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【リオ五輪柔道競技完全ガイド】4人の世界王者経験者が軸、欧州勢2人と 好調ガルバトラフがこれに挑む・リオデジャネイロ五輪柔道競技48kg級展望

(2016年7月21日)

※ eJudoメルマガ版7月21日掲載記事より転載・編集しています。
【リオ五輪柔道競技完全ガイド】4人の世界王者経験者が軸、欧州勢2人と 好調ガルバトラフがこれに挑む・リオデジャネイロ五輪柔道競技48kg級展望
■ 階級概況
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2013年グランドスラム東京決勝、近藤亜美が同年の世界選手権覇者・ムンクバットを破る

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実力推測マップ。爆発力がもっとも高いのは近藤。

有力選手がハッキリしている階級。
2013年リオ世界選手権の覇者ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)、2014年の王者近藤亜美(日本)、2015年の覇者ポウラ・パレト(アルゼンチン)、そして2012年ロンドン五輪金メダリストであるサラ・メネゼス(ブラジル)が金メダル争いの軸。それぞれ弱点はあるものの、この個性豊かな4人の王者が実力的には他選手の一段上をいくと考えられる。

対抗馬はエヴァ・チェルノビスキ(ハンガリー)とシャーリーン・ファンスニック(ベルギー)の欧州系パワーファイター2人。これに進境著しい移籍選手ガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)を入れたところまでがメダル候補。敢えて1人加えるならディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)というところまでで締め切りかと思われる。不確定要素を探しても、関節技に一発のあるナタリア・コンドラチェワ(ロシア)にこのところ進境著しいジュリア・フィゲロア(スペイン)くらいではないだろうか。

例によって右の「実力推測マップ」を見てもらいたい。ワールドツアーと世界選手権をウォッチする限り上記「世界チャンピオン+3」の中で安定感があるのはムンクバット、ガルバトラフ、チェルノビスキ、ファンスニックの4人。この選手たちはよほどの不調時を除いて成績的にもほぼ安定、内容的にもよほどの不調時を除いては良くも悪くもほぼ自分たちの個性を発揮出来ている(ムンクバットは今年の春季など連続出場で相当疲労がたまっていたはずだが、それでも十分戦えていた)。ただし、最高到達点がそれぞれの高さでハッキリしている印象もあり、例えばこの中でもっとも力のあるムンクバットであっても爆発力のある選手が抜群の出来でやってくると、その高みには届き切らない印象がある。

逆に不安定だがここぞという時の登攀力が物凄いというタイプが近藤亜美。メネゼス、パレトも近藤ほどの極端さはないがいずれもどちらかというとこの型だ。背負投の連続攻撃が生命線のパレトはフィジカル的な、天才肌の近藤とメネゼスはメンタル的なコンディションの仕上がりが勝負のカギを握る。

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近藤亜美(日本)

近藤亜美(日本)
Ami Kondo
21歳 1995/05/09
組み手:右 WR3位
所属:(大成高→)三井住友海上
得意技:払腰、寝技

高校3年時(12月)のグランドスラム東京で驚きの優勝。以降一気に国際シーンで存在感を発揮、翌年8月のチェリャビンスク世界選手権でも初出場、初優勝を飾った。この大会では得意の右払腰で前年度王者のムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)を沈め、「わかっていても投げられる」その技の切れ味を存分に世界にアピール。

2015年アスタナ世界選手権では準々決勝で敗れたが、寝技で勝ち切る新スタイルを披露して3位入賞。12月のグランドスラム東京では払腰をフェイントとして利用した大外刈で浅見八瑠奈を投げて3連覇を達成した。
 
凹凸の多い選手であるが、もともとのスタイルである寝技に回帰して取り味が増していること、技種の上積み、なによりその異常な勝負強さをもって五輪では期待大。ワールドマスターズ決勝ではサラ・メネゼスの中途半端な担ぎ技を見逃さず組み潰し、縦四方固「一本」で完勝。一貫して集中力高く戦い切った大会であり、コンディションが噛み合った試合における近藤の強さをあらためて見せつけた。本番はパワーファイター対策がカギ。

【おもな戦歴】
2013年~2015年 グランドスラム東京 優勝
2014年 チェリャビンスク世界選手権 優勝
2014年 世界ジュニア選手権 優勝
2015年 アスタナ世界選手権 3位

