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ワールドマスターズ2016大会総評/第1日5階級(60kg級、66kg級、48kg級、52kg級、57kg級)レポート

(2016年6月2日)

※ eJudoメルマガ版6月2日掲載記事より転載・編集しています。
ワールドマスターズ2016大会総評/第1日5階級(60kg級、66kg級、48kg級、52kg級、57kg級)レポート
■ 大会総評
五輪の出場権とシード権(ワールドランキング8位以上)が掛かるポイントレース最後の戦い。既にシード権を確定させていてライバル達との駆け引きのみが焦点となる超強豪、シード権に届かないことがハッキリしており大会参加も様子見の挙に出た中堅選手、あるいは激しい国内の五輪代表争いの渦中にあってこの大会に勝利するしかない選手に五輪の直接出場枠の獲得が掛かる崖っぷちのローランカーとそれぞれの立場とモチベーションはもちろんバラバラ。上位16名によるオールスター大会というレギュレーションを前提に一括りで大会の傾向を総括することは難しい。
しかし敢えて言えば。いったいに強豪が低調でまるで五輪本番でのジャンプのためにいったん一斉に「屈んで」いるかのような軽量級、逆に既に五輪に向けて既に強豪たちの最後のひと伸びが始まっているかのように尖った仕上がりを見せる選手が続出した男女最重量級と、全階級通じていよいよ火薬の匂いが立ち込め始めた印象。ワールドツアー制度施行後初めての五輪であったロンドン大会で導き出された「本番は全員が一段も二段も上がって現れる」という傾向が今回も再現される、ハッキリその予感が感じられた大会であった。

日本勢に関してはこの大会にフォーカスして仕上げた選手とそうでない選手の出来の差が激しかったという印象。マクロな視点で見れば日本も「捨て試合」を作れるようになったとも観察できるが、こだわり過ぎずに長期的な視野で見るべき結果と見逃さずに確実に修正すべきディディールを見誤らぬよう、しっかり分析をしてもらいたい。

■ 60kg級・サファロフ優勝、低調髙藤は初戦でまさかの敗退
(エントリー16名)

【入賞者】
1.SAFAROV, Orkhan (AZE)
2.LIMARE, Vincent (FRA)
3.DASHDAVAA, Amartuvshin (MGL)
3.KIM, Won Jin (KOR)
5.GANBAT, Boldbaatar (MGL)
5.KHYAR, Walide (FRA)
7.OZLU, Bekir (TUR)
7.UROZBOEV, Diyorbek (UZB)

優勝候補筆頭の髙藤直寿が初戦敗退。ヴィンセント・リマール(フランス)から開始早々に鋭い隅返で「有効」奪取、以後も「指導」を2つ奪ってまったく問題なしと思われたが中盤から動きが鈍くなり、3分17秒にリマールの隅返で股間を蹴られてからさらに一段様子がおかしくなる。痛みをこらえて開始線に戻ったものの試合が再開されるなり裏投で「技有」、さらに左一本背負投で「技有」と立て続けに失い、あっと言う間の合技「一本」(4:00)で敗退が決まってしまった。

リマールと髙藤は昨年10月のグランドスラム・パリ決勝で対戦、この時は髙藤が一方的な試合内容で圧勝している。雑食系ファイターのリマールは目先の戦術に拘ることでこの時期刹那的に成績を残したが、今春そのツケを払うかのようにまったく勝てなくなりツアーで初戦敗退を繰り返している選手。後輩ワリーデ・キアとの五輪代表争いを勝ち抜くには今大会で成績を残すこと必須という高いモチベーションを抱えてはいるものの、世界チャンピオンの髙藤が不覚を取るような相手ではまったくない。痛みに苦しむ髙藤を走り寄って威嚇し、寝姿勢で「待て」が掛かれば上に乗った相手を払いのけてと今回も非常に見苦しい試合態度であったリマールは勝利が決まるなり態度一変、畳に横たわる髙藤に歩み寄って無理やり引き起こして背中を抱き、上から目線のフレンドリーな笑顔一発。こんな小物に負けたのかと、見ている側にも非常にフラストレーションのたまる試合だった。

