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平成28年度講道館杯全日本柔道体重別選手権女子レポート①(70kg級、78kg級、78kg超級)

(2016年12月1日)

※ eJudoメルマガ版12月1日掲載記事より転載・編集しています。
平成28年度講道館杯全日本柔道体重別選手権女子レポート①(70kg級、78kg級、78kg超級)
■ 70kg級・新添左季優勝、持ち前の投げ一発でシニア大会も制す
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70kg級準決勝、新添左季が宇野友紀子から内股「一本」

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準決勝、大野陽子が柿澤史穂から内股「有効」

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3位決定戦、前田奈恵子が柿澤の裏投を被り返し「有効」が宣告される(取り消し)。

(エントリー30名)

【決勝まで】

第1シードの新井千鶴(三井住友海上)が初戦敗退。2回戦で前田奈恵子(JR東日本)と試合時間計9分近い消耗戦の末に消極的との咎による「指導1」を失ってトーナメントから陥落、入賞に絡むことすら出来なかった。
田知本遥と最後まで五輪代表を争い、代表決定戦となった選抜体重別決勝では敗れこそしたものの苦しんだこの数年間を洗い清めるかのような好試合を披露。7月のグランドスラム・チュメンも制して東京五輪に向けて体勢整ったかに思われたが、いきなり躓いてしまった格好だ。これからの戦いがあの選抜体重別決勝によって一段ステージを上がった「新規まき直し」ではなく、従来の課題であった線の細さや組み手の方法論的閉塞の延長線上にあることを強く印象づけてしまった敗戦であった。

決勝に進んだのは新添左季(山梨学院大2年)と大野陽子(コマツ)の2人。

今季の全日本ジュニア王者・新添はまず1回戦で小寺結子(立命館大4年)を「指導4」の反則(3:04)で下して大会をスタート。2回戦はジュニア世代の強敵青柳麗美(環太平洋大1年)を「指導1」の優勢で振り切り、準々決勝の前田奈恵子戦は「指導2」対「指導1」の辛勝で乗り切る。山場2つを超えて迎えた準決勝は学生王者宇野友紀子(環太平洋大4年)を内股「一本」(GS1:12)で破り、みごと決勝進出を決めて見せた。

第2シード評価のベテラン大野は2回戦で千葉英里子(環太平洋大4年)を崩上四方固「一本」(2:53)、準々決勝は中江美裕(筑波大1年)を「指導2」対「指導1」の優勢で破ってベスト4入り。準決勝は柿澤史歩(三井住友海上)を内股「有効」で破り、しっかり決勝まで辿り着いた。

前半戦の主役は柿澤史歩。1回戦で池絵梨菜(国士舘大2年)をGS延長戦「指導1」(GS1:10)、2回戦でもと学生王者佐俣優依(帝京大3年)を肩車「有効」、そして準々決勝は安松春香(ALSOK)を「指導2」優勢と強豪3人を立て続けに抜いてベスト4入りを果たした。しかし3位決定戦は前田奈恵子の地力の前に「指導2」で敗退、表彰台登攀は叶わず。9月の全日本ジュニアに続いて、戦いぶりは印象的ながら具体的な成績を残せないという非常に悔しい結果に終わった。

3位入賞は柿澤を下した前田と、中江美裕。中江は1回戦で長内香月(山梨学院大1年)を横落「有効」からの横四方固「一本」(1:51)、さらに田中志歩(聖光高3年)を崩上四方固「一本」(1:51)で破ってベスト8入り。前述の通り準々決勝では大野に屈したが、敗者復活戦で安松春香を横四方固「一本」(GS1:40)、3位決定戦で宇野友紀子を「指導2」優勢で下し、見事大学1年生にして講道館杯3位入賞のの栄誉に輝いた。

2014年世界選手権銀メダリスト・ヌンイラ華蓮(了徳寺学園職)は準々決勝で宇野友紀子にGS延長戦の末「指導4」を奪われトーナメント陥落。続く敗者復活戦でも前田に「指導1」で敗れ最終成績は7位だった。昨年のインターハイ王者新森涼(敬愛高3年)は初戦で橋高朱里(金沢学院大3年)に大内刈「有効」で勝利したが、続く2回戦で宇野にGS延長戦払腰「有効」で敗れた。