【最近の成績】
2015年2月 グランドスラム・パリ 初戦敗退
2015年4月 全日本選抜体重別 2位
2015年5月 ワールドマスターズ初戦敗退
2015年8月 アスタナ世界選手権 3位
2015年12月 グランドスラム東京 優勝
2015年2月 グランドスラム・パリ 初戦敗退
2015年4月 全日本選抜体重別 優勝
2015年5月 ワールドマスターズ 優勝

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ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)

ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)

MUNKHBAT Urantsetseg
26歳 1990/3/14
WR:1位 組み手:右
得意技:寝技、右背負投(韓国背負い)、巴投、隅返

リオデジャネイロ世界選手権金メダリスト。サンボ世界チャンピオンでもあり、寝技ファイターである。代名詞でもある「オモプラッタ」をはじめ、「巴十字」、腹固を撒き餌にしての「コーレイカ」、横三角からの崩上四方固や「シバロック」を使いこなして一本勝ちを量産する。以前は寝技のみの選手であったが、近頃は取り味のある「韓国背負い」にも注意が必要。2016年春季はかつての後輩ガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)に3連敗を喫したが、7月には地元ウランバートルに乗り込んで来たガルバトラフを隅返「有効」で撃退。五輪前の最終戦となるこの試合では自身の柔道を良く知るもと後輩に対し、相手の奥襟を叩くアクションに合わせた隅返(巴投)、さらに我慢させておいての大内刈というこれまでにあまり見せていない組み合わせも多用。巴投についてくれば腕挫十字固、耐えれば大内刈という新たな運転モードを作り上げつつあるようにも見受けられた。ムンクバットの巴投は失敗しても相手をずらして崩し、股裏に抜けて攻撃を継続するため「指導」を受けにくい。序盤にリードを許すとこの一方通行運転に嵌められる可能性もあり注意が必要。

【おもな戦績】
2013年リオ世界選手権 優勝
2014年アジア大会 1位
ワールドツアーで7度優勝

【最近の成績】
2015年12月 グランドスラム東京 7位
2016年2月 グランドスラム・パリ2位
2016年2月 グランプリ・デュッセルドルフ 3位
2016年4月 アジア選手権 2位
2016年7月 グランプリ・ウランバートル優勝

参考動画:
2016年GPウランバートル決勝、対ガルバトラフ・オトコンツェツェグ戦
2016年GSパリ、対マリア・チェルニアク戦のオモプラッタ(3:30くらいから)
2014年GSパリ、アイグル・バイグレアを横掛からの片手絞で絞め落とす(0:20くらいから)

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サラ・メネゼス(ブラジル)

サラ・メネゼス(ブラジル)
MENEZES Sarah
26歳 1990/3/26
WR:4位 組み手:右
得意技:出足払、小内刈、右背負投、右袖釣込腰

五輪以降長い間不調が続いたが、昨年来どうやら復調傾向にある。最大の武器は切れ味鋭い足技。昨年のグランドスラム東京では浅見八瑠奈から切り返しの出足払で「技有」を奪い相変わらず危険な選手であることを周囲に印象付けた。今年のパンナム選手権では現役世界王者パウラ・パレトを破り優勝している。以前はスピードファイターだったが、最近は体幹の強さを意識してドッシリ試合を組み立てる場面も。ひところ動きが悪く低迷したが、復調に至る中で新たなモードを増やした模様。

【おもな戦績】
2010年東京世界選手権 3位
2011年パリ世界選手権 3位
2012年ロンドン五輪 優勝
2013年リオ世界選手権 3位

【最近の成績】
2015年12月 グランドスラム東京 3位
2016年1月 グランプリ・ハバナ1位
2016年2月 グランドスラム・パリ3位
2016年4月 グランプリ・サムスン3位
2016年4月 パンナム選手権 1位

参考動画:
2015年グランドスラム東京準決勝、浅見八瑠奈の右小内刈を出足払に切り返し「技有」
2015年グランドスラム東京、ムンクバット・ウランツェツェグの右小内刈に合わせて左小外刈「一本」

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パウラ・パレト (アルゼンチン)

パウラ・パレト (アルゼンチン)
PARETO Paula
30歳 1986/1/16
WR:2位 組み手:左
得意技:左背負投、右背負投、右一本背負投、右袖釣込腰

