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飯田健太郎と本間壘が全試合一本勝ちでフィニッシュ、国士舘が日体荏原との競り合い制して3連覇達成・第65回インターハイ柔道競技男子団体レポート⑤決勝

(2016年7月31日)

※ eJudoメルマガ版7月31日掲載記事より転載・編集しています。
飯田健太郎と本間壘が全試合一本勝ちでフィニッシュ、国士舘が日体荏原との競り合い制して3連覇達成
第65回インターハイ柔道競技男子団体レポート⑤決勝
■ 決勝
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逞しい戦いぶりで接戦をモノにしてきた日体荏原高

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圧勝続きで決勝に残った国士舘高

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決勝が開始される

今年度の高校「三冠」大会決勝は全て同カード対決。全国高校選手権では日体荏原高が勝ち、金鷲旗高校柔道大会では国士舘高が雪辱を果たしたばかりの因縁カードだ。直近の点取りレギュレーションで行われたインターハイ東京都予選では4人で戦った日体荏原が勝利している。

オーダー順は下記。

国士舘高(東京) - 日体荏原高(東京)
(先)本間壘 - 長井晃志
(次)清水雅義 - 大吉賢
(中)河田闘志 - 塚本綾
(副)磯村亮太 - 藤原崇太郎
(大)飯田健太郎 - ハンガルオドバートル

同じ東京のチーム、東京都予選や招待試合、レギュレーションの異なる関東大会等を含めれば今季既に6度団体戦で顔を合わせている両雄。互いを良く知り過ぎている場合にはロースコアゲームに陥る場合が多いのがこの業界の常だが、この2チームは相性的な変数が多くむしろ殴り合いとなる傾向が強い。

もっとも確実に計算が立つポジションは大将。国士舘・飯田健太郎がハンガルオドバートルから「一本」で得る1点は事前に織り込んでおいて良いかと思われる。日体荏原としては副将までに2点を積み上げないと勝利がおぼつかないこととなるが、「当たり」の利と「今回の対戦で打つ具体的な手だて」という作戦的な材料を練るアプローチのしやすさは国士舘にある印象。
軽量ゆえ常に試合を揺らさねばならない日体荏原に対し、国士舘の戦略は大枠「間違わない」という組み立て易いベクトルにある。長井晃志は片手、あるいは斜めからアプローチして組み止められずにチャンスを探したいはずだが、マッチアップする重量の本間は今大会自身の負傷もあってか得意の抱き着いての裏投や小外掛といった「本間クラッシュ」を徹底封印。リスクのある投げ一発ではなく、組み止め、間合いを近づけ、崩して寝技という手堅い策を採り続けている。つまりはリスクを少なく、かつより体格差が出やすい戦い方を志向しているということで長井の得意な、片手から体ごと持っていくような担ぎ技はそもそもその発動のきっかけから塗りつぶされてしまう可能性が高い。

中堅戦の河田-塚本も、金鷲旗大会でベンチが河田に与えたポリシーから延長線を引いて考えれば、高校選手権の対決で欲を出した本間が塚本に一発切り返されたようなリスクのある技、どころかそもそも「片足をあげて攻撃する」ことすら忌避する可能性が高い。副将戦枠の磯村-藤原ももともと(1年生時)は磯村が普通に勝利していたカードであり、磯村が少なくとも大敗せずに帰陣するところまでは現実的。引き分けか、あるいは準決勝までの藤原の消耗ぶりを考えれば(高校選手権東京予選など藤原が国士舘の重量選手に屈したケースは、体力が尽きた場合が多い)磯村の勝利の可能性すらある。

というわけで、日体荏原が得点を狙うにもっとも現実性が高いのは残る1枠である次鋒ポジション。大吉賢がここをなんとか取った上で、残りの3つで大将前の「あと1」をクリアせねばならないということになる。これは国士舘の隙、メンタルの「ひるみ」に付け込みたいところだが、高校選手権でこの消極性のために全てを失った国士舘は、相手を押し込む攻撃精神と後衛に仕事を託さず自分が職責を全うする責任感がいかに大事かを骨身に染みるまで、少なくとも繰り返し諭され続けてここまで来ている。前日に行われた作陽戦の腹の据わった戦いぶりに鑑みれば、おそらく隙は僅少だろう。状況は国士舘に有利。日体荏原としてはとにかく強気に、幾度も幾度も屋台骨ごと揺るがすほどのアタックを繰り返すしかない。

国士舘の不確定要素としては、7月上旬の東京ジュニアで本間が左肩を、清水が左ひじを脱臼していること。ギリギリの勝負でどこまで無理が利くかという不安はここに至ってもやはり大きい。