髙藤は敗因として減量によるコンディション不良を挙げたが、これがひとつ低パフォーマンスの大きな要因であることは間違いない。そしてそれ以上に大きいのは戦後明かした足指の負傷であったかと思われる。髙藤の柔道のベースはなんと言っても小内刈。最大の決め技であるとともに掛けること自体、警戒させること自体で相手を嵌めていくこの技が使えない、手足をもがれた状態ではこのレベルの大会を戦うのはやはり難しいということだろう。

2度思い切り投げられた今大会の敗戦がシーンに与える影響は大きい。「なんのかんのでもっとも最高到達点の高い選手は髙藤」という構図と選手間のコンセンサスが一気に崩れかねない、見せてはいけないものを見せてしまった大会だった。五輪で金メダルを獲得し、このワールドマスターズが「上手に捨て試合を作った」と振り返られるようになることを切望してやまない。

決勝に進んだのはオルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)とリマールの2人。

第4シード配置のサファロフはガンボルド・ケーレン(モンゴル)の当日欠場を受けて準々決勝からの登場。この試合は強敵ベキル・オズル(トルコ)から内股透で「技有」奪取、そのまま袈裟固で抑え込むとオズルが「参った」(3:39)を表明して一本勝ち、非常に順調な立ち上がり。準決勝は4月の欧州選手権決勝で逆転負けを喫したワリーデ・キア(フランス)を相手に「有効」を失うも、左大内刈「技有」で逆転して決勝進出決定。

一方のリマールは準々決勝でディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)と対戦、寝姿勢から立ち上がっての一本背負投という非常にこの人らしい技で一本勝ち(4:20)。準決勝はキム・ウォンジン(韓国)から一本背負投「有効」、背負投「有効」と連取して快勝、みごと決勝まで辿り着くこととなった。

決勝はサファロフが左、リマールが右組みのケンカ四つ。この試合は46秒双方への「指導」、1分9秒にサファロフに組み手を切り離す行為による「指導2」が宣告されて序盤は比較的静かな展開。しかしビハインドを受けたサファロフが釣り手で深く背を抱き始めると試合が動き、地力の差が出始めてリマールは徐々に手詰まり。リマールの釣り手によるディフェンスをクリアして再びサファロフが再び背中を叩く形を作った2分47秒、サファロフがこのチャンスを見逃さず的確に攻撃。左内股から大内刈、さらに左内股に技を戻して決定的な「有効」。

この後の展開は一方的。3分29秒には接近戦を嫌い続けたリマールに「指導2」、3分40秒にはサファロフが両手で後帯を捕まえて左大内刈、返そうとしたリマールを叩き落して2つ目の「有効」を獲得。組み合わずに時間消費を図ったサファロフに残り7秒で「指導」ひとつが追加されるが大勢に影響はなく試合終了。そのままサファロフのワールドマスターズ初制覇が決まった。

サファロフはこの優勝でワールドランキング6位から3位にジャンプアップ、見事五輪Aシード選手の権利を得ることに成功した。

欧州選手権の覇者・キアは前述の通り準決勝でサファロフに敗退。迎えた3位決定戦はダシュダヴァー・アマーツブシンに裏投と小内巻込で2つの「技有」を失って完敗、最終成績は5位だった。大会後、フランス柔道連盟はリオ五輪60kg級代表をキアに決定、今大会2位と最後の抵抗を見せたリマールは今春の大失速が響いた形で落選となった。

ワールドランキング2位のキム・ウォンジン(韓国)は同1位のガンバット・ボルドバータル(モンゴル)と3位決定戦で直接対決。「指導2」で勝利してランキング1位の座をもぎ取り、五輪には第1シードで乗り込むこととなった。

世界選手権のメダリスト2人を押しのけてモンゴル代表の座を得たツェンドチル・ツォグトバータルは初戦敗退。ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)から隅落で「技有」を先行したが、得意の左小内巻込に飛び込んだ攻防で差し込んだ左手が相手の下半身に触れてしまいダイレクト反則負け。今大会のポイントの積み上げはゼロで、ランキング23位のまま認定期間を終えることとなってしまった。

