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【リオ五輪柔道競技完全ガイド・日本代表選手紹介】「背中に負うこと」で一皮むけた中量級の新王者、本命として初の金メダル獲りに挑む・81kg級 永瀬貴規

(2016年8月4日)

※ eJudoメルマガ版8月4日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド・日本代表選手紹介】81kg級 永瀬貴規
「背中に負うこと」で一皮むけた中量級の新王者、本命として初の金メダル獲りに挑む
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2015年アスタナ世界選手権を制した永瀬貴規

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2015年グランドスラム東京、若手の期待株であるロマン・モウストポウロスを一蹴

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81kg級は日本にとってまさしく鬼門、長年苦しい戦いを強いられてきたがこの人の登場で様相一変。日本が自信を持ってリオデジャネイロ・オリンピックに送り込むのが22歳の若き世界チャンピオン・永瀬貴規だ。

得意技は大外刈と内股だが、この人の何よりの長所はその体幹の強さ、そして「際」の強さ。力自慢のヨーロッパ選手がこれまで通り日本選手を潰しに掛かろうと上から目線の密着戦法を挑んでも、彼らの長所である体の強さでまさしく永瀬はその上を行く。ずらし、弾き返し、あるいは切り返してと一瞬で自身の投げに繋いで次々相手を畳に沈める様は、強く、かつしなやか。あたかも背筋に鉄骨でも入っているかのようだ。調整試合に選んだ5月のグランドスラム・バクーでは何ら「特別なことをせずに」優勝。戴冠後出場試合を絞った永瀬不在期のヨーロッパ戦線で「のしてきた」代表格であるイヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア)が初めて永瀬と手を合わせるなり「このレベルの相手とやったことがない」と言わんばかりにファーストコンタクトで畳に沈んだ様はまさしく圧巻だった。永瀬が何をするでもなく相手のほうが勝手に吹っ飛んでいくかのようなその戦いからは、小細工なしの正味の「強さ」で永瀬が階級ナンバーワンであることが改めて感じられた。

永瀬の世界選手権優勝は回数としては1度だけだが、大野と並ぶ絶対の優勝候補として永瀬を推す急先鋒が山下泰裕強化委員長と井上康生男子監督の2人であることは興味深い。グランドスラム東京時に山下氏が残した「(理不尽な反則で)負けはしたが、試合を見ていて永瀬が一番強いなとわかった」とのコメントにそのあたりは端的。「組んだ形のありようを見れば、誰が一番強いかがわかる」という強者ならではの視線、そこに立ったものしかわからない達人の感覚が「一番手は永瀬」の構図に太鼓判を押したわけである。

実は、永瀬は世界選手権初出場時の2013年に既に優勝し得るだけの競技力を備えていたとみる。しかし本番では、過去勝利歴のあるアヴタンディル・チリキリビリ(ジョージア)の「大人の柔道」に合わせてしまい「指導」累積に沈んだ。この、強いがどこか力を出し切れない永瀬に訪れたターニングポイントは2016年6月に行われた全日本学生柔道優勝大会決勝。母校筑波大の初優勝を賭けて団体戦の代表決定戦の畳に上がり、そして勝利した永瀬は変わった。どうやら最後のピースであった「背中に重いものを背負って戦うこと」という課題を乗り越え、ただ競技力が高いだけの強者のステージから明らかに一皮むけた。精神的に王者の条件を満たしたのである。2か月後の世界王座奪取はある意味論理的な帰結ですらあった。

何かを「背負う」ことは、その成否に関わらずそれ自体が苦しい行為だ。ここで潰れる選手もいればその圧を乗り越えることで1つも2つも上のステージに駆け上がる選手もいるが、永瀬はどうやら後者の型。そして今回その背中に背負うものは「日本柔道」そのもの。ただでさえ強い永瀬がこの究極の「圧」を受けてさらに一段飛躍してくれることを、信じて疑わない。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版8月4日掲載記事より転載・編集しています。

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