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平成28年全日本柔道選手権全試合詳細④準々決勝~決勝

(2016年6月7日)

※ eJudoメルマガ版6月7日掲載記事より転載・編集しています。
平成28年全日本柔道選手権全試合詳細④準々決勝~決勝
■ 準々決勝
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王子谷剛志が加藤博剛から隅落「有効」を奪う

王子谷剛志(旭化成)○優勢[有効・隅落]△加藤博剛(千葉県警)

準々決勝第1試合はもと全日本王者同士の対戦。王子谷は試合を重ねるごとに思い切りが良くなりここまで尻上がりの出来、対する加藤も初戦から持ち前の勝負師ぶりを存分に発揮しての勝ち上がりを見せており、両者好調。

王子谷が右、加藤が左組みのケンカ四つ。試合が始まると、加藤は距離を取って反時計回りにゆっくり回旋してから試合場の中心で待ち構える王子谷と対峙。

加藤が釣り手を下から確保すると王子谷は上から入れて応じ、出足払で牽制を入れながらじわりと前に出る。釣り手で間合いを探りながら加藤が先に引き手を取ると、王子谷は引き手の肘を一度上げ巻き返し、外側から引き手を確保するという王道の手順を踏む。王子谷がそのまま右大内刈に飛び込みケンケンで加藤を場外まで追いやりこの形はいったん「待て」で終了。王子谷がまず先制攻撃を為した形。続く展開、王子谷が圧力を掛けると、場外際で今度は加藤が先んじて巴投を仕掛ける。王子谷が反応良く大内刈を合わせると加藤は後転して上になり自身の技であることをアピール、王子谷のポイントが想起される攻防であったが主審は「待て」を宣告。経過時間は50秒、ここまでは圧力を効かせている王子谷が主導権を握り、加藤がこれに得意の捨身技で楔を入れるという展開。

しかし直後加藤が釣り手で脇を差して王子谷を場外に追いやると、1分6秒、ここまで流れを得ていたはずの王子谷に場外の「指導1」。加藤は簡単には展開を譲らない。この後も加藤は場外際を利用した攻防で王子谷の圧力をいなし、巧みに試合を動的均衡状態に持ち込む。
2分8秒に王子谷が加藤から場外「指導1」を奪い返してスコアはタイ。加藤はここまでのらりくらりと試合を進めて王子谷に決して大砲を撃たせないが、それでもやはり主導権は投げを志向する王子谷の側にあり。加藤が最終的に勝利するためには残り時間でポイントを得るか、明確な山場を作る以外に道はない。

試合時間が残り2分を切ったところで、加藤は釣り手を得ると左方向への横落を狙う。明らかに投げによるポイントを狙った技で、ついに加藤が試合を動かしに掛かった乾坤一擲のアクション。しかし加藤のこの技は上体のロックが不完全、王子谷は一歩下がって加藤の足を外すと目の前で無防備に座り込んでしまう形となった加藤を両手で捲りながら押し込む。加藤は腹ばいで耐えようとするが、王子谷の巨体に覆い被さられると為す術無くゴロンと転がり逆に「有効」を奪われてしまう。

残り時間は1分55秒、これまで意図的に試合を減速させていた加藤はビハインドを負うなり迷わずスクランブル態勢にスイッチ。小内刈、小外掛から巴投、さらに「韓国背負い」と激しく攻め立てるが王子谷はきっちり受けてポイントを許さず、逆に残り46秒に偽装攻撃の「指導2」を奪ってクロージング。結果、王子谷が隅落「有効」を以って優勢勝ちを果たした。

王子谷が二つ持って投げを狙うオーソドックスな重量級の柔道、一方の加藤は試合運びの上手い曲者スタイルとそれぞれ全く異なるジャンルの第一人者同士の戦いという構図であったこの試合。加藤としては大型選手の攻撃を封じながら明確な優位を作り出し、その優位を保ったまま試合を終えるという長いシナリオを完結させる必要があったわけだが、6分という長大な試合時間と体格差、そして王子谷の地力の乗算の前にこのミッションは完遂叶わず。王子谷の、あたかも相手を塗りつぶすかのような地力の高さが際立った一番であった。
 

