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平成28年度全日本学生柔道優勝大会男子マッチレポート②準決勝

(2016年7月16日)

※ eJudoメルマガ版7月16日掲載記事より転載・編集しています。
平成28年度全日本学生柔道優勝大会男子マッチレポート②準決勝
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日本大の先鋒向翔一郎が筑波大・大橋賢人を隅返で攻める

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佐藤和哉は度々あと一歩のところまで攻め込むが、山本幸紀の守りは堅く得点に至らず

日本大 2-1 筑波大
(先)向翔一郎×引分×大橋賢人
(次)山下恭平×引分×尾原琢仁
(五)佐藤和哉×引分×山本幸紀
(中)安達裕助○合技[支釣込足・横四方固](3:23)△石川竜多
(三)田中颯○大外刈(3:46)△新添悠司
(副)一色勇輝×引分×神谷快
(大)尾崎央達△浮技(1:39)○根津信太

日本大が中盤2枚の奮闘で筑波大を振り切った。

昨年の全日本ジュニア90kg級決勝の再現カードとなった先鋒戦は日本大の斬り込み隊長・向翔一郎とどこからでも一発が飛び出すタイプの大橋賢人という胸躍る顔合わせ。しかし向は無理をしすぎず、この選手としては一種おとなしい戦いぶりでこの試合は引き分け。日本大の我慢のしどころと目された次鋒戦は山下恭平と尾原琢仁がこれも引き分けて、ここまでは盤面の傾き甲乙つけ難し。

しかし日本大の得点必須と思われた中堅戦で様相が変わり始める。日本大のポイントゲッター役を担うべき佐藤和哉がケンカ四つの山本幸紀との引き手争いに嵌り込んでしまい、なかなか決定打が打てないもどかしい展開。右大外刈にフェイントの小外刈による連続攻撃で攻めた序盤戦、引き手で内中袖を得て右大内刈から右内股と取り味のある技を見せた中盤戦、そして右大外刈に右体落、さらにフェイントの右小外刈と猛攻を見せた残り1分からのシークエンスと良い場面は作るものの最後の詰めを欠いて具体的な得点には至らず、山本の果敢な反撃もあってこの試合は引き分けに終わる。

日本大の得点役を担うべき向と佐藤の2人がことごとく引き分けたこと、筑波大が後衛に新添、神谷、そしてこの日どうやら好調の根津とポイントゲッター級を3枚残していることで、スコアはタイながらここで盤面はどうやら筑波大に傾いた印象。

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日本大は中堅安達裕介が石川竜多から合技「一本」、貴重な先制点を得る

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田中颯が新添悠司を片襟の大外刈で圧倒

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田中はついに大外刈「一本」、日本大がスコアを2-0に伸ばす

しかし粘りが身上の日本大、真骨頂はここから。中堅戦では安達裕助が大物1年生・石川竜多との腰の入れ合いから抜け出し、3分6秒支釣込足で劇的な「技有」獲得。そのまま横四方固に抑え込んで値千金の先制点を得る。

続く三将戦は身長186センチ体重125キロの田中颯が新添悠司を圧倒。長身痩躯で技の切れ味が命の新添の柔道を、鉈を振るうような片襟の右大外刈の放列で塗りつぶし続けて1分55秒までに2つの「指導」を獲得。以後も効くものは効くとばかりにこの大技に拘り続け、8度目の仕掛けとなった3分23秒、新添を刈り止めたと見るや時計回りに回り込んで位置を変え、ついに真裏に叩き落して豪快な「一本」。業師新添を根負けさせた精神力と膂力は見事の一言、日本大はこれで一気に2-0と勝敗決定ラインまでスコアを伸ばす。

副将戦、筑波大は全日本選手権でも存在感を発揮したエース神谷快が畳に上がるが、引き分けで良しとのミッションを背後に得た強者・一色勇輝のハードルを乗り越えるのは至難の業。組み手で凌ぐことが増えて持ち前の一発が薄くなっている昨今の神谷の柔道の傾向もクロスし、この試合は「指導3」を取り合ったところで引き分け。ここで日本大の勝ちが確定した。

大将戦は筑波大・根津信太が打点の低い浮技一発、尾崎央達を「一本」に仕留めるが時すでに遅し。最終スコア2対1で日本大が決勝進出を決めることとなった。

勝負を分けたのは前述の通り日本大の中堅安達の活躍。小さな妥協を繰り返すことでシナリオが僅かずつ悪い方向に振れ、徐々に取り返しがつかなくなっていくのが拮抗ゲームの負けパターンだが、そのシナリオ分岐の端緒の段階で、むしろシナリオの悪さを感じたからと言わんばかりの覚悟ある「一本」奪取。チームに生まれ掛けていた「仕事の譲り合い」の連鎖を断ち切るには微調整では不十分、果敢なチャレンジで一番良い結果を出すしかないという勝負の綾を非常に良く弁えた試合ぶりだった。以後の盤面、登場する選手の攻防のディティール全てを自軍の側に傾けたこの一勝の勝ちは計り知れない。準々決勝における尾崎の勝利に引き続き、日本大の選手に染み込んだ勝利への執念、その浸透ぶりを強く感じさせる試合だった。

向の意外なおとなしさと佐藤が爆発し切れないことが不安要素ではあるが、結果として日本大は快勝。悲願の日本一を目指し、2年ぶりに全日本学生優勝大会決勝の畳へと駒を進めることとなった。

