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【リオ五輪柔道競技完全ガイド】メダル圏内に10名近くひしめく大混戦、それぞれ異なる上昇回路で頂点狙う・リオデジャネイロ五輪柔道競技70kg級展望

(2016年8月6日)

※ eJudoメルマガ版8月6日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド】メダル圏内に10名近くひしめく大混戦、それぞれ異なる上昇回路で頂点狙う・リオデジャネイロ五輪柔道競技70kg級展望
■ 階級概況
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70kg級は大混戦。敢えて図式化してみたが、この矢印の長さと到達距離が本番で変わる。

大本命というべき選手はいない。パワーのキム・ポリング(オランダ)、経験値と試合力のユリ・アルベール(コロンビア)にジブリス・エマヌ(フランス)、地力のリンダ・ボルダー(イスラエル)とベルナデッテ・グラフ(オーストリア)に戦術性のキムセンヨン(韓国)、総合力が高く思い切りの良い一発がある田知本遥というように、一定水準以上にある強豪がそれぞれの上昇回路を以て金メダル到達を狙うという構図。表彰台ラインには10名近くがひしめく大混戦と言って良いだろう。

挙げた中で、ロンドン-リオ期においてもっとも強さの絶対値が高かったのは2013年-2014年シーズンのポリングではないかと思われるが、結局世界選手権制覇はなし、かつ現在は低調。全員がハイコンディションでやってくる五輪における決定打となるような高みには到達していない。

田知本遥は2015年後半から素晴らしい柔道を披露。ポリングらパワー派の主役と堂々投げ合う骨の太い試合を見せて優勝候補に名が挙がるところまで上り詰めた。五輪の「一段上がった」状態についていければメダル獲得は十分あり得る。

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ム・ポリング (オランダ)
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キム・ポリング (オランダ)
POLLING Kim
25歳 1991/2/8
WR:1位 組み手:右
得意技:裏投、移腰、右内股

ワールドマスターズを2度制し、階級最強と言われながら世界選手権では勝てない無冠の帝王。
得意技が裏投、移腰。規格外のパワーを誇る。寄せて腰技か裏投、相手が嫌がったり膠着すれば左一本背負投で仕留めるのが定番パターン。ロンドン五輪後の「組み合う」新ルールが施行されるなりいきなりブレイク、新ルールで自らの膂力を生かす方向を見出して出世したパワー派の一典型でありその意味では「新ルールの申し子」と呼べるかもしれない。
世界選手権奪取に失敗するうちに自信を失ったか、ここ2年はスケール感が落ちた。だが一度最高到達点の高さを見せているだけに調整噛み合えば跳躍の可能性十分あり。

投げ終わりに内股で座り込んだり、勝って飛び跳ねたりとコミカルな一面もある。

参考動画
2013年グランドスラムパリ リューシ・デコス戦
3:58~。ポリングの出世のきっかけとなった伝説的「一本」。前年五輪を制したばかりの女王デコスを裏投「一本」に沈めた。

【おもな戦績】
2013年 リオ世界選手権 3位
2013年、2015年ワールドマスターズ1位
2013年、2014年、2015年欧州選手権1位
【最近の成績】
2015年 年間ランキング 1位
2016年2月 グランドスラム・パリ7位
2016年3月 グランプリ・トビリシ1位
2016年4月 欧州選手権 5位

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ジブリス・エマヌ(フランス)
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ジブリス・エマヌ(フランス)
EMANE Gevrise
33歳 1982/7/27
WR:3位 組み手:右
得意技:右一本背負投、右背負投、右袖釣込腰、裏投

2階級にわたって3度世界チャンピオンになっているフランスのベテラン。
闘志を前面に押し出したガツガツとした柔道で、担ぎ技を連発しペースを握る。一種ベテランらしからぬ連続攻撃がその強さの因。よってキャリアの割には意外に安定感がなく、パフォーマンスがコインの裏表に極端に振れる傾向もあり。ただしフォーカスした際の力の高さは折り紙つきで、今年は4月の欧州選手権(優勝)以降は実戦には出ず、じっくり力を養っている。
返し技として豪快な裏投も持っており、焦って追い掛けてくる相手をこれで嵌める場面も多し。