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七戸龍が小川雄勢から大内刈で「技有」

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七戸はそのまま崩袈裟固で抑え込む

七戸龍(九州電力)○合技[大内刈・崩袈裟固](1:23)△小川雄勢(明治大2年)

ここまでやや動きの硬い優勝候補・七戸が準々決勝の畳に上がる。対するは超圧殺志向のスタイルをこの大舞台でも貫き通し、見事ベスト8まで勝ち上がった小川。注目すべきポイントは体格的優位を生かして相手を追い詰める小川の膂力とスタイルが、世界の舞台であらゆるタイプの選手と戦ってきた強者七戸相手にどこまで通用するかの一点にある。

七戸が右、小川は左組みのケンカ四つ。小川が釣り手で奥襟を叩いて七戸の頭を下げさせようと図り、対する七戸は前襟を握った釣り手で突っ張って相手との距離を取るという形で試合がスタート。七戸といえども小川の圧力をまともに受けるのはさすがに避けたい模様で、小川に奥襟を握られて頭を下げられると、完全にロックされる前に組み手を切ってリセットするというやり取りが数合続く。七戸がリーチを活かして釣り手を突き、頭を下げまいと背筋を立てると、小川は右引き手で七戸の左釣り手を取る「ケンカ四つクロス」の形で左内股、投げる意図のないこの技で七戸の体勢を崩して両襟を確保し密着。さらにこのアクションで七戸の頭が完全に下がったと見るや、引き手を袖に持ち替えて一方的な組み手の完成を狙う。しかし七戸は小川の引き手が離れた隙に組み手を切ってリセット。

ここまでの経過時間は30秒。一貫して、圧を掛けんと相手に持たせず自分だけが持つ一方的な組み手の完成を狙う小川と、間合いを取ってこの意図を挫こうとする七戸という構図。

小川は直前に仕掛けた手順が効くと踏むや、再び「ケンカ四つクロス」の左内股。しかし七戸が今度は頭を下げずに受けると、小川の釣り手が一瞬離れる。七戸ここがチャンスとばかりにまず引き手で袖を抑え、釣り手を奥襟に入れてついに自分だけが二つ握る一方的な形を完成。焦った小川はひとまず片襟の左体落でリセットを図るが、七戸引き手を離さず釣り手を下から巻き返すと、小川が体勢を立て直す前に釣り手を脇腹の位置に移して得意の右大内刈に飛び込む。激突のインパクトで小川が後方に大きく崩れると、七戸は両手を離さず押し込んで小川の半身を畳に押し付け「技有」、そのまま崩上四方固でガッチリ15秒を抑え切り合技「一本」に辿り着く。試合時間は僅か1分23秒だった。
小川の圧力にやや手を焼いた七戸だが、最後は貫禄の一本勝ち。実力の差を見せつけた一番だった。
 

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上川大樹が西潟健太の大外刈を返し「技有」を奪う

上川大樹(京葉ガス)○合技[大外返・崩袈裟固](2:58)△西潟健太(旭化成)

上川が身長185センチ体重160キロ、対する西潟が193センチ、135キロ。ともに左右に大砲を備えた巨艦同士の戦いは上川が右、西潟が左組みのケンカ四つ。

西潟が釣り手を上から奥襟に入れると、上川は釣り手で下から前襟を突いて距離を取りながら前に出る。西潟は押し返しながら引き手を脇に差して、勝負技である右浮落を試みる。しかし上川はびくとも動かず受け、再び前襟を突いて間合いを取り、揺るがず。上川は釣り手の肩をずらしながら引き手を取るテクニカルな組み手で間合いを詰めると、右小内刈、右出足払とタイミングの良い足技を繰り出して攻勢。

徐々に効き始めた上川の圧力に西潟が反応、引き手を切り離してリセットしたところで「待て」が掛かり、両者に「指導1」が与えられる。どうやら上川が二本持ってじわりじわりと自分の形を作る過程そのものが強大な圧力となっている模様。決して動きの大きい展開ではないが、一貫して西潟は圧され気味。

