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【ROAD TO 高校選手権】大成高が3連覇、桐蔭学園高が前評判にたがわぬ存在感示す・第40回黒潮旗柔道大会高校男子マッチレポート

(2016年12月11日)

※ eJudoメルマガ版12月11日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】大成高が3連覇、桐蔭学園高が前評判にたがわぬ存在感示す
第40回黒潮旗柔道大会高校男子マッチレポート
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開会式。選手宣誓は大成高・弓削凛月選手

高校柔道新シーズンの勢力図を決する冬季招待試合シリーズがいよいよ開幕。eJudoでは今年もこの「冬季招待試合サーキット」を密に取材、高校選手権までの道のりをレポートの形で読者にお届けさせて頂く。

そのサーキット大会の先陣を切って、第40回黒潮旗武道大会が11日に東海大付属静岡翔洋高校アリーナ(静岡市)で行われ、高校男子の部は大成高(愛知)が3連覇を達成した。

大成はエース東部直希を中心に危なげなく予選リーグを勝ち上がり、準決勝ではこの日の台風の目・東海大翔洋高(静岡)を2-1で振り切って決勝進出。決勝では10月の朱雀杯を制して今シーズンの主役と目されていた桐蔭学園高(神奈川)を代表戦にもつれ込む激戦の末に下して優勝を決めた。大成はこれで大会3連覇達成。

大成-桐蔭学園という今季の主役級がガップリ四つに組んだ決勝、そして朱雀杯の屈辱を胸に同県のライバルである東海大相模高が桐蔭学園に激しく噛みついた準決勝の熱戦を中心に、まず予選リーグの戦いから今大会の様子を追いかけてみたい。

■ 戦評
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予選リーグ、桐蔭学園高の千野根有我が東海大菅生高・鈴木辰英から内股「一本」

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大成高の大西陸斗が習志野高・宮下玄太から内股「一本」

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大成高の東部直希が前橋育英高・高木政明から払腰「一本」

※選手の配列は体重順、試合ごとのオーダー変更可、点取り制、「僅差」判定は「指導」差2つ以上、試合時間3分(決勝4分)、

【予選リーグ】

大会はAからLの12ブロックに各3チームがずつが配置されてまず予選リーグを行い、1位チームのみが決勝トーナメントに進出するという方式。

激戦の結果決勝トーナメントに残ったのは、大成高(愛知)、東海大甲府高(山梨)、東海大浦安高(千葉)、東海大静岡翔洋高(静岡)、相洋高(神奈川)、常磐高(群馬)、東海大仰星高(大阪)、白鴎大足利高(栃木)、桐蔭学園高(神奈川)、四日市中央工業高(三重)、埼玉栄(埼玉)、東海大相模高(神奈川)の強豪12校。

大成高は初戦の前橋育英高(群馬)戦を三輪魁星、藤鷹裕大、山田龍之助、弓削凛月、東部直希という布陣でスタート。中堅山田が僅差優勢で敗れたが、弓削と東部の一本勝ちで収拾してこの試合は2-1で勝利。習志野高(千葉)とマッチアップした第2試合は前衛2枚を中橋大貴と大西陸斗に入れ替え、中堅山田がこの試合も失点したものの大西、弓削、東部の一本勝ちで収拾、3-1で勝利して決勝トーナメント進出決定。

桐蔭学園高は初戦から湯本祥真、賀持喜道、村尾三四郎、関根聖隆、千野根有我と主力をズラリ並べて東海大菅生高(東京)を全試合一本勝ちの5-0で一蹴。湯本を高山康太に入れ替えて布陣した津幡高(石川)戦は、先鋒賀持から副将高山までで4点を積み上げ、4-0の快勝で予選リーグ突破決定。

東海大相模高は初戦で國學院栃木高(栃木)と対戦。先鋒山科良悟が小外掛「有効」で勝利して以降は引き分けが続き、中堅笹谷健が下川幸大に、副将平下麟太郎も大賀廣和にそれぞれ引き分けられるなどポイントゲッター級の滑り出しはいま一つだったが、大将石川智啓が小外刈「一本」で試合を締めて2-0で勝利。前衛2枚を鳴海勝成と大村康太に入れ替えた加藤学園高(静岡)戦は副将平下の引き分けを挟んで連続得点、4-0の快勝で決勝トーナメント進出決定。

