PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第18回

(2016年11月21日)

※ eJudoメルマガ版11月21日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第18回
勝ってその勝ちに傲(おご)ることなく負けてその負けに屈することなく安きにありて油断することなく危きにありて恐るることなくただ一筋の道を蹈みゆけ
出典:「柔道一班ならびにその教育上の価値」 同題講演録小冊子 明治22年(1889)5月
(『嘉納治五郎大系』2巻,132頁)

奥義・・・。非常に魅力的な言葉です。
筆者は奥義という言葉を聞くと漫画「北斗の拳」の<夢想転生>や「るろうに剣心」の<天翔龍閃>といった主人公が厳しい修行と試練を乗り越えた結果、体得する必殺技が思い浮かびますが、皆様はいかがでしょうか。

辞書で奥義という単語を調べてみますと、「学問・芸能・武術などの最も大事な事柄。最もかんじんな点。極意。奥儀。」とあります。残念ながら、必殺技という意味はないようです。

翻ってみて我らが講道館柔道はどうでしょうか?西郷四郎六段(あるいは姿三四郎)の「山嵐」や三舩久藏十段の「空気投」。木村政彦七段の「大外刈」。高田勝善九段の「跳腰」。岡野功六段、古賀稔彦八段の「背負投」。吉田秀彦六段や井上康生六段の「内股」など数え切れない程、その人の代名詞とも呼べる技が浮かんできます。浮かんできますが、これらの技を「奥義」とは言いません。柔道に「必殺技」もとい「奥義」というものは存在するのでしょうか。
 
以前も触れましたが、明治15年、講道館創設の頃の講道館柔道がどのようなものだったか分かる史料はありません。その全体像が分かる最古の史料が、明治22年に「柔道一班ならびにその教育上の価値」という題で行われた講演の記録になります。
 講演の中で、嘉納師範が柔道の目的を「体育」「勝負」「修心」の3つとしているという話も、これまでも紹介してきたところですが、冒頭の一文は「修心」における一節です。

「修心」は文字通り、心を修めること。つまり柔道の精神面の向上について述べている訳ですが、「徳性を涵養すること」「智力を練ること」「柔道勝負の理論を世の百般のことを応用する」などの教えに続き、最後に「柔道の奥義となっておりますこととその応用」として今回の「ひとこと」が述べられています。どうやら、講道館柔道にも奥義があったようです。

さて、その奥義の内容ですが、文自体は難しくないので、大体の内容はお分かりいただけると思います。ただ、最後尾「ただ一筋の道を蹈みゆけ」、ここが少し難解ではないでしょうか。師範自身の解説では「どんな有様にありましてもその有様にあって出来るだけの最上の手段を尽すことこそただ一本の道筋なれ」としています。分かりやすくなってきましたが、もう少しといったところでしょうか。

実は師範は、さらにこのフレーズに解説を加えています。それだけ強調して伝えたいことだったのでしょう。その内容は「いかなる場合にあるもその場合において最上の手段を尽せということになります」というものです。
ここまで来ると師範の言いたいことがシンプルに伝わってくるのではないでしょうか。

「一筋の道をふみゆく」ということは、「最上の手段を尽くせ」ということのようです。

柔道の奥義とは、相手に打ち勝つ必殺技どころか、自分の状況にかかわらず出来る事をする、そういう自分の在り方だったわけです。明治22年の時点で、勝敗を超越した考えを言明しているところに師範の慧眼が見てとれます。残念ながら、その後、奥義という言葉が頻繁に使われた形跡はありませんが、研究者の中にはこの「最上の手段を尽くせ」を精力善用の源流とみる人もいます。柔道の奥義が、その後「精力善用」として結実する。とても、ロマンを感じる話ですが、みなさんはどう思われますか?


※読みやすさを考慮して引用は『嘉納治五郎大系』から行っています。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版11月21日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.