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【リオ五輪柔道競技完全ガイド】リネールの実績と実力が圧倒的、追撃者は絶対値の高さで原沢、相性と勢いでカモー・リオデジャネイロ五輪柔道競技100kg超級展望

(2016年8月12日)

※ eJudoメルマガ版8月12日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド】リネールの実績と実力が圧倒的、追撃者は絶対値の高さで原沢、相性と勢いでカモー・リオデジャネイロ五輪柔道競技100kg超級展望
■ 階級概況
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100kg超級はテディ・リネールの力が圧倒的

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絶対王者テディ・リネール(フランス)の実力、実績が圧倒的だ。世界選手権100kg超級7連覇中、五輪連覇を狙うこの男が今回も勝ち続けて柔道史に輝く「リネールの時代」を継続させるのか、それとも誰かが時代を変えるのか。これが100kg超級のみならず、柔道競技全体を通じた、あるいはスポーツ界全体から見た柔道競技が抱かれるべき大きなテーマ。

身長204センチ、体重130キロ以上という圧倒的な体格を誇りながら中量級なみの身体能力を持ち、組み手の法則や投技の手順など「王道のやりたいこと」、誰もがそうすればいいとわかっていながらもなかなか実現出来ない超オーソドックス手順を実現できるパワーと技術を持つことがこの人の柔道の特徴。そして、「相手にチャンスのない、自分だけが攻撃できる形」を作ることに全てのリソースを注ぎ込む、異常なまでの危機管理へのこだわりがこの人の実績の源泉だ。

リネールが苦手なタイプというのはもはや国際的にコンセンサスが出来ている。ケンカ四つで、重心が低い短駆重量タイプで、密着柔道を仕掛けて、かつ担ぎ技がある選手。ところが現在の国際柔道界でこの項に嵌るタイプのトップ選手がなかなかいない。もっとも嵌るレヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)は欧州選手権準決勝で残り1秒まで粘ってリネールを苛つかせこの見立てを体で証明してみせたが、この選手はアダム・オクリアシビリとの代表争いに競り負け、今大会には出場していない。リネールの優位はますます加速しつつある印象だ。

独走するリネールを追撃すべく「ロンドン-リオ期」前半戦に第1グループを形成したラファエラ・シウバ(ブラジル)やアダム・オクリアシビリ、ファイセル・ヤバラー(チュニジア)やキム・スンミン(韓国)は明らかに息切れ。2014年後半ごろから勃興した若い世代が現在は階級の中核を為す。

ロイ・メイヤー(オランダ)、オール・サッソン(イスラエル)、バルナ・ボール(ハンガリー)滑り込みでこのグループに到達したダニエル・ナテア(ルーマニア)らが形成するこのグループの領袖は日本勢(今大会は原沢久喜)と、急成長のイアキフ・カモー(ウクライナ)。

原沢の柔道は絶対値が高いが、「相四つ×大外刈・内股ファイター」というその属性、クラシカルかつオーソドックスな柔道スタイルはリネールにとっては組みし易し。なんらか具体的な突破口をプランする必要がある。

一方のカモーは前述の項を満たし、かつ若さと「いままさしく伸び盛り」の勢いがある。この2人が打倒リネールの最右翼だろう。

参考動画:
2016年欧州選手権準決勝 テディ・リネール対レヴァニ・マティアシビリ戦
残り1秒まで「指導1」対「指導2」という事態に苛ついたリネールは「もう
試合終了」とばかりに場外に歩き始めた相手を追い掛け、背中側から捨身技を仕掛けて「一本」。ブーイングを浴びる。

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テディ・リネール(フランス)
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テディ・リネール(フランス)
RINER Teddy
27歳 1989/4/7
組み手:右 WR1位
得意技:右大内刈、右大外刈、右内股、右払腰、支釣込足、小外刈、浮技、引込返、隅返