シード校でもあった日体荏原高(東京)は予選リーグで敗退。初戦の鈴鹿高(三重)戦を5-0で快勝するも、選手を交代させて臨んだ常磐高(群馬)戦では2対2の内容差で敗退。常盤高戦5試合で日体荏原が得た勝利はいずれも「指導」差による僅差優勢勝ちであり、技によるポイントはゼロ。篠崎悠監督のもとよく鍛えられた常磐高の選手たちに思いのほか投げが決まらず、ポイントゲッター役を担うべき塚本綾も常見昂世の前に引き分けに終わってしまった。いかに新チームとはいえ、昨年度の高校選手権チャンピオンチームとしてはいささか物足りない内容で、来年1月の東京都予選を前に大きな不安を残す戦いぶりであった。

今季の高校選手権出場枠「4」が振り分けられている東京都から本戦出場が有力視されている足立学園高もこの予選リーグで脱落。東海大甲府高(山梨)を相手に中堅戦まで2失点、エース格が登場する後半戦も副将白石隼人が早川智翔に引き分けてしまい万事休す。大将戦は山本瑛介が一本勝ちしたが通算スコア1-2で敗れて決勝トーナメント進出はならなかった。

東京都の高校選手権出場枠目指して必死の育成を続ける修徳高(東京)は四日市中央工高(三重)に0-4で敗退。山形工高(山形)には2-1で勝利したものの決勝トーナメントを経験するには至らなかった。

上位進出が予想された木更津総合高(千葉)も予選リーグで相洋高に敗退。エースの副将大渕泰志郎は快勝したが、先鋒戦では中島恒星が相田勇司に小内刈「一本」、大将戦では伊藤大輔が浪花優輝に「指導3」を失ってしまい最終スコアは1-2、早々に会場を去ることとなった。一方同県内のライバル校東海大浦安高は近江高(滋賀)を4-1、静岡学園高(静岡)を3-0と充実の内容で予選リーグを突破、意地を見せた。

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決勝トーナメント1回戦、桐蔭学園高の先鋒賀持喜道が白鴎大足利高・長島斥弥から内股「有効」

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白鴎大足利高は「栃木のリネール」こと身長187センチの浅沼亮太が桐蔭学園高・樋口響介から大外刈「一本」獲得、一矢を報いる。

【決勝トーナメント1回戦】

決勝トーナメントに駒を進めたのは12校、このうちシード扱いの4校がこの時点で準々決勝(決勝トーナメント2回戦)進出を決め、残るチームが残枠「4」を求めて決勝トーナメント1回戦を戦った。

頭一つ抜けた力を持つと思われた桐蔭学園も白鴎大足利に1失点を喫するなど、試合はいずれも接戦。その中から東海大浦安、東海大静岡翔洋、桐蔭学園、埼玉栄がベスト8へと駒を進めることとなった。

各試合のスコアは下記。

東海大浦安高 ①-1東海大甲府高
東海大静岡翔洋高 2-1 相洋高
桐蔭学園高 3-1 白鴎大足利高
埼玉栄 3-2 四日市中央工高

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東海大翔洋高の米山竜生が常盤高・大石樹人から支釣込足「一本」

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東海大仰星高の副将・奥野友輝が桐蔭学園高の高野康太から大外刈「一本」

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東海大相模高の中堅・笹谷健が埼玉栄高の蓜島創から浮落「有効」

【準々決勝】

準決勝進出を果たしたのは大成、東海大静岡翔洋、桐蔭学園、東海大相模の4チーム。
大成はこの試合も爆発力を欠いたが大将東部直希が盤石の戦い、東海大浦安・佐藤匠馬の大外刈を裏投に捉え返して豪快な「一本」を獲得し、通算スコア2-1で勝利。東海大静岡翔洋はスコア3-2で常盤に競り勝ち、シード校日体荏原が消えたブロックから堂々のベスト4入り決定。桐蔭学園は1年生3枚がしっかり仕事を果たして東海大暁星を3-1で下し、東海大相模は埼玉栄に隙を見せず3-0で快勝した。

各試合の対戦詳細は下記。

大成高 2-1 東海大浦安高
(先)三輪魁星○優勢[有効]△鈴木駿
(次)大西陸斗△大外刈○高橋倫太郎
(中)藤鷹裕太×引分×畠山竜弥
(副)弓削凜月×引分×城所隆也
(大)東部直希○裏投△佐藤匠馬

東海大静岡翔洋高 3-2 常磐高
(先)山本蒼良△袖釣込腰○狩野伶太
(次)村松孝紀○優勢[有効・一本背負投]△常見昂世
(中)南條伯海○優勢[有効・大内刈]△谷田部剛之
(副)米山竜生○支釣込足△大石樹人
(大)磯部昂佑△払腰○影井光我

桐蔭学園高 3-1 東海大仰星高
(先)賀持喜道○優勢[僅差]△大野晃生
(次)村尾三四郎○内股△内村秀資
(中)関根聖隆×引分×吉村太一
(副)高山康太△大外刈○奥野友輝
(大)千野根有我○合技△西野豊

