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【リオ五輪柔道競技完全ガイド】オルティスとユーが二強、対抗馬アルセマンと合わせて他寄せ付けぬ第1グループを形成・リオデジャネイロ五輪柔道競技78kg超級展望

(2016年8月9日)

※ eJudoメルマガ版8月9日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド】オルティスとユーが二強、対抗馬アルセマンと合わせて他寄せ付けぬ第1グループを形成・リオデジャネイロ五輪柔道競技78kg超級展望
■ 階級概況
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戦力推測マップ。オルティス、ユー、マーが金メダルにもっとも近い第1グループを形成。

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過去の到達点の高さから、まず五輪連覇を狙うイダリス・オルティス(キューバ)、2015年アスタナ世界選手権の覇者ユー・ソン(中国)の2人が「二強」と規定されるべき。

オルティスは2012年ロンドン五輪、2013年リオ世界選手権、2014年チェリャビンスク世界選手権と世界大会を3連覇。大会にフォーカスして調整するかどうかで出来不出来がハッキリ分かれるタイプで、2015年シーズン終了まで実はキャリア中ワールドツアーの優勝は1回もなし。しかしロンドンを起点にしてここまでの間世界大会でオルティスが敗れたのはただ1回、2015年世界選手権の田知本愛戦だけ。実質無敵を誇っている。ロンドン制覇時点から体も一回り大きくなり、ルール変更に引き上げられるように投げの威力も増した。15年大会、田知本に敗れて姿を現した3位決定戦における戦艦のような強さは忘れがたい。毎度変わり、かつ一体に巨大化する傾向にある髪型にも注目。質(形)ではなく「量」自体が注目ポイント、ファンにとっては欠かせないみどころだ。

ユーは日本留学経験があり、巨漢圧殺タイプを量産して来た中国選手には珍しく巨体ながら左右に投げ技を持つなかなか取り味のある選手。圧倒的な実力と実績を誇りながら最終段階までマー・スースーと競らせられ続けられ疲弊したところがあるが、到達点は高い。今回はコンディション調整の高低がパフォーマンスの第1トピック、やや我が強すぎるところがある性格が勝敗を揺らす要素。

この2人に対抗し得る唯一の対抗馬が、2013年と2014年の世界選手権でファイナリストの栄を得たマリアスエレン・アルセマン(ブラジル)。ツアーの様相だけで判断する限り、二強へのアクセス権を持つのはこの2名のみ。

浮技特化のまま進化を続ける「アフリカの浮技女王」ことニヘル・シェイキロウホウ(チュニジア)、エミリー・アンドル(フランス)、キム・ミンジョン(韓国)が続くグループを為すが、上位3名とは一段力の差がある印象。山部佳苗はこのグループに属する。純戦闘力的には上位3名にアクセスする権利があると思われるが、発言などからもこの序列の中で自身を高く買い切れていないことが明らか、この自己規定が現実世界における序列にそのまま反映されてしまっている。

山部にはとにかく下を向かず、前を向いて試合をしてもらいたい。過去2回の世界選手権、覇気のない試合で本戦から脱落した後に立ち直るという展開を続けているが、今回は「やり直し」で届く位置は日本代表のミッションにはない。健闘を期待したい。

■ 有力選手
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イダリィス・オルティス(キューバ)
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イダリィス・オルティス(キューバ)
ORTIZ Idalys
26歳 1989/9/27
組み手:右 WR1位
得意技:隅落、浮技、裏投、左一本背負投、左袖釣込腰

ロンドン五輪から世界大会を3連覇した階級の女王。この4年間に世界大会で敗れたのは2015年アスタナ大会準決勝の田知本愛戦のみ。
基本的には後の先の選手。背中を抱いて密着することで相手の技を誘い隅落、裏投、浮技に持ち込むこともある。近年はかつて見せ技だった担ぎ技も威力を増しており注意が必要。ただしこの担ぎ技で偽装攻撃によるによる「指導」を失うことが多々ある。
また、フォーカスした大会とそれ以外の大会では出来に大きな差があり、ツアーでの優勝は僅少。とはいえ、五輪では間違いなく過去4年間で最高の強さを見せるはずである。派手な髪型にも注目。

【おもな戦績】
2012年 ロンドン五輪 優勝
2013年 リオ世界選手権 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 3位
【最近の成績】
2016年5月 グランドスラム・バクー 7位
2016年5月 グランプリ・アルマティ 優勝
2016年5月 ワールドマスターズ 優勝
2016年7月 グランプリ・ウランバートル 優勝

