極攻勢に出た前田が左内股で大野を大きく崩す。これはノーポイントだったが前田はさらに左大内刈で大野を伏せさせ、本戦とは別人のような猛攻。大野は前田の前のめりの攻撃姿勢の前に技が出ず、GS2分5秒ついに大野に「指導」が宣告されて試合は決着。銅メダルの栄誉は前田の頭上に輝いた。

エルヴィスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)○GS出足払(GS0:17)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
ロドリゲスが右、ズパンシックが左組みのケンカ四つ。地力と経験に勝るズパンシックが終始前に出、後ろ重心のロドリゲスは退きながらの技出しを強いられる。1分41秒双方に「指導1。終盤なかなか試合を動かせないことに業を煮やしたズパンシックが大内刈、さらにロドリゲスが抱き止めるや小内刈に連絡。ロドリゲス崩れ、これに「有効」が宣告されるがズパンシックは決めの段階で手を放して拘束を緩めており、このポイントはビデオチェックの結果取り消し。試合はGS延長戦へもつれ込むこととなる。延長開始早々、ロドリゲスは釣り手で相手の左袖の肘を内側に流して一方的に制する。嫌ったズパンシックが体を開こうと窮屈な姿勢になった瞬間、ロドリゲスの右出足払が閃き鮮やかな「一本」。

[決勝]

新添左季○優勢[指導2]△新井千鶴
左相四つ。ともに内股一発の威力を持ち味とする選手同士の戦い。開始直後の17秒、新井に両手で組み手を切った咎で「指導」が宣告される。以後は新添が両袖で遠間から左内股を狙い、新井はなかなか釣り手を持てない展開が続く。この構図で「待て」が掛からないまま試合が進むが、新井が不十分ながら釣り手を得ると新添の技も止まり明らかな膠着状態が現出することとなる。1分46秒、消極的の咎で両者に「指導」。この時点での累積警告は新井が「2」、新添が「1」。ここから新井はペースアップして追い上げにかかるが、奥襟を得た十分な組み手から放った左内股は潰れてしまい不発。一方新添は遠間から左足車を打ち込んであくまで展開を渡さない。残り時間僅か、左足車で掛け潰れた新添に対して新井が一か八かの腕挫十字固を狙ったところで試合は終了。「指導1」対「指導2」で新添が勝利、見事シニア国際大会初優勝を飾った。

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2回戦、新添左季がマリーイヴ・ガヒエから豪快な左内股「一本」_

【日本代表選手全試合結果、戦評】

新添左季(山梨学院大2年)
成績:優勝


[1回戦]

新添左季○優勢[有効・内股]△バーバラ・ティモ(ブラジル)
新添が左、ティモが右組みのケンカ四つ。新添が左内股で一方的に攻める形が続き、3分1秒ついにティモに「指導」が宣告される。新添、試合終盤にはこれまで再三仕掛けていた左内股で「有効」も追加してタイムアップ。「一本」こそ奪えなかったが終始優位を維持し続けて、新添の滑り出しはまずまず。

[2回戦]

新添左季○内股(1:01)△マリーイヴ・ガヒエ(フランス)
新添が左、ガヒエが右組みのケンカ四つ。開始早々、ガヒエが場外際で腕挫十字固を狙うがここは新添が凌ぎ切って「待て」。以降ガヒエが釣り手で奥襟を持って圧を掛け、新添が下から突いて左内股を狙うという絵が続く。この技と力の勝負は新添の技に軍配、1分1秒新添が仕掛けた左内股でガヒエは宙に浮き一回転、文句なしの「一本」。難敵ガヒエに完勝し、新添が準々決勝進出を決めた。

[準々決勝]

新添左季○優勢[指導1]△エルヴィスマール・ロドリゲス(ベネズエラ)
新添が左、ロドリゲスが右組みのケンカ四つ。新添の左内股とロドリゲスの右袖釣込腰の掛け合いが続き、試合の見た目は拮抗。しかし時間を追うごとに新添の形になる時間が増え、2分35秒ロドリゲスのみに「指導」。以降は密着してくるロドリゲスを新添が左内股で捌き続けてタイムアップ、「指導1」優勢で試合決着。

[準決勝]