トーナメント全試合の結果は下記。

【1回戦】

ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)○優勢[技有・浮落]△レニン・プレシアド(エクアドル)
ワリーデ・キア(フランス)○肩車(4:42)△エリック・タカバタケ(ブラジル)
ベキル・オズル(トルコ)○優勢[技有・裏投]△シャラフディン・ルトフイラエフ(ウズベキスタン)
キム・ウォンジン(韓国)○優勢[有効・裏投]△フェリペ・キタダイ(ブラジル)
ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)○合技[一本背負投・大外刈]△アシュレイ・マッケンジー(イギリス)
ヴィンセント・リマール(フランス)○合技[裏投・一本背負投](4:00)△髙藤直寿(日本)
ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)○反則(2:38)△ツェンドチル・ツォグトバータル(モンゴル)
 ※「足取り」による

【準々決勝】

ワリーデ・キア(フランス)○反則[指導4](4:02)△ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)
オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)○袈裟固(3:39)△ベキル・オズル(トルコ)
キム・ウォンジン(韓国)○優勢[技有・大内刈]△ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)
ヴィンセント・リマール(フランス)○一本背負投(4:20)△ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)

【敗者復活戦】

ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)○不戦△ベキル・オズル(トルコ)
ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)○大内刈(2:54)△ディヨーベク・ウロズボエフ(ウズベキスタン)

【準決勝】

オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・大内刈]△ワリーデ・キア(フランス)
ヴィンセント・リマール(フランス)○優勢[技有・一本背負投]△キム・ウォンジン(韓国)

【3位決定戦】

キム・ウォンジン(韓国)○優勢[指導2]△ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)
ダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)○合技[裏投・小内巻込](2:54)△ワリーデ・キア(フランス)

【決勝】

オルカン・サファロフ(アゼルバイジャン)○優勢[有効・内股]△ヴィンセント・リマール(フランス)

■ 66kg級・アンバウル優勝、ダバドルジは決勝での直接対決避けて棄権
(エントリー17名)

【入賞者】
1.AN, Baul (KOR)
2.DAVAADORJ, Tumurkhuleg (MGL)
3.POLLACK, Golan (ISR)
3.SHIKHALIZADA, Nijat (AZE)
5.KHAN-MAGOMEDOV, Kamal (RUS)
5.OLEINIC, Sergiu (POR)
7.ARAUJO, Eduardo (MEX)
7.TAKAJO, Tomofumi (JPN)

2強と目された第1シードのアン・バウル(韓国)と第2シードのダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)が順当に決勝進出。

アンは2回戦から登場、まずホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)から「指導」4つを奪って勝利し、準々決勝ではゴラン・ポラック(イスラエル)を左への「韓国背負い」で秒殺(0:20)。準決勝はセルジュ・オレニック(ポルトガル)から左背負投で「有効」を奪い、危なげなく決勝まで勝ち進んだ。

一方のダバドルジは2回戦のアントワーヌ・ブシャード(カナダ)戦を「指導2」対「指導3」の反則累積差という内容の辛勝。準々決勝はニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)を相手に終盤小内巻込「有効」を失う大ピンチを迎えたが、残り14秒の横掛「技有」でなんとか収拾して逆転勝ち。準決勝はここまでリショド・ソビロフ(ウズベキスタン)と髙上智史を破って好調のカマル・カンマゴメドフ(ロシア)と対戦、27秒に小外刈で「技有」を奪って順調に試合を進めると、1分48秒にカンマゴメドフがダバドルジの左肘を極める形で「韓国背負い」。主審は迷わずダイレクト反則負けを宣告し、意外な形でダバドルジの決勝進出が決まった。

決勝はこの負傷を受けてか、ダバドルジが畳に姿を現さずアンの不戦勝ちが決定。アンがグランプリ・デュッセルドルフに続く今季2つ目のワールドツアータイトルを獲得することとなった。

結果アンとダバドルジはともにワールドランキングの順位を1つずつ上げて、66kg級の1位はアン。以下2位がダバドルジ、3位がミハエル・プルヤエフ(ロシア)となった。

