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全日本学生柔道体重別選手権・男子レポート①(60kg級、66kg級、73kg級、81kg級)

(2016年10月27日)

※ eJudoメルマガ版10月27日掲載記事より転載・編集しています。
全日本学生柔道体重別選手権・男子レポート①(60kg級、66kg級、73kg級、81kg級)
■ 60kg級・林浩平が初優勝、3度目の決勝挑戦で悲願達成なる
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藤阪泰恒が大島拓海との2回戦を戦う

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林浩平が準決勝で五味佳将を攻める

(エントリー48名)

【決勝まで】

決勝カードは藤阪泰恒(國學院大2年)対林浩平(国士舘大4年)。ともに優勝に絡むと目されていた強者同士の対戦となった

一昨年のインターハイ王者、同年の講道館杯で3位入賞の実績を持つ藤阪は1回戦でまず東翔陽(皇學館大)を背負投「一本」(4:01)で倒すと、ここからは強豪と連戦。2回戦で大島拓海(筑波大)を「指導3」、3回戦は中原諒人(天理大)に「指導2」の優勢で勝利。最大の勝負どころと目された昨年度王者・青木大(日体大)との準々決勝は背負投「一本」(3:44)で見事に勝ち抜け、準決勝は宮之原誠也(国士舘大)の内股を鍔迫り合いの末に返して「技有」奪取、これで初の決勝進出を決めた。

林は3年連続の決勝進出、この試合で初優勝を目指す。第2シードでスタートした今大会は2回戦で林隼輝(天理大)を内股「一本」(1:53)、3回戦で小島隆仁郎(山梨学院大)を出足払「一本」(1:50)、準々決勝は鈴木貴也(帝京科学大)を腕緘「一本」(1:47)と極めて順調な勝ち上がり。準決勝はここまで樋口裕大(天理大)、田中崇晃(筑波大)ら名だたる強豪を連破して来た五味佳将(日体大)を「指導1」の優勢で退けて、みたび日本一への挑戦権を得ることとなった。

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決勝、林は序盤に取り味のある技を連発

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藤阪の左内股、受け止めた林は釣り手側に移動しながら返して「有効

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最終盤、藤阪走って迫るが林は取り合わず後退してタイムアップ

【決勝】

林浩平(国士舘大4年)○優勢[有効・谷落]△藤阪泰恒(國學院大2年)

決勝は藤阪が右、林が左組みのケンカ四つ。林引き手争いから片手の内股でまず相手を大きく崩し、抗した藤阪が大内刈で前に出ると横落を合わせて先制攻撃。林は続いて思い切った左内股で藤阪を前に大きく崩すと、その立ち上がり際を待ち構えて打点の高い右一本背負投。藤阪たまらず大きく崩れて伏せる。林は非常に積極的、取り味のある技を立て続けに放って1つ山場を作った形。

長身で手足の長い藤阪は自身の特徴を生かすべく釣り手を伸ばして腰を抱こうと探るが、心得た林はこれをさせず。藤阪はすぐに手立てを変えて引き手で襟、釣り手で奥襟を得て圧を掛けに掛かるも林は僅かにずらし、巧みに間合いを取って対応。藤阪結局払腰に潰れて攻勢権奪回ならず、林は横三角で攻めて「待て」。

藤阪釣り手を持つとジワリと前進。引き手を深い位置で得ると一旦重心を下げてこの手を握り込み、タイミング良く飛び込みの右内股。取り味のある一撃であったが林は相手が良く見えており、宙に浮きながら体を開いてこの技を捌くと、自身の右を効かせながらその体をめくり返す。最後は体を捨てて相手を真裏にコントロール、これは林の谷落「有効」。経過時間は2分9秒、残り時間は2分51秒。