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決勝、大野が組み手をコントロールし新添の左払腰は空転

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大野が崩上四方固、新添なんとか逃れて「解けた」

【決勝】

新添左季(山梨学院大2年)〇GS大外刈(GS0:20)△大野陽子(コマツ)

決勝は新添、大野ともに左組みのケンカ四つ。
長身の新添引き手を先に得、釣り手で奥襟を叩く王道手順を踏むが大野はこの釣り手を噛み殺して落とし、掴んだ引き手をあくまで離さず応戦。奥襟確保が生命線の新添は大野の巧みな組み手に付き合うことを嫌って手順を簡略化、46秒には離れた位置から一気に奥襟を叩くことに成功するが大野あっという間に顎で噛み殺して落とし、新添はなかなか高い位置で釣り手を持ち続けることができない。新添は膝車の牽制に続いて払腰を放つが、大野は一の矢の膝車にまったく崩れず、続く払腰は相手の釣り手側に進出してあっさり捌く。作用足を空振りする形となった新添は前に潰れて、大野は得意の寝技に持ち込んで崩上四方固に抑え込む。「抑え込み」が宣告されるが新添長い体を生かして逃れ「待て」。この時点で経過時間は1分24秒。

続く展開、新添が奥襟を叩く瞬間に合わせて大野が左一本背負投。新添がバランスを崩すとすぐに振り向いてとび掛かり攻撃継続、やる気十分。新添は飛び込みの左内股を放つが釣り手の位置が低く窮屈な技となり、大野の上体を崩すことが出来ない。

以後も大野は徹底的に新添の釣り手を落とし続ける。新添はなかなか良い形で攻撃が出来ないが、残り30秒から奮起。まず釣り手を上げて払巻込を放ち大野の組み手をはがすと、続く展開では再び猛然と奥襟を叩く。これは大野が左一本背負投に変換するが、この最終盤に至って大野が守勢に回りつつある印象あり。大野が寝技で攻め、足を引っかけて横三角を狙ったところで本戦4分が終了。試合はGS延長戦に持ち込まれる。

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GS延長戦、新添の左大外刈が豪快な「一本」

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延長開始早々、新添引き手を持つなり釣り手をまっすぐ奥襟に入れる。最短距離の直線軌道で為されたアクションに大野の対応が遅れたその刹那、新添が左内股。この技自体は掛け切れなかったが続いて左大内刈の形で相手の足を開くとすかさず左小内刈、さらに左大外刈と立て続けに技を継ぐ。小内刈で崩されて一瞬左足に体重がかかった大野は本命の大外刈を受けきれず、深々入ったこの技は見事に決まり「一本」。GS延長戦21秒、鮮やかな一本勝ちで新添が講道館杯初優勝を飾った。

序盤は圧力と組み手の徹底管理で大野に展開が振れた試合であったが、後半は様相一変。相手との組み手技術の差を意識して、勝つには投げるほかなしと腹を括った新添の側に凱歌があがった。封殺圧力による「指導」奪取を狙った大野と、あくまで投げることにこだわった新添。何を目当てに試合をしたか、その志向の差が勝敗を分けた一番であった。

大野は前半の手堅さが仇となって試合展開を失った感あり。相手に奥襟を絶対に許すまい、釣り手を絶対に上げさせるまいという防御行動を取るうちに新添が慣れ始め、かつ若い相手に体力で差をつけられてしまった印象。組み勝った状態での技出しの遅さも致命的、いかに圧力行動が生命線の選手であってもあまりに技が少なすぎた。この試合で大野が効果的に放った投技がいずれも相手の奥襟を狙ったところに合わせる一本背負投というリアクション技であったところに、試合姿勢の差は端的であったと思われる。

新添の優勝は見事。女子選手の強豪には、高校時代に各地の指導者に丁寧に育てられて個性豊かな柔道を見せながら、成績を残して大学にスカウトされるややにわに光を失ってしまう選手が非常に多い。その中にあって、わが道を行くがごとく大学入学後に成績を伸ばした新添の存在は異質。少年柔道時代から見せ続けていた高い素質が、いよいよ開花する年齢になったと解釈したい。今後が非常に楽しみだ。

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70kg級優勝の新添左季

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70kg級入賞者。左から大野、新添、前田、中江。

【入賞者】
優 勝:新添左季(山梨学院大2年)
準優勝:大野陽子(コマツ)
第三位:前田奈恵子(JR東日本)、中江美裕(筑波大1年)