新添左季○優勢[指導3]△前田奈恵子
左相四つ。リーチに勝る新添が先んじて奥襟を確保する展開が続き、42秒、これを嫌った前田に片襟の咎で「指導」が与えられる。2分10秒にも同様の形で前田に2つ目となる「指導」が与えられ、ここまでは完全に新添のペース。しかしここから前田が奮起し前に出ながら奥襟を取り攻勢、2分52秒に「指導」1つを奪い返す。次の展開でも前田は攻勢を維持するが片襟のまま攻めてしまう痛恨のミス、3分26秒反対に3つ目の「指導」を失ってしまう。再び「指導」2つ分のビハインドとなった前田はペースを上げて攻め続け3分56秒には新添から2つ目の「指導」を奪うも時既に遅し。このまま試合が終了し、「指導2」対「指導3」で新添が決勝進出を決めた。

[決勝]

新添左季○優勢[指導2]△新井千鶴
左相四つ。ともに内股一発の威力を持ち味とする選手同士の戦い。開始直後の17秒、新井に両手で組み手を切った咎で「指導」が宣告される。以後は新添が両袖で遠間から左内股を狙い、新井はなかなか釣り手を持てない展開が続く。この構図で「待て」が掛からないまま試合が進むが、新井が不十分ながら釣り手を得ると新添の技も止まり明らかな膠着状態が現出することとなる。1分46秒、消極的の咎で両者に「指導」。この時点での累積警告は新井が「2」、新添が「1」。ここから新井はペースアップして追い上げにかかるが、奥襟を得た十分な組み手から放った左内股は潰れてしまい不発。一方新添は遠間から左足車を打ち込んであくまで展開を渡さない。残り時間僅か、左足車で掛け潰れた新添に対して新井が一か八かの腕挫十字固を狙ったところで試合は終了。「指導1」対「指導2」で新添が勝利、見事シニア国際大会初優勝を飾った。

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準々決勝、新井千鶴が大野陽子から左内股「一本」

新井千鶴(三井住友海上)
成績:2位


[2回戦]

新井千鶴○崩上四方固(2:06)△ヨウ・ジェユン(韓国)
左相四つ。奥襟を叩くとヨウあっさり潰れ、新井はここから寝技を展開。下から相手の体を足で挟んでめくり返すと馬乗りになり、まず縦四方固に抑え込む。これはすぐに「解けた」となるが今度は相手の右腕を引き寄せて右から横四方固。これも足を絡まれて解けるが、新井は粘り強く崩上四方固に連絡。解ける都度強い形に進化したという体、3度目の「抑え込み」宣告はしっかり決め切り「一本」。

[準々決勝]

新井千鶴○GS内股(GS1:21)△大野陽子
左相四つ。大野は引き手を先に抑え、奥襟を叩いて前に出る圧力柔道に終始する。58秒、新井に組み手を切り離した咎で「指導」。以後、新井は支釣込足に小内刈とスポット的に技をまとめるものの効き切らず、一方の大野は変わらずひたすら前進志向。1分50秒双方に「指導」が与えられ、この時点での累積警告は新井が「2」、大野が「1」。リードを得た大野は前進するのみでほとんどまったく技を仕掛けず、初めてまともに投げに行く技を仕掛けたのは残り22秒の左内股という極端な圧力偏重。この間新井は大内刈に内股と度々良い技を仕掛けており、終盤の3分17秒に大野に宣告された「指導」でついにスコアはタイとなる。試合はGS延長戦へもつれ込むこととなるが、この延長でも大野は前進圧力と先手掛け潰れでの「指導」狙いに終始。新井はなかなか自分の形を作れないが、1分15秒を過ぎたところで好組み立てを見せる。手を持たずにまず大内刈を入れて大野の足を止めながら、同時に釣り手で奥襟攻略。これで完璧な形を作ると大内刈、小内刈、さらに内股と技を継いで鮮やかな「一本」。
新井はここ数年で、初めて冴えた組み立てを見せたと言っていい。両手を離した状態から大内刈を「持つため」に利用しての奥襟攻略。些細なパーツであるが、持ちさえすれば最大の武器である技一発の威力が発揮出来る新井にとってはこういった、陳腐化していない「効く」組み手手段の蓄積が最重要課題。さらに良い形を作ったあとすぐさま為した連続攻撃も見事、この数秒間に関しては、ロンドン五輪以降の4年間でのベストパフォーマンスと評しておきたい。たとえ無意識に放ったものであったとしてもぜひ拾い上げて次のディティール開発に生かしてもらいたい、以後のきっかけになりうる攻防であった。

[準決勝]

新井千鶴○横四方固(3:34)△ケリタ・ズパンシック(カナダ)
左相四つ。相四つ横変形で互いに決め手がないまま終盤まで試合が進行。3分過ぎ、ズパンシックが左大内刈でぶら下がるように掛け潰れたところを新井がめくり返して横四方固。17秒間抑え込んだところでズパンシックが「参った」を表明して試合決着。新井が決勝進出を決めた。