ビハインドの藤阪は早くもスクランブル体勢、密着するほかチャンスなしとばかりに激しく前へ。しかし林はこの相手の前進を捉えて袖釣込腰、出足払、左背負投と取り味のある技を連発。この大事な時間帯を強気に攻め返す形で乗り切り、残り1分半まで辿り着く。藤阪左へ大外刈崩れの一本背負投を放って逆襲開始、直後の組み際に藤阪が背を抱くと林は巴投に潰れる消極的選択で回避してしまい、この攻防から流れは明確に藤阪に移る。残り時間は1分9秒。

藤阪は前に出て距離を詰め続け、林は対峙の角度を変えては組み手をリセット、立て続けに掛け潰れてなんとか失点を防ぐという体で一方的な守勢。残り21秒、藤阪が引込返を放った攻防の直後林に「極端な防御姿勢」の咎で「指導1」。直後藤阪が前に林を追い詰めて放った巴投はあわやポイントという技だったが林ギリギリで回避。藤阪は走って前へ、林ももはや走る勢いで後退を続けて組み合わず、主審は林に場外の「指導2」を宣告。しかしこの時点で残り時間は僅か2秒、そのまま試合は終了となる。結果林の「有効」優勢による勝利が決まった。

林の序盤の積極性が勝負を決めた。展開上先行された形となった藤阪は前に出ざるを得ず、そこを狙われて林の良い技を浴び、さらに無理して仕掛けた大技を返されて決定的なポイントを失うこととなった。勝負を決めた「有効」は林の集中力の高さと身体能力の高さが際立ったが、なにより展開上のリードで精神的に余裕があり、相手が良く見えていたという印象だ。藤阪は序盤の攻撃を受けると前に出て反抗、前進が相手のカウンターを引き出すと見るや圧力志向に切り替え、さらに早い段階の大技で一発勝負を掛け、失点後逆転が必要となればしのぐ相手につきあわず密着を狙ってと、その戦い方は一貫して非常に論理的、勝負がしっかり見えていた。しかし序盤に林の猛攻をまず受けて追いかける展開になったことで、この「勝負が見える」論理性は林の得点をむしろ後押ししてしまった感あり。前に出れば担ぎを浴び、さらに無理して仕掛けた技を返されてしまった。実力十分と思われただけに悔しい試合であった。

林は後半の一方的守勢はあったものの、学生日本一の称号に相応しい強さを発揮しての優勝であったと総括出来る。悲願の学生体重別制覇達成を心から讃えたい。

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3度目の決勝挑戦で初優勝を成し遂げた林浩平

【入賞者】
優 勝:林浩平(国士舘大)
準優勝:藤阪泰恒(國學院大)
第三位:宮之原誠也(国士舘大)、五味佳将(日体大)

林浩平選手のコメント
「やっと優勝出来ました。初戦から勢いに乗れて、続けて『一本』を取れたのが良かったです。1年生の時はベスト8に入って満足してしまい、そこから2年続けて2位。昨年は今年こそと思っていたのですけど青木(大・日体大)選手に負けて、今年は絶対に勝つと思っていました。決勝では『このまま2位になってしまうのか、嫌だ!』と自分に言い聞かせながら戦いました。講道館杯に向け、競った場面でのスタミナが課題です」

【準々決勝】

藤阪泰恒(國學院大)○背負投(3:44)△青木大(日体大)
宮之原誠也(国士舘大)○縦四方固(2:58)△杉本大虎(日体大)
林浩平(国士舘大)○腕緘(1:47)△鈴木貴也(帝京科学大)
五味佳将(日体大)○小内刈(2:32)△満田和総(國學院大)

【準決勝】

藤阪泰恒○優勢[技有・内股返]△宮之原誠也
林浩平○優勢[指導1]△五味佳将

【決勝】

林浩平○優勢[有効・内股返]△藤阪泰恒

■ 66kg級・激戦階級を田川兼三が制す、決勝は同門の先輩末木貴将に競り勝つ
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2回戦、木戸清孝が相手の右袖を掴んだまま橋口祐葵の股を潜り、小外掛「有効」