【グランドスラム東京代表】

新井千鶴(三井住友海上)、新添左季(山梨学院大2年)
大野陽子(コマツ)、前田奈恵子(JR東日本)

新添左季選手のコメント
「ものすごく嬉しいです。決勝はやるしかないなと思っていました。相手は強いし、自分の組み手になれないのは予想していたので、そこでまず潰されないことと、全部出すことを考えました。何を掛けたか覚えていないくらいの試合でした」

【準々決勝】

新添左季(山梨学院大2年)○優勢[指導2]△前田奈恵子(JR東日本)
宇野友紀子(環太平洋大4年)○GS指導4(GS0:38)△ヌンイラ華蓮(了徳寺学園職)
大野陽子(コマツ)〇優勢[指導2]△中江美裕(筑波大1年)
柿澤史歩(三井住友海上)○優勢[指導2]△安松春香(ALSOK)

【敗者復活戦】

前田奈恵子○優勢[指導1]△ヌンイラ華蓮
中江美裕○GS横四方固(GS1:40)△安松春香

【準決勝】

新添左季〇GS内股(GS1:12)△宇野友紀子
大野陽子〇優勢[有効・内股]△柿澤史歩

【3位決定戦】

前田奈恵子〇優勢[指導2]△柿澤史歩
中江美裕〇優勢[指導2]△宇野友紀子

【決勝】

新添左季〇GS大外刈(GS0:20)△大野陽子

■ 78kg級・佐藤瑠香が圧勝、選抜体重別に続き国内大会連勝飾る
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78k級3回戦、吉村静織がGS延長戦で裏投「有効」獲得。濵田尚里の連覇は潰える。

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準決勝、佐藤瑠香が緒方亜香里を攻める

(エントリー26名)

【決勝まで】

連覇を狙う濱田尚里(自衛隊体育学校)が予選ラウンドで敗退。初戦の菊池優貴乃(日本大4年)戦は開始僅か16秒の小外刈「一本」で勝利し上々の出だしであったが、続く吉村静織(三井住友海上)との3回戦をGS延長戦の末に裏投「有効」(GS1:49)で落としてしまった。入賞なしに終わった濱田はグランドスラム東京代表の選に漏れ、晴れ舞台で得意の寝技を披露する機会をまたもや逸した形。この階級は五輪で代表が活躍できず、国内の序列は混沌。この講道館杯は来年の世界選手権のみならず次の五輪までの勢力図再構成の土台となり得る大事な大会、明らかにキャリア上の分岐点であるどうしても勝たねばならない試合であったはずが、非常に悔しい結果に終わった。

決勝に進んだのは佐藤瑠香(コマツ)と吉村静織。

選抜体重別を圧勝で制しながら五輪代表を逃した佐藤にとっても、今回は再起に向けて絶対に落とせない大会。第1シードに配されたこの日の勝ち上がりは2回戦で黒坂麻樹(金沢学院大1年)を試合が始まるなりの大外刈「一本」(0:13)、3回戦は前戦で西田香穂(JR東日本)に一本勝ちしている上村綾香(福岡大3年)を大内刈「技有」に払腰「一本」(2:06)、準々決勝は梅津志悠(三井住友海上)を横四方固「一本」(2:06)ときわめて順調。準決勝は積年のライバル緒方亜香里(了徳寺学園職)を「指導1」対「指導2」の反則累積差で凌いで順当に決勝進出決定。

一方の吉村は2回戦で野村沙矢(中京大2年)を内股「一本」(1:24)で下し、3回戦は前述の通りGS延長戦の末に濱田尚里を「有効」で下す。準々決勝は赤嶺麻佑(沖縄県警)を「指導2」優勢、準決勝は混戦ブロックを勝ち上がって来た髙山莉加(三井住友海上)との同門対決を「指導1」で制して決勝進出決定。

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決勝、佐藤の小外刈が「有効」

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佐藤は右体落で「有効」を追加

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縦四方固に連絡して一本勝ち

【決勝】

佐藤瑠香(コマツ)〇縦四方固(2:11)△吉村静織(三井住友海上)

