PAGE TOP ↑

柔道1

柔道2
柔道4 柔道5

eJudoとは?情報募集・お問い合わせサイトマップ

【リオ五輪柔道競技完全ガイド】個性派のスター選手が目白押し、ベイカー茉秋は勝負力の高さ生かして頂点狙う・リオデジャネイロ五輪柔道競技90kg級展望

(2016年8月5日)

※ eJudoメルマガ版8月5日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド】個性派のスター選手が目白押し、ベイカー茉秋は勝負力の高さ生かして頂点狙う・リオデジャネイロ五輪柔道競技90kg級展望
■ 階級概況
eJudo Photo
90kg級戦力予想マップ

eJudo Photo
2015年グランドスラム東京決勝で相見えたアスレイ・ゴンザレスとベイカー茉秋

→「リオデジャネイロ五輪柔道競技完全ガイド」に戻る

体格の殻に運動能力と技術、パワーと全ての要素を積み込める中量級は世界的に見てもレベルの高い選手が多士済々。
この階級も組み手と先手の担ぎ技という古風なスタイルを洗練させて2015年世界選手権を制したガク・ドンハン(韓国)、スケールの大きな巻き込みファイターヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)、背負投一発に凄まじい爆発力を持つアスレイ・ゴンザレス(キューバ)、短駆のパワー派クリスチャン・トート(ハンガリー)、クラシックスタイルの本格派キリル・デニソフ(ロシア)、そして実績ナンバーワンの大スターイリアス・イリアディス(ギリシャ)と魅力的な選手が目白押し。予想が難しい階級だが、爆発力のあるゴンザレス、試合を誤らぬガクの両世界王者が軸。負傷さえ癒えていればというカッコつきではあるが、到達点がもっとも高いのはゴンザレスと推しておきたい。

日本のベイカー茉秋は昨年の世界選手権で3位に入賞。異常なまでの勝負力をテコにした粘戦であり辛勝続き、この時点では率直に言って五輪に向かって明るい展望は抱きがたかった。しかし12月のグランドスラム東京で「勝負力」の到達点が思いのほか上がっているところを見せ、5月のワールドマスターズではそのしぶとさ、しつこさとスタミナが未曾有の域まで上がっていることを感じさせた。女子52kg級の中村美里は組み手と足技という字面にすると通り一遍の組み合わせで「世界を作っている」というべき独自の高みに達しているが、この時のベイカーのパフォーマンスも「しぶとい」「しつこい」という表現だけでは語りつくせないタフなもの。このやり方が貫けるなら現在の90kg級に勝てない選手はいないのではないかと思わせるものだった。

一時は表彰台で目いっぱいとの観測が有力であったが、予想以上の成績が期待できるかもしれない。

■ 有力選手
eJudo Photo
ガク・ドンハン(韓国)
Photo by eJudo

ガク・ドンハン(韓国)
GWAK Dong han
24歳 1992/4/20
WR:1位 組み手:左
得意技:左背負投、左背負投(韓国背負い)
アスタナ世界選手権金メダリスト。
担ぎ技の弾幕を張り、その中に本気の一撃を混ぜて仕留める。ゆらめくように動き、組まれそうになると僅かにずらし、相手に持たせないまま掛ける試合巧者。こういった昭和的な泥臭い柔道スタイルは現行ルール化では廃れていくと思われていたが、方法論を突き詰め、洗練し「ニュークラシック」とでも呼ぶべき新スタイルを作り上げた感あり。
近頃は担ぎ技自体の威力も増しており、手数で戦う「指導」ファイターから明らかに脱皮しつつある。この点、引退した81kg級のキム・ジェブンとは一線を画す。
日本選手にとって大舞台で最も怖いのは韓国選手であり、その観点では注意が必要。ただしベイカーはガク以上にしつこくタフなタイプで、かつ既に世界の頂点に立っているガクは「受けて立つ」立場。どちらというとマッチアップを嫌っているのはガクのほうではないかと推測する。