東海大相模高 3-0 埼玉栄高
(先)鳴海勝成×引分×西願寺哲平
(次)山科良悟○優勢[有効・小外刈]△豊永貫太
(中)笹谷健○腕挫十字固△蓜島創
(副)平下麟太郎○優勢[有効・払巻込]△梅野雅祟
(大)石川智啓×引分×岩田歩夢

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準決勝、桐蔭学園高の次鋒・賀持喜道が東海大相模高・松谷竜馬から内股「一本」

【準決勝】

桐蔭学園高 - 東海大相模高
(先)湯本祥真 - 山科良悟
(次)賀持喜道 - 松谷竜馬
(中)村尾三四郎 - 笹谷健
(副)関根聖隆 - 平下麟太郎
(大)千野根有我 - 石川智啓

2試合同時進行で行われるこの準決勝にあってひときわ来場者の注目を集めたのは、第2試合で組まれた桐蔭学園と東海大相模による神奈川県二強対決。毎年神奈川県大会の決勝戦で顔を合わせる両校は先に行われた朱雀杯の決勝戦でも対戦し、その時は桐蔭学園が4-1で快勝している。来月に高校選手権神奈川県予選を控え、桐蔭学園としては再度突き放しておきたい、そして東海大相模としては食らいついて少なくとも精神的な力関係を五分まで揺り返しておきたいという非常に意味のある一番。

桐蔭学園は昨年度全国中学校王者の千野根有我と村尾三四郎、賀持喜道の強力1年生3枚に加えて今季のインターハイ100kg級3位の関根聖隆を擁し、多くの関係者から早くも今季の最強チーム候補としてその名を挙げられる注目チーム。その中でも特に前評判の高いのが村尾三四郎。試合が始まるやまったく表情を変えずに対戦相手を追い詰め続け、投げて固めてと手段を問わず冷静にトドメを刺していく様はとても1年生のものではない。この日も出色の勝ち上がりを見せており、いやが上にも周囲の視線の熱量は増す。

一方、朱雀杯で大量失点の屈辱にまみれた古豪東海大相模としては、もうこれ以上1年生中心であるこの若いチームに勢いをつけさせるわけにはいかない。来年1月の神奈川県予選を前に、朱雀杯でのリベンジを果たすにはこれ以上ない絶好の機会。試合前に行われる恒例の円陣からも、選手たちの気合の高さが周囲にビリビリ伝わってくる。

両校の気合の入りぶりは出場陣容からも明らか。神奈川県予選を考慮しての出し惜しみなど一切ない、ほぼベストメンバー同士での「ガチンコ勝負」となった。

先鋒戦は桐蔭学園・湯本祥馬、東海大相模・山科良悟の対戦。軽量の湯本に対し、山科は小・中カテゴリー時代は世代の代表格。東海大相模としては何としても山科で先制点を奪いたいところだが、試合巧者の湯本はそれを容易に許さず。格上と目された山科に対し守勢に回ることなく、ケンカ四つながら左引き手を先に得て、相手の足元から攻めては背負投で崩すという強気の試合構成で主導権を握る。湯本の勢いに押された山科は2分11秒に場外の「指導」を失い、その後も湯本の組み際を狙った右小内巻込に大きく崩れ掛かるなど、反撃の機会を見い出せないまま試合を終える。白熱の先鋒戦は引き分けに終わった。

次鋒戦は桐蔭学園・賀持喜道が組んですかさず左内股を放つも、東海大相模・松谷竜馬がそのまま応じて返し掛かるなど、これも激戦の予感漂う立ち上がり。賀持はあくまで得意の内股で相手を投げんと左引き手を欲しがるが、50秒、これを嫌った松谷が逆に賀持の背中を右手で抱え、思い切りよく隅返を放つ。対応が遅れた賀持は大きく崩れこれは「技有」。その後逆転を狙う賀持は高い打点からの内股、大内刈と崩しの効いた大技を繋ぐが的確さにかけ、1分26秒には松谷に大内刈を返され「有効」を追加されてしまう。それでも賀持は気持ちを切らさず猛然と前に出て行き、1分59秒、遂に十分に持ったところから踏み込み深く左内股一閃。まともに受けた松谷は勢い余って一回転半して畳に着地、これぞ「スーパー一本」とも言うべき起死回生の大技が決まり桐蔭学園が貴重な先制点を得る。