決勝は佐藤が右、吉村が左組みのケンカ四つ。佐藤走って飛び掛かり奥襟を叩きやる気十分。吉村左内股で対抗するが佐藤は背筋をまっすぐ伸ばして受け止め、びくともせず。
佐藤は体ごと前進。吉村腰を入れて対抗するが前進運動の止まらない佐藤はその戻りを力強く刈り込む。ガリッという擬音が相応しい力強い一撃に吉村たまらず畳に落ち小外刈「有効」。佐藤そのまま横四方固に抑え込むが吉村なんとか逃れて「解けた」。ここまでの経過時間は35秒。

佐藤あるいは出て、あるいは前に引きずってと以後も力強い柔道を展開。吉村引き手争いから「跳び十字」を試みるが間合いが遠く、佐藤は下に落ちた吉村をあっさり持ち上げて「待て」。

佐藤は引き手の袖を一方的に持つ「100-0」状態から相手を揺さぶり、引き付け、小内刈に大内刈を放って縦横無尽。吉村大内刈で抗するが佐藤は揺るがず。

佐藤完璧な組み手を作り出すと間髪おかずに右体落、一瞬で崩れた吉村はゴロリと転がって1分22秒「有効」。佐藤は伏せた吉村の残った腕を掬い、めくり返してとよどみなく手順を進めて縦四方固。吉村は激しく抵抗するが、佐藤は馬乗りのまま右手を畳についてバランスを取り続け「一本」。

試合時間は2分11秒、佐藤が圧倒的な強さで講道館杯4年ぶり3度目の優勝を決めた。

4月の選抜体重別に圧勝しながら、「(欧州シリーズ派遣を逃し)既に代表権がない」ことで五輪代表選考の俎上に上げられることのなかった佐藤だが、国内大会連勝で再び序列一番手の座を獲得した感あり。次の課題はグランドスラム東京での勝利はもちろんだが、なにより五輪代表を逃す因となった成績や試合ぶりの不安定感を解消することだろう。実力の高さは既に十分見せたわけで、以後はパワーに優れた海外勢と戦ってもコンスタントに成績を残すだけの技術や戦術性を見せることが重要になると思われる。

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78kg級優勝の佐藤瑠香

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78kg級入賞者。左から吉村、佐藤、泉、緒方。

【入賞者】
優 勝:佐藤瑠香(コマツ)
準優勝:吉村静織(三井住友海上)
第三位:緒方亜香里(了徳寺学園職)、泉真生(山梨学院大2年)

【グランドスラム東京代表】

梅木真美(環太平洋大4年)、佐藤瑠香(コマツ)
吉村静織(三井住友海上)、髙山莉加(三井住友海上)

佐藤瑠香選手のコメント
「優勝出来てホッとしています。先生や先輩から『最初から行くように』と声を掛けられていて、その通りに行こうと思っていました。優勝することしか考えていなかったので、良かったです。グランドスラム東京でもしっかり勝ちたいと思います」


【準々決勝】

佐藤瑠香(コマツ)○横四方固(2:06)△梅津志悠(三井住友海上)
緒方亜香里(了徳寺学園職)○優勢[指導2]△泉真生(山梨学院大2年)
吉村静織(三井住友海上)○優勢[指導2]△赤嶺麻佑(沖縄県警)
髙山莉加(三井住友海上)○合技[大腰・縦四方固](2:30)△高橋ルイ(オージー技研)

【敗者復活戦】

泉真生○優勢[有効・小外掛]△梅津志悠
高橋ルイ○優勢[指導2]△赤嶺麻佑

【準決勝】

吉村静織〇優勢[指導1]△髙山莉加
佐藤瑠香〇優勢[指導2]△緒方亜香里

【3位決定戦】

泉真生〇優勢[指導2]△髙山莉加
緒方亜香里〇優勢[技有・大外刈]△高橋ルイ

【決勝】

佐藤瑠香〇縦四方固(2:11)△吉村静織

■ 78kg超級・朝比奈沙羅が4連覇達成、高校1年生素根輝が決勝進出の快挙演じる
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78kg超級準決勝、朝比奈沙羅が山本沙羅を払腰「一本」に仕留める

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素根輝は高校1年生で講道館杯決勝の畳に臨む快挙

(エントリー26名)

