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日体荏原と国士舘が軸の混戦、最有力は平常運航で「予想以上の仕事」してしまう日体荏原・金鷲旗高校柔道大会男子展望

(2016年7月20日)

※ eJudoメルマガ版7月20日掲載記事より転載・編集しています。
日体荏原と国士舘が軸の混戦、最有力は平常運航で「予想以上の仕事」してしまう日体荏原・金鷲旗高校柔道大会男子展望
■ 有力校
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高校選手権を制した日体荏原高。東京都予選では国士舘高を相手に4人で勝利、見事優勝を果たした。

抜き勝負で高校柔道日本一を争う金鷲旗高校柔道大会が22日、今年も福岡・マリンメッセ福岡で開幕する。

高校「三冠」2つ目のタイトルとなる今大会は周知の通り、五人制抜き試合でありながら試合ごとの配列変更不可、大将同士で勝負が決しない場合はそのまま延長戦突入、しかも組まれる試合数は国内最大という過酷極まりないレギュレーション。長く「地獄の金鷲旗」と怖れられて来た巨大大会である。

今年は大会終了から三冠最後のタイトルであるインターハイまでの期間が極めて短く、移動を考えればチームに与えられる時間は実質4日間のみ。「一旦落として上げ直すような(仕掛けをする)時間がない、結果がどうであっても金鷲旗からそのまま持っていくしかない」(作陽高・川野一道監督)という待ったなしのバックグランドをどのチームも強く意識しているはず。「地獄」度いや増し、まさしくこの夏の運命をそのまま決してしまう最重要大会だ。

優勝候補に挙げられるのは高校選手権で決勝を演じた日体荏原高(東京)と国士舘高(東京)の2チーム。以降は有力チームが入り乱れる混戦と考えられるが、彼らが共通して「軸」として意識しているのはこの2校で間違いないだろう。

日体荏原は高校選手権を制した後、これをきっかけにさらに成長。まさしく充実期に入っている感がある。エースの藤原崇太郎は相変わらず一種老成した柔道で安定感の権化だが、高校選手権決勝における飯田健太郎からの勝利で一皮むけた感あり。昨年チームの出世を支えた長井晃志にやや元気がないものの、高校選手権で大活躍した2年生・塚本綾の成長がこれを補って余りある好材料。軽量ながら豪快な裏投で一本勝ちを量産する大吉賢、大会最大の丁半博打選手ハンガル・オドバータルに負傷の癒えた百々雄也、高校選手権66kg級3位の原田健士と周囲を支える役者も個性派の面白い選手揃い。

東京都予選では国士舘に対して4人で戦って勝利。決して大型のチームではなく、ゆえに絶対的な安定感があるわけではないが、役者の多彩さとチーム全体を覆う明らかな上昇気流は見逃すわけにはいかない。十分大会一番手と推すに足るものがある。

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連覇を狙う国士舘高

一方大会2連覇を狙う国士舘は今代スタート時に無敵の陣容と評されたその強さに一抹の陰りあり。今代最大の強者と目される100kg級の飯田健太郎、そして磯村亮太と河田闘志の重量2枚は昨年の高校「三冠」獲得メンバー。さらに密着技で新人戦期に豪快な「一本」を連発した本間壘と大物食い資質のある稲垣由生、加えてここに来て急成長の清水雅義とメンバーは非常に充実しているが、今季の戦いぶりはいったいに元気がない。磯村、河田のある意味重量級の選手らしい、そして一種国士舘の選手らしくない淡白な試合ぶりがチーム全体の下降ベクトルを呼び込んでしまった印象あり。負傷者の情報もあり、陣容ほどの力が発揮できるかどうかは率直に言って疑問だ。

ただし、金鷲旗は抜き試合。飯田健太郎という大駒1枚の保有という一事を以て優勝候補に推すべき理由は十分。チームの状況が決して良くないぶん、その強さは存分に見せつけているが未だ「勝負強さ」を証明していない大物・飯田の器が測られる大会になるかもしれない。飯田が歴代の日本のエース級に連なるような伝説的活躍を為すような、一皮剥けるような柔道が出来ればそれはそのままチーム全体を浮揚させるこれ以上ない力となる。カギはまず重量級2枚の奮起に象徴されるチーム一丸の戦い、そして飯田の出来。

この2チームを追う勢力としては高校選手権3位の埼玉栄(埼玉)、それに崇徳高(広島)、作陽高(岡山)、開星高(島根)の中国勢3校、高校選手権で大健闘の木更津総合高(千葉)、大成高(愛知)を挙げておきたい。

