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【リオ五輪柔道競技完全ガイド】大野将平が独走、唯一の対抗馬はアン・チャンリン・リオデジャネイロ五輪柔道競技73kg級展望

(2016年7月28日)

※ eJudoメルマガ版7月28日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド】大野将平が独走、唯一の対抗馬はアン・チャンリン・リオデジャネイロ五輪柔道競技73kg級展望
■ 階級概況
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2016年グランプリ・デュセルドルフの表彰台には五輪の主役が顔を揃えた。左からオルジョフ、大野、シャフダトゥアシビリ、アン。

この階級は2010年からの世界選手権5大会で全て日本勢(3人)が優勝。その強国日本の代表大野将平が圧倒的な優勝候補である。
対抗馬1番手のアン・チャンリン(韓国)、2番手のルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)を、2月のグランプリ・デュセルドルフの直接対決で全く寄せ付けなかったことで、大野の頭1つ以上抜けた優位構図が確定された感あり。大野はおそらく100kg超級のテディ・リネールと肩を並べる、絶対の金メダル候補と規定して良い。

前述の通り対抗馬1番手はアン。大野の牙城に迫り得るのは唯一この人のみではないかと思われる。筑波大から韓国に渡って龍仁大で修行を始めるなりブレイク、2014年世界ジュニア選手権を制すると翌年のアスタナ世界選手権では3位に入賞、圧勝優勝した大野から唯一ポイントを奪う堂々の活躍を見せた。前述の通り今年2月のグランプリ・デュセルドルフでは大野に完敗したが、なにしろ現在のアンの成長スピードは凄まじく、昨年12月のグランドスラム・東京で完璧な一本負けを喫した秋本啓之に2か月後のグランドスラム・パリでは2度投げつけて圧勝している。本人も「まだまだ(大野には)叶わないが、自分が伸びている実感がある」旨のコメントを残しており、この五輪は圧倒的な強さを誇る大野に、アンの成長スピードが届くかどうかが最大の焦点になるだろう。

大野とアンの直接対決はまさしく五輪柔道競技の花形。大野は奥襟×大外刈・内股系ファイターの極みともいうべき強者であり、アンは前襟×背負投系の選手の典型。しかも2人とも「持って、投げる」ことがアイデンティティの王道柔道の伝道者。タイプ的な噛み合わせの良さと両者に共通する異常なまでに投げにこだわる攻撃志向を考えれば、五輪史上に残るレベルの好試合が繰り広げられる可能性も大。絶対に見逃してはならない一番だ。

というわけで、大本命は大野で対抗はアン。追撃するのは2015年前半に階級の主役というべき大活躍を見せた今季の欧州王者ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)、そしてやや主観が絡むピックアップだがここに来て明らかに上がり目を掴んだ66kg級ロンドン五輪王者のラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)を挙げておきたい。

第3グループはヴィクター・スクボトフ(UAE)、ホン・カクヒョン(北朝鮮)、ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)ら化ける装置を持つ曲者たち。柔道スタイルは単純ながらセージ・ムキ(イスラエル)の爆発力もあなどれない。

参考:
グランプリ・デュッセルドルフ第2日レポート
グランドスラムパリ2016・男子第1日3階級レポート

■ 有力選手
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絶対的な優勝候補とされる大野将平

大野将平(日本)
Shohei ONO
24歳 1992/2/3
右組み WR 6位
所属:(世田谷学園高→天理大→)旭化成
得意技:大外刈・内股

世界選手権73kg級5連覇中の強国日本が自信をもって五輪に送り出す強者。海外メディアもこぞって推す、絶対的な金メダル候補である。二本持って体ごと断ち割るように相手を投げつける大外刈と内股の威力は凄まじい。単なる「ゲームの勝者」ではなく格闘者としての強さそのものを見せつけるような、柔道の「王者」である。海外メディアもこぞって優勝候補の第一に推しており、金メダル獲得はすぐれて現実的な予測。

表彰台の真ん中以外に欲しい場所がない今回、大野最大の敵はその内面にあり。2014年チェリャビンスク世界選手権はあくまで投げを狙う自分らしさを失って予選ラウンドで意外な敗退を喫している。実力的に他を圧倒している今大会は、大野らしい上から目線の柔道、相手の戦意を失わしめるような「投げる」姿勢を貫けるかどうかに掛かる。