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ユー・ソン(中国)
Photo from IJF

ユー・ソン(中国)
YU Song
28歳 1987/8/6
組み手:右 WR2位
得意技:右外巻込、右内股、右大外刈、左大外刈、右小外刈、浮技

2015年アスタナ世界選手権王者。
巨体でありながら小回りが利くため、右内股や右小外刈などある程度切れ味のある技も使用できる。奇襲技として左大外刈があり、釣り手で奥襟を持った状態から引き手で脇を掬って仕掛けてくる。
今年に入ってからは内容、成績ともに振るわず。圧倒的な実績を誇りながらなぜか最終段階までマー・スースと競らされ続けて疲弊した感あり。

【おもな戦績】
2015年アスタナ世界選手権 優勝
ワールドマスターズ2連覇(2013年、2015年)

【最近の成績】
2016年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 2位
2016年5月 グランドスラム・バクー 2位
2016年6月 グランプリ・ブタペスト 3位

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マリア スエレン・アルセマン(ブラジル)
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マリア スエレン・アルセマン(ブラジル)
ALTHEMAN Maria suelen
27歳 1988/8/12
組み手:左 WR12位
得意技:左払腰、左払巻込、左大外刈、谷落

2013年、2014年の世界選手権銀メダリスト。
密着パワーファイター。奥襟を持って間合いを詰め、左払腰や左払巻込を仕掛ける。
左払腰から切り返しての谷落があるくらいで柔道の組み立ては比較的シンプルだが、ユー・ソンを真っ向からねじ伏せた馬力は脅威。2014年世界選手権決勝のオルティスとの投げ合いはロンドン-リオ期屈指の好試合であった。
長く国際大会から離れていたために五輪ではノーシード。この選手がどこに配置されるかで大会の行方そのものが左右される階級最大の不確定要素。

【おもな戦績】
2013年 リオ世界選手権 2位
2014年 チェリャビンスク世界選手権 2位

【最近の成績】
2016年1月 グランプリ・ハバナ 5位
2016年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 優勝
2016年2月 グランプリ・トビリシ 2位
2016年4月 パンナム選手権 2位
2016年5月 ワールドマスターズ 7位

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山部佳苗(日本)
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山部佳苗(日本)
YAMABE Kanae
25歳 1990/9/22
組み手:右 WR4位
所属:(旭川大高→山梨学院大→)ミキハウス
得意技:払腰、内股透、出足払

今春のブレイクで見事リオ五輪代表の座を射止めた日本の新エース。得意技は払腰。世界的に体格を生かした組み手での圧殺、あるいは体を投げだしての巻込技や捨身技を得意とする選手が多い女子最重量級にあって、投技の切れ味で勝負する非常に日本らしい柔道スタイルの選手である。過去2回の世界大会ではメンタルコントロールを失った模様で力を発揮し切れなかったが、実力は明らかにメダル圏内。メダルの色を「金」まで持っていくべくあと一段の上昇装置が欲しいところ。

【おもな戦績】
2014年 チェリャビンスク世界選手権 7位
2015年 アスタナ世界選手権 3位
2014年、2016年 皇后盃全日本女子柔道選手権 優勝

【最近の成績】
2016年2月 グランドスラム・パリ 初戦敗退
2016年4月 全日本選抜体重別 優勝
2016年4月 皇后盃全日本女子柔道選手権 優勝
2016年5月 グランドスラム・バクー 優勝
2016年5月 ワールドマスターズ 3位

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ニヘル・シェイキロウホウ(チュニジア)
Photo from IJF

ニヘル・シェイキロウホウ(チュニジア)
CHEIKH ROUHOU Nihel
29歳 1987/1/5
右組み WR6位
得意技:浮技、右外巻込、左一本背負投

アフリカ選手権で系17回(無差別含む)の優勝を誇る「アフリカの浮技女王」。
アンコ型で足腰が弱い選手が多いという階級の特性に得意の浮技が嵌り、2015年にツアーに進出するやあっと言う間に上位常連に。
一時期浮技を警戒されて勝てない時期があったが、釣り手の巻き替えと同時に仕掛ける払巻込と浮技自体のバリエーション(横方向と斜め後方に体を捨てる方向を変える)を増やすことで対応。五輪を前に再び序列の上位に復帰中。