アスタナ世界選手権金メダリスト。
担ぎ技をかけまくりペースを掴む、古風なスタイル。以前は率直に言ってそれほど目立つ選手ではなかったが、2014年チェリャビンスク世界選手権2位以降、強豪として定着。担ぎ技の弾幕の中に本気の一撃を含ませてポイントを奪う。2015年アスタナ世界選手権での戴冠後明らかに試合出場を絞っており、こなした大会は僅少(1月グランプリ・ハバナ3位、4月パンナム選手権3位、5月ワールドマスターズ初戦敗退)。五輪への力の入れ具合がうかがわれる。

【おもな戦績】
2008年北京五輪3位
2012年ロンドン五輪5位
2014年チェリャビンスク世界選手権 2位
2015年アスタナ世界選手権 優勝

【最近の成績】
2016年1月 グランプリ・ハバナ3位
2016年4月 パンナム選手権 2位
2016年5月 ワールドマスターズ 初戦敗退

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ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)

ガルバドラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)
GALBADRAKH Otgontsetseg
24歳 1992/1/25
WR:6位 組み手:左
得意技:裏投、隅返

もとモンゴルの2番手。世界王者ムンクバット・ウランツェツェグの存在から希望なしと見たか、2015年初頭からカザフスタンに移籍してブレイク。もっか大会に皆勤して絶好調、今年は2月のグランドスラム・パリ(優勝)とグランプリ・デュセルドルフ(2位)、4月のアジア選手権(優勝)とかつての「目上」ムンクバットに3連勝を果たした。パリ大会では近藤亜美にも片手絞「一本」で勝利。ワールドマスターズの欠場により五輪のAシード入りこそ逃した(第5シード)が、今や押しも押されもせぬ階級の主役である。
最大の武器はそのパワーを活かした裏投。担ぎ技の多いモンゴル女子には珍しく、腰技中心に攻めて試合を組み立てて来る。

【おもな戦績】
2015年11月からワールドツアーで5度優勝、合計9回表彰台に上がっている。

【最近の成績】
2016年2月 グランドスラムパリ1位
2016年4月 グランプリサムスン1位
2016年4月 アジア選手権1位
2016年5月 グランドスラム・バクー3位
2016年5月 グランプリ・アルマティ1位
2016年7月 グランプリ・ウランバートル2位

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エヴァ・チェルノビスキ(ハンガリー)

エヴァ・チェルノビスキ(ハンガリー)
CSERNOVICZKI Eva
29歳 1986/10/16
右組み WR7位
得意技:右袖釣込腰、右足車、右払腰

2011年パリ世界選手権、2012年ロンドン五輪銅メダリスト。
長身のパワーファイター。日本人にはロンドン五輪で福見友子を破った記憶が濃いかと思われる。欧州系パワーファイターとしては少々意外であるが、最も得意な技は強引に相手を釣り上げて投げる右袖釣込腰。長身を利し、奥襟を持っての右足車や右払腰も用いる。
メンタルにやや難ありで突如崩れる場面も多く、大会序盤と後半で出来不出来がブレることも多い。

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シャーリーン・ファンスニック(ベルギー)

シャーリーン・ファンスニック(ベルギー)
VAN SNICK Charline
25歳 1990/9/2
左組み WR9位
得意技:左袖釣込腰、隅返、巴投

2012年ロンドン五輪銅メダリスト。チェルノビスキと並び階級の2大パワーファイターの一翼を担う。
こちらも得意技は左袖釣込腰(チェルノビスキは右)。最近はパワーを活かした背中を持っての隅返を多用する。組み立ての軸が隅返になりつつあると言って過言ではない。

実はオモプラッタも使いこなす寝技師であり、今年はこの傾倒が顕著。パワー圧殺から横三角の形で抑えこむパターンが多く、近藤亜美も以前この形で抑え込まれ破れている。

ドーピング疑惑により、銅メダルを獲得した2013年の世界選手権直後から2年間の出場停止処分を受けてシーンから姿を消す。その後スポーツ仲裁裁判所への提訴により処分が1年委短縮され、2015年の2月からようやく競技に復帰した。いまだキャリアが中断する前のフルパフォーマンスには届かないが、前述の通り捨身技中心の組み立てで新たな上昇回路を探りつつあるところ。

参考動画:2015年グランプリ・デュセルドルフ1回戦、近藤亜美戦(0:38くらいから圧殺、横三角の展開)