【おもな戦績】
2013年 リオ世界選手権 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2016年2月 グランプリ・デュセルドルフ1位

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対抗馬はアン・チャンリン(韓国)

アン・チャンリン (韓国)
AN Changrim
WR:1位
22歳 左組み
得意技:背負投、小内刈
桐蔭学園高→筑波大→龍仁大

2014年4月に韓国に渡るや才能爆発。世界ジュニア選手権を獲り、アジアを獲り、ユニバーシアードを獲り、そして世界選手権でも銅メダルを獲得。この大会では圧勝優勝した大野から唯一投げ技のポイント(隅落「技有」)を奪うなど素晴らしい出来を見せ、以降は完全にシーンの主役。2月のパリ大会では高校・大学の先輩秋本啓之から「技有」「一本」と立て続けに奪うなど圧勝している。今大会は大野将平の数少ないライバル。

参考動画:AN CHANGRIM - HIGHLIGHTS JUDO 2015/2016

【おもな戦績】
2014年 世界ジュニア選手権 1位
2015年 アジア選手権 1位
2015年 ユニバーシアード 1位
2015年 アスタナ世界選手権 3位
【最近の成績】
2015年10月 グランドスラム・アブダビ1位
2015年11月 グランプリ済州 1位
2015年12月 グランドスラム東京 2位(秋本啓之に敗退)
2016年2月 グランドスラムパリ 1位(秋本啓之に勝利)
2016年2月 グランプリ・デュセルドルフ3位(大野将平に敗退)

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ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)

ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)
ORUJOV Rustam
WR:2位
22歳 左組み
得意技:得意技:
外巻込、払腰、内股、小外掛、大外刈
※自己申告は一本背負投

今季の欧州選手権王者。2012年ロンドン五輪から3年連続で世界大会代表を務め(予選敗退、予選敗退、7位)中堅選手として存在感を発揮すると2015年にブレイク。グランプリ・トビリシ、グランプリ・サムスン、グランドスラム・バクーとツアーに3連勝して上半期MVP級の活躍を見せたが、6月の欧州選手権初戦でヤロミール・ジェゼク(チェコ)の関節技のために肘を負傷、8月の世界選手権には出場出来ず。つまりは出世後、この五輪が初の世界大会である。
典型的なアゼルバイジャンスタイル。奥襟や背中を持った状態からの大外刈や払腰が得意。引き手のみを持った状態からの外巻込、釣り手のみを持った状態からの小外掛も多用する。
長身、手足長く懐深い特徴を存分に駆使する難剣使い。IJFには得意技を一本背負投と申告しているようだが、仕掛ける場面はあまり見ない。

参考動画:Rustam Orujov Judo Highlights 2015

【おもな戦績】
2015年3月~5月ワールドツアー3連勝
2016年 欧州選手権 優勝

【最近の成績】
2016年1月 グランプリ・ハバナ1位
2016年2月 グランプリ・デュセルドルフ2位
2016年4月 欧州選手権 1位
2016年5月 グランドスラム・バクー3位

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>ラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)

ラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)
SHAVDATUASHVILI Lasha
WR:5位
24歳 右組み
得意技:隅返、大内刈、裏投
※自己申告は払腰

2012年ロンドン五輪に66kg級で参加、全くのノーマークから隅返一本やりで一気に金メダルを獲得した超新星。その変則ぶりから以後の成長ぶりを危惧する声があがっていたが、翌年の欧州選手権を制して以降その予想通り苦戦して成績を残せず。2014年に73kg級に階級を上げて以降は徐々に隅返への依存を減らし、隅返を囮にした大内刈を覚え、今年はついに前襟を持った「まともな」柔道までこなすようになり、肘抜きの背負投でポイントを獲得する場面も見られるようになった。現在は釣り手で背中を、引手で脇を抱えての右大内刈が最大の武器の模様。

今年初めの段階ではまだまだイロモノ扱い枠の域に留まる選手であったが、欧州選手権での戦タフな戦いぶり、もはや変則ファイターの影もないその変貌ぶりから、ここはマークすべき選手に成長したという印象。五輪の勝利経験があることも買いだ。

【おもな戦績】
2012年ロンドン五輪66kg級 金メダル

【最近の成績】
2016年3月 グランプリ・デュセルドルフ 3位
2016年3月 グランプリ・トビリシ 3位
2016年4月 欧州選手権 2位
2016年5月 グランプリ・アルマティ 1位