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エミリー・アンドル(フランス)
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エミリー・アンドル(フランス)
エミリー・アンドル(フランス)
ANDEOL Emilie
28歳 1987/10/30
右組み WR5位
得意技:右大内刈、右内股、右小外刈、右一本背負投

2014年チェリャビンスク世界選手権銅メダリスト。
得意技は右大内刈。釣り手を肩越しに入れたクロスグリップから巻き込み技のように腰を切りつつ仕掛ける変形技。
他の技にはそれほどの威力は無いが、守りが堅くリードすると守りに徹するため出会い頭の右大内刈でポイントを与えると厄介。

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キム・ミンジョン(韓国
Photo from IJF

キム・ミンジョン(韓国)
KIM Minjeong
27歳 1988/8/8
左組み WR10位
得意技:左払腰、左払巻込、左大外刈、左袖釣込腰

「カベ」タイプが多かった同国の前世代たちと異なり動き素早く、小回りが効く。スピードを活かした組み際の左払腰や左大外刈が得意。両袖からの低い左袖釣込腰も得意としており絞り合う展開には注意。

スビタナ・イアロムカ(ウクライナ)
IAROMKA Svitlana
27歳 1989/4/9
右組み WR7位
得意技:右払巻込、右外巻込、右腰車

階級屈指の短躯。小柄な体格と手足の短さを生かした、相手の懐に潜りこむような右払巻込を得意としている。見ていて非常に面白い選手。IJFの公式プロフィールの得意技(自己申告)はなぜか大外車となっており、短駆のイアロムカの脚が果たして届くのか想像するだに面白い。

ヤスミン・クルブス(ドイツ)
KUELBS Jasmin
27歳 1988/9/29
左組み WR14位
得意技:支釣込足、左払腰、左払巻込、左小外刈、左内股

ツアー皆勤ながら未だ優勝経験はなし。
他を圧する巨体であるが、足腰が弱く非常に脆い。実は返し技の保有がなく、思い切った技には意外にあっさりと飛ぶ。階級を代表する「カベ」であり勇気の指標である。この選手を思い切って投げに行けるかどうかは超級選手の精神的資質を測る何よりのベンチマーク。

カイラ・サイヤト(トルコ)
SAYIT Kayra
28歳 1988/5/13
右組み WR11位
得意技:浮落、隅落、谷落、右内股、右大内刈

2016年のヨーロッパ王者。
具体的な技で相手を投げるというよりは、足技や腰を切る動作で「際」を作り崩れた相手を浮落や隅落で押し込んで抑えこむ。体幹が強くなかなか崩れない。


クセニア・チビソワ(ロシア)
CHIBISOVA Ksenia
27歳 1988/7/13
左組み WR21位
得意技:左内股、左払巻込、左大内刈、谷落

名前に反して長身。柔道スタイルは至ってオーソドックス、奥襟を持っての左内股を起点に左大内刈や谷落で攻める。技自体にそこまでの威力はないが、長身を利しての圧殺戦法が厄介。

テッシェ・サベルコウロス(オランダ)
SAVELKOULS Tessi
24歳 1992/3/11
右組み WR15位
得意技:左一本背負投、右大内刈、右内股

長身から繰り出す逆技の左一本背負投が最大の武器。
長い手を利して相手と間合いを取り、一気に低く潜り込む。機動力も高く、追う展開になると厄介な相手。


サンタ・パケニケ(オランダ)(リトアニア)
PAKENYTE Santa
25歳 1990/12/11
右組み WR24位
得意技:右払腰、右払巻込、右大外刈、右大外巻込、右小外掛、谷落

超大型選手。
ほとんどの相手に対して上から奥襟を持って勝負が出来る。
技は大味だが体格とパワーで相手をねじ伏せてしまう。

■ シード順
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シード順は右図。

シード選手8人だけで考えれば、ベスト4はユー、オルティス、山部が濃厚で、プールBのアンドル-シェイキロウホウがコンディションと試合の進め方次第というところ。

ただしこの8人にはユーあるいはオルティスと決勝を争って然るべき実力者
アルセマン、さらにチビソワや「カベ」役のクルブスとパケニテと2人など役者の配置が決定的に欠けている。特にアルセマンがどこに配されるか、ドローの結果を踏まえた組み合わせと様相は「直前展望」に譲りたい。



文責:古田英毅
協力:林さとる


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