【決勝まで】

優勝候補筆頭の田知本愛(ALSOK)が欠場したAブロックから、全日本ジュニアを制したばかりの高校1年生・素根輝(南筑高)が決勝進出。2回戦で小島ひかる(東海大4年)を「指導2」優勢で下すと、準々決勝はベテラン後藤美和(日光警備)を「指導」2つを奪った末の小内巻込「一本」(2:34)に仕留めるという快勝。迎えた準決勝は前戦で市橋寿々華(大阪府警)を下した井上愛美(JR九州)を「指導2」対「指導1」で退けて勝利、みごと講道館杯決勝という大舞台まで辿り着いた。

逆側の山からは4連覇を狙う朝比奈沙羅(東海大2年)が勝ち上がり。2回戦は井坂希望(千葉県警)を小外刈と横四方固の合技「一本」(4:00)、準々決勝はここまで滝川真央(日本第3年)と月波光貴穂(帝京大3年)の強者2人を立て続けに下してきた冨田若春(コマツ)を「指導1」優勢で退け、準決勝では前戦で稲森奈見(三井住友海上)を「指導1」優勢で下しているライバル山本沙羅(大阪体育大4年)を払腰「一本」(3:20)に仕留める快勝。満を持して決勝の畳に臨む。

これまで朝比奈とともに若手のホープとして国際大会に起用されてきた稲森は前述の通り準々決勝敗退。迎えた敗者復活戦もこの日の台風の目である高卒新人の冨田若春にGS延長戦の末大外刈「有効」で敗れて最終成績は7位。3位には山本沙羅と、3位決定戦で冨田を破った井上愛美が入賞した。

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素根(左)と朝比奈による決勝戦

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朝比奈の支釣込足が「有効」

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中盤を過ぎたところで朝比奈がエンジン再始動、この内股の直後素根に「指導」が宣告される

【決勝】

朝比奈沙羅(東海大2年)〇優勢[有効・支釣込足]△素根輝(南筑高1年)

若手のエース候補同士が初めて顔を合わせた決勝は朝比奈が右、素根が左組みのケンカ四つ。
引き手争いの中、朝比奈は両襟を持って距離を詰めようという重量級本格派の試合志向。一方の素根は釣り手を下から持ち、相手の顎の下を突いてまず間合いを取ろうと画策。朝比奈は内股、素根は座り込みの左背負投に大内刈で対抗しつつ試合が推移する。

朝比奈の組んでの圧力、素根がこれをいなしながら担ぎ技を狙うという大枠の構図は以後も継続。朝比奈、50秒に足をまず差し入れての大内刈で牽制、次いで左足を大きく踏み込みながら支釣込足に体を躍らせる。ターンの効いたこの技に素根が崩れると朝比奈すかさず浴びせ、「ヤー」と長い掛け声を掛けながら押し込んでこれは「有効」。経過時間は1分4秒。

体格とキャリアにかなりの差がある中、早い時間のポイント獲得。これで朝比奈に圧勝の予感が漂ったが、以後素根は左背負投に左体落、「韓国背負い」に大内刈と泥臭く技を連発して徐々に試合の流れを引き戻す。釣り手を突き続けると朝比奈は一瞬顔をゆがめてやりにくそうな表情を見せ、素根はここに至って朝比奈との戦い方を掴んだという印象。

この試合時間1分半から2分50秒までの時間帯はどちらかというと素根ペースで試合が推移。朝比奈の内股巻込を反応良く、しかもしっかり受けて凌ぎ、さらに釣り手を効かせた左体落と膝を着いての左大内刈で攻め返す。2分24秒に放ったこの左大内刈では朝比奈の巨体がグラリと揺らぎ、危機を感じた朝比奈が続くシークエンスでひとまず片手の内股で手数を押し戻さねばならないというところまで素根が陣地を回復する。

しかし朝比奈残り1分半を過ぎたところから再びエンジンを掛け、支釣込足からタイミングの良い右内股に繋ぐ。この技がブレイクして両者畳に落ちた直後、残り1分0秒となったところで素根に「指導1」が宣告される。

素根は片手の背負投に潰れ、さらに釣り手を突いて自分の距離を作ると角度のない位置から半身で左大内刈を打ち込む。インパクトのタイミングが一間早いこの技に朝比奈一瞬大きく浮き、次いで激しく畳に落ちて伏せる。経過時間は3分26秒、残り時間は34秒。