中堅戦はここまでオール一本勝ちの桐蔭学園・村尾三四郎が登場、対する東海大相模はエース格の笹谷健が畳に上がる。この試合は左相四つ、技の切れる両者まずは相手に十分に組ませまいと慎重な立ち上がり。互いに引き手は得るも釣り手を十分に持てず、なかなか展開を崩すような大技の応酬というところまで場が煮えて来ない。しかし、残り時間35秒、このまま引き分けかと思われたところで笹谷が勝負に出る。左組みの笹谷が突如右方向に体を捌き、村尾を自身の右膝に載せるかのように高々と持ち上げる「やぐら投げ」の大技。まともに食った村尾はもはや一本を逃れるのが精一杯、どうにか背中が着くのを逃れるも主審は「技有」を宣告する。よもやの村尾の失点に会場大きく沸き返る中、巧者笹谷は無理をせず残り時間を流してタイムアップ。東海大相模が1点を返す。

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副将戦、関根聖隆が平下麟太郎から大外刈「技有」

1対1で迎えた副将戦、桐蔭学園は昨年からのレギュラー関根聖隆、対する東海大相模もエース格のひとりである平下麟太郎が畳に上がる。左組みの関根は引き手を得るや左からの背負投、一本背負投、引き手を一本背負い様に腕を抱えての大外刈と組み際の技を連発するが、平下も左からの肩車を中心に応戦して関根に流れを握らせない。1分30秒、関根の左背負投が深く入ると平下待ってましたとばかりに背中を抱え、勢いよく抱分を放つ。しかし関根は大きく体を捲られ背中をべったり畳につけるも、勢いそのままに平下の体の上に大きく被さって逆に平下が畳を背負う形を演出。結果主審の裁定は、関根の「有効」を指す。ポイントをリードした関根は以後も攻撃を止める気配なく、2分20秒にはこの日に再三見せている引き手を抱えての大外刈で「技有」を追加し、平下の反撃を「指導1」までに抑えて試合終了。スコアは2-1、ポイントで優位に立っていた桐蔭学園がリードを1つ伸ばし、勝負の襷は大将に託される。

大将戦は桐蔭学園・千野根有我、東海大相模・石川智啓による重量級対決。この試合は千野根が右、石川は左組みのケンカ四つ。何としても「一本」を得て代表戦まで辿り着きたい石川は気合い十分。ポイントリードのためかやや守勢に入り気味の千野根の弱気を見逃さず、1分5秒左小外刈で千野根の巨体を横転させ「技有」を得る。続いて横四方固に抑えれば千野根は全く動くことが出来ず1分19秒合技の「一本」で石川の勝利が確定。

これでスコアは2対2、双方「一本」ひとつに「技有」ひとつと内容にも差はつかず、勝敗の行方は任意の代表者1名による決定戦に委ねられることとなる。

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代表戦、関根聖隆が笹谷健を背負投「一本」

代表戦の畳に上がるのは桐蔭学園・関根、東海大相模・笹下の2年生ふたり。例によって相手と距離をとって組み際の技を仕掛けたい関根に対し、笹谷は二本持っての接近戦を志向。両者の思惑が合致しない攻防は結果として組み手の奪い合いとなる。守るために嫌うのではなく投げるために良いところを持ちたい両者、まずは42秒に笹谷が胸を合わせての「やぐら投げ」を試みるも、関根は無理せず潰れこんで回避。1分24秒、組み合わない両者に「指導」。続いて組み負けた関根に極端な防御姿勢の咎で1分45秒に2回目の「指導」が与えられる。この時点では「指導」1差ながら、笹谷が優勢。この準決勝、計6試合目にして初めて東海大相模が桐蔭学園に対してリードを得たこととなる。しかし関根はこの逆境をものともせず、組み手をかいくぐり、残り43秒ついに笹谷を得意の背負投で高々と担ぎ上げることに成功。手足をバタバタ揺らし何とか堪えようとする笹谷を構うことなく畳に叩きつけると、主審は迷うことなく「一本」を宣告。この劇的な一発で激戦に幕、代表戦を以て桐蔭学園高が勝利を収めることとなった。

桐蔭学園高 ②代-2 東海大相模高
(先)湯本祥真×引分×山科良悟
(次)賀持喜道○内股△松谷竜馬
(中)村尾三四郎△優勢[技有・抱分]○笹谷健
(副)関根聖隆○優勢[技有・大外]△平下麟太郎
(大)千野根有我△横四方固○石川智啓
(代)関根聖隆○一本背負投△笹谷健