高校選手権に優勝した日体荏原、金鷲旗で雪辱した国士舘。最重要タイトルにして最後の「一冠」であるインターハイを巡っての最終決戦がいよいよ始まる。

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国士舘高の先鋒本間壘が日体荏原高・長井晃志から右足車「技有」

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本間は合技「一本」で勝利、国士舘が先制点を得る

先鋒戦は日体荏原・長井晃志が右、国士舘・本間壘ともに右組みの相四つ。左構えに近い形で試合をスタートした本間に対し、長井は両襟を高く持ち、あるいはしっかり袖を持って右小内刈を3連発。本間はこの攻防の中で長井に握られてしまった袖を幾度かリセットしようと試みるが長井はあくまで袖を持ち続けて話さず。我慢できなくなった本間腹を出して思い切り切ること2度、47秒主審は本間に「取り組まない」咎による「指導1」を宣告。

本間は組み合い、釣り手の肘を上げて間合いを詰めつつ作用足を伸ばして右大外刈、長井が忌避した反応に手ごたえを得たか、足を振り上げる威嚇を繰り返し再びの大外刈のタイミングを探る。がブラフの出し合いに陥ってやや戦線膠着し、1分43秒主審は双方に「指導」を宣告。

本間はこの時点で「指導」ひとつのビハインドがあるが非常に落ち着いた表情。相手を寄せては右払巻込に打って出て、顔色を変えず攻め続ける。

長井は両襟を高く握り、本間得意の「脇差し」密着を万が一にもさせまいとの構え。しかし本間はむしろしっかり袖と襟、あるいは両袖を肩口近くまで深く握って「まともな」柔道を志向して体格差を生かす方針を堅持。

2分40秒、長井が間合いを作ろうと組み合いを操作した刹那、本間が右足車に打って出る。まず作用足を伸ばして膝を固定、釣り手を離して長井の右肩口を抱えながら回旋運動を呉れると、体を伸ばされて固定されてしまった長井抗えず一回転「技有」。本間はそのまま袈裟固に抑え込み、3分29秒主審は「一本」を宣告。

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清水雅義が大内刈と小内刈のコンビネーションで大吉賢を崩す

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終盤に清水が右背負投、大吉は跳び越えてかわす

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大吉かわすなり抱分、「有効」を得る

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大吉が腕挫十字固、清水が「参った」しないと見るや一段拘束を強めてさらに極める

本間は軽く拳を握りしめて開始線に戻る。リスクなく地力を生かしたあまりにも完璧な試合であり以後の盤面を考えると決定的過ぎる結果である。国士舘がまず先制、これで日体荏原が副将戦までに積み上げるべき勝ち数のハードルは「3」にまで上がった。

次鋒戦は日体荏原・大吉賢が左、国士舘の2年生レギュラー清水雅義が右組みのケンカ四つ。清水は大内刈と小内刈のコンビネーションで気合十分に先制攻撃を為すが、やがて動きが止まり42秒双方に「指導」。

続く展開、清水が片手の大内刈から小内刈と繋ぐと大吉は畳に崩れ、清水すかさず食いついて寝技を展開。「国士舘返し」で攻めるが大吉すんでのところで体を捩じって逃れ、抑え込みは惜しくも完成せず。日体荏原サイドからは「良し!」のひと声、国士舘側からは「ぬかるなよ!」とこちらも鋭くひと声。大吉が脇を差しての内股から巴投に繋ぐと清水すかさずパスして寝勝負を挑み「待て」。日体荏原サイドは「寝技で時間を使うな!」、国士舘側は「組み際だぞ!また抱いてくるぞ!相手をみなさい!」と双方この次鋒戦が分水嶺と見たか、アドバイスもヒートアップ。

以後大吉は片手の内股、清水は大内刈に横落と見せて攻め合う。残り1分を切ったところで大吉が片手で腰を切る牽制を見せると清水は小外刈を合わせて激しく追い、次いで寝勝負を挑む。この攻防が切れた直後の3分34秒、大吉に2つ目の「指導」。累積警告は大吉が「2」、清水が「1」。

清水は健闘だが、ここで試合が大きく動く。清水が攻めたまま試合を終わらせるべく、残り20秒を切ったところで低い背負投。しかし大吉は外側に跳ねて乗り越えるとその背を抱き、腹を合わせて回旋を呉れながら捨身の抱分一発。清水たまらず転がって「有効」。大吉は追撃を緩めず、得意の腕挫十字固で清水の左を完全確保。「参った」しない清水を見て大吉は体の位置を変えて極めを強め、ほとんど体の裏側まで腕を持っていかれた清水は完全に死に体。しかし清水あくまで一本負けを峻拒、「参った」をせず耐え切ったまま終了ブザー。