21世紀の柔道界を代表する桁外れの実績を持つ柔道モンスター。「リネールの時代」を駆け抜ける、柔道というジャンルの垣根を超えたスポーツ界の大スターである。
身長204cm、体重129kgの恵まれた体に中量級なみのアスリート能力を詰め込み、その能力をまず「組み勝つこと」に注ぎ込み、然る後に投げに掛かって仕留める。技術自体に異次元性はないが、この身体で「やるべきこと」をしっかり為した結果誰も勝てない高みに達していると喝破できる。
果たしてリネールはこのまま負けずに終わるのか、それとも五輪という異常な舞台で「何か」が起こるのか。リオ五輪柔道競技を巡る、これが最大のトピックである。
ケンカ四つの背負投系選手が苦手な傾向が見られるが、該当するマティアシビリが五輪では不在。客観的にはリネール優勝を推すのが妥当かと思われる。

【おもな戦績】
2007年~世界選手権100kg超級7連覇中
2012年ロンドン五輪 金メダル

【最近の成績】
2015年12月 グランプリ済州 優勝
2015年3月 グランプ・サムスン 優勝
2016年4月 欧州選手権 優勝

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原沢久喜(日本)
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原沢久喜(日本)
HARASAWA Hisayoshi
24歳 1992/07/03
組み手:右 WR2位
所属:(早鞆高→日本大→)日本中央競馬会
得意技:内股、大内刈、大外刈

日本が待ち望んだ本格派。「組んで、投げる」というスケールの大きい柔道を貫き続けることで日本大学在学中に急成長、日本中央競馬会に進んだ2015年4月にはついに最高峰大会である全日本柔道選手権を制するに至った。
柔道スタイルはクラシカルだが、アンコ型が多い東アジアの重量級選手には珍しく身長191センチ、体重120キロの恵まれた体に中量級なみの運動能力を搭載するアスリートタイプの選手である。
2014年11月から国際大会では7連勝をマーク、絶対王者テディ・リネールを追う一番手として世界の注目を集めている。

【おもな戦績】
2014年11月から2016年2月まで国際大会7大会連続優勝
2015年 全日本柔道選手権 優勝

【最近の成績】
2015年12月 グランドスラム東京 優勝
2016年2月 グランドスラム・パリ 優勝
2016年4月 全日本選抜体重別 優勝
2016年4月 全日本柔道選手権 3位
2016年5月 ワールドマスターズ 3位

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イアキフ・カモー(ウクライナ)
Photo from IJF

イアキフ・カモー(ウクライナ)
KHAMMO Iakiv
22歳 1994/6/11
左組み WR3位
得意技:浮技、隅返、左背負投(片襟)、左大外刈、左小外掛、裏投、抱分、右大内刈

アスタナ世界選手権銅メダリスト。
今最も勢いのある若手選手。浮技、隅返といった捨身技を最も得意としている。片襟から放つ切れ味鋭い左背負投も大きな武器。後の先の技も非常に得意で不用意に体を捨てると抱分や裏投で放り投げられてしまう。
奇襲技として右大内刈も持っており、世界ジュニア選手権ではこの技で小川雄勢から「技有」を奪っている。ケンカ四つ、背負投系という2大要素を満たしており、実は打倒リネールの最有力候補かもしれない。

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ロイ・メイヤー(オランダ)
Photo from IJF

ロイ・メイヤー(オランダ)
MEYER Roy
25歳 1991/6/4
右組み WR5位
得意技:右一本背負投、右袖釣込腰、右大内刈、右大外刈、右小内刈、右内股、右浮腰、支釣込足、隅落

ワールドマスターズ2大会連続3位。
近頃評価急上昇中の背負投ファイター。
右組みだが引き手で袖を持つことは殆ど無く、引き手で襟を持ち右一本背負投を狙う片手の形が基本形。パワーもあり、両襟からの右大内刈や右大外刈で相手を揺さぶることも多い。

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オール・サッソン(イスラエル)
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オール・サッソン(イスラエル)
SASSON Or
25歳 1990/8/18
左組み WR5位
得意技:左背負投、左背負投(片襟)、左袖釣込腰、左一本背負投、左小内巻込