[決勝]

新添左季○優勢[指導2]△新井千鶴
左相四つ。ともに内股一発の威力を持ち味とする選手同士の戦い。開始直後の17秒、新井に両手で組み手を切った咎で「指導」が宣告される。以後は新添が両袖で遠間から左内股を狙い、新井はなかなか釣り手を持てない展開が続く。この構図で「待て」が掛からないまま試合が進むが、新井が不十分ながら釣り手を得ると新添の技も止まり明らかな膠着状態が現出することとなる。1分46秒、消極的の咎で両者に「指導」。この時点での累積警告は新井が「2」、新添が「1」。ここから新井はペースアップして追い上げにかかるが、奥襟を得た十分な組み手から放った左内股は潰れてしまい不発。一方新添は遠間から左足車を打ち込んであくまで展開を渡さない。残り時間僅か、左足車で掛け潰れた新添に対して新井が一か八かの腕挫十字固を狙ったところで試合は終了。「指導1」対「指導2」で新添が勝利、見事シニア国際大会初優勝を飾った。

前田奈恵子(JR東日本)
成績:3位


[1回戦]

前田奈恵子○優勢[指導1]△エステル・スタム(ジョージア)
前田が左、スタムが右組みのケンカ四つ。スタムは組み手を左右にスイッチしながら担ぎ技を狙う。30秒、場外際で伏せたスタムに偽装攻撃の「指導」が宣告。この後試合が大きく動くことはなく、結局この最序盤に得た「指導1」の優勢で前田の勝利が決まる。スタムはツアー常連選手であるが序列は決して高いわけではない。前田の実力からすれば決してその良さを発揮したとはいいがたい、やや低調な滑り出しであった。

[2回戦]

前田奈恵子○優勢[指導3]△キム・センヨン(韓国)
前田が左、キムが右組みのケンカ四つ。お互いに組み手で牽制し合う展開が続き、57秒キムのみに「指導」が宣告される。1分59秒には襟を隠した咎でキムに2つ目の「指導」。、らに2分32秒には両者に「指導」が与えられこの時点でキムの反則累積は早くも「3」。後のなくなったキムは攻勢に出るが、前田はキムの追撃を「指導」1つに留めてクロージング。「指導2」対「指導3」で前田が難敵キムを撃破。

[準々決勝]

前田奈恵子○優勢[指導2]△グルノザ・マトニヤゾワ(ウズベキスタン)
前田が左、マトニヤゾワが右組みのケンカ四つ。開始直後の20秒、組み合わない咎で両者に「指導」が与えられる。以降はマトニヤゾワが組み際に引き込んで寝勝負を仕掛け、前田がそれを凌ぐという攻防が続く。お互い決定打を欠くなか、1分54秒、前田の組み手を嫌ったマトニヤゾワに2つ目の「指導」が宣告。リードを得た前田は、マトニヤゾワの追撃をしっかりと封じてタイムアップ。「指導2」優勢で前田が準決勝進出を決めた。

[準決勝]

新添左季○優勢[指導3]△前田奈恵子
左相四つ。リーチに勝る新添が先んじて奥襟を確保する展開が続き、42秒、これを嫌った前田に片襟の咎で「指導」が与えられる。2分10秒にも同様の形で前田に2つ目となる「指導」が与えられ、ここまでは完全に新添のペース。しかしここから前田が奮起し前に出ながら奥襟を取り攻勢、2分52秒に「指導」1つを奪い返す。次の展開でも前田は攻勢を維持するが片襟のまま攻めてしまう痛恨のミス、3分26秒反対に3つ目の「指導」を失ってしまう。再び「指導」2つ分のビハインドとなった前田はペースを上げて攻め続け3分56秒には新添から2つ目の「指導」を奪うが時既に遅し。このまま試合が終了し「指導2」対「指導3」で新添が決勝進出を決めた。

[3位決定戦]

前田奈恵子○GS優勢[指導2](GS2:05)△大野陽子
左相四つ。序盤に前田が左外巻込で潰れたところを大野が引き込んで寝技を展開するが、ここは前田が凌ぎ切り「待て」。以降は奥襟を持って密着を志向する大野を前田が組み手と掛け潰れの技で凌ぐ展開が続く。1分39秒、両者に「取り組まない」咎での「指導」宣告。これ以外に特筆すべき動きがないまま時間が経過し、試合はGS延長戦へ。延長開始早々、本戦とは打って変わって積極攻勢に出た前田が左内股で大野を大きく崩す。これはノーポイントだったが前田はさらに左大内刈で大野を伏せさせ、本戦とは別人のような猛攻。大野は前田の前のめりの攻撃姿勢の前に技が出ず、GS2分5秒ついに大野に「指導」が宣告されて試合は決着。銅メダルの栄誉は前田の頭上に輝いた。