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ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)

photo by Emir
Incegül

ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)
Dilara LOKMANHEKIM

22歳 1994/4/18
右組み WR13位
得意技:右背負投、左背負投

トルコの若きパワーファイター。欧州ジュニア(U-20)選手権で2度優勝し、2014年世界ジュニア選手権決勝では近藤亜美と決勝を争った。エブル・サヒンら48kg級の選手が充実している同国の現在一番手で、4月の欧州選手権では3位に入賞して上り調子。左右の背負投を使いこなすが、相手の技を潰しての寝技が最大の武器。この点ファンスニックと相似。

ワールドツアーの優勝は1回(2015年グランプリ・ザグレブ)、2位も地元で行われた2016年グランプリ・サムスンのみ。ただし3位には6度入賞しており、メダルクラスの強豪との分岐点に位置する選手と言える。
美人。マニア心をくすぐるサヒンとは趣が異なる、正統派美女。

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ジョン・ボキョン(韓国)

ジョン・ボキョン(韓国)
JEONG Bokyeong
25歳 1991/4/17
左組み WR8位
得意技:肩車、左背負投、右一本背負投、右小内刈

アスタナ世界選手権銅メダリスト。これぞ韓国選手といった背負投ファイター。
最も警戒するべきは釣り手だけの状態から仕掛ける左への肩車。スタミナもあり終始激しく動き続ける。勝ち負け云々より長い時間付き合わされることでの体力の消耗を危惧すべき選手。

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ジュリア・フィゲロア(スペイン)

ジュリア・フィゲロア(スペイン)
FIGUEROA Julia
25歳 1991/4/7
左組み WR5位
得意技:左内股、左背負投、左一本背負投、左大内刈、左小外刈、巴投、抱分

近頃上昇気運にある小兵。闘志を前面に押し出して相手に向かっていく熱いファイトスタイルが売り。
最軽量級である48kg級の中でも小柄な体格だが、小兵らしい動きの早さに足腰の粘り強さ、そして意外なパワーを兼ね備えており、奥襟を持っての左内股が戦いの軸。左背負投も得意としており、前襟を掴んで間合いを空けた際には注意が必要。掛け潰れた相手に対しては非常に威力のある抱分を用意しており、不用意な掛け潰れは避けたい。濃い眉が特徴。

参考動画:
2015年グランドスラム・アビダビ、ヴィオレッタ・ドゥミトル戦。左内股「一本」
2016年グランドスラム・バクー準決勝、ガルバトラフ・オトコンツェツェグ戦。二段の左小外刈で「一本」

■ シード予想
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48kg級シード予想

予想されるシード順は下記。組み合わせは右の画像をクリックして参照されたい。

ムンクバット、近藤、パレト、メネゼスと4人の世界王者が4つのパートに綺麗に分かれた。

シード選手だけで言えば、旬の選手であるガルバトラフを引いた近藤とパワーのあるチェルノビスクと隣り合わせるたパレトが少々キツめの配置といえるが、準決勝カードは左側のほうがタフ。この時点では平衡の取れた組み合わせと言える。

近藤は前述の通り今年2月のグランドスラム・パリでガルバトラフに苦杯を喫している。「相手の情報を入れ過ぎて、ペースに合わせてしまった」との反省から、次はどのように試合を組み立てるか。膠着しやすいケンカ四つ、とりあえず技を撃って来やすい腰技ファイターと、「ひとまず」小出しに撃ち合う目先に流された試合進行となれば展開はガルバトラフの方に流れ込む要素多し。焦ると組み手の一手目が粗くなりがちの選手でもあり、早い段階からペースを掴んで、追いかけさせながら試合を組み立てたい。

シード選手の偏りが少ない中、ドロー上の不確定要素はファンスニック。この選手が入った山の難易度が上がる、というまとまりかたになるだろう。

【プールA】

第1シード:ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
第8シード:ジョン・ボキョン(韓国)

【プールB】

第4シード:サラ・メネゼス(ブラジル)
第5シード:ジュリア・フィゲロア(スペイン)

【プールC】

第2シード:パウラ・パレト(アルゼンチン)
第7シード:エヴァ・チェルノビスキ(ハンガリー)

【プールD】

第3シード:近藤亜美(日本)
第6シード:ガルバトラフ・オトゴンツェツェグ(カザフスタン)

※ワールドランキング(WR)は五輪出場権、シード権の基準となる5月30日時点のもの


文責:古田英毅
協力:林さとる

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