近頃評価急上昇中の背負投ファイター。今年2月のグランドスラム・パリにおける七戸龍打倒で大いに名を揚げた。
調子が良い時は左背負投で「一本」を量産する。
両袖からの左袖釣込腰も保有。絞り合いから一発狙って来ること多々。
メイヤー同様に逆構えで奥襟を持って試合を進めることもある

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バルナ・ボール(ハンガリー)
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バルナ・ボール(ハンガリー)
BOR Barna
29歳 1986/12/12
両組み WR7位
得意技:右払腰、右払巻込、右内股、右小内刈、左払巻込、左内股、左小内刈

状況によって左右の組み手を使い分ける両組みの選手。
得意技は左右の払巻込で、右組みからの左払巻込や左組みからの右払巻込と「逆」の仕掛けも得意。跳ねあげるのではなく、ねじ込むように相手の横に入る左右の内股と、
内股から繋ぐ左右の小内刈も得意としている。

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ラファエル・シウバ(ブラジル)
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ラファエル・シウバ(ブラジル)
SILVA Rafael
29歳 1987/5/11
右組み WR9位
得意技:左背負投、左背負投(片襟)、左袖釣込腰、左一本背負投、左小内巻込

ロンドン五輪銅メダリスト、2013年世界選手権3位。
階級屈指の巨体とその圧力をテコに、徹底した巧みな組み手管理で「指導」を重ねる。
巨体を活かした右の巻込技も得意としている。使用頻度は多くないが右一本背負投を繰り出すこともあり。長期離脱していたが昨年末に復活。ダビド・モウラを凌いで再度五輪出場の栄を得た。戦術性を支えていたフィジカルが低下していたことで復帰当初は全く成績が残らなかったが、どうやらかつての特徴を発揮できるところにまで復調しつつある模様。

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アダム・オクルアシビリ(ジョージア)
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アダム・オクルアシビリ(ジョージア)
OKRUASHVILI Adam
27歳 1989/1/1
左組み WR12位
得意技:裏投、抱分、横車、左外巻込、左一本背負投、左大内刈、左「韓国背負い」

アスタナ世界選手権3位。丸みを帯びた巨体を生かした、相手に抱きついての裏投が最大の武器。2013-2014年前半シーズンにはこの「裏投げダルマ」属性を存分に発揮し階級の主役であった。周囲が裏投を警戒し始めたこと、また担ぎ技への脆さが露呈したことで攻略法が確立されて以後一時期低迷。。
昨年からは相手の手首をロックして転がる変則左外巻込や、相手にぶら下がるようにもたれ掛かる左大内刈も使用。最近は左「韓国背負い」も使用することになり色物街道まっしぐらである。リネール攻略にもっとも可能性が高いと思われたレヴァニ・マティアシビリを抑えての選出で、それだけの責任は果たしてもらいたいところ。

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ダニエル・ナテア(ルーマニア)
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ダニエル・ナテア(ルーマニア)
NATEA Daniel
24歳 1992/4/21
右組み WR6位
得意技:右払巻込、右払腰、右大外刈、隅落、左小外掛、裏投

2016年ワールドマスターズ優勝。
階級屈指の巨漢。体を生かした払巻込が最大の武器。率直に言って体が大きいだけの心が弱い選手という印象であったが、5月のワールドマスターズで突如覚醒。巨岩のような体をまるごと投げ出して「一本」を量産する凄まじい出来を披露、原沢久喜をはじめとするスターたちを全て「一本」で退けて優勝した。7月にスペインで行われた国際合宿でもその自信を失うことなく良い状態にあったとの情報で、今大会はダークホース。

ファイセル・ヤバラー(チュニジア)
JABALLAH Faicel
27歳 1988/8/1
右組み WR11位
得意技:右大外刈、右払腰、右払巻込、支釣込足、浮技

アフリカ選手権100kg超級4連覇中。かつては階級随一の破壊力を誇った。全日本選手権で準優勝して最盛期にあった石井竜太の膝を真横からの大外刈で破壊したシーンはファンの記憶にも新しいはず。近年力の衰えを隠せずにいるが最高到達点だけを採ればベスト4クラス。五輪で上昇する「死んだフリ」枠のバックグランドを持った選手ではある。