【おもな戦績】
2007年リオ世界選手権 優勝(70kg級)
2011年パリ世界選手権 優勝(63kg級)
2012年ロンドン五輪 3位(63kg級)
2015年アスタナ世界選手権 優勝(70kg級)
【最近の成績】
2016年2月 グランドスラム・パリ3位
2016年4月 欧州選手権 優勝

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ユリ・アルベール(コロンビア)
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ユリ・アルベール(コロンビア)
ALVEAR Yuri
30歳 1986/3/29
WR:2位 組み手:右
得意技:右大外刈、右払腰、右小内刈

爆発的な勝ちぶりを示すわけではないが、「おもな戦績」を見ていただければわかる通り実績は圧倒的。混戦続く70kg級にあって2009年から2014年までの5年間という長いスパンで3度世界の頂点に立っている大物である。

クロスグリップからの技を得意としており、叩きながら、押さえつけながら、あるいは組み手を挑む段階で相手に回旋を強いながらとこの形からの一発のバリエーションが精緻。クロスグリップの決定的な弱点である裏投に対しても軸足ごとを刈り取る強烈な右小内刈という具体的な方法論を持っている。ムラ気の性格と野性的な風貌に比してその柔道は論理的。
ここぞという大会へのフォーカス力は異常なほどであり、研究を試合に生かす作戦遂行能力も高い。コーチは明治大出身の早川憲幸氏。

参考動画
2014年 チェリャビンスク世界選手権 ヌンイラ華蓮戦
クロスグリップからの小内刈。2:40~。
2016年 ワールドマスターズ ツェンドアユシュ・ナランジャルガル戦
肩越しに釣り手を入れ、相手に回旋を強いながら大外刈で待ちかまえ「一本」。2:40~。

【おもな戦績】
2009年 ロッテルダム世界選手権 優勝
2012年 ロンドン五輪 3位
2013年 リオ世界選手権 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 3位

【最近の成績】
2016年2月 グランプリ・デュセルドルフ3位
2016年4月 パンナム選手権 優勝

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田知本遥(日本)
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田知本遥(日本)
TACHIMOTO Haruka
26歳 1990/08/03
組み手:左 WR12位
所属:(小杉高→東海大→)ALSOK
得意技:大外刈

高校時代から将来を嘱望され、2011年パリ世界選手権、2012年ロンドン五輪、2013年リオ世界選手権と3大会連続で日本代表を務めた。いずれもメダル獲得はならずメンタルの問題が指摘され続けていたが、ここにブレイクスルーを起こした昨年後半から躍進。2月の欧州遠征の際に市販薬を使用し現地で出場を見合わせるという失態を犯し世界選手権代表を逃す辛酸をなめたが、怪我の功名というべきかこの経験以降あきらかに精神的に太くなり、キム・ポリングら名だたるパワーファイターと真っ向殴り合う好試合を立て続けに演じ、日本の苦戦が続くこの階級に会ってグランドスラム2大会連続制覇という大戦果を得た。

再び代表を得る推進力となったのはこの肝の据わった戦いぶり。現在の強さの因である覚悟のある試合、勇気ある試合を見せられるかどうかがメダル獲得のカギだ。

【おもな戦績】
2008年、2009年 世界ジュニア選手権優勝
2011年 パリ世界選手権参加 (予選ラウンド敗退)
2012年 ロンドン五輪 7位
2013年 リオ世界選手権参加 (初戦敗退)
2014年 チェリャビンスク世界選手権 団体戦参加(1敗)
ワールドツアーで1位×7回、2位×4回、3位×4回

【最近の成績】
2015年4月 全日本選抜体重別優勝
2015年7月 グランドスラム・チュメン 優勝
2015年10月 グランドスラム・パリ 優勝
2016年2月 グランドスラム・パリ 2位
2016年4月 全日本選抜体重別優勝