ここまでの試合時間は1分59秒、十分状況が煮えた感あり。
続く展開は両者「手四つ」でガッチリと止め合う形となるが、上川は一旦切って、両手を使って釣り手を取り、次いで引き手で袖を得てほぼ完ぺきな組み手を完成させる。不利を感じた西潟は釣り手を脇に差して間合いを詰め、反時計回りに動きながら左支釣込足で崩す。この崩しに上川は頭が下がり掛けるが、両襟を突っ張り西潟得意の密着はあくまで許さず。しかし、この不十分な状況にも関わらず西潟は自ら引き手を離して強引な左大外刈に打って出る。引き手を持っていないため体が開いてしまったこの技は明らかにバランス悪し、上川はこの好機を見逃さず引き手を釣り手に添えて本来の組み手とは逆の左大外刈で迎え撃つ。完全にバランスを失った西潟はもはや相手にしがみつくことしか出来ず、上川が体を預けると左半身から畳に落ちて決定的な「技有」。上川そのまま西潟の左肩に体重を乗せ固定し崩上四方固、西潟は動けず合技「一本」。試合時間は2分58秒であった。

上川は3戦連続、それも組み手とは逆の左技で投げを決めるという驚異の内容。西潟相手にも圧倒的な強さを見せて、完勝であった。
 

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原沢久喜が百瀬優を場外に追い込み「指導」を奪う

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原沢久喜が百瀬優を場外に追い込み「指導」を奪う

原沢久喜(日本中央競馬会)○優勢[僅差]△百瀬優(旭化成)

優勝候補筆頭の原沢はここまで動き硬く、煮え切らない印象。対する百瀬は1、2回戦は低調な試合だったが3回戦での強者高橋和彦との対決でようやく自身の強みである圧殺志向を前面に押し出し始め、ようやくエンジンが掛かり始めたところ。

両者右組みの相四つ。ともに釣り手を奥襟、引き手で脇の部分を握ってガップリ組み合うが原沢の方が組み力が強い模様、やがて百瀬は両手を突っ張り距離を取るという選択を為す。

先手を打ったのは原沢。右内股を一つ見せて百瀬の頭を下げさせると、右内股、右大内刈と立て続けに取り味のある技を繰り出す。百瀬が原沢の連続攻撃を耐えたところで主審が「待て」を掛け、技の出ない百瀬に「指導1」を宣告する。経過時間は1分41秒、ここまでの展開で地力の差はどうやら明らか、大方の予想通り原沢が主導権を握る。

続くシークエンスでは再び原沢が投げを志向、百瀬が足技を細かく出しながらチャンスを伺うという形の展開が続く。百瀬の受けが強く技のポイントを得るのは難しいと見た原沢は作戦変更、釣り手で押し込んで百瀬を場外に追いやり、あっさり2つ目の「指導」を得ることにに成功する。残り時間は3分27秒。

「指導」2つのビハインドを負った百瀬は片襟で揺さぶってスクランブルを掛けようと試みるが、原沢があくまで組み合って自分の形を作る姿勢を見せると展開に全く差はつかず。互いに作り合い、攻撃をかわし、また作り合う中で瞬く間に時間が過ぎ去り、以降はポイントの積み上げないままタイムアップ。原沢が「指導2」の差を以って僅差の優勢勝ちを決めた。

原沢はあくまで投げを狙うことで1つ目の「指導」を奪い、投げることが難しいと見るやリスクを冒さず場外に押し込むことで2つ目の「指導」を得て早々に明確な優位を確保。不調ながらも積極性と冷静さという2つのアスペクトを見せてしっかり勝利を得、上川の待つ準決勝へと駒を進めることとなった。
 

■ 準決勝
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王子谷の豪快な大外巻込に七戸は宙を舞う

王子谷剛志(旭化成)○大外巻込(3:57)△七戸龍(九州電力)

この日尻上がりに調子を上げている王子谷と、順調に勝ち上がっては来たものの今一つエンジン掛かり切らぬ七戸との対戦。七戸は腰が重く受けの強い王子谷に対してこの試合では「指導」を狙いにいくが、その方針が試合を荒れさせる結果となった。