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3回戦、西山祐貴が木戸から背負投「有効」

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準々決勝、浅利昌哉が藤阪太郎から谷落で2つ目の「技有」

(エントリー52名)

【決勝まで】

人材揃った激戦階級。
どのブロックも面白いカードが続いたが、わけてもトーナメント右下の山、Dブロック上部には注目の人材が集中した。このブロックでは2回戦で木戸清孝(天理大)が優勝候補の橋口祐葵を小外掛「有効」で打倒。横落を橋口に跨がれたが、左で握った右袖を離さぬまま相手の股をくぐって裏側に抜け、体を捨ててもろともめくり返す執念の一撃だった。この木戸を3回戦で西山祐貴(日体大)が背負投「有効」で破ってベスト8進出を果たし、大混戦ブロックから抜け出すことなった。

昨年度王者の藤阪太郎(国士舘大)は準々決勝で浅利昌哉(東海大)に内股透と谷落の合技「一本」で敗退。同2位の磯田範仁(国士舘大)も準々決勝で渡邊風吹(東海大)に仕掛けた強引な大外刈を返され「技有」失陥、さらに支釣込足を押し込み返されて2つ目の「技有」を失い、無念の敗退となった。

激戦の結果決勝は関東大会決勝と同カード、田川兼三(筑波大2年)と末木貴将(筑波大3年)による同門対決に決定。

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準々決勝、田川兼三が阿河夢斗から隅返「有効」

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準決勝、末木貴将が西山祐貴から小外掛「有効」

昨年度大会3位、9月の全日本ジュニアでは準優勝を果している田川は2回戦で荒井大成(名城大)を一本背負投「一本」(2:21)で下す上々の滑り出し。続く3回戦は水野隆介(明治大)を大外刈「有効」、準々決勝は阿河夢斗(埼玉大)を隅返「有効」で下して優勢勝ち。最大の山場となった準決勝ではここまでジュニア王者原田誠丈(福岡大)を払腰「技有」、昨年度王者藤阪太郎を合技「一本」で下している浅利昌哉(東海大)と対戦。この大一番に「指導1」対「指導2」の反則累積差で競り勝ち、見事決勝へと駒を進めることとなった。

一方の末木は2回戦で大村和輝(福岡大)を体落「一本」(3:13)で下しこちらも立ち上がりは良し。3回戦は阿河虹希(岡山商科大)を「指導2」の優勢、そして準々決勝では前述の通り大激戦ブロックを突破して来た西山祐貴(日体大)と対戦し、背負投「有効」で勝利を得る。続く準決勝は渡邊風吹(東海大)を「指導1」の優勢で下して決勝進出を決めた。

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決勝は田川と末木による同門対決

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田川が二段の小外刈で度々末木を大きく崩す

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末木が低い大内刈で対抗

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一貫して田川の圧が良く掛かる

【決勝】

田川兼三(筑波大2年)○優勢[指導1]△末木貴将(筑波大3年)

決勝は田川が右、末木が左組みのケンカ四つ。引き手争いから末木が袖を確保するが田川は強気に両襟で圧。末木が左背負投、左大内刈と先んじて技を仕掛けるも田川いずれもインパクトの前にしっかり止め、かつあくまでこの両手を離さずプレッシャーをかけ続ける。

この攻防が一旦収束した50秒、田川は引き手を狙うと見せて、この動きを餌に釣り手で奥襟を掴み右小内刈。末木たまらず後ろ向きに崩れて伏せ、田川が寝技で攻めて「待て」。経過時間は56秒。

この後も引き手争いが続くが、田川が引き手で襟、釣り手で奥襟と強気の組み手を見せる場面が目立つ。1分半過ぎには相手の頭を両手で深く抱えた「首相撲」状態からの小外刈で続けて末木を潰し攻勢。末木は片手の背負投、2分半には両袖から膝をついての左大内刈と攻めるがいかんせん散発、一貫して田川の圧が良く掛かっている印象。