奥襟を持って右大外刈や右払腰を放つオーソドックススタイルだが、最近浮技を投入。留意したい。

アブドロ・タングリエフ(ウズベキスタン)
TANGRIEV Abdullo
35歳 1981/3/28
左組み WR19位
得意技:左内股、左袖釣込腰、右袖釣込腰、左大腰、浮技

北京五輪銀メダリスト。ベテランであり、パワーと体があって勝負勘と「狡さ」を兼ね備えた試合巧者である。流石に体力の衰えは隠し切れないが、曲者ぶりはいよいよ円熟味を増しており油断できない。2014年アジア大会で見せた「もう息が続かないからギブアップ」状態から見せた突如の本気の一発などは忘れがたいシーン。試合運びはゆったりと構えてマイペースそのもの。左内股が得意技だが左右の袖釣込腰にも注意が必要。

イスラム・エルシャハビ(エジプト)
EL SHEHABY Islam
33歳 1982/8/1
右組み WR25位
得意技:右払腰、右払巻込、左一本背負投、谷落、横車

2010年東京世界選手権銅メダリスト。一線からプッツリ消えていたが緩やかに復帰し五輪出場の栄を得た。全盛期は過ぎたが、最大の特徴であるパワーは健在。
相手に袖を絞られた状態から、両手で絞られている方(自身のの右)の袖口を掴んで仕掛ける左一本背負投はかなり危険な技。

キム・スンミン(韓国)
KIM Sungmin
29歳 1987/6/29
右組み WR14位
得意技:右払巻込、左浮落、右払腰、横落、右大外刈、右大外巻込、右小外掛、左小外掛

2011年パリ世界選手権3位。もともと巻き込み一辺倒だったが、パワーの衰えとともに様々な技を使用するようになった。柔道の味や面白さという点では実は現在がキャリア最高到達点にある。組み際に仕掛ける横落などは取り味十分。
昨年からは小内刈の位置に支釣込足を打ってから、脇を掬って胸を合わせる西潟健太式の浮落も多用するようになった。

レナト・サイドフ(ロシア)
SAIDOV Renat
27歳 1988/8/1
右組み WR14位
得意技:右内股、右小外掛、右浮落、右大外刈

長身を生かした右ケンケン内股が得意。
かつてグランドスラム・東京で七戸龍を破った巴投からの腕挫十字固も得意。昨年のアスタナ世界選手権以降出場する大会を絞っておりワールドツアーへの参戦はグランプリハバナのみ(優勝)。現在の力がどの位置にマップされるかは、蓋を開けてみないとわからない。

ウサンジ・コカウリ(アゼルバイジャン)
KOKAURI Ushangi
24歳 1992/1/10
右組み WR23位
得意技:右小外掛、左小外掛、右大外刈、右内股、右内股巻込、右払腰、右払巻込

近頃上昇気運にある若手。かなりパワーがあるようで、相手を固定してからの強引な巻込技や、小外掛で崩してから強引に押し込んでのポイントが多い。

ルリー・クラコベツキ(キルギスタン)
KRAKOVETSKII Iurii
23歳 1992/8/27
右組み WR8位
得意技:右内股、右小内巻込、支釣込足、裏投、左浮落

短い手足を活かした軽快な動きとそこから生み出される技のキレが最大の武器。左に一度腰を切ってからの右内股が得意。左への支釣込足や、支釣込足と同じ理合での左浮落も巧い。センスを感じさせる選手。

■ シード順
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シード順は右図。

第1シードがリネール。原沢はミッション通りにランキング2位の座を得て第2シードに座った。まず決勝という磁場の極めて高い、アクシデントが起こる確率がもっとも高い場所で戦うことが何より重要と考えてのこのミッションはひとまず成功。ただし準決勝では今もっとも危険なカモー、あるいはワールドマスターズで転がされてしまったナテアのいずれかとマッチアップ。まずしっかり決勝まで勝ち上がることを考えたい。

ランキングが落ちてしまった「もと第1グループ」のベテランたちの行方がトーナメントの趨勢を大きく左右する。これは「直前展望」で検証したい。

文責:古田英毅
協力:林さとる

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