埼玉栄は高校選手権無差別王者・蓜島剛を中心に攻撃的な選手を揃え、居並ぶメンバーはまさしく強力。ただし今春以降チームとしてのパフォーマンスは決して良くはない。最後の夏という切羽詰まった状況をバネに結束し、チーム一丸の戦いが出来るかどうかが勝利のカギ。

中国勢3校はどれも充実、一時は、この夏は下手をすると「荏原対中国勢」の様相すらありえるのではとすら思われたほどだ。中国大会を獲ったのは松村颯祐と河野壮登の大物2枚を擁する開星だが、春の「ますらお杯」に勝利した作陽と、体勢を立て直した崇徳が現在は上り調子。どのチームもフォーカスしているのはインターハイの模様だが、この金鷲旗は選手権以降の錬磨が全国的なモノサシで測られる貴重な機会となる。

山下魁輝と兼原潤が充実している木更津総合はもはや伝統となりつつあるメンタルの強さをテコに選手権ベスト4の栄を得、波に乗っている。一方この夏に復権を掛けるのが、同大会で優勝候補の一角に挙げられながらまさしくメンタルで一歩引いてしまい入賞を逃した大成。もともとそのメンバーは渡辺神威を中心に全国上位でも抜き役を担えるタフな選手揃いであり、リベンジの可能性は十分。ポーランドカデ国際大会の最重量級で優勝した2年生・東部直希の出来が上位進出のカギと見る。

続いて九州ジュニア最重量級を制したばかりの西田将樹がエースを張る大牟田高(福岡)、勝負強さが売りの四日市中央工高(三重)、選手権ベスト8の天理高(奈良)、東海大仰星高(大阪)らが上位に割って入る力のあるグループ。日体荏原が国士舘の壁を突き破った、あの高校選手権決勝の余韻が各チームに伝播し、今大会は「下剋上」を現実的に手が届くものと気合いの入っているチームが非常に多い。楽しみな大会である。

■ 組み合わせ
【Aパート】

シード校:日体荏原高(東京)、北海高(北海道)

日体荏原のブロック。高校選手権で骨の太い戦いを展開しベスト16まで進んだ北海がシード校の栄を得た。
勝ち上がりの過程で強豪とマッチアップするのは日体荏原のほうで、4回戦で東北大会を制した田村高(福島)、5回戦で神港学園高(兵庫)と戦い、しかる後にようやくシード校同士がぶつかる6回戦へと進むというシナリオ。北海は宮崎日大高(宮崎)、長崎南山高(長崎)と続く九州の強豪たちとの対戦が山場。最終的な勝ち上がりは日体荏原で間違いないと見る。

【Bパート】

シード校:作陽高(岡山)、大成高(愛知)

上位候補の作陽と大成だけでなく、東海大相模高(神奈川)に四日市中央工と強豪が詰め込まれた厳しいブロック。東海大相模は4月から新監督を迎え上昇気配、エースの辻湧斗の復活にチームの雰囲気の刷新と再爆発の気配が漂い始めたところで、四日市中央工と激突する4回戦は非常に楽しみ。かつての「上から目線」の東海大相模であれば、食らいつくタイプの四日市中央工にはむしろやりやすい相手。同じ神奈川の桐蔭学園高の1年生が充実する中、同県のライバルである強豪・東海大相模のパフォーマンスは今後数年間の高校柔道界の様相に直結するところであり、これは見逃せない一番。

作陽の最初の山場は早くも3回戦にあり、挑みかかるのは東京学館浦安高(千葉)。このチームにはインターハイ千葉県予選の100kg超級を圧勝し、関東ジュニアも素晴らしい出来で制したばかりの草間優登という大駒がいる。超強豪校とも「やれる」が、平均的な強豪とも競り合いに陥ることの多い今代の作陽を相手にこの選手がどんな試合を繰り広げるか、はたまた作陽がどう撃退するか、興味の尽きない一番。5回戦の作陽対東海大相模(四日市中央工)、6回戦の作陽(東海大相模)対大成はもちろん大会序盤戦の花形カード。

大成は4回戦の本荘高(秋田)戦が一つ目の山場。エース板本広大を負傷で欠いたこのチームの東北大会の出来は良くなかったが、もともと地力だけで考えれば全国大会で入賞しておかしくない力を持った強豪。これも非常に楽しみな一番。

【Cパート】

シード校:木更津総合高(千葉)、京都学園高(京都)

木更津総合は静岡学園高(静岡)との5回戦があるが、マクロな目で見て非常に組み合わせに恵まれた印象。シードピックアップを受けた京都学園は4回戦で東海大甲府高(山梨)
5回戦は修徳高(東京)と顔を合わせる可能性が大。最終的な勝ち上がりは木更津総合と見る。

【Dパート】

シード校:大牟田高(福岡)、津幡高(石川)