桐蔭学園は宿命のライバルである東海大相模の必死の抵抗にあいながらも、まさに力でねじ伏せてその猛追を振り切ったという形。気分を良くしての決勝戦進出決定。


大成高 2-1 東海大静岡翔洋高
(先)三輪魁星○優勢[有効・内股]△山本蒼良
(次)大西陸斗×引分○村松孝紀
(中)藤鷹裕太×引分×南條伯海
(副)弓削凜月△大外刈○米山竜生
(大)東部直希○払巻込△磯部昂佑

逆側の山、準決勝第1試合は大成が順当に勝利。ここまで健闘の東海大静岡翔洋に対しスコアこそ2対1の僅少差だが、大将東部の存在を考えれば試合自体は危なげなし。大会3連覇を目指して、いよいよ決勝の畳に臨むこととなった。

【決勝】

決勝で対峙することとなったのは第1シードから順調に勝ち上がった大成高と、準決勝で第2シードの東海大相模高を代表戦の末に破った桐蔭学園高の2校。戦前から決勝進出が有力視されていた強豪同士による、予想通りのカードと評されてよいだろう。

大成高は市立習志野高に3-1、前橋育英高に2-1で勝利して予選リーグを通過。準々決勝では東海大浦安高を2-1、準決勝では東海大翔洋高に2-1と思いのほか得点が伸びず接戦が続くこととなったが、大将に陣取ったエース東部直希が全試合を一本勝ちしてことごとく事態を収拾。東部1枚の存在感を大きく示した形での決勝進出。

一方、ノーシードながら桐蔭学園高の勝ち上がりはまさしく圧巻。予選リーグは津幡高を4-0、東海大菅生高を5-0と無失点のまま通過し、決勝トーナメント1回戦では白鴎大足利高の「栃木のリネール」こと、197㎝の長身選手・浅沼亮太の豪快な大外刈に副将に入った樋口響介が1点を献上したものの、大勢に影響はなくこの試合も3-1で快勝。東海大仰星との準々決勝も3-1でしっかり制し、勢いそのままに準決勝では宿敵・東海大相模高の挑戦を代表戦の一本勝ちで退けた。東海大相模再討という大きなミッションを達成し、チームの雰囲気は最高潮だ。

大成高 - 桐蔭学園高
(先)三輪魁星 - 湯本祥真
(次)大西陸斗 - 賀持喜道
(中)藤鷹裕太 - 村尾三四郎
(副)弓削凜月 - 関根聖隆
(大)東部直希 - 千野根有我

この試合で着目しておくべきはなんと言っても桐蔭学園の高い得点力。ここまで全ての試合で3点以上を挙げ(※東海大相模との準決勝戦も代表戦を含めると3点を得ている)、チーム全体に「取り味」が満ちている。ついつい勝ちぶりの派手な村尾の試合だけに目が行きがちであるが、同じ1年生の賀持はここまでチーム唯一の全勝(5戦5勝)を果たして常にしっかり先取点を稼ぎ出しており、これが勝利の原動力となっている。桐蔭の高い得点力がここまでロースコアゲームをきっちり勝ち切って来た大成の堅さに通用するかが第1トピック。そして大成が大将に絶対のエースである東部を置いていることを考えれば、前述の通り序盤で登場する賀持の試合ぶりがその後の戦いに大きな影響を及ぼすことは言うまでもない。

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桐蔭学園の中堅の村尾三四郎が三角絞、藤鷹裕大はたまらず「参った」

先鋒戦は大成・三輪魁星が左、桐蔭学園・湯本祥馬が右のケンカ四つ。両者激しく攻め合うも組み手が不十分の状態が続き、双方なかなかポイントに至るような質の高い攻撃を繰り出すことが出来ない。残り時間49秒、三輪が内股から大内刈へ変化する良い攻めを見せるが投げ切るまでには至らず。攻め合いに終始した先鋒戦は「指導」ゼロのままタイムアップ、引き分けに終わる。

次鋒戦は大成・大西陸斗が右、桐蔭学園・賀持喜道が左組みのケンカ四つ。昨年度の全国中学校大会90kg級王者の大西に対し、賀持は組むなりまず片手の左内股で大きく崩し、先制攻撃を仕掛ける。1分0秒、不意に場外に足を出した大西に「指導」。その後も賀持は内股、大西も体落で応戦し、先鋒戦に続く激しい攻め合いが展開される。中盤以降二本しっかり持った賀持が左内股で大西を二度大きく浮かす場面が現出、ここまではやや賀持が攻勢であったが、2分40秒に様相一変。場外際で賀持が思い切り左内股に入ると大西待っていたとばかりに自身の体を横に移動、隅落に変化して賀持の体を捲り返し値千金の「有効」を得る。準決勝同様に先行された賀持はここでも逆転を期し、さらに前に出て圧力を掛けるが、試合慣れした大西はあくまで冷静。残り25秒、大西が右からの出足払で賀持を大きく崩し、相手に反撃の機会を許さぬまま「それまで」の声を効く。結果大西が「有効」優勢で勝利、大成高に貴重な先取点をもたらすこととなった。