一方の筑波大は田嶋剛希の出場停止が非常に痛かった。盤面を見る限り、攻めも守りも、試合を壊すこともまとめることも出来る田嶋が真に力を発揮するのはまさしくこの試合であったはず。我慢は利いたが相手を撃ち抜く武器に欠けた前衛、あと一歩の粘りに欠けた中盤、盤面全体に睨みを利かすまでの怖さに欠けた後衛、いずれに置かれても田嶋は必ず力を発揮できたはず。筑波大サイドとしては日本大の安達が為したがごとく、盤面のディティール全てを自軍陣営に傾けるような熱量の高い戦いを期待していたはずだ。
こういった純戦力的な収支はもちろんのこと、田嶋の欠場は戦力計算的な自己評価をも弱め、ゆえに筑波大の各選手はあと一歩の粘り、次を信じる精神的なタフさを生み出すことが出来なかったと見る。団体戦の「戦線」をユナイトする駒1枚の存在の差が勝敗を大きく分けた一番だった。

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東海大の先鋒小原拳哉が山口智広を攻め続け4つの「指導」を獲得

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太田彪雅が右内股、釘丸将太高く揚がるがポイントは許さず

東海大 3-0 国士舘大
(先)小原拳哉○反則[指導4](4:24)△山口智広
(次)香川大吾×引分×砂田勇登
(五)前田宗哉×引分×江畑丈夫
(中)太田彪雅×引分×釘丸将太
(三)ウルフアロン○合技(3:21)△竹村昂大
(副)平野貴之○優勢[技有・払巻込]△山田伊織
(大)影浦心×引分×佐藤正大

東海大は先鋒に起用された主将小原拳哉がケンケ四つの山口智広を手堅く、そして着実に攻撃。支釣込足、体落、出足払に巴投、小外刈に右の一本背負投に寝技と相手に守備の的を絞らせないまま貪欲に攻め続けて4つの「指導」を獲得。妥協のない試合ぶりで貴重な先制点を得ることに成功。
次鋒戦は国士舘大の砂田勇登が香川大吾を「指導」2つまでで止めて引き分け、右相四つの大外刈ファイター同士がぶつかった前田宗哉と江畑丈夫の五将戦も引き分け、さらに中堅戦では国士舘・釘丸将太が太田彪雅の強烈な技を巧みに無力化し、この試合も引き分け。3戦連続の引き分けで1対0のスコアは継続、勝負の襷は終盤戦へ。

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ウルフアロンが竹村昂大に横四方固、合技「一本」

三将戦は東海大のエース・ウルフアロンが畳に登場。国士舘は1年生ながら試合の巧さはチーム随一の竹村昂大がしぶとく展開を先送りし続けるが、残り2分となったところで試合が壊れる。竹村は釣り手で奥襟を叩くことに成功、明らかに自身有利の形が出来たと判断して思い切り良く右内股。これは十分取り味のある技と思われたがウルフは全く崩れず捩じり返して決定的な「技有」奪取。そのまま間を置かずに横四方固に抑え込んで合技の一本勝ち。東海大が決定的な2点目を得ることとなった。

ウルフの地力の強さが際立った一番。格上相手にも単に凌ぐだけでなく一発強気に取りに行きながら試合を進められる竹村の強みが、ウルフの地力の前にまさしく裏目に出た格好の試合だった。

続く副将戦は国士舘が1年生ながらポイントゲッター級の活躍を見せる前年の高校100kg超級王者山田伊織、対する東海大は平野貴之が出動。

東海大にとってここは防衛ポジション。後ろに控える大将が重量級の影浦心であり、担ぎを得意とする国士舘の佐藤正大にとっては対戦相性が嵌ってしまう可能性があることを考えれば、この試合は非常に大事な分水嶺。東海大にとってはまとめの一番であり、国士舘にとっては勝利のシナリオを引き寄せる最後のチャンス。平野が狙うべきは手堅い引き分け、山田に期待されるのはもちろん「一本」か「指導4」による勝利に他ならない。

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平野貴之は「指導3」失陥も、払巻込「技有」で山田伊織を逆転

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佐藤正大が担ぎ技に潜り込み続けるが影浦心は決定的な位置を取らせず

自身の役割を心得た山田はもちろんスクランブル体勢、序盤から相手に走り寄る勢いで平野に迫る。大内刈、大外刈に内股と迫力ある技を連発し、平野にはあっという間に3つの「指導」が累積。

この時点で残り時間は2分弱。山田はさらに小外刈、内股、さらに引き続いての内股とポイントが想起される技を連発して傍目には平野は陥落寸前。しかし、勝利を決めるあと1つの「指導」を求めて山田が突進した3分33秒、平野が右払巻込を合わせるとこれが決まって起死回生の「技有」。

勝利決定どころか一転ビハインドを負った山田血相を変えて組み付くが、平野は支釣込足を打ってその勢いを減速、巧みに動的膠着に持ち込んで以後決して決定打を打たせず。山田の取り味のある技は残り50秒で放った内股、残り27秒に打った隅落の2発にとどまりタイムアップ。この試合は平野の「技有」優勢による勝利に終わり、大将戦は佐藤正大が影浦心から3つの「指導」を奪うもののあと一歩及ばず引き分け。結果、最終スコア3対0で東海大の勝利が決まった。

殊勲者はもちろん後衛で試合を決める決定的な1点を挙げた平野だが、この試合は先鋒戦における小原の働きが非常に大きかった。以後の3戦にわたる引き分けと全戦線に渡ってしぶとい選手を揃えた相手の陣容を考えれば、後衛の国士舘に「結局どこかで行かなければいけない」バックグランドを強いたこの1点の重みは計り知れない。

自身の勝利の重要性を踏まえて妥協なく戦い抜いた小原、負けを受け入れず意地の一発で無理やり自軍の勝利をもぎ取った平野。東海大の王座奪回に掛ける意気込みと覚悟、その浸透ぶりがあらためて感じられた一番であった。

結果決まった決勝カードは、

日本大 - 東海大

となった。

※ eJudoメルマガ版7月16日掲載記事より転載・編集しています。

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