地元の熱い期待を受ける大牟田のブロック。配された陣容を見渡しても、大牟田の勝ち上がりは動かないと見る。パートを勝ち抜けた後、ベスト4を賭けて戦う木更津総合戦が最大注力試合となるはずだ。

【Eパート】

シード校:国士舘高(東京)、東海大仰星高(大阪)

国士舘としては上位対戦に向けて、まずは先鋒登録されている岩渕晃大をはじめ「チーム一丸」の国士舘らしさが全員に染みているかどうか、これが序盤戦で問われる。6回戦以降で力を発揮出来るか、上位対戦で勝ち抜けるかどうかの前提条件としてこのパートを国士舘らしい粘り強さ、肚の据わった戦いで勝ち上がれるかが大事。実はこれは単なる「序盤戦の勝ち上がり方」に留まらず、今大会の最終成績を規定する最重要ファクターである。周辺戦力の奮起の有無にこそチーム状態は反映されるはず。注目したい。

東海大仰星は東海大福岡との5回戦がカギ。6回戦における国士舘との対戦まではまず間違いなく勝ちあがると読んでおきたい。

【Fパート】

シード校:天理高(奈良)、開星高(島根)

高校選手権ベスト8の天理、地元のインターハイを控える中で激戦の中国大会を見事制した開星がシードピックアップの栄を得た。天理は東海大札幌高(北海道)との対戦が山場だがパート決勝までの勝ち上がり自体は間違いなし。開星は4回戦で白鴎大足利高(栃木)、5回戦で桐蔭学園高(神奈川)と強豪との連戦が待ち受ける。高校選手権では本荘(代表戦で勝利)、国士舘と強豪と立て続けに対戦して前評判にふさわしいスケールの大きさを見せるまでには至らなかったが、白鴎大足利まで2試合、桐蔭学園まで3試合と組まれた今大会でどんな試合を見せてくれるか。注目である。

【Gパート】

シード校:埼玉栄高(埼玉)、足立学園高(東京)

シード校2校によるパート決勝が最大の見せ場。戦力個々のネームバリューは埼玉栄が上だが、「天才肌で攻撃力が強い選手が揃うが防御は意外に脆い」「メンタルコンディションが選手個々でバラける試合が多い」という今代の埼玉栄の属性は、消耗戦に強くメンタルタフネスのある軍人タイプの錬成に長けた足立学園にとって噛み合う可能性も高い。勝ったり負けたりの試合を繰り返すと足立学園のペースに嵌り込む可能性があり、埼玉栄にとってはその面子の良さにふさわしい結束度が試される一番。

【Hパート】

シード校:崇徳高(広島)、鎮西高(熊本)

長岡季空と空辰之輔が充実している崇徳は夏を前に一段力を上げている印象。一方昨秋の九州新人大会を制した鎮西は少なくとも高校選手権の段階ではスケールダウン、センセーションを巻き起こす気配もあった後藤龍真も意外な大人しい試合ぶりで本領を発揮できなかった。ベクトルの向きと陣容の隙のなさに鑑み、崇徳の勝利を推しておきたい。

【準々決勝以降】
予想される準々決勝カードは、

日体荏原 - 作陽(大成)
木更津総合 - 大牟田
国士舘 - 天理(開星、桐蔭学園)
埼玉栄(足立学園) - 崇徳(広島)

軸が日体荏原と国士舘の2校であるという構図は変わらない。レギュレーションを考えれば、陣容に隙のない日体荏原と最大の大駒1枚を有する国士舘の決勝対決が順当であるが、国士舘に対して蓜島を擁する埼玉栄、あるいは全員に対国士舘戦のイメージが染み渡っている崇徳がベスト4で食らいつくようなら勝敗が揺れる可能性は大いにあり。日体荏原が不覚を取る可能性があるとすれば大成が勝ち上がって来た場合と見る。個々の対戦に選手が嵌り込み過ぎてしまい、視野を狭められる可能性があるのではないだろうか。

しかし日体荏原は「予想以上の仕事をすること」がむしろ選手に順行運転のシナリオとして骨身に刷り込まれているという面白いチームである。実は今代最大の特徴はこれで、この性格を織り込んで考えれば実は「普通に試合を進めれば」勝利を得るのは日体荏原でないかとみる。他チーム、たとえ巨大戦力を誇る国士舘であってもこれを覆すには直接の対戦をするまでに飛び抜けた内容の試合を1度か2度演じて、「何かを起こす」空気を醸成しておくことが肝要。国士舘としては周辺戦力が異常に頑張り、決勝での飯田の感応を呼び起こすというのが最良のシナリオだ。

冒頭書いた通り、この大会はインターハイの様相までを決めてしまいかねない、決定的なイベント。熱戦に期待したい。

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