田川ここで再び奥襟を握って首を固めながらの小外刈。二段で崩す得意の形で2度立て続けに末木を伏せさせると、続く攻防は圧力を掛けながら前へ。末木思わず下がってしまい3分16秒末木に場外の「指導1」。これでついに均衡破れる。

ビハインドの末木はなんとか山場を作りたいところだが、田川は釣り手をしっかり突いて展開を動かさず。末木はなかなか技が出せず、最終盤に至るまでの有効打は4分15秒を過ぎてから放った肩車一撃のみ。残り30秒を過ぎたところでついに相手の脇を差して一発勝負が出来る間合いを作り出すが、田川先んじて巴投を仕掛けて早々に展開を切り、末木のチャンスはあっさり潰える。

残り20秒を過ぎてから末木走り寄る勢いで迫るが、田川はカウンターの膝車で蹴って相手を崩し、右背負投で展開を切る。残り数秒、末木が放った出足払はタイミングといい発想といい間違いなくこの試合でもっとも取り味のある技であったが、田川たたらを踏んで立ち直り、ここで終了ブザー。

僅か「指導」1つの差で勝負あり、末木は膝に手を当ててガッカリ。関東大会決勝に続きこの同門対決は田川の勝利に終わることとなった。田川はキャリア初の全国大会タイトル獲得。

スコア上の差は僅かであったが、一貫して田川に地力の点で分があった試合。勝負を分けた「指導」ひとつは、強引な両襟という「上から目線」の形の有無の延長線上にあったと評しておきたい。

実は器用な田川、片手で奥襟を抱えての二段小外刈や引き手を狙っておいての釣り手の動き、組み手と連動した足技など、地力の高さを生かすためのツールの手持ちが豊富で、今回の勝利は妥当。一方の末木は相手に合わせてしまうナイーブな組み立ての柔道から脱しきれず、この試合は持ち味を発揮できなかった。

田川は優勝候補筆頭と目された全日本ジュニアで初の全国タイトルを逃した(2位)が、これでキャリア上の軌道を早くも再修正、再度出世コースに乗った感あり。以後の躍進に期待したい。

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66kg級優勝の田川兼三

【入賞者】
優 勝:田川兼三(筑波大)
準優勝:末木貴将(筑波大)
第三位:浅利昌哉(東海大)、渡邊風吹(東海大)

田川兼三選手のコメント
「初めての日本一、とてもうれしいです。決勝は絶対負けないぞと思って試合をしましたが、本当に厳しい戦いでした。稽古ではいつも投げられていますが、気持ちでは負けていないという自信がありました。内容はまだまだですが、勝てて良かったです。自分の長所は粘っこいところ、得意技は足技ですがしっかり投げる技がまだない。これをきっちり作っていきたいです。阿部一二三選手には中学、高校、ジュニアと3回負けていますが、1度はリードしての逆転負け。次に組むときが楽しみです。」

【準々決勝】

浅利昌哉(東海大)○合技[内股透・裏投](4:25)△藤阪太郎(国士舘大)
田川兼三(筑波大)○優勢[有効・隅返]△阿河夢斗(埼玉大)
渡邊風吹(東海大)○合技[大外返・浮落]△磯田範仁(国士舘大)
末木貴将(筑波大)○優勢[有効・小外刈]△西山祐貴(日体大)

【準決勝】

田川兼三○優勢[指導2]△浅利昌哉
末木貴将○優勢[指導1]△渡邊風吹

【決勝】

田川兼三○優勢[指導1]△末木貴将

■ 73kg級・竹内信康が初優勝、福岡克仁は2連覇ならず
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準決勝、島田隆志郎が2連覇を狙う福岡克仁を出足払「一本」で畳に沈める

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準々決勝、竹内信康が吉田優平から袖釣込腰「技有」

(エントリー55名)

【決勝まで】

決勝に進んだのは島田隆志郎(國學院大1年)と竹内信康(筑波大4年)の2人。ともに高校時代から強豪として鳴らしながら、なかなか全国タイトルに手が届かなかった2人による対戦となった