おそらく腕が壊れた清水を畳に残し、一本勝ちの大魚を逸した大吉悔しそうに立ち上がる。この試合は大吉の「有効」優勢による勝利に終着、スコアは1-1、内容差ながら国士舘のリードは継続。

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ケンカ四つの腰の入れ合い、塚本綾が相手の股中に歩を進めると河田闘志が捩じり返して崩す

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塚本の巴投は河田が持ち上げて止め「待て」

中堅戦は日体荏原・塚本綾が左、国士舘・河田闘志が右組みのケンカ四つ。河田巨体を利して前に出るが塚本は得意の一歩引きながらの出足払で激しく河田の足を打つ。一歩間違えば一瞬で試合が決まりかねないこの足技の牽制が効いたか序盤は膠着、1分0秒双方に「指導1」。

以後も引き手争いの中で塚本が出足払を放つ展開が続く。河田は両足を地につけたまま前進を続け、塚本の巴投を持ち上げて止めて「待て」。河田1分半過ぎに組み勝つと両足をつけたまま腰を切る威嚇行動を続け、塚本が大内刈の形で股中に足を踏み入れると捩じり返して伏せさせる。小型選手泣かせの圧殺とリスクのない攻めに塚本は徐々に手が詰まっていく印象。河田は粘りつくような足車で攻撃継続、塚本は引き出しの出足払で逆襲を試みるが続けて打った巴投は完全に持ち上げられて止められ、続く展開では河田が相手ののお株を奪う送足払で塚本を転がし伏せさせる。

なんとか試合を終盤まで持ち込んだ塚本だが、この技の直後の3分17秒ついに2つ目の「指導」宣告を受ける。打開を狙って3分43秒に放った巴投も河田に持ち上げられてしまい、主審は偽装攻撃を採って3つ目の「指導」宣告。もはや投げるしかない塚本は左背負投を3連発して激しく攻め返すが、最後は河田が巻込技に潰れて試合を流してタイムアップ。この試合は河田の「指導3」による僅差の優勢勝ちで決着した。高校選手権で本間を内股透に切って落とした塚本の「瞬間芸」の発動の隙を一切与えない、まさしく手堅い河田の試合ぶりであった。スコアは2-1、国士舘が再び1点のリード。

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日体荏原高校の副将・藤原崇太郎が国士舘高・磯村亮太から内股「一本」

副将戦は日体荏原のエース藤原崇太郎が左、東京都100kg超級代表を務める磯村亮太が右組みのケンカ四つ。引き手争いが続き51秒双方に「取り組まない」咎による「指導」が宣告される。
直後、藤原背を抱いての左大内刈から左一本背負投。これは潰れてしまったがかなり思い切った技であり、場内大いに沸く。
磯村は引き手争いに応じながら前へ。藤原は組み手の形を作り上げると間を置かず磯村を追い込み、左内股の大技。相手と接近した狭い間合いで引き手を抱き込んで上体を固定し、自身の脚を高く揚げたこの技に片足で耐えた磯村の巨体ゆっくりと持ち上がり、上半身を引き込まれると畳めがけて回旋。そのまま地響きを立てる勢いで背中から真っ逆さま、これは文句なしの「一本」。会場はどよめきに包まれる。

ここまでの攻撃を見る限り、藤原が採った手は準決勝の蓜島剛戦同様山場を作って「指導」奪取で試合を作る作戦、少なくとも担ぎ技に活路を見出す意図かと思われたが、そもそもの発想自体のスケールが一段その上を行った。飯田健太郎を担いだ高校選手権決勝とこの日の蓜島剛戦の印象が「撒き餌」になった感もあり、強気の発想、技術、バックグランドと全てが揃った、藤原の底力の凄まじさを見せつけた一撃であった。

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飯田健太郎が突如スピードを上げて右大外刈、ハンガルオドバートルは一瞬で真裏に崩される

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あっという間に刈り込んで「一本」

スコアは2-2、日体荏原が内容差でリード。試合の行方は大将対決へと持ち込まれることとなる。

大将戦は日体荏原・ハンガルオドバートルに国士舘のエース飯田健太郎がマッチアップ。事前評は飯田の圧倒的有利だが、ハンガルは力関係を覆すパワー技一発のある選手。なにしろ仮に引き分ければ日体荏原の勝利が決まってしまうというところまで状況は煮えており、無理をしてでも行かねばならない終盤まで縺れればアクシデント一発の可能性は排除できないはず。勝負は予断を許さない。