日本の髙上智史は7位。準々決勝でカンマゴメドフに右大外刈「技有」を奪いながら、真横に向かって投げる一本背負投を思い切り食って一本負け。そのショックゆえかニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)との敗者復活戦も背負投「有効」で落とし、決勝ラウンドまで生き残ることが出来なかった。

カンマゴメドフとゴラン・ポラックの強者2人による3位決定戦は、前戦のダイレクト反則負けによりカンマゴメドフに出場権なし。戦わずしてポラックの勝利が決まった。髙上に勝利したシカリザダは3位決定戦でセルジュ・オレニック(ポルトガル)を「指導3」で倒して表彰台を決めている。

トーナメント全試合の結果は下記。

【1回戦】

セルジュ・オレニック(ポルトガル)○優勢[有効・小外掛]△スゴイ・ウリアルテ(スペイン)

【2回戦】

アン・バウル(韓国)○反則[指導4](3:11)△ホウド・ゾウルダニ(アルジェリア)
ゴラン・ポラック(イスラエル)○GS指導3(GS2:25)△コリン・オーツ(イギリス)
エドゥアルド・アラウホ(メキシコ)○優勢[指導2]△ドルトン・アルタンスフ(モンゴル)
セルジュ・オレニック(ポルトガル)○優勢[有効・大外刈]△ズミトリ・シェールスハン(ベラルーシ)
ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)○優勢[指導3]△アントワーヌ・ブシャード(カナダ)
ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)○優勢[有効・巴投]△ファビオ・バジーレ(イタリア)
髙上智史(日本)○背負投(1:47)△ネイサン・カッツ(イギリス)
カマル・カンマゴメドフ(ロシア)○優勢[技有・横車]△リショド・ソビロフ(ウズベキスタン)

【準々決勝】

アン・バウル(韓国)○背負投(0:20)△ゴラン・ポラック(イスラエル)
セルジュ・オレニック(ポルトガル)○優勢[有効・崩上四方固]△エドゥアルド・アラウホ(メキシコ)
ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)○優勢[技有・谷落]△ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)
カマル・カンマゴメドフ(ロシア)○一本背負投(4:48)△髙上智史(日本)

【敗者復活戦】

ゴラン・ポラック(イスラエル)○優勢[指導3]△エドゥアルド・アラウホ(メキシコ)
ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)○優勢[有効・背負投]△髙上智史(日本)

【準決勝】

アン・バウル(韓国)○優勢[有効・背負投]△セルジュ・オレニック(ポルトガル)
ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)○反則(1:48)△カマル・カンマゴメドフ(ロシア)
 ※ダイレクト反則負け

【3位決定戦】

ゴラン・ポラック(イスラエル)○不戦△カマル・カンマゴメドフ(ロシア)
ニジャット・シカリザダ(アゼルバイジャン)○優勢[指導3]△セルジュ・オレニック(ポルトガル)

【決勝】

アン・バウル○不戦△ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)

■ 48kg級・近藤亜美が決勝でメネゼス破って優勝、初戦敗退のファンスニックは五輪のシード権失う
(エントリー17名)

【入賞者】
1.KONDO, Ami (JPN)
2.MENEZES, Sarah (BRA)
3.CHERNIAK, Maryna (UKR)
3.FIGUEROA, Julia (ESP)
5.JEONG, Bo Kyeong (KOR)
5.LOKMANHEKIM, Dilara (TUR)
7.MESTRE ALVAREZ, Dayaris (CUB)
7.MUNKHBAT, Urantsetseg (MGL)


2012年ロンドン五輪王者サラ・メネゼス(ブラジル)、2013年リオ世界選手権の覇者ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)、2014年チェリャビンスク世界選手権を制した近藤亜美、そして2015年アスタナ世界選手権で頂点に辿り着いたポウラ・パレト(アルゼンチン)と世界王者4人が揃ってエントリーを為した豪華トーナメント。