昨年66kg級でインターハイ2位に入賞している島田はまだ1年生、驚きの決勝進出。この日はまず1回戦で及川将秀(埼玉大)に小外刈と内股による合技「一本」(2:55)、2回戦は古市隼士(東日本国際大)から「指導4」(4:34)を奪って勝利し、3回戦は渡部甲誠(天理大)を背負投「一本」(1:49)に仕留める快勝。準々決勝では高校の先輩である竹中英士(東海大)を「指導3」優勢で破るアップセットを演じ、最大の勝負どころとなった準決勝ではここまで強敵相手に快勝を続けて来た昨年度王者・福岡克仁(日本大)から出足払「一本」(1:42)で鮮やかに勝利する金星。5戦して4つの一本勝ちという素晴らしい内容で決勝の畳へとたどり着いた。

昨年度大会3位、ここまで2年連続で関東大会を制している竹内は初戦から強豪との連戦。2回戦は古賀颯人(日体大)から背負投「有効」で勝利し、3回戦は坂東篤(日本大)を内股「一本」(3:36)に仕留める快勝。準々決勝は吉田優平(東海大)を袖釣込腰「技有」で下し、準決勝は村上洋平(東海大)を小内刈「有効」で退けて、最終学年にして初めての決勝へと駒を進めることとなった。

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決勝は終盤まで島田の圧が良く掛かり一方的展開

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竹内が起死回生の内股巻込、見事決まって「技有」

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【決勝】

竹内信康(筑波大4年)○合技[内股・横四方固](4:52)△島田隆志郎(國學院大1年)

決勝は島田、竹内ともに右組みの相四つ。互いが相手の釣り手を絞る両袖状態の駆け引きが続く静かな幕開けとなったこの試合だが、40秒過ぎに島田が引き手で前襟、釣り手で奥襟を掴む強気の組み手を得ると試合は一気に動き始める。この形を嫌った竹内は釣り手を突っ張りながら「首抜き」を為し、これを確認した島田は敢えて片襟状態を続けたまま組み続ける。主審的確に状況を見極め、1分9秒竹内に首抜きの「指導」。

手ごたえを得た島田は再び、すかさず再び「襟と奥」を掴んで圧力。竹内またもや首を抜いてしまい、島田は持ち続けることで主審に判断を強いる。これは竹内(「首抜き」)か島田(「片襟」)のいずれかに反則を与えねばならぬ場面かと思われたが、ややあって竹内が左袖釣込腰崩れの小内巻込に潰れると主審はそのまま流して「待て」。続く展開も島田が奥襟を叩き、竹内は首を抜くなり組み手を切って逃れるという反則すれすれの微妙な攻防が続く。打開を期した竹内は先んじて島田の右釣り手の袖を絞り込むが、島田が突破して再び奥襟を叩くと、竹内またもや下から頭を抜いてしまう。主審さすがに動かざるを得ず竹内に「首抜き」の咎で2つ目の「指導」を宣告。試合時間は2分3秒、ここまでは組み力の強さを前面に押し出した島田の一方的展開。

島田再び奥襟を叩くと竹内やはり首を抜き、島田はすかさずタイミングの良い右内股。辛くも着地した竹内は両袖を絞って打開を試みるが、島田は定石通りいったん両手を後方に張ってあっさりリセット。再び奥襟を叩くと竹内たまらず首を抜き、慌てて反則を回避すべく左の担ぎ技で展開を流す。島田の有利は変わらず。

しかし直後、竹内の片襟を握っての煽りを島田が片手の袖釣込腰でいなした攻防が終わると、立ち上がらんとした島田の様子がおかしい。足首にテーピングのある右足を引きずり、明らかに負傷した模様。

