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【リオ五輪柔道競技完全ガイド・日本代表選手紹介】多彩な投げと思い切りに括目、世界選手権3連覇者が“最後の目標”に挑む・66kg級 海老沼匡

(2016年7月23日)

※ eJudoメルマガ版7月23日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド・日本代表選手紹介】66kg級 海老沼匡
多彩な投げと異常なまでの思い切りに括目、世界選手権3連覇者が“最後の目標”に挑む
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2011年パリ大会、2013年リオ大会、2014年チェヤビンスク大会と世界選手権を3連覇した海老沼匡

銅メダルに輝いたロンドン五輪から既に4年。あの激戦以降も、2013年リオ世界選手権、2014年チェリャビンスク世界選手権と2度世界の頂点を極めながら、まるでそれしか知らないかのように繰り返し続けたセリフがある。曰く「目標はオリンピックの金メダルだけ」。止まない情熱と執念を胸に、海老沼匡が五輪の畳に帰って来た。

海老沼最大の特徴は何といっても豪快な投技。世界選手権3連覇達成時に「得意技は”投げること”」と題して海老沼の投技の多彩さと異常なまでの勝負強さを書かせて頂いたことがあるが、その特徴は26歳となった今も変わらない。
腰車、背負投、大内刈、内股、支釣込足、そして小内巻込に肩車、オールラウンダーであることが一種当たり前の条件になった現代柔道にあってもここまで多彩な勝負技を持つ選手はいない。どうすれば相手が飛ぶのかを体で理解した海老沼の「投げる」才能は常にその出口を求めてさまよい、それが噴出する「形」の差だけが決め技を規定する。ジュニア時代にマリウス・ビゼールIJF会長を「これが柔道だ」と唸らせたという融通無碍の豪快な投げは、リオデジャネイロ五輪柔道競技のまさしく花形となるだろう。

着々持ち技を増やした「止まぬ進化」という海老沼もうひとつの特徴は寝技にまで及び、ここ2年は寝勝負にも進境著しい。立っていればどの方向に動いても投げが打たれ、崩れれば寝技を挑まれあっと言う間に一本負けの危機に晒される。相手にとってこれほど怖い選手はいない。

もうひとつ、今更ながら海老沼の凄さとして、その階級内序列の高さにそぐわぬ異常なまでの「思い切り」を挙げておきたい。決して受けが強いわけではない海老沼の出世の源泉は止まぬ攻撃行動と、ひとたび感触を得ればあくまで「一本」を狙い続けて相手を追いかける投げの完遂への執念であった。これを一括りにしたものをここでは「思い切り」と表現する。何を今更と仰るかもしれないが、相手を恐れぬ思い切りの良さとあくまで決め切るしつこさを源泉に階段を駆け上がった選手が、実績を重ねて「負けられない」立場に立った瞬間これを失ってしまい、土台を抜かれたがごとく勝負の世界から滑り落ちていくことはこの業界にままあること。そして怖いもの知らずの選手が「理」を知ることで怖さもまた覚え、「なぜ行けないんだ!」とファンや指導者を歯噛みさせることはどのカテゴリの、どのクラスタでも頻発する事象である。トップ選手ならここをクリアするのは当たり前、と言われるかもしれないが、少なくとも返されるリスクの少ない、納得出来る状況を作ってから「行く」方向にエネルギーを注ぎ込むことのがベテランが大枠で持つベクトルのはず。あまりに極端な投げ際落ち際の現出を避けるのが常だ。

しかるに、今年の海老沼のベストパフォーマンスであるグランドスラム・パリのアン・バウル(韓国)戦とダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)戦を見てみて欲しい。足を引っ掛けるや返しを狙うアンの動きをまるごと制して突っ込んだ内股「一本」、いつ返しに打って出る間合いが来るかとガップリ背を抱えて待ち構えるダバドルジを構わず引っ張り出し続け、ついに捕まえた内股「一本」。階級最強のライバル2人に対しいずれも「怖くないのか!?」と思わず立ち上がって叫んでしまう高レート博打、既に功成り名遂げた立場の選手のやり口にふさわしからぬ異常なまでの思い切りの良さである。
投げへのこだわり、度胸を持ちづけることこそが自分の柔道の骨であり、いかに技術を積もうとも実績を得ようともこれを失えばすべてが無くなると、海老沼は自分の長所をしっかり見極めているのであろう。そして、まるで何も持っていない若者のような「投げ」への渇望は、冒頭書かせて頂いた通り彼が五輪の金メダル以外考えていないことのなによりの証左だ。大舞台で萎縮する選手も続出するであろう中、「まだ何も持っていない」世界選手権覇者海老沼の思い切りの良さに、括目せよ。

参考動画:
2016年グランドスラム・パリ準々決勝、海老沼匡vsアン・バウル
2016年グランドスラム・パリ決勝、海老沼匡vsダバドルジ・ツムルクフレグ

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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※ eJudoメルマガ版7月23日掲載記事より転載・編集しています。

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