中堅戦は大成・藤鷹裕大、桐蔭学園・村尾三四郎ともに左組みの相四つ。長身の藤鷹が先に村尾の奥を叩いて組み手での優位を得ようとするが、ここは村尾全く慌てず。両者もつれて寝技の展開に移行すると村尾の動物的な動きがさらに一段速さを増す。伏せた藤鷹の脇に迷うことなく踵を突っ込むと、すぐさま横三角絞めを断行。村尾の長い脚は藤鷹の首と片腕を容赦なく絞めあげ、藤鷹なんとか立って逃れようとするも村尾は自らの体を反転させて仰向けに組み伏せ、遂に抑え込みを完成させる。その強烈な絞めに、主審の「抑え込み」宣告から間を置かず藤鷹は「参った」を選択。会場どよめく圧殺劇、試合時間僅か45秒、村尾の一本勝ちで桐蔭学園がリードを奪い返す。

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大将戦、東部直希が千野根有我から払巻込「技有」

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東部はそのまま後袈裟固に抑え込み、合技「一本」を獲得

スコア1-1、桐蔭学園が内容差でリードして迎える副将戦は大成・弓削凜月、桐蔭学園・関根聖隆ともに左組みの相四つ。今大会一貫して担ぎ技に活路を求める関根はここでも左からの背負投を連発。しかし身長164センチの弓削をなかなか思うように担ぐことが出来ず、逆に弓削も関根に対して担ぎ技で応戦しなかなか展開に差がつかない。しかし中盤、両者のもつれ際に関根が巧みに弓削の体に自身の体を浴びせて「有効」を奪取する。関根はその後も片腕を抱えての「一本大外」から一本背負投に連絡するなどあくまで投げて勝とうとの姿勢を緩めない。2分41秒、今度は弓削が関根の背後を攻略、裏投を狙って高々と持ち上げに掛かるも、ここは関根がなんとか阻止。残り25秒には弓削が袖釣込腰に活路を見出すが関根これも心得てしっかり防ぐ。その後は試合終了まで関根が攻め続けたままタイムアップ。関根が桐蔭学園高にまことに大きな追加点をもたらす。

一昨年と昨年の全国中学校個人王者の同士の対戦となった大将戦は、大成・東部直希が左、桐蔭学園・千野根有我が右組みのケンカ四つ。代表戦に辿り着くためには一本勝ちしかない東部の戦闘方針は明確過ぎるほど明確だが、逆に一本負けさえしなければチームの優勝が決まる千野根はなかなか難しい立場。1年生の重量級が上級生のエースを畳に迎えるシチュエーションとしてはもっとも試合構成のハードルが高い。しかし桐蔭学園高ベンチに消極的発想はなく、あくまで千野根に積極的な攻撃を促す。
千野根は先に二本持つも、じっくりと待ち構える東部に対してなかなか技を仕掛けることが出来ずやや膠着した展開が続く。1分28秒、遂に引き手をしっかりと得た東部が左払巻込の大技に打って出る。185センチの千野根に対し、171センチの東部の身長はこの際むしろ有効な武器として働き、引き出しが良く効き、低い重心で相手を捕まえたこの技に千野根が抵抗する余地はなし。千野根の体重が投げに加速を加えたか、「技有」宣告と同時にその体に被さった東部の後袈裟固にすかさず「抑え込み」が宣告される。千野根は動けず1分44秒合技の「一本」宣告。格の違いを見せつけた東部の一本勝ちで、大成は代表戦を戦う権利を獲得。

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代表戦、東部直希が村尾三四郎から払腰「一本」

迎えた代表戦、大成が畳に送り込むのは試合を終えたばかりの東部。対する桐蔭学園は準決勝の代表戦で起用した関根ではなく1年生村尾にこの大役を与える。大声援の中、大将戦終了からほとんど間を置かずに試合が開始される。

両者左組みの相四つ。パワーは東部が上かと思われたが、体力が温存されている村尾がまず組み勝って強烈な圧を掛ける。さしもの東部もこれにはたまらず、左払巻込を仕掛けて組み手を切り離し、いったん展開をリセット。奥襟を制したい東部だが、村尾の上手い組み手に片襟状態に誘導されてしまい、1分45秒東部に「指導1」。しかしその後も東部は奥襟を執拗に欲しがり、一発の機会を狙い続ける。残り39秒、東部が村尾の奥襟をしっかりと得て圧をかけるが、ここは村尾が無理をせずにいったん掛け潰れて組み手の打開を図る。再開後、ビハインドの東部は猛然と前進し、残り21秒となったところで引き手をしっかりと掴み、高い打点からの左払腰を敢行。丸みのある体型の東部の思い切った仕掛けに腕を引き込まれ、早い時点で体が伸び切ってしまった村尾は体を残すことさえ許されず頭から畳にまっさかさま。主審は躊躇なく「一本」を宣告。