ここから島田下がり始め、これまでの優位はいきなり減速。しかし追いかける竹内の方もなかなか技が出ず島田の急ブレーキを自身のスコアに昇華させることが出来ない。残り1分、島田が奥襟を叩いて圧を掛けると竹内またもや「首抜き」を為し、島田は敢えてそのまま片襟を持ち続けて攻防継続。これもどちらかに反則を与えねばならない場面かと思われたが主審はスルー。

竹内はなかなか得意の担ぎ技を出せないまま、残り時間は50秒を切る。このままの試合終了が濃厚かと思われたが、ここで竹内が勝負に出る。引き手で袖、釣り手で片襟を握って右小内刈を2連発、さらに島田の腰が下がると見るや右内股の大技を見せる。

引き手の牽引がよく効いた一撃。島田はこの引き手に右手を引っ張られ、かつ竹内が巻き込みの形で大きく振り上げた釣り手にこれまで袖を絞り込んでいた左も引きずり込まれてしまう。腰が引けたまま上体が前に伸びた完全な剛体、竹内が脚一本でその体を支えると中空で島田は一回転「技有」。

逆転に成功した竹内そのままガッチリ横四方固に抑え込んで合技「一本」。試合時間4分52秒、竹内の全日本学生体重別初優勝が決まった。

組み負け続け、かつ「指導」でリードされて得意の担ぎ技のチャンスがほとんどないという状況を逆転した竹内の忍耐力と、内股を選択した勝負勘は見事。窮地にあればあるほど自身の得意技にこだわり過ぎる思考停止に陥って自滅する選手が多い中で、状況を冷静に判断したこの選択は賞賛に値する。

そして何よりその執念を讃えたい。審判の微妙な判定と相手の負傷に助けられた面はあるが、腰の負傷から這い上がって迎えた最終学年の大会というバックグラウンドが生んだ執念、積み上げた艱難辛苦こそがこの勝利の最大の因であるかと思われる。

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81kg級優勝の竹内信康

【入賞者】
優 勝:竹内信康(筑波大)
準優勝:島田隆志郎(國學院大)
第三位:福岡克仁(日本大)、村上洋平(東海大)

竹内信康選手のコメント
「相手(島田選手)は小学校の後輩。最後まで勝ち上がって来いよと話してはいましたが、まさか本当に来るとは(笑)。決勝は後輩の勢いが物凄く、前半はしんどかったです。勝ててうれしい。去年腰の手術をしてしばらくは立ち上がれない状態、ボルトも入れましたし、勝ち負けよりもとにかく何とか戻って来てこの場で戦いたいという気持ちだけでトレーニングに励んで来ました。この瞬間を味わえて、挑戦して、本当に良かったです。次は・・・、あまり先を見ずに目の前の試合を一つ一つしっかり勝っていきたいです」

【決勝】

竹内信康(筑波大4年)○合技[内股・横四方固](4:52)△島田隆志郎(國學院大1年)


【準々決勝】

福岡克仁(日本大)○小内刈(4:33)△細木知樹(国士舘大)
島田隆志郎(國學院大)○優勢[指導3]△竹中英士(東海大)
村上洋平(東海大)○上四方固(4:22)△宮山翔多(山梨学院大)
竹内信康(筑波大)○優勢[技有・袖釣込腰]△吉田優平(東海大)

【準決勝】

島田隆志郎○出足払(1:42)△福岡克仁
竹内信康○優勢[有効・小内刈]△村上洋平

【決勝】

竹内信康○合技[内股・横四方固](4:52)△島田隆志郎

■ 81kg級・佐藤正大がしぶとく2連覇
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81kg級3回戦、佐藤正大が絞めを効かせながら岩本一将を抑え込む

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3回戦、山本幸紀が釘丸将太から支釣込足「技有」

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準決勝、山本幸紀が渋川大成から背負投「有効」

(エントリー56名)

