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前衛の奮闘が大駒飯田健太郎の「一本」引き出す、国士舘が2年連続9度目の戴冠・平成28年度金鷲旗高校柔道大会マッチレポート③決勝

(2016年7月28日)

※ eJudoメルマガ版7月28日掲載記事より転載・編集しています。
前衛の奮闘が大駒飯田健太郎の「一本」引き出す、国士舘が2年連続9度目の戴冠
平成28年度金鷲旗高校柔道大会マッチレポート③決勝
■ 決勝
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決勝が開始される

開示されたオーダー順は下記。

日体荏原高 - 国士舘高
(先)大吉賢 - 本間壘(先)
(次)長井晃志 - 山田祐太(次)
(中)塚本綾 - 河田闘志(中)
(副)ハンガルオドバートル - 磯村亮太(副)
(大)藤原崇太郎 - 飯田健太郎

切るべきカードを全て切った日体荏原にオーダー変更はなし。藤原崇太郎を大将に座らせたまま、ここまではほぼ盤石と言って良い勝ち上がり。

一方の国士舘は7月上旬に肩を脱臼したばかりの本間壘をこの試合で先鋒に投入。準決勝で大活躍した山田を次鋒に据え置き、中堅から続く重量ブロックの前に一段溝を掘っておいたという形。

国士舘に飯田健太郎という大駒1枚のご優がある以上、日体荏原の大戦略は高校選手権と変わらず「飯田に複数枚を当てること」。前でリードを作り、勢いをそのままにハンガルを当てて少しでも消耗させ、藤原対飯田の「個」に対決に全てを託すという考え方で大戦略は誤りなし。

一方の国士舘としてはこちらも前をしっかり戦うことに尽きる。藤原と飯田は「あの」高校選手権決勝以外においてはここ1年半に渡って飯田が圧倒的に優勢であり、これを踏まえればタイスコアで全く問題はない。ただし高校選手権決勝で飯田が藤原に不覚を取った因は日体荏原のチーム一丸となって作り出した勢いはもちろん、そこに至るまでにチーム全体が為した、あまりに大駒飯田が控えることを意識した一種消極的な戦いぶりであった。日体荏原に勢いをつけさせず、かつチームが上昇機運に乗るような覚悟ある戦いが求められるところ。

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にじりよる本間、いなしてチャンスを探す大吉という構図で先鋒戦は推移

先鋒戦は73kg級の大吉賢と、手負いの重量選手本間壘がマッチアップ。
本間は脇を差しての密着攻撃が売りのパワーファイターであるが、この試合は「試合を壊さぬよう」と指示を受けているがごとくまことに手堅く慎重。大吉はその軽量イメージを逆手に取った大技一発がある面白い選手だが、ここまでしっかり柔道をされると刃の入れどころが見つからない。序盤は巴投で試合を動かしに掛かるが1分半過ぎにこの巴投をパスされて抑え込まれ掛かってからはこちらも慎重。本間のにじり寄るような前進一択は大吉の後退と自身の仕掛けの減少を2つながら生み、この試合は「指導2」ずつを失っての引き分けに終わる。

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山田祐太が長井晃志の背中について回旋を呉れる、しかし前に崩れるはずの長井はあくまで踏みとどまる

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長井の内股巻込が決まり「技有」

次鋒戦は日体荏原・長井晃志と国士舘・山田祐太がマッチアップ。
ここは日体荏原が得点を狙うべきポイント。盤面を考えればここで1点を得、そのまま1人差リードをつなげ続けるのが日体荏原にとっては最も手が届きやすい勝利のシナリオだ。

長井が右、山田が左組みのケンカ四つ。山田が長井の絞り合いに応じると、両袖の攻撃が得手の長井は相手と袖を握り合ったままの大外刈に袖釣込腰と取り味のある技で激しく攻める。山田は丁寧に、かつ辛抱強く対峙し続け終盤まで試合を持ち込むことに成功するが、残り1分で手立てを変えて手順をスキップ、右釣り手で相手の背を抱いて後ろにつき、時計回りの回旋で激しく長井を崩しにかかる。しかし前に倒れるはずの長井は踏みとどまり、山田の動きが止まったところで右内股巻込。中途半端に相手に密着する形になってしまっていた山田は回旋運動を逆に戻した格好のこの技に耐え切れず転がり「技有」。このポイントを以て第2試合は長井の勝利に収着する。日体荏原、目論見通り1人差のリードを作り出すことに成功。