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ィクター・スクボトフ(アラブ首長国連邦)

Photo from IJF

ヴィクター・スクボトフ(アラブ首長国連邦)
SCVORTOV Victor
28歳  1988/3/30
WR24位 左組み
出足払、左小内刈
モルドバからUAEに移籍した「五人衆」のリーダー格。2014年アスタナ世界選手権ではついに銅メダルまで獲得し、成績的には出世頭である。
突如関節技で「一本」を量産したり、常に新スタイルを求める面白い選手。現在の尖った特徴は足技。切れ味が鋭くどんな相手でも一瞬で刈り取ってしまう怖さがある。2015年グランプリ・デュセルドルフで西山雄希を体ごと吹っ飛ばした、左小内刈(小内「払」)から右出足払のコンビネーションの切れ味はファンの記憶にも新しいはず。

参考動画:
2015年グランプリ・デュセルフドルフ、西山雄希戦の出足払「一本」
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ホン・カクヒョン(北朝鮮)

Photo from IJF

ホン・カクヒョン(北朝鮮)
HONG Kuk hyon
25歳 1990/7/1
WR19位 右組み 
得意技:左一本背負投、内股、大外刈、大内刈
2014年チェリャビンスク世界選手権2位、2015年アスタナ世界選手権5位。
左右の担技に腰技、足技とバランスよく備えているが、最大の武器は間違いなく階級ナンバーワンのパワー。浅く入った技も尽く強引に投げ切ってしまうパワーは脅威。チェリャビンスクでは他を圧する体幹の強さを見せつけ、体格から周囲と一回り違う印象だった。以降あれほどの強さはただの一試合も見せていないが、五輪における北朝鮮選手の異常な集中力の高さはつとに知られるところ。要注意。

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セージ・ムキ(イスラエル)

Photo from IJF

セージ・ムキ(イスラエル)
MUKI Sagi
24歳 1992/5/17
WR4位 左組み
得意技:袖釣込腰(左右)、大外刈(左右)
大会に皆勤することでハイランカーの座を保ってきた選手で、世界大会の成績は2015年アスタナ世界選手権における7位が最高。ここまではツアー限定の強者。、
全ての技術のベースが袖釣込腰。両袖から放つ左右への袖釣込腰と、相手の上体を袖釣込腰の形に固めての大外刈が得意。戦術派でもあり試合展開も巧み。

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ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)

Photo from IJF

ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)
GANBAATAR Odbayar
WR10位 左組み
得意技:内股(やぐら投げ)、左内股、右小内巻込
アスタナ世界選手権5位。前任者のサインジャルガル・ニャムオチルとは異なり、体幹の強さをまっすぐ生かし、左組みで前襟を持ってと比較的正統派の柔道を展開する。ただし一定のレベル以上の相手と対峙すると一転、密着し、組み手の左右を変えてと典型的なモンゴル柔道で「指導」を狙いに出る。この点非常にわかりやすい選手。体幹の強さは前任者以上で、背筋を伸ばして相手の技を平然と跳ね返す様は尋常ならざる資質を感じさせる。

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ミコロス・ウングバリ(ハンガリー)

ミコロス・ウングバリ(ハンガリー)
UNGVARI Miklos
35歳 1980/10/15
WR14位:右組み
得意技:右小内刈、左小内巻込、右内股
2012年ロンドン五輪66kg級 2位
66kg級で世界選手権3大会連続3位(2005~2009)、2015年アスタナ世界選手権7位。
まだやるのか、と思われつつとうとう4度目の五輪に辿り着いてしまった。右内股や左一本背負投など様々な技を使用するが、背中を抱いての右小内刈と左小内巻込が戦術の核。左右の小内刈(小内巻込)で崩して寝技で取る試合も多い。

■ シード順
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予想されるシード順は、右の画像の通り。

最大の山場であるアン・チャンリン対大野将平戦は準決勝。大野はラシャ・シャフダトゥアシビリ、アン、そしてオルジョフと優勝候補3名と全て対戦せねばならない厳しい組み合わせ。

シード外のダークホースはヴィクター・スクボトフとホン・カクヒョン。柔道が軽いスクボトフよりは展開を塗りつぶしに来るホンのほうが、上位陣にとっては嫌な相手。


文責:古田英毅
協力:林さとる

※ eJudoメルマガ版7月28日掲載記事より転載・編集しています。

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