PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第12回

(2016年8月22日)

※ eJudoメルマガ版8月22日掲載記事より転載・編集しています。
【隔週刊・嘉納治五郎師範のひとこと】第12回
金銭は元来心身の力を使用して得た一種の生産物であって、心身の力の変形と見做しても差支えないのである。よってこれを有効に使用せぬことは心身の力を有効に使用せぬのと同じことである。
出典:「柔道会の事業」柔道1巻5号 大正4年(1915)5月 (『嘉納治五郎大系』1巻127頁)

今回の「ひとこと」は有り体に言えば「お金」についてです。
「教育者であり、柔道家である嘉納師範がお金のことを言うなんて・・・」と違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。「教育」とお金と結びつけることを厭う文化というものでしょうか。ただ、師範も「道は金と交換にこれを授くべきものではなく」と述べ、講道館は授業料(入門料や道場の維持費は別)をもらっていないと言っています。

今回のテーマはお金の使い方です。

お金を生み出すという経済活動が、人間の活動である以上、我々は必ず心身の力を使うわけですから、金銭が心身の力の変形と見做すという師範の言葉は分かりやすいと思います。そして、金銭が心身の力の生産物である以上、それを有効に使用するのは、師範にとって「柔道の原理」から当然のことだったでしょう。

この金銭(=心身の力の変形)を有効に使用することを考えた時、陥りやすい悪例として、師範は次の様な買い物をあげています。どのようなことかと言いますと、お金があると言って、今すぐに使うあてがないものを、安いから、あるいは役立ちそうだからという理由で買うことです。師範は一見金銭の有効な使用に思えるが、深く考えると得策ではないとしています。

使う目処がないのに買っておいたものは、悪くなったりすることがある(つまり、有効に使用していない)。また、お金さえあればいつでも買える。むしろ、すぐに必要でないものを買うお金を貯金した方が、利息もつくし、世に資本を供給して国のためになる、と師範は言います。
 現在の預金の利息を考えると、素直に首肯しがたい部分もありますが、お金というものを有効に使用しようとする立場から得ることがあるのではないでしょうか。
 
ところで、師範はなぜお金のことを言うのでしょうか。

今回の出典に出てくる「柔道会」は本連載の第1回でも少し触れましたが、大正4年に嘉納師範が「柔道ノ発達及普及ヲ図ル」という目的で講道館とは別に設立した団体になります。この「柔道会」の事業について説いた論稿の1つが今回の出典である「柔道会の事業」になります。同資料の中で、師範は「世の弊風(筆者注:へいふう 悪習。悪い習慣や風俗)を救うことも一の事業」としており、弊風の具体例の1つとしてあげられた「金銭の使用に留意すること」の項目内に、今回の「ことば」が含まれています。
師範が「金銭」について述べたのは今回の資料だけではありません。機会があれば他の資料も紹介したいと思いますが、師範は柔道で得たとされる「心身の力を最も有効に使用する」という原理を基に当時の(柔道界ではなく)社会を変えようと考えていたのです。
 
※読みやすさを考慮して引用は『嘉納治五郎大系』から行っています。

著者:元 敏季(ハジメ・トシキ)
1975年生まれ。柔道は中学校から始め、大学までは競技を中心に行うが、卒業論文を機に柔道の文化的側面に関心を持ち、大学院へ進学。凡そ10年、大学院・研究機関に所属するも、研究とは異なる分野の仕事に就き現在に至る。ライフワークとして嘉納治五郎に関する史料を蒐集・研究し、その成果を柔道振興のため発信しようとしている。

※ eJudoメルマガ版8月22日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.