大野陽子(コマツ)
成績:5位


[2回戦]

大野陽子○横四方固(1:27)△アンナ・ベルンホルム(スウェーデン)
左相四つ。大野飛び上がって奥襟を叩くとベルンホルムたまらず首を抜き「指導1」。続く展開、ベルンホルムが左内股を仕掛けると大野体捌き良く透かして捩じり、そのまま脇を救って横四方固「一本」。盤石の内容で準々決勝進出決定。

[準々決勝]

大野陽子△GS内股(GS1:21)○新井千鶴
左相四つ。大野は引き手を先に抑え、奥襟を叩いて前に出る圧力柔道に終始する。58秒、新井に組み手を切り離した咎で「指導」。以後、新井は支釣込足に小内刈とスポット的に技をまとめるものの効き切らず、一方の大野は変わらずひたすら前進志向。1分50秒双方に「指導」が与えられ、この時点での累積警告は新井が「2」、大野が「1」。リードを得た大野は前進するのみでほとんどまったく技を仕掛けず、初めてまともに投げに行く技を仕掛けたのは残り22秒の左内股という極端な圧力偏重。この間新井は大内刈に内股と度々良い技を仕掛けており、終盤の3分17秒に大野に宣告された「指導」でついにスコアはタイとなる。試合はGS延長戦へもつれ込むこととなるが、この延長でも大野は前進圧力と先手掛け潰れでの「指導」狙いに終始。新井はなかなか自分の形を作れないが、1分15秒を過ぎたところで好組み立てを見せる。手を持たずにまず大内刈を入れて大野の足を止めながら、同時に釣り手で奥襟攻略。これで完璧な形を作ると大内刈、小内刈、さらに内股と技を継いで鮮やかな「一本」。
新井はここ数年で、初めて冴えた組み立てを見せたと言っていい。両手を離した状態から大内刈を「持つため」に利用しての奥襟攻略。些細なパーツであるが、持ちさえすれば最大の武器である技一発の威力が発揮出来る新井にとってはこういった、陳腐化していない「効く」組み手手段の蓄積が最重要課題。さらに良い形を作ったあとすぐさま為した連続攻撃も見事、この数秒間に関しては、ロンドン五輪以降の4年間でのベストパフォーマンスと評しておきたい。たとえ無意識に放ったものであったとしてもぜひ拾い上げて次のディティール開発に生かしてもらいたい、以後のきっかけになりうる攻防であった。

[敗者復活戦]

大野陽子○優勢[指導2]ファニー エステル・ポスヴィト△(フランス)
大野が左、ポスヴィトが右組みのケンカ四つ。序盤にポスヴィトのみに「指導」が与えられ、以降はお互いに深く技に入ることが出来ないまま着々時間が経過する。残り時間30秒にポスヴィトの出足払で大野が大きく崩れあわやポイント失陥かという場面があったが、大野はなんとか腹這いに落ちてノーポイント。以降はポスヴィトに偽装攻撃による「指導」が与えられたのみで試合終了。「指導2」優勢で大野が3位決定戦進出を決めた。
[3位決定戦]

大野陽子△GS優勢[指導2](GS2:05)○前田奈恵子
左相四つ。序盤に前田が左外巻込で潰れたところを大野が引き込んで寝技を展開するが、ここは前田が凌ぎ切り「待て」。以降は奥襟を持って密着を志向する大野を前田が組み手と掛け潰れの技で凌ぐ展開が続く。1分39秒、両者に組み合わない咎での「指導」宣告。これ以外に特筆すべき動きがないまま試合は進行し、勝敗の行方はGS延長戦へ。延長戦開始早々、本戦とは打って変わって積極攻勢に出た前田が左内股で大野を大きく崩すがノーポイント。さらに前田は左大内刈で大野を伏せさせ本戦とは別人のような猛攻。前田の前のめりの攻撃姿勢の前に大野は技が出ず、GS2分5秒ついに大野に「指導」が宣告されて試合決着。銅メダルの栄誉は前田の頭上に輝いた。


取材・文:林さとる/古田英毅/原輝地

※ eJudoメルマガ版12月25日掲載記事より転載・編集しています。

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