しかし立ち上がりから飛ばしたのはムンクバットのみ。シラ・リショニー(イスラエル)から裏投「有効」に後ろ袈裟固「一本」(3:44)と立て続けに奪って勝利したこの人以外は、揃って滑り出し低調。

近藤はブラジルの2番手であるナサリア・ブリヒダ(ブラジル)に「極端な防御姿勢」による「指導」1つでなんとか勝ち抜け、メネゼスも地元枠で出場のエドナ・カリーヨ(メキシコ)を相手に「有効」奪取ののち3つの「指導」を失うもどかしい試合、残り0秒に大外返「一本」でようやく試合を収拾する。パレトに至っては難敵ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)を突破出来ず「指導2」の優勢で屈し初戦で畳から姿を消してしまった。

好調と見られたムンクバットも準々決勝で好調マリア・チェルニアク(ウクライナ)戦でやや理不尽な判定を受け、「組み手を切り離す行為」で失なった「指導」1つの差を取り返せず「指導2」優勢で本戦トーナメントから脱落。

結果、決勝に勝ち残ったのは近藤とメネゼスの2人。

近藤は初戦のブリヒダ戦を乗り越えると、準々決勝ではこのところ好調のジュリア・フィギロア(スペイン)から右内股「有効」、片襟の右小内刈「有効」と連取して快勝。準決勝ではこの日の台風の目的存在となったマリナ・チェルニアク(ウクライナ)から右大外刈「一本」を奪い、尻上がりに調子を上げての決勝進出。

一方のメネゼスは不出来の初戦を受けた準々決勝で、前戦で今年度の欧州王者シャーリン・ファンスニック(ベルギー)を下したダヤリス・メストレアルバレス(キューバ)から出足払「技有」、さらに4つの「指導」を奪って勝利(3:33)。準決勝はディアラ・ロクマンヘキムから背負投「有効」、小内刈「技有」と2つのポイントを連取、格の違いを見せつけて決勝進出決定。

決勝は近藤、メネゼスともに右組みの相四つ。袖の絞り合いを経たところからまず近藤が釣り手で二の腕高くを掴んで巴投、対するメネゼスは組み際に鋭く左袖釣込腰を入れて近藤を崩し、緊張感ある攻防が続く。

1分過ぎ、メネゼスが打点の高い右袖釣込腰。腰に深く相手を引っ掛ける意図の大技だったが、近藤は左側に抜けてこの技をすっぽ抜けさせ、投げ切ろうと既に身体を折っていたメネゼスの頭を制して潰すことに成功。左引き手は袖をあくまで離さず、右で「秋本返し」の形で襟を掴んで反時計回りに捩じり続けると近藤が相手の体をまたいだところでほぼ勝負あり、メネゼス根負けしてゆっくり反転。近藤は左を帯を持つ形にスイッチして拘束を強め、縦四方固。脚を外そうと掌で足首を押してくるメネゼスの体を伸ばして最後まで抑え切り「一本」獲得、見事ワールドマスターズ初優勝を決めた。

この日の近藤は「指導」優勢、「有効」優勢、そこから立て続けに「一本」と尻上がりの出来。決して絶好調というわけではないように思われたが、有力選手がことごとく流れに乗り切れない中で、相対的に「上」であったと観察される。海外の国際大会で早期敗退が続いていた近藤が、このスーパーハイランク大会でしっかり優勝したことは非常に大きい。勝つと負けるとでは五輪の初戦で畳に上がるときのプレッシャーがまったく違うはずだ。出場の意味十分の大会であったと言えるだろう。

王者3人にファンスニックまでを含めたライバルたちが揃って低調、準決勝で対戦が予想されたムンクバットが途中で落ち、さらに決勝でマッチアップしたメネゼスも決して絶好調というわけではない。まるで近藤に、段差小さき、そして待ち受ける最高到達点高き五輪への「階段」が用意されているかのような大会だった。

メネゼスはこの日代名詞である足技でのポイント獲得が2度あったが、戦い方は担ぎ技、それも相手が出てきたところに合わせる形の下がりながらの技が中心。少々柔道が硬く、かつてほど融通が利かない印象ではあった。ただし、閃くような動きの半面柔道に軽さがあった数年前のスタイルから脱皮し、パワーを得ることで安定感と一発の威力を上げようとしていると解釈することも可能。危険な選手であることは間違いない。