参考動画: Dong Han Gwak Judo Highlights 2015

【おもな戦績】
2011年 パリ世界選手権 3位
2012年 ロンドン五輪 2位
2013年 リオ世界選手権 1位
【最近の成績】
2015年12月 グランドスラム東京 2位
2016年1月 グランプリ・ハバナ1位
2016年2月 グランプリ・デュセルドルフ 5位

eJudo Photo
アスレイ・ゴンザレス(キューバ)
Photo by eJudo

アスレイ・ゴンザレス(キューバ)
GONZALEZ Asley
26歳 1989/9/5
WR:8位 組み手:右
得意技:右背負投、右体落、右大外刈、左袖釣込腰

鋭く低く滑りこむように潜り込み、そこから一気に担ぎ上げる右背負投の切れ味と爆発力は異次元。釣り手をあたかも跳ね技を仕掛けるかごとく釣り込んで、その手を高く残したまま体は低く潜り込む独特の施法により「座り背負い」にあるまじき打点の高さと凄まじい爆発力を実現している。
また、上記の右背負投と似た軌道で入る右体落、右大外刈も威力抜群。こと「業」ということでは階級ナンバーワン選手ではないかと思われる。ラテン系のイケメン。

ただし膝の負傷が癒えず、2016年はギリギリでの試合キャンセルを繰り返して結局2月のグランドスラム・パリ以降は国際大会の出場なし。6月末の情報ではまだ非常に厳しい状態とのことだったが、現在いかなる仕上がりにあるのか、測りかねる状況である。。

参考動画: Asley gonzalez compilation

【おもな戦績】
2011年 パリ世界選手権 3位
2012年 ロンドン五輪 2位
2013年 リオ世界選手権 1位
【最近の成績】
2015年12月 グランドスラム東京 2位
2016年1月 グランプリ・ハバナ1位
2016年2月 グランプリ・デュセルドルフ 5位

eJudo Photo
ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
Photo by eJudo

ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
LIPARTELIANI Varlam
27歳 1989/2/27
WR:2位 組み手:右
得意技:右外巻込、右払巻込、右内股巻込
2013年から世界選手権で2位が1度、3位が2度の無冠の帝王。
ありとあらゆる体勢から巻込技を仕掛けることのできる巻込師。下げて、動かして、あるいは止めて、と作りを行い遠間から一気に飛び込んでくる。結局最後は巻き込み、と相手が十分備えていても掛かってしまうこの技の威力は脅威。

参考動画: Liparteliani Varlam judo highlights 2015

【おもな戦績】
2013年リオ世界選手権 2位
2014年チェリャビンスク世界選手権3位
2015年アスタナ世界選手権3位
【最近の成績】
2015年10月 グランドスラム・パリ 優勝
2016年2月 グランドスラム・パリ3位
2016年4月 欧州選手権 優勝

eJudo Photo
ベイカー茉秋
Photo by eJudo

ベイカー茉秋(日本)
BAKER Mashu
21歳 1994/9/25
WR1位 組み手:右
所属:(東海大浦安高→)東海大4年
得意技:大内刈、引込返、隅返

アメリカ人の父親を持つパワーファイター。
高校2年の秋から急成長。脇を差し、背中を叩き、帯を握ってと欧州スタイルの豪快な技で投げまくって母校・東海大浦安高に初の「高校三冠」をもたらした。東海大入学後、国際大会での戦いの中でその個性は変質、現在は絶対に試合の潮目を誤らぬ異常なまでの勝負強さが現在のこの選手最大の強み。試合の中で効く手立て、相手が嫌がる戦術を自身の引き出しの中から見出して、難敵相手にも着実に突破口を開いていく様は圧巻。密着の中から相手の「技」を切り返す独特の間合いと距離感がもっかこの戦いぶりを支えている。
5月のワールドマスターズでは奥を叩き続け、掛け続けという「仕掛けとアプローチ」をひたすら繰り返して頂点到達。どんな相手でも音を上げるであろう貪欲さとタフさはすさまじかった。この戦いを以てメダル候補から「金」を狙える立場に階段を上った感あり。肩に脱臼癖がつきかかっていることが不安材料。