大逆転の左払腰「一本」で試合は決着。この決勝も大駒・東部が大車輪の活躍で大成が勝利、3大会連続の黒潮旗制覇を達成することとなった。

大成高 3-2 桐蔭学園高
(先)三輪魁星×引分×湯本祥真
(次)大西陸斗○優勢[有効・隅落]△賀持喜道
(中)藤鷹裕太△三角絞○村尾三四郎
(副)弓削凜月△一本背負投○関根聖隆
(大)東部直希○合投[払巻込・後袈裟固]△千野根有我
(代)東部直希○払腰△村尾三四郎

【総評】

決勝までの様子を紹介し終えたところで、あらためて今大会を振り返ってみたい。

2年生以下で構成された新チームで戦う冬季招待試合シーズンがいよいよ始まったわけだが、前提条件として飲み込んでおくべきは、昨年度までの全国大会上位校はどのチームも3年生に好選手が多く、メンバーの大部分を最上級生が占めていたということ。その3年生がごっそり抜けたことで、どのチームのメンバーもほぼ一新された。残存戦力が前年度から主力を張っていた昨年までの2年間とは傾向が異なる年度と言える。その意味でも今大会は「新チームはどのような戦力なのか?」という開幕戦ならではのテーマが例年以上に強くクローズアップされた大会であったと言える。そしてその観点の通り、経過と結果が昨年度までのチームの成績に決して比例しない、非常に面白い大会であったと総括しておきたい。

優勝した大成高は、先代からのエースである東部直希が最上級生世代となっていよいよその頭角を現すこととなった。対戦相手が東部に触れるなり鉈で叩き伏せられてその場に横たわる、とでもいうべき図抜けた強さを見せつけていた一昨年の全国中学大会から2年、今大会の東部の戦いぶりはまさに当時を思い起こさせるものがあった。代表戦1試合を含む全6試合を全て一本勝ちというスコアだけでも戦慄ものであるが、今後に向けてひときわ大きかったのはなんと言っても決勝戦。大将戦で千野根、代表戦で村尾と桐蔭学園が誇る超弩級2枚に対し、間隔を置かない連戦で、しかもともに「一本」で勝ち抜いたことは初の全国制覇を狙う同校の石田輝也監督も大変な手ごたえを感じたことであろう。東部が全国大会の上位対戦における大駒として機能すると規定されたことこそが間違いなくこの黒潮旗最大のトピックであり、「桐蔭学園強し」との印象が刻まれた朱雀杯に続く、今シーズンの高校柔道界にとって大きな分岐になり得る一大インシデントであった。

その大成。石田監督が戦後語った通り「東部に頼り切った」部分は否めない。しかし1年生の三輪、大西、藤鷹を積極的に起用して育成を図り、決勝戦ではその中から大西が同学年のスターである賀持からキッチリと先制するなど、まだまだ成長の可能性を感じさせる、伸びしろの大きいチームでもあった。唯一気になる点を挙げるとすれば決勝トーナメントにおいての試合ごとの得点力が低かったこと。絶対的なエース東部が大将に座ることが「試合を壊すまい」との意識を生む方向に働いたか、他選手がそれぞれ個人の戦いで発揮している元気の良さを欠いていたという印象だ。大型エース1枚を保有するチームが最後に勝ち切れずシーズンを終えてしまうことはこの世界にままあること。東部の存在を食ってしまうような高いレベルでの、他選手の台頭にも期待したい。
 