両者ともに右組みの相四つ。互いに引き手で襟を取って奥襟を叩き合いガップリ四つ。身長とリーチで勝る七戸がより深く奥襟を握ると、王子谷は首を抜いての右大内刈を仕掛けて、七戸の釣り手を切る。これは主審が「待て」を掛けて、王子谷の首抜きに対して的確に「指導1」を与える。経過時間は1分5秒。

この判断を受けた七戸は続く展開も奥襟を深く握って王子谷の頭を下げさせ、窮した王子谷は再び首を抜いて上体を起こす。七戸は当然ながら釣り手を振って王子谷の首抜きをアピールするが、しかし主審は「待て」を掛けると今度は七戸に片襟との咎で「指導1」を与える不可解な裁定。これを受けた七戸は「指導」奪取の大方針自体は変えずにその手立てを変更、試合が再開するなり前進して片襟の大内刈で王子谷を場外へ追い込むがこれは主審がスルーして奏功せず。続く展開、今度は逆に王子谷が七戸を場外に押し込むと主審は迅速に反応、七戸に場外の咎による「指導2」を宣告する。経過時間は2分21秒、累積警告は王子谷が「1」、七戸が「2」。

「指導」を狙うも逆にビハインドを負った七戸はペースアップ。ほとんど組み手のやり取りを経ぬまま片襟の右大内刈で追い込み、次いで奥襟を叩いて圧力を掛ける。王子谷は七戸の圧を受け自ら膝を着いてしまい、七戸はこれを煽って伏せさせ開始線へと戻る。ここで主審は王子谷に対し「極端な防御姿勢」による「指導2」を与える。スコアは再びタイ。

続くシークエンス、両者が「人」の字でまず押し合い、前段の「指導」奪取成功を受けて前進志向を変えない七戸がさらに前に出ると、王子谷は支釣込足に変化して七戸を潰す。七戸は王子谷に印象点を与えてしまったと判断したか過敏に反応、引き手で袖、釣り手で奥襟を掴むと両手を突っ張ってあからさまに王子谷を場外へと押し出す。七戸の「押し出し」か王子谷の「場外」か、以後の戦い方の指針になるはずの大事なポイントだが、主審はここで王子谷に場外の「指導3」を与える。残り時間は2分32秒。

「押し出し」で3つ目の「指導」を得ることが出来てしまった七戸は、これを踏まえて残り1つの「指導」を奪うべく遮二無二前に出る。両襟を掴んで大内刈を掛けながら場外際まで王子谷を追い込むが、王子谷は前のめりになって七戸の奥襟を確保し、足裏で畳を噛んでその前進を受け止める。頭を下げられた七戸なおも前進を続けようとするが、もはや後のない王子谷は覚悟を決めて思い切った右大外巻込で迎撃。釣り手が伸びていた七戸は全く堪えられず巻き込まれて右半身から畳にまっさかさま、この一撃は「技有」。残り時間は2分20秒。

王子谷は大きなリードを得たがあと「指導」1つで反則負けと実は後が無い状況、一方の七戸も「技有」は奪われたもののあと「指導」1つを得さえすれば勝利確定、そして試合時間は十分残されている。どちらにどう勝負が転ぶかわからない、もはや撃ち合いしかない緊迫の展開。

しかしこの荒れた展開の中で七戸の組み手はやや雑になっており、かつそれを修正する冷静さが失われてしまっている印象。結果七戸は試合序盤の方針とは正反対、パワーがある王子谷とガップリの組み合いに応じてしまい、互いに技が出せる状況を許してしまう。撃ち合い上等のこの状況は明らかに王子谷の土俵、自身も下がるわけにはいかない王子谷は再び腹を括り、勝負技である右大外刈に飛び込む。足を大きく振り上げて刈り足を差し込むと乗り上げるように七戸の真裏に飛び抜け、最後は巻き込んで体を捨てる。七戸抗えず大きく宙を舞って畳に落下、これは文句なしの「一本」。試合時間は3分57秒、激的決着で優勝候補・七戸ここに陥落。

定まらない「指導」の傾向により試合は予想が出来ないほどに荒れ、その結果生み出された状況は試合時間2分半以上を残して、両者一歩も下がることが許されないという壮絶なサドンデス。ノーガードで撃ち合うしかないこの構図はパワーのある王子谷を利し、得意の大外刈による「一本」という劇的な結末を呼ぶこととなった。
 