【おもな戦歴】
2014年 チェリャビンスク世界選手権 参加
2015年 アスタナ世界選手権 3位
【最近の成績】
2015年5月 グランドスラム・バクー 1位
2015年7月 グランドスラム・チュメン 1位
2015年8月 アスタナ世界選手権 3位
2015年12月 グランドスラム東京 1位
2016年5月 ワールドマスターズ 1位

eJudo Photo
イリアス・イリアディス(ギリシャ)
Photo by eJudo

イリアス・イリアディス(ギリシャ)
ILIADIS Ilias
29歳 1986/11/10
WR:15位 組み手:右
得意技:右釣込腰、右袖釣込腰、右腰車、右大外刈、裏投、右釣込腰(小手投げ)
3度の世界選手権制覇を始めとして、様々な大会で表彰台の頂点に立ってきた柔道界のスーパースター。柔道大好きな「柔道小僧」でもありこの方向性で括られる小エピソードには事欠かない。
全盛期は「北京-ロンドン期」中後半の2010年から2011年に掛けて。ここ2年の試合成績、また合宿等の様相を聞く限り、最大の武器であるパワーははっきり衰えてきているが、リスクを恐れず深く入る技の怖さは健在。非常に研究熱心でもあり、衰退期と思われた2014年チェリャビンスク世界選手権では新兵器の「小手投げ」の作りから釣込腰や内股を連発、このディティール調整ひとつだけで見事頂点に到達している。五輪に向けた新兵器に期待したい。

参考動画:
Ilias Iliadis (GRE) Compilation Judo
チェリャビンスク世界選手権1回戦 メルビン・ロドリゲス戦
この大会のために準備してきた「小手投げ」で勝利している

【おもな戦績】
2004年アテネ五輪 金メダル(81kg級)
2010年東京世界選手権 優勝
2011年パリ世界選手権 優勝
2012年ロンドン五輪 3位
2014年チェリャビンスク世界選手権 優勝
【最近の成績】
2015年5月 ワールドマスターズ7位
2015年8月 アスタナ世界選手権 初戦敗退
2015年12月 グランドスラム東京 予選ラウンド敗退
2016年4月 欧州選手権 予選ラウンド敗退

eJudo Photo
クリスティアン・トート(ハンガリー)
Photo by eJudo

クリスティアン・トート(ハンガリー)
TOTH Krisztian
22歳 1994/5/1
WR 4位 右組み
得意技:右背負投、左内股(やぐら投げ)、裏投
2014年世界選手権銀メダリスト、若手世代の旗手。
切れ味鋭い低く入る右背負投がメインの武器だが、相四つの相手に奥襟を持たれた状態からは身体能力の高さを活かした豪快な「やぐら投げ」も用いる。また、返し技としての裏投も得意。柔道スタイルも試合ぶりもヨーロピアンではなく、あくまで「ハンガリー人」。格闘人種としての血の濃さを感じさせる骨の太いファイターである。

eJudo Photo
キリル・デニソフ(ロシア)
Photo by EJU

キリル・デニソフ(ロシア)
DENISOV Kirill
28歳 1988/6/25
WR 7位 左組み
得意技:左内股、左内股、支釣込足、浮落
ロッテルダムとアスタナの2度の世界選手権で銀メダルを獲得しているベテラン。
大先輩のニコライ・オジェギンや現役後半のアレクサンドル・ミハイリンを思わせるゆったりとした柔道着の着こなしと独特の立ち姿が特徴。やや猫背気味の構えから奥襟を持って体幹と牽引力の強さを存分に活かした力強い柔道を展開する。

eJudo Photo
ノエル・ファンテンド(オランダ)
Photo by eJudo

ノエル・ファンテンド(オランダ)
VAN T END Noel
24歳 1991/6/15
右組み WR 6位
得意技:左小内巻込、左一本背負投
右組みだが基本的にほとんどの仕掛けが左技という戦術派。ワールドツアーで優勝3回、2位6回、3位3回という成績でわかるとおり、大会皆勤選手。常にある程度上位に留まりランキングを稼ぐ階級の「番人」とも呼ぶべき選手で、この選手を境目に表彰台に上れるレベルかどうかが分かれると言っても過言ではない。