ハンガルは右構え、飯田は右組みでスタートの形は右相四つ。飯田は得意の左出足払から試合に入り、ハンガルは巴投でいったん展開を切る。互いに持ち合って間合いを探りあったかに見られた56秒、ハンガルの側に片袖を握り続けたとの判断で「指導1」。

釣り手でバチンと奥襟を得た飯田、間合いを探ると右大内刈、これはハンガルなんとか耐え、直後放たれた支釣込足にも大きく崩れるが「待て」。

そして2分13秒、飯田ハンガルに釣り手の袖を持たれるや瞬間切り離し、奥襟に叩き込みながら右大外刈。切り離してからハンガルの体が全回転、勢い余った飯田の体が前転して転がるまでがまさに一瞬。これまでの技と全く時間感覚異なる超高速の一撃は凄まじい勢いで決まり「一本」。両者がもろとも吹っ飛ぶ勢いであった。劇的決着に会場大歓声のさ中、飯田は「終わった」とばかりにしばし畳上で天井を見上げ、感慨にふける。

平成28年度インターハイ柔道競技男子団体戦の勝者は国士舘高。大会3連覇、今季「2冠」目となる偉業達成である。

国士舘高(東京) 3-2 日体荏原高(東京)
(先)本間壘○袈裟固(3:29)△長井晃志
(次)清水雅義△優勢[有効]○大吉賢
(中)河田闘志○優勢[僅差]△塚本綾
(副)磯村亮太△内股(1:37)○藤原崇太郎
(大)飯田健太郎○大外刈(2:13)△ハンガルオドバートル

飯田健太郎という超高校級カード1枚の保有が最後に勝負を分けた形だが、飯田同様に全試合一本勝ちでインターハイを駆け抜けた先鋒本間の存在が非常に大きかった。ただでさえ大戦力を誇る国士舘が常に先行、他チームは一戦こなした段階で打てる手が極端に限定されてしまった。また、後衛に控える河田、磯村というメンタルに難ありとされた選手が、常に先行する王道展開を得たことで落ち着いて試合が出来たのではないだろうか。藤原の以上な奮戦で接戦に持ち込まれてしまったが、決勝はこの国士舘の必勝パターンというべき陣形が最後まで試合を引っ張った、その集大成ともいうべき試合であったと言える

大会全体を通していえばチーム全体を覆っていた危機感と、その危機感が生み出した積極性も見逃せない。高校選手権では明らかにメンタル上の問題で優勝を逃した国士舘だが、敗戦以後もこの問題は払拭されたとは言い難く、関東大会や東京都予選の試合ぶりを見る限りでは今夏の戦いでも同じミスが繰り返される可能性はかなり高いと観測された。

しかし、7月上旬の東京ジュニアにおける本間の左肩脱臼、清水の左肘脱臼という緊急事態がどうやらチームを変えた。危機感は金鷲旗における岩渕晃大ら周辺戦力の奮起を呼び起こし、またこの2人のインターハイにおける電撃復帰(本間は金鷲旗でテスト的な1試合をこなしているが)と奮戦がチームをこれ以上ないほど鼓舞した。「2枚落ち」という残酷な現実は金鷲旗大会において自身の挑戦者としての立場を確定し、その復帰と具体的な戦果はさらなる上昇装置として機能した。全試合一本勝ちの本間、そして準々決勝では逆転勝ちを演じ、決勝では肘を破壊されても最後まで畳に居残り続けた清水の体を張った頑張りは、岩渕監督が毎年勝利の条件として掲げる「チーム一丸」の態勢を完成させたと言える。体が一回り大きくなった飯田、相手を寄せての小外刈に進境著しかった河田と、高校選手権の敗戦を経た猛練習で得た肉体的技術的な成長は大きかったが、それを発揮させたのは2人の負傷に始まったチームの危機感醸成と、復活によるチーム一丸の姿勢であったと見る。