決勝では敗れてしまったが、今大会最もチームとしての存在感を示したのは桐蔭学園高であると評して異論を挟むものはいないだろう。大型新人3人の加入はまことに大きく、高松正裕監督語るところの「桐蔭史上でも最強になり得るチーム」という表現にも黙って頷くほかはない。今大会で前衛を務めた賀持、村尾については、確たる欠点として指摘する部分はもはや見当たらないと言っていいのではないだろうか。試合への集中力、技術力、そして執念という部分でも、この時期の1年生とは思えないものを既に獲得している印象を得た。その試合の中で特に筆者が戦慄したのは、村尾の決勝戦、大成高・藤鷹を横三角絞で秒殺した場面だ。そもそも三角絞は中学まで禁止技となっており、試合で使えるようになるのは高校に入学してから。その高校入学後、僅か7か月であそこまで完璧な横三角絞を、それも決勝戦で極め切るあたりに村尾の恐ろしさを垣間見た気がした。まさに恐るべき1年生である。準決勝の笹谷戦、決勝戦での東部戦と2試合で負けがついてしまったわけだが、それとて試合内容に大きな欠陥があったわけでなく、よき経験と消化すれば全く問題はないと見る。むしろこれからに向けて良い勉強をさせてもらったと前向きに捉えておいて良いのではないだろうか。2年生エースの関根もその攻撃的な姿勢を見失う部分は一瞬たりともなく、担ぎ技を「掛けて、掛けて、掛けまくる」スタイルはチームの士気を今後も高めていくことだろう。桐蔭学園の視界は良好、今後は準決勝、決勝と2試合連続で一本負けした大物・千野根をこの冬にどこまで鍛え上げるかが課題だ。仕掛ける技が決まったときはそのスケールの大きさを存分に感じさせる千野根だが、重量級の選手によく見られる、おっとりとした部分もまた顕著。組み手十分でも、技を仕掛けるに至るスイッチを押すボタンが少々硬いのか、明らかに仕掛けが遅い。しかし明らかな改善点はすなわち明らかな伸びしろ。千野根がもっと積極的に技を仕掛けることが出来れば、それこそ手のつけられないチームになる可能性がある。村尾らが最上級生世代となる来季以降を思うと、まさに末恐ろしいチームだ。
 
決勝戦に進出したチーム以外では、やはり東海大相模の存在が目を引いた。ライバル桐蔭学園の充実ぶりは当然ながら強く意識しており、打倒桐蔭に掛ける気持ちは全国随一。先に行われた朱雀杯で4-1と完敗しながら、僅か2か月後の今大会で代表戦までもつれ込む接戦を演じたのはさすがの一言に尽きる。敗れた準決勝においても試合ごとの内容だけで言えば互角の部分もあり、次戦の神奈川県予選が大接戦になることは十分に予測できる。残りの期間をいかに過ごすかが運命の分かれ道、勝敗いずれのシナリオにも辿り着く位置にあると見る。
 
冬の招待試合シリーズがいよいよ始まったわけだが、すでに全国大会への出場権を得ているチームも、これから都道府県予選を迎えるチームも、この時期の試合や練習をいかに充実したものとして過ごすかが、これからの命運を握るものであることは明白である。是非とも不用意な怪我などで大事なシーズンを棒に振ることなく、実りのある鍛錬期を過ごすことを願い、今大会総評の結びとしたい。

取材:林俊介、本川由依
戦評:林俊介 (編集:eJudo編集部)

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大成高は大会3連覇を達成

【入賞者】

優 勝:大成高(愛知)
準優勝:桐蔭学園高(神奈川)
第三位:東海大静岡翔洋高(静岡)、東海大相模高(神奈川)

最優秀選手賞:東部直希(大成高)
優秀選手賞:大西陸斗(大成高)、関根聖隆(桐蔭学園高)、米山竜生(東海大静岡翔洋高)、笹谷健(東海大相模高)


大成高・石田輝也監督のコメント
「見ての通り、東部に頼り切りになってしまいました。予選から落とした試合もいくつかありましたが、1試合ごと試合を重ねるうちに、選手たちも力をつけていってくれたと思います。今年のチームは東部が軸なのは明らかですが、今日のように東部に頼り切るのではなく、他のメンバーもしっかりと鍛えて本番に備えてゆきたいです。(-今年は桐蔭学園が強力と前評判がありましたが)試合前は、桐蔭とどれくらい試合が出来るだろうか?と心配な部分もありましたが、やらせてみると選手たちがよく頑張り、桐蔭学園さんとも、そう差がないのかなと感じました。ウチも経験がありますが、前評判は高く評価されるより、追いかける方が楽。2年生だけでなく、1年生もどんどん鍛えて起用してゆきたい。年内はあと水田杯で優勝して締めくくりたいと思います。」

【準々決勝】

大成高(愛知) 2-1 東海大浦安高(千葉)
東海大静岡翔洋高(静岡) 3-2 常盤高(群馬)
桐蔭学園高(神奈川)  3-1 東海大仰星高(大阪)
東海大相模高(神奈川) 3-0 埼玉栄高(埼玉)


【準決勝】

大成高 2-1 東海大静岡翔洋高
桐蔭学園高 ②代-2 東海大相模高

【決勝】

大成高 ②代-2 桐蔭学園高

※ eJudoメルマガ版12月11日掲載記事より転載・編集しています。

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