朝比奈はまず片手内股で攻め返す形を作り、以降は両襟を持ったまま圧を掛けて試合の流れを固定。朝比奈が残り2秒の右内股で素根に膝を着かせたところで試合は終了となり、結果「有効」優勢を以て朝比奈が勝利、講道館杯4連覇を決めた。

地力に明らかに勝り、かつこれからのし上がってくるであろう新進の若手との初対戦。試合後自ら語った通り、朝比奈の立場からすればこれは「一本」で終わらせておくべき試合であったと思われる。ポイント奪取は早い時間であったが支釣込足という「逆」への技であったこと、そして以降順方向への技を受けられてしまったことで、これはむしろ素根に「戦える」という感触を与えてしまった一番ではないだろうか。以降の両者の関係を考えるうえで、これは記憶しておくべき重要なトピックかと思われる。

しかしそれでもトータルで考えれば、朝比奈のパフォーマンスは高く評価されるに値するものであった。負傷から復帰した後は一貫して動き鋭く、集中力高く、勝負への貪欲さもありその戦いぶりは良し。この日の優勝は結果としてまことに妥当なものであった。
ただし。講道館杯4連覇は偉大な実績だが、逆にいえばこの間一度も世界大会の代表に選ばれていない(※当年の五輪あるいは世界選手権の代表は講道館杯の出場が免除される)ということでもある。一段階段を上がるべく、グランドスラム東京でもこの上昇カーブを維持して欧州シリーズへの挑戦権をしっかり獲得したいところ。五輪銅メダリスト山部佳苗が出場表明している同大会での出来が「以後の4年」を大きく分けることになるだろう。

素根は予想以上に体の使い方が上手く、体のサイズに比して受けも巧み。これは圧勝してしまっていた中学、あるいはジュニアカテゴリ相手の試合ではなかなか見えてこなかった部分だが、この先海外の強豪と戦う上で大きなアドバンテージになるのではないかと思われる。なにより高校1年生にして講道館杯決勝進出はまぎれもなく素晴らしい成果、この先が非常に楽しみになって来た。

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78kg超級優勝の朝比奈沙羅

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78kg超級入賞者。左から素根、朝比奈、山本、井上

【入賞者】

優 勝:朝比奈沙羅(東海大2年)
準優勝:素根輝(南筑高1年)
第三位:井上愛美(JR九州)、山本沙羅(大阪体育大4年)

【グランドスラム東京代表】

梅木真美(環太平洋大4年)、佐藤瑠香(コマツ)
吉村静織(三井住友海上)、髙山莉加(三井住友海上)


朝比奈沙羅選手のコメント
「10月の全日本学生体重別で優勝してから調整がうまくいかずかなり悩みましたが、1つ1つ勝って、最終的に結果を残せて良かった。(-決勝で戦った素根選手に関して?)自分が高校1年生の時は2回戦敗退。私もまだ20歳ですが、ウカウカしていられないと危機感を感じました。『一本』で勝たないといけないと思っていたので満点の出来ではありませんが、(4連覇という)結果を刻めたことは誇りに思います。東京五輪では必ず自分が出て金メダルを取るのだと覚悟を決めて頑張りたい」

【準々決勝】

素根輝(南筑高1年)○小内巻込(2:34)△後藤美和(日光警備)
井上愛美(JR九州)○優勢[指導1]△市橋寿々華(大阪府警)
山本沙羅(大阪体育大4年)○優勢[指導1]△稲森奈見(三井住友海上)
朝比奈沙羅(東海大2年)○優勢[指導1]△冨田若春(コマツ)

【敗者復活戦】

後藤美和○優勢[指導1]△市橋寿々華
冨田若春○GS有効・大外刈(GS5:51)△稲森奈見

【準決勝】

素根輝(南筑高1年)〇優勢[指導2]△井上愛美(JR九州)
朝比奈沙羅(東海大2年)〇払巻込(3:20)△山本沙羅(大阪体育大4年)

【3位決定戦】

井上愛美(JR九州)〇優勢[指導3]△冨田若春(コマツ)
山本沙羅(大阪体育大4年)〇反則(1:49)△後藤美和(日光警備)
 ※所謂「足取り」によるダイレクト反則負け

【決勝】

朝比奈沙羅(東海大2年)〇優勢[有効・支釣込足]△素根輝(南筑高1年)

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