ほか、目立っていたのはチェルニアクとフィギロア。チェルニアクは左右組み手を使い分けるしぶとい戦い方でタチアナ・リマ(ギニアビサウ)、ムンクバットとハイランカーを立て続けに倒してベスト4入り。3位決定戦でもジョン・ボキョン(韓国)に背負投「技有」を奪われながらも、背負投を思い切り返して「一本」で逆転、グランプリ・アルマティに続いて2大会連続で表彰台に立つこととなった。

グランドスラム・バクーで優勝したばかりのフィゲロアは近藤に敗れたものの以後は好調ぶりを存分に発揮。敗者復活戦ではムンクバットを破り、3位決定戦ではロクマンヘキムを内股「有効」で下してメダル獲得。惜しくも五輪Aシードラインには届かなかったがワールドランキングを5位まで上げてBシードを確定させた。

この大会の結果、リオ五輪のシード順が確定。今大会を直前で欠場したガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)はこれまでの大会皆勤の甲斐なくAシードから弾き出され、シード権は順にムンクバット、パレト、近藤、メネゼス。以下ガルバトラフ、チェルノビスキと続き、そして最後の1枠には今大会5位入賞のジョン・ボキョン(韓国)が滑り込んだ。

今大会初戦敗退に終わったファンスニックのランキングは9位となり、まさかのシード権獲得失敗。この人が五輪ドローの最大の不確定要素となることとなった。

全試合の結果は下記。

【1回戦】

モニカ・ウングレアヌ(ルーマニア)○優勢[指導1]△エブル・サヒン(トルコ)

【2回戦】

ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)○後袈裟固(3:44)△シラ・リショニー(イスラエル)
マリナ・チェルニアク(ウクライナ)○横四方固(4:00)△タシアナ・リマ(ギニアビサウ)

ジュリア・フィゲロア(スペイン)○優勢[指導2]△モニカ・ウングレアヌ(ルーマニア)
近藤亜美(日本)○優勢[指導1]△ナサリア・ブリヒダ(ブラジル)

ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)○優勢[指導2]△パウラ・パレト(アルゼンチン)
ジョン・ボキョン(韓国)○GS技有・小内巻込(GS0:59)△レティシィア・ペイエ(フランス)

サラ・メネゼス(ブラジル)○大外返(4:00)△エドナ・カリーロ(メキシコ)
ダヤリス・メストレ アルヴァレス(キューバ)○優勢[有効・大内刈]△シャリーン・ファンスニック(ベルギー)

【準々決勝】

マリナ・チェルニアク(ウクライナ)○優勢[指導2]△ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
近藤亜美○優勢[有効・内股]△ジュリア・フィゲロア(スペイン)
ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)○腕挫十字固(3:33)△ジョン・ボキョン(韓国)
サラ・メネゼス(ブラジル)○反則[指導4](3:33)△ダヤリス・メストレ アルヴァレス(キューバ)

【敗者復活戦】

ジュリア・フィゲロア(スペイン)○優勢[指導2]△ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
ジョン・ボキョン(韓国)○合技[背負投・内巻込](2:28)△ダヤリス・メストレ アルヴァレス(キューバ)

【準決勝】

近藤亜美○大外刈(1:14)△マリナ・チェルニアク(ウクライナ)
サラ・メネゼス(ブラジル)○優勢[技有・小内刈]△ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)

【3位決定戦】

ジュリア・フィゲロア(スペイン)○優勢[有効・内股]△ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)
マリナ・チェルニアク(ウクライナ)○谷落(1:56)△ジョン・ボキョン(韓国)

【決勝】

近藤亜美○縦四方固(1:28)△サラ・メネゼス(ブラジル)

■ 52kg級・中村美里優勝、ケルメンディとの「2強」構図ここに完成
(エントリー17名)