eJudo Photo
セリオ・ディアス(ポルトガル)
Photo by eJudo

セリオ・ディアス(ポルトガル)
DIAS Celio
23歳 1993/2/23
WR21位 左組み
左内股、巴投、右一本背負投、
得意技:左大外刈、左体落
階級きっての不確定要素。
長身から繰り出される技は作りも崩しもすべてが荒削りだが、何故か決まる。そして決まる時の威力は凄まじい。
チェリャビンスク世界選手権ではベイカー茉秋から左大外刈で「一本」を奪っている。
情緒不安定な野生動物といった印象で出来不出来が極めて激しいが、表の面が出た場合には台風の目になり得る。このところ急激に技がしっかり出来て来た印象。

eJudo Photo
マーカス・ナイマン(スウェーデン)
Photo by eJudo

マーカス・ナイマン(スウェーデン)
NYMAN Marcus
25歳 1990/8/14
WR5位 右組み 
得意技:巴投、隅返、寝技
2010年欧州選手権の覇者。同年から翌11年に掛けてブレイクも以後低迷。しかし昨年末から意外な再躍進中の巴投ファイター。
巴投と隅返を仕掛けまくり相手を寝技に引き込んで勝負を掛ける。投げも効くが、巴投と隅返の弾幕で相手を完封して「指導」累積で勝利することも多い。この4年間で増えたタイプの一典型でもある。同国のマーティン・パチェックとは柔道スタイルも、髪の薄さも相似。

eJudo Photo
レクサンドル・イディー(フランス)
Photo from EJU

アレクサンドル・イディー(フランス)
IDDIR Alexandre
25歳 1991/2/21
WR8位 左組み
得意技:右一本背負投、右袖釣込腰、出足払
左組みだが、戦術のベースは釣り手のみを持った状態からの右技。
フランス選手らしく立って良し、寝て良しの万能型である。足クセも悪く、良い意味でテンション低く仕掛けてくる足技にも注意が必要。2014年チェリャビンスク大会、2015年アスタナ大会と2度参加した世界選手権はいずれも予選ラウンド敗退。しかしワールドツアーでは常に上位に絡んでおり、爆発力はないが一定以上のラインで安定している選手。

eJudo Photo
ラグバスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
Photo from IJF

ラグバスレン・オトゴンバータル(モンゴル)
LKHAGVASUREN Otgonbaatar
23歳 1993/1/20
WR9位 左組み
得意技:左背負投、左一本背負投、左小内巻込、浮落
世界ジュニア選手権に2度出場、昨年はシニアの世界選手権に出場している、90kg級におけるモンゴルのトップランナー。地元開催のグランプリ・ウランバートルを2度制覇、2015年グランドスラム・アビダビにも優勝しており上位が欠けるといきなり上昇するだけの力は持っている。担ぎ技が主体だが、モンゴル選手らしく相手とガッチリ密着して「際」を狙った浮落なども用いる。戦術のベースは足腰と体幹の強さを活かした前進圧力による「指導」奪取。

eJudo Photo
ムロンショフ・ウストピリオン(タジキスタン)
Photo from IJF

コムロンショフ・ウストピリオン(タジキスタン)
USTOPIRIYON Komronshokh
23歳 1993/1/7
WR11位 右組み
得意技:右内股、右背負投
今年のアジア選手権チャンピオン。
相手の袖を絞るのが巧く、相四つの場合には相手の釣り手が切れた瞬間右内股や右背負投を仕掛けて投げ切るのが必勝パターン。
袖の絞り合いに持ち込み「指導」累積差による勝利を得ることも多い。生命線は袖。

■ シード順
eJudo Photo

予想されるシード順は右図。ベイカーは第1シードを獲りに行ったことが功を奏し、8人のシード選手の中ではかなり戦い易い組み合わせ。ベイカーの下から前進圧力を掛けてくるトートが同じ側にいるが対戦は準決勝。ガクとリパルテリアニが逆側に配置されたことはかなり大きいはず。

ただし、ゴンザレスとイリアディスがどこに配されるかで状況はまったく変わってしまうはず。ノーシード選手含めたドローの結果と評価は「直前展望」で再度お伝えしたい。


文責:古田英毅
協力:林さとる
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版8月5日掲載記事より転載・編集しています。

→eJudoトップページに戻る
→「ニュース・マッチレポート」に戻る
→「書評・DVD評」に戻る




supported by KAYAC 運営会社サイトポリシー  RSS copyright (c) 2005 ejudo all rights reserved.