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河田闘志の大外刈が長井を捉え「有効」

第3試合は国士舘の中堅・河田闘志が畳に上がる。

長井、河田ともに右組みの相四つ。圧力が効きやすい相四つということもあり、河田は引き手で襟、釣り手で奥という手堅い組み手で体格差を生かす策。20秒、畳に潰れた長井に「指導1」。以後も河田は長井を組み潰しながら技を積み、2分0秒には耐えた長井の手を畳に着かせて長井に2つ目の「指導」。引き手でまず襟を掴み、あるいは袖を織り込んでと同階級の選手であっても厳しい手順を重量選手に粛々と積まれ、さすがに長井は疲労困憊。

続く展開、河田は引き手で袖を一方的に掴み、かつ釣り手で奥襟を得る完璧な形。敢えてすぐには勝負技にいかずこの形を長く保って浅く攻め続けると長井の消耗はもはや隠せず。河田が場外際で右大外刈、一歩踏み込んで巻き込みに連絡すると長井は意外なほどあっさり畳に転がりこれは「有効」。河田そのまま袈裟固に抑え込み「一本」、国士舘はここでスコアをタイに戻す。

続く第4試合は畳に残った河田が右、日体荏原の中堅塚本が左組みのケンカ四つ。体格差と河田の手堅い試合志向が相まって試合は引き手争いが長く続く様相となり、42秒双方に片手の「指導」。敵に1点取られた流れをひとまず落ち着かせた塚本、頃合い良しとばかりに中盤からは片膝を着いた左背負投を連発して試合を動かしに掛かるが、河田は動ぜず。この試合は引き分けに終わる。

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ハンガルと磯村による第5試合

第5試合のハンガルオドバートル対磯村亮太戦はハンガルが右構えベース、磯村は左組みのケンカ四つ。序盤ハンガルが一方的に袖を得て自分だけが組む絶好の形が現出するが、磯村が敢えて反応せず我慢しきってこのシークエンスは両者への「指導1」に収束。以後は試合を壊したくない両者の意図がクロスし、極端にリスクを負う場面がない駆け引きの連続。あっと言う間に4分間が過ぎ去ってこの試合も引き分けで終了。伝統ある「金鷲旗」の帰趨は両軍のエース同士による一騎打ちに委ねられることとなった。

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開始早々飯田健太郎の右内股が藤原崇太郎を捉え「技有」

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藤原体を捨てての小外刈も飯田は崩れず

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飯田が片手で右内股、ケンケンしながら引き手で襟を拾って追い込む

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最後のひと伸び決まって「一本」

大将同士の対決は日体荏原・藤原崇太郎が左、国士舘・飯田健太郎が右組みのケンカ四つ。

飯田が釣り手を上から掴んで肘を入れ、藤原が下からこれに抗する形での引き手争い。飯田が釣り手の手首を立てながら激しく引き手を求めると、主審早々に動いて21秒藤原に「取り組まない」判断による「指導」を宣告。

続く展開、飯田は両襟でまず接近し、釣り手の肘を内側に入れて藤原の右を殺すと引き手で袖を得、次いで釣り手の肘を振り上げての右内股で激しく追いかける。藤原の足が詰まったところで作用足を振り上げて一段高く本命の右内股を撃つと藤原綺麗に一回転して「技有」。副審1人が「一本」を示す鮮やかな一撃であった。経過時間は39秒、
両者の力関係に鑑みれば決定的なポイントと考えて然るべし。

もはや玉砕覚悟で行くしかない藤原は脇を差しての左大腰、体を捨てての左小外刈と立て続けに大技に打って出るが、飯田は崩れずしっかり対応。以後は釣り手の肘をしっかり入れ、奇襲技を許さぬ手堅い構えで試合を進める。

終盤、飯田が釣り手で首を抱えて片手の右内股。ケンケンの回旋で藤原の右半身を近づけると、中途で引き手の袖を拾いに掛かる。気付いた藤原右腕を開いてかわすが飯田は判断早く狙いを襟に変更、右襟を掴んで引き寄せながらケンケンでさらに追い込む。藤原体を開くこと叶わず脚を揚げられたまま胸が合ってしまい、飯田が最後の一伸びを呉れると背中から激しく畳に落ちて「一本」。

試合時間3分37秒。鮮やかな「一本」を以て試合は決着、国士舘高が2年連続9回目の金鷲旗大会制覇を成し遂げることとなった。

国士舘高○大将同士△日体荏原高
(先)本間壘×引分×大吉賢(先)
(次)山田祐太△優勢[有効・内股巻込]○長井晃志(次)
(中)河田闘志○袈裟固(3:02)△長井晃志(次)
(中)河田闘志×引分×塚本綾(中)
(副)磯村亮太×引分×ハンガルオドバートル(副)
(大)飯田健太郎○内股(3:37)△藤原崇太郎