そして、敗れた日体荏原の戦いぶりも高く評価されるべき。春より明らかに強くなっていた。高校選手権の優勝から金鷲旗の2位、そして今大会の2位と順位こそ下がったが、勢いと意外性を武器に波に乗り、そして国士舘の自滅に助けられて頂点まで届いた高校選手権とこの夏の2大会は位相がまったく違う。全てのチームに研究され、警戒され、優勝候補筆頭のプレッシャーに晒されながらしっかり決勝まで勝ち上がり、巨大戦力の国士舘と接戦を演じた実力と練度はまさしく賞賛に値する。3回戦の崇徳戦、準決勝の埼玉栄戦などは一歩でも橋を踏み外せば敗戦というギリギリの試合であり、前者は勝利の要件は全て相手側に揃っていた本来ならば負け戦確実の一番であった。間違いなくこのチームは、高校選手権時より一段上のレベルにあった。

前年度「三冠」を達成したチームからレギュラー3枚が残った国士舘が他を圧すると思われた今シーズンをここまで魅力的なものにしてくれた、日体荏原の好役者ぶりを心から讃えたい。少なくとも高校選手権で心にパニックを起こしたあの日の国士舘は「三冠」にふさわしいチームではなく、これを阻止したことは高校柔道史上において誇るべき戦果であったと言えよう。軽量ながら個性的なキャラクターを揃え、魅力的な「一本」を量産したこのチームは、「強さ(結果ではなく)」に敏感な同世代の支持も非常に厚い。最強チームは国士舘であったが、ベストチームは日体荏原であったと評しておきたい。

国士舘高・岩渕公一監督は「うちが(高校選手権で敗れることで)日体荏原を強くしてしまった。錯覚の強さを本物の強さにしてしまった」と繰り返し語っていたが、国士舘もまた日体荏原に負かされることによって間違いなく強くなった。日本一にふさわしいチームとなって夏の全国大会の畳に戻って来ることが出来たのは、間違いなく一敗地にまみれた高校選手権の屈辱があったからである。ライバルが存在することの貴重さ、「競り合う」ことの素晴らしさを今代の総括として、男子団体戦のレポートを終えたい。

入賞者と岩渕公一監督のコメント、準々決勝以降の結果は下記。

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優勝の国士舘高

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準優勝の日体荏原高

【入賞者】

優 勝:国士舘高(東京)
準優勝:日体荏原高(東京)
第三位:埼玉栄高(埼玉)、天理高(奈良)
第五位:東海大仰星高(大阪)、開星高(島根)、白鴎大足利高(栃木)、大成高(愛知)

※国士舘高は3年連続14度目の優勝


岩渕公一監督のコメント
「勝って嬉しいですけど、清水が(怪我をしてしまって)・・・。素直に喜べません。団体戦では絶対に一本負けをしたらいけない。それを分かって頑張ったんでしょう。凄い男です。7月10日の東京ジュニアで本間が左肩脱臼、清水が左肘脱臼。こんなに直前に、それもレギュラー2枚が大怪我をするというのは30年近くやっていて初めて。本当に悪夢と思いましたたが、皆に『こいつらの分も頑張らないと』と話して、全員で頑張って来た2週間でした。色々な治療をしてギリギリで間に合い、心を鬼にして起用しましたが、この2人が本当に頑張りました。今大会のヒーローは本間と清水です。肩を外した本間が全試合一本勝ち、先鋒が常に勝ってくれるので本当に楽になった。清水は負けている試合を逆転して来たりしてチームが非常に盛り上がりました。(-飯田選手が逞しくなりましたね?)もうムチャクチャ稽古をさせましたから。以前はヘバると極端に技の威力がなくなっていたのですが、大学生や実業団とガンガン稽古をさせてスタミナも付き、疲れて痩せたところにたくさん食べさせて体も太くなりました。実業団の一線のOBとやらせると皆『強い』と唸りますからね。飯田だけでなく選手全体もスタミナ重視。インターハイは2日目になると体力が突然落ちてどの学校もパフォーマンスが悪くなる、それを想定してしっかりやってきましたね。(-日体荏原とは3冠大会すべてで決勝を戦いましたね?)うちが負けたことで日体荏原さんはガーッと強くなって、本物になった。強くしてしまったのはうちであり、うちの選手なんだから『お前、自分で責任を取れ』というのがこの夏の課題(笑)。勝てて、良かったです」

【準々決勝】

埼玉栄高(埼玉) 2-0 東海大仰星高(大阪)
日体荏原高(東京) 3-1 開星高(島根)
国士舘高(東京) 5-0 白鴎大足利高(栃木)
天理高(奈良) ①代-1 大成高(愛知)

【準決勝】

日体荏原高(東京) 2-1 埼玉栄高(埼玉)
国士舘高(東京) 3-1 天理高(奈良)

【決勝】

国士舘高(東京) 3-2 日体荏原高(東京)


文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版7月31日掲載記事より転載・編集しています。

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