【決勝まで】

決勝に残ったのは佐藤正大(国士舘大4年)と山本幸紀(筑波大4年)の2人。

連覇を狙う佐藤は2回戦で竹下将樹(鹿屋体育大)を上四方固「一本」(4:59)、3回戦で岩本一将(日体大)をこれも上四方固「一本」(3:28)で下す。準々決勝は北浦大基(天理大)を「指導3」の優勢で退け、勝負どころと目された準決勝では、3回戦でジュニア王者佐々木健志(筑波大)を小内刈「有効」で破っている渕原槙一(日体大)に「指導1」の優勢でしぶとく競り勝って決勝進出決定。

一方の山本は1回戦で藤岡将吾(東海大)から隅落「有効」、2回戦では叶景介(広島国際大)から小外掛「一本」(1:28)、3回戦は釘丸将太(国士舘大)から支釣込足「技有」、そして準々決勝は混戦ブロックを気風の良い柔道で勝ちあがって来た幸風邦也(埼玉大)を横四方固「一本」(3:05)で下してベスト4入り。準決勝はシード選手小原拳也(東海大)の欠場でこれも大混戦となったCブロックの勝者渋川大成(近畿大)を背負投「有効」で下し、4年生にして初の全日本学生体重別決勝への切符を勝ち取ることとなった。

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激しい組み手争いを縫って佐藤が背負投で攻める

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連覇決定の瞬間、歓喜を露わにする佐藤

【決勝】

佐藤正大(国士舘大4年)○優勢[指導2]△山本幸紀(筑波大4年)

決勝は佐藤が右、山本が左組みのケンカ四つ。引き手争いの中、40秒過ぎに佐藤が隅返で山本を大きく崩し、山本も1分過ぎから支釣込足で攻め返して展開を譲らず。双方の技が止まった1分43秒、両者に対し「指導1」が宣告される。

直後佐藤が良いタイミングで座り込みの右体落。しかし山本はガッチリ止め、2分半過ぎには釣り手を上から入れて取り味のある左大外刈一閃。しかし佐藤は体捌き良くかわして出足払に変換、山本ガクリと膝が折れるが踏みとどまり、この段階でも双方の攻防に差はつかず。

3分を過ぎたあたりから佐藤が組み手で相対的に有利な場面を作ることが増え、僅かながら優勢。試合時間が4分に近づくところで佐藤が右背負投を放ち、山本が外側に逃れたところで主審は展開に差をつけることを選択。山本にのみ2つ目の「指導」を宣告する。

山本は肩車に二段の小外刈と激しく攻めるが、都度佐藤は先んじて一方的に組み、あるいはいなし、あるいは前進して相手を下げてと変幻自在に相手の攻撃を減速させる。あっという間に時間が過ぎ去り、「指導1」対「指導2」の優勢で佐藤の勝利が決まった。

静かで一見動きの少ない試合であったが、局面局面でめまぐるしく、そして細かく組み手の有利不利が入れ替わる非常に難しい試合であった。大事な終盤まで集中力を切らさず、かつ攻める精神的な余力のあった佐藤が僅かの差で勝利したと評しておきたい。

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81kg級優勝の佐藤正大

【入賞者】
優 勝:佐藤正大(国士舘大)
準優勝:山本幸紀(筑波大)
第三位:渕原槙一(日体大)、渋川大也(近畿大)

佐藤正大選手のコメント
「試合まで本当に怖かったけど、連覇するということに意味があると思っていた。プレッシャーはあったがそれに打ち勝たないと海外では絶対に通用しないと思う。その気持ちを背負って最後まで戦いました」

【準々決勝】

佐藤正大(国士舘大)○優勢[指導3]△北浦大基(天理大)
渕原槙一(日体大)○優勢[指導2]△細谷京亮(東洋大)
渋川大也(近畿大)○優勢[技有・大内刈]△中田大貴(山梨学院大)
山本幸紀(筑波大)○合技[浮落・横四方固](3:05)△幸風邦也(埼玉大)

【準決勝】

佐藤正大○優勢[指導1]△渕原槙一
山本幸紀○優勢[有効・背負投]△渋川大也

【決勝】

佐藤正大○優勢[指導2]△山本幸紀

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