まず、飯田健太郎の保有1枚が勝敗を分けた一番と総括出来る。飯田が藤原に苦杯を喫した背負投の対策として、あるいは脇を抱いての一か八かの奇襲技を許さぬよう「ちゃんと組んだ」その研鑽とスケールアップも勝因の一であることは間違いない。

しかし高校選手権における本命国士舘高のもっとも大きな敗因は、大将飯田が敗戦を喫した1試合に求められるものではなく、日体荏原の加速とともに起こった自軍前衛の失速にこそあった。この点がどう改善され、どう飯田の力が生かされたと捉えるべきだろうか。

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優勝決定直後、インタビューに応える岩渕公一監督

河田、磯村の重量2枚は手堅く仕事をしたが、河田は準決勝までに3敗、それもアクシデント一発ではない我慢負けに不本意な引き分けを演じてもおり、磯村もキャパシティを超えて周囲を奮い立たせるような素晴らしい試合を見せたわけではない。すくなくともチームがあるべき力をある程度以上発揮し頂点に辿り着いた今回と、高校選手権の差は何か。

ひとつは、この「チームを加速させるマネジメント」として打った畳外からの手が決まったということがある。準決勝で山田、決勝で本間とフレッシュな選手をここぞで次々投入する「二段ロケット」で固定メンバーだけでは作り出せない推進力を得たという観察はひとつ可能。山田の活躍に加えて実に7試合で先鋒を務めた岩渕晃大の活躍までを含めれば、春の段階で岩渕監督が語っていた「6人目、7人目が主役を取りに来るような活躍」がここに来てようやく実現したと言える。

もう1つ、主力である本間壘とレギュラーとして仕上がりつつあった清水雅義の負傷離脱という負の材料も、ことこの金鷲旗大会に関していえばチームを好転させるきっかけになったのではないだろうか。2枚落ちという厳しい現実が醸し出す危機感は2回戦の段階から隠せずチーム全体を覆っており、これが挑戦者としての立場の醸成に一役も二役も買ったと見る。

一方の日体荏原は破綻ないまま国士舘に力負けした印象で、良い意味で試合を壊すことで国士舘に勝利して来たこのチームの本領は発揮されなかった。目前に迫ったインターハイでどこをどう修正するのか、どのようなマインドセットが行われるのか非常に興味深い。上積み材料はハンガルのスケールアップと塚本のレギュラー完全定着、長井が見せた復活気配に百々の奮戦。逆に心配な材料は帯状疱疹でしばらく稽古を止めていた藤原と手指脱臼の大吉に元気がなかったこと、軽中量級の塚本が強者として遇されて警戒されてしまい、相手が出てきさえすれば決まる技の取り味がかつてに比べて消されつつあること。

国士舘高・岩渕公一監督は大会の総括を終えると「今回はすぐにインターハイ」と厳しい表情。遠征軍にとっては僅か「中3日」で迎える最後の大会に向けて各チームがどのように調整し、そして変化するかどうかは非常に興味深い。

傷だらけの状態を逆に上昇装置として戴冠の栄を得た国士舘と、軽量ながら今回も力を発揮して決勝まで勝ち上がった王者日体荏原。両軍の奮戦をお伝えして、このレポートを終えたい。

入賞者と岩渕公一監督のコメントは下記。

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2連覇達成の国士舘チーム

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今年もマリンメッセで宙に舞う岩渕公一監督

【入賞者】

優 勝:国士舘高
準優勝:日体荏原高
第三位:大牟田高、埼玉栄高
優秀校:大成高、木更津総合高、天理高、崇徳高

※国士舘高は2年連続9回目の優勝

優秀選手:飯田健太郎、河田闘志(国士舘高)、長井晃志、ハンガルオドバートル(日体荏原高)、蓜島剛(埼玉栄高)、西田将樹(大牟田高)、東部直希(大成高)、山下魁輝(木更津総合高)、笠原大雅(天理高)、空辰乃輔(崇徳高)

岩渕公一監督のコメント

「ホッとしています。高校選手権の負けはやはり大きかった。勝てると言われていて負けるとショックは大きいし、勝ったほうの盛り上がりは倍です。日体荏原さんが『国士舘が強い』という姿勢で向かってきた、でも自分たちも強いと思い込んでいる。そういう錯覚をホンモノにしてしまったのが、ウチです。本当に強くしてしまった。だからそれに負けないくらいしっかり稽古をやろうと追い込んで来た数か月でした。飯田は体つきからして変わったし、山田も清水も強くなった。岩渕晃大は飯田の次の殊勲者ですよ。先鋒が取って来てくれるのが本当に大きかった。で、ホッとしましたけれど今回はインターハイまで本当に期間がありませんから。中3日しか東京に居れませんが、この日程を十分見据えて計画してきました。次はインターハイでしっかり頑張ります」


文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版7月28日掲載記事より転載・編集しています。

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