【入賞者】
1.NAKAMURA, Misato (JPN)
2.KUZIUTINA, Natalia (RUS)
3.EURANIE, Annabelle (FRA)
3.GIUFFRIDA, Odette (ITA)
5.CHITU, Andreea (ROU)
5.MIRANDA, Erika (BRA)
7.COHEN, Gili (ISR)
7.MA, Yingnan (CHN)

決勝に進んだのはナタリア・クズティナ(ロシア)と中村美里の2人。

クズティナはプールBに配置、第5シード位置からのスタート。2回戦はダリヤ・スクリプニク(ベラルーシ)を横四方固「一本」(3:32)で下し、準々決勝は難敵アナベール・ウラニー(フランス)に「指導1」で辛勝。準決勝は第1シードのアンドレア・キトゥ(ルーマニア)から得意の左一本背負投で「有効」を奪って決勝進出決定。

一方の中村は第3シード。準々決勝でマー・インナン(中国)、準決勝でミランダ・エリカ(ブラジル)との対戦が予想されるなかなかに厳しい組み合わせ。

中村は初戦のエヴェリン・チョップ(スイス)戦をあっという間の「技有」「有効」、そして最後は低く座り込む左背負投「一本」で快勝。準々決勝のマー・インナン戦は1分54秒と3分50秒に奪った「指導」2つで手堅く勝ち抜け、そして準決勝では大会最大の勝負どころと目されたミランダ戦を迎える。

この試合は左相四つ。中村は左右の小外刈で攻め続けて1分7秒にまず「指導」を奪うと、続く展開の組み際に右袖釣込腰を入れて鮮やか「有効」奪取。ビハインドに焦ったミランダを後目に中村はあくまで冷静に戦い続け、ミランダには残り58秒でクロス組み手による「指導2」、さらに残り22秒で「極端な防御姿勢」による「指導3」が与えられる。中村はここで奥襟を叩く強気の選択、組み勝つことで時間消費を図るがミランダは釣り手で奥襟、引き手で中村の肩を抱えて迎え撃ち、中村潰れて「指導1」失陥。ここで終了ブザーが鳴り、この試合は中村の「有効」優勢による勝利に収着した。

決勝は中村、クズティナともに左組みの相四つ。クズティナは左構えから2度右の浮腰で中村を振り回し、2度目には隅返に連絡する力勝負を挑む。しかし中村が一手目に気を遣い始めると状況が変わり始め、両袖から足技を撃ち合った探り合いのシークエンスはクズティナの左小内刈を中村が出足払で切り返し、クズティナが大きく崩れて転び「待て」。

クズティナ打開を期して再び右の浮腰を見せるが中村もはや崩れず、中村の足技を警戒するクズティナが袖を絞り込んでディフェンスする挙に出て、主審は1分45秒クズティナに袖口を絞り込んだ咎による「指導1」を与える。

中村引き手で相手の袖を織り込み釣り手で奥襟を叩く万全の形から左大内刈、この技で相手を大きく崩して攻勢。しかし続く展開で右背負投を掛け潰れてしまい、偽装攻撃の「指導1」を貰ってしまう。

スコアはタイ、流れは中村、クズティナがじわじわと為すべき策がなくなっていくというこの展開で中村得意の左小外刈が炸裂。引き手で袖をしっかり掴み、相手の上体を巧みに固めたこの技にクズティナ抗えず転がり「有効」。中村あっという間に相手の脇を制し、主審の「有効」宣告の際には既に横四方固の形を完成。盤石の「一本」で2010年大会、2011年大会に続くキャリア3度目のワールドマスターズ制覇を決めた。

中村の今大会での戦いぶりはまさに盤石。目先だけの変化球や刹那的なスタイル変更、あるいは戦術への偏執といった「ドーピング」を行わず、普通に戦い地力のみで当たり前に勝ったその平常運航ぶりこそ、もっとも高く買われるべきポイントだろう。

敢えて1つ課題を挙げるとすれば、ミランダ戦最終盤で奥襟を叩き返されて頭を下げ「指導」を失った場面か。五輪最大のライバルであるマイリンダ・ケルメンディ(コソボ)にその最大の特徴であるパワーファイト志