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ラウラ・ファルカスコッホ(ドイツ)
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ラウラ・ファルカスコッホ(ドイツ)
VARGAS KOCH Laura
29歳 1987/1/29
左組み WR5位
得意技:左大内刈
ワールドツアーに皆勤することで高ランクを保っているこの階級の番人。
信頼にたる武器は左大内刈しかなく、仕掛ける技のほとんどがこれと言って過言ではない。あとは体格を利して際の中で小外掛や浮落でポイントを奪うというくらい。上位の選手にとってはカモだが、格下相手には強い。まさに「番人」である。

ベルナデッテ・グラフ(オーストリア)
GRAF Bernadette
23歳 1992/6/25
右組み WR4位
得意技:浮落、裏投

近頃躍進著しいオーストリアの新星。体幹の強さとバランスの良さを活かした後の先の柔道。今年のグランプリ・デュッセルドルフではアルベールと新井千鶴をたて続けに破ってブレイク。上り調子の若手という五輪において最も怖い選手の項に嵌る

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リンダ・ボルダー(イスラエル)
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リンダ・ボルダー(イスラエル)
BOLDER Linda
28歳 1988/7/3
右組み WR9位
得意技:寝技、肩車、右腰車、右釣込腰

オランダからの移籍選手。階級を代表する「指導」奪取特化ファイター。脇を差して、背中を持ってと様々な形で相手に前進圧力をかけて相手の反則を呼び込む。ほとんど片足にはならず両足を畳につけてにじり寄るように試合を進める、バランスを崩すこと自体が非常に少ない選手。相手が軽挙して崩さないまま仕掛けると、片足を挙げている間にボルダーに詰められて勝手にバランスを崩すという印象アリ。そして取り味の源泉は寝技。圧力に屈して伏せた相手を横三角で取るのが必勝パターンだ。

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キム・センヨン(韓国)
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キム・センヨン(韓国)
KIM Seongyeon
25歳 1991/4/16
右組み WR6位
得意技:右背負投、右背負投(韓国背負い)、右袖釣込腰、肩車

典型的な韓国スタイルの背負投ファイター。国同士の相性とタイプを掛け算すれば、日本人にとって最も怖い存在と言える。腰技、裏投系のパワーファイターが多い階級にあって、担ぎ技を核として「指導」を奪いながら試合を進める戦術派。守りも攻めも、ねちこい。

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マリア・ベルナベウ(スペイン)
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マリア・ベルナベウ(スペイン)
BERNABEU Maria
28歳 1988/2/15
右組み WR7位
得意技:右払腰、左一本背負投、寝技

2015年アスタナ世界選手権銀メダリスト。アスタナでの銀メダル以前はこれといった活躍のない選手だったが、以降ブレイク中。長身とパワーを活かした奥襟を持っての右への腰技と左一本背負投、そして長身を利しての圧力が何よりの武器。寝技も得意で、伏せた相手には躊躇なく横三角を狙う。

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ケリタ・ズパンシック(カナダ)
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ケリタ・ズパンシック(カナダ)
ZUPANCIC Kelita
26歳 1990/5/9
左組み WR8位
左大外刈、左小内刈

爆発力はないが安定感は抜群の強豪。
同様非常に多くの大会に出場しており、ファルカスコッホと並ぶ階級の番人的存在である。同国の男子81kg級アントワーヌ・ヴァロアフルティエと、階級内における立ち位置は相似。
横変形の形からの左大外刈や左小内刈が得意。組み手もしぶとく、あまり大負けはしない選手である。

■ シード順
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事前のワールドランキングによるシード順は右図。
この時点では強豪が綺麗に分かれたが、なにしろこの階級は多士済々。田知本遥とリンダ・ボルダーがどこに配されるかで全く事情は変わってしまう。

既にドローは終了。ドロー結果と展望については「直前展望」でお伝えしたい。

文責:古田英毅
協力:林さとる

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