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上川が開始早々払釣込足で原沢を大きく崩す

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原沢の大内刈は空振り

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上川が右足車、会場は大いに沸く

上川大樹(京葉ガス)○優勢[僅差]△原沢久喜(日本中央競馬会)

相手の技にびくとも動かぬ受けの強さと、左右の技の切れ味が光る上川はここまで大会の主役と評するべき出来。対する原沢は持ち前の投技の威力がなかなか発揮できないが、どの場面も大枠の優位を失わず手堅くベスト4まで勝ち上がって来た。

互いに右組みの相四つ。両者持ち合っては切り合うやり取りを数合交わすと、原沢は引き手を絞って上川の釣り手を落とし、さらに何度も奥襟を叩いて釣り手も確保。腰を切る動作を入れながら右大内刈、右内股と先んじて攻める。上川はあくまで焦らず原沢の技を受けつつ前ににじり寄り、嫌った原沢が引き手を切った、その動作に合わせて一歩踏み込み強烈な払釣込足。足元から弾かれた原沢大きく崩れ伏せる。経過時間は48秒。

この後も原沢が先んじて右内股を中心に攻めるが、上川は引き手で原沢の釣り手を殺しながらあくまで前進継続。2分半過ぎ、原沢はこの前進を右大内刈で押し返そうと試みるが、上川が背筋を立てて受けると空振り、なかなか上川を崩せない。原沢の「攻めあぐねる」という絵がこの攻防に端的。

3分6秒、技が止まった両者に「指導1」が与えられる。3分33秒、原沢今度は引き出して腰に乗せる内股を試みるがこれも上川は釣り手を切って耐える。

4分20秒、両者ガップリ組み合うと今度は上川が勝負技である右の足車に打って出る。両脇を開けることで一瞬で間合いを詰めた味のある一撃、これは深く入って一瞬投げの完遂を想起した場内大いに沸くが、原沢がインパクトの瞬間を耐え切ると上川は伏せてしまい、ポイントには至らず。原沢も攻めあぐねるが、上川にもこれぞという決め手がないまま刻々時間が進む。

続く展開、上川は引き手で袖、釣り手で前襟を確保すると、釣り手を揺さぶりながら原沢を引き出して自分の形を作ることに成功。しかし原沢は右大内刈を出しながら抵抗、釣り手を上げて上川を場外際に押し込んで固定する。ここで上川は敢えて場外を背負ったまま原沢が前に出るのを待つ。
うかつに出れば上川得意の払腰の罠が待っていること確実、十分承知の原沢簡単には前に出ず、腰を切って右内股のフェイントを入れることで駆け引きを挑む。上川がこれに反応し、腰を切って返しを狙うと、原沢が右小外掛に切り返し、結果上川が場外に出てこの技を回避したところで「待て」。緊迫の形であったが、上川の「待ち」を原沢が巧みにスケールダウンさせたという格好でこのシークエンスは終了。

この攻防が終わったところで残り時間は42秒、この後も両者技を打ち合うがポイントないまま試合は終了となり、勝敗の行方は旗判定に委ねられることになる。

判定の結果、旗3本が上がって上川の優勢勝ちが決定。上川の一発一発の技の威力、特に序盤の払釣込足と終盤の右足車の印象が原沢の技数を凌いだ形となった。

■ 決勝
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王子谷が右大外刈、足は外れたが投げ切って「技有」

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大外刈を狙う王子谷、得意の大外返を狙う上川の息詰まる投げ合い

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王子谷の支釣込足が「技有」

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王子谷、2度目の全日本選手権制覇なる

王子谷剛志(旭化成)○合技[大外刈・支釣込足](4:35)△上川大樹(京葉ガス)

代名詞である右大外刈が冴えに冴えている王子谷と、左右の払腰の切れ味、そして何より背筋を伸ばすだけで相手の技を弾き返すほどに身体の力が充実している上川による頂点対決。王子谷が七戸、上川が原沢とそれぞれ前戦で本命を下して迎える決勝の畳。

右相四つ。両者ゆっくりと接近し試合場中央で対峙。王子谷が引き手を脇の部分に入れ先んじて釣り手で奥襟を叩くと、一瞬頭が下がった上川すぐさま引き手で袖を確保して釣り手を上げ、引き手の絞りと上体を立てる動きを効かせて王子谷の釣り手を落とす。

しかし王子谷はしつこく奥襟を叩き続け、釣り手の肘を上げて上川の引き手の絞りを外すなり支釣込足でチョンと触って、一気に右大外刈に飛び込む。様子見なしの強烈な一撃に上川大きく崩れるがなんとか体を開いて畳に伏せる。経過時間は40秒。

直後の展開。王子谷がまたもやしつこく奥襟を叩くと上川は再び絞って釣り手を落としに掛かるが、その異常な前進圧力までは止め切れずじわりと後退。態勢を整えた王子谷は相手を場外際に追い込むなり、間髪置かずに支釣込足から右大外刈で勝負を仕掛ける。あっと言う間に刈り足を差し込まれてしまった上川なんとか体を開こうとするが、王子谷は先んじてグイと胸を張って相手を引き寄せ、上川が外そうと粘った右足を逃さず刈り切り、さらにたたらを踏む相手を走り込んで追撃。上川堪らず横倒しに畳に転がり、主審は「技有」を宣告。この攻防が終息したところで、技が出ない上川に「指導1」が与えられる。経過時間は1分15秒。

流れは完全に王子谷、準決勝の疲労が抜け切らぬ上川は早くも息が上がり掛けている模様。攻撃の手を緩めぬ王子谷が右大外刈で上川を崩す場面を2度作ると、2分16秒主審は上川に2つ目の「指導」を宣告。

王子谷の勢いを真正面から押し返すのは難しいと感じたか、上川はまず両襟で突いて密着を回避、迎撃態勢を整えようと企図。しかし王子谷は上川の作戦を感じ取ったか、奥襟を叩くと支釣込足でいなして散らし、上川の目論見に容易には乗らない冷静さを見せる。

続く展開、王子谷はガップリ持ち合った形から1つ、2つと支釣込足を見せ、2つ目の支釣込足の打ち終わりに、同じステップで今度は右大外刈に飛び込む。支釣込足に意識が散った上川やや反応が遅れて後ろに仰け反るが、体勢を崩しながらも王子谷の刈り足を外して左への浮落で乾坤一擲の大勝負。投げをあきらめぬ王子谷、避けるのではなくあくまで投げ返そうとする上川、伸るか反るかの攻防の結末は双方が勢い余って場外に飛び出て伏せる「待て」。壮絶な投げ合いに会場大いに沸く。この攻防で上川の後の先狙いが明らかになった格好だが、これを受けた王子谷はまず右大内刈で上川を場外に追いやり、続く展開では上川の頭を下げさせての右大外刈と上手く攻撃の手を変化させ、容易に的を絞らせない。

大きなリードを得るが全く攻め手を緩めない王子谷、一方相手の攻撃意欲をテコに返し技で一発逆転を狙う上川という構図で進んだ試合はここで劇的決着。

両者「手四つ」でガッチリ止め合う形を経て、再び試合場中央でガップリ四つ。王子谷が小さく支釣込足を見せると上川は腰を引いて距離を取り、勝負の瞬間を待つ。王子谷、一呼吸置いて右大外刈の方向に右足、左足とステップして胸を合わせる。上川は来た、とばかりに左足に重心を乗せて勝負に出るが、王子谷が胸を合わせたまま急旋回、支釣込足に振り返ると体重を乗せた左膝から吸い込まれるように畳に崩れ落ちる。王子谷は胸を合わせたまま釣り手で上川の左肩を落とし、引き手で脇を開けさせる完璧な決め、死に体の上川は背中から畳に墜落。ステップを切ってからここまでがまさに一瞬、主審の裁定は「技有」。次いで合技「一本」が宣告され平成28年全日本柔道選手権の勝者が決定。試合時間は4分35秒、王子谷が攻めに攻めて上川を下し、2度目の戴冠を果たすこととなった。


取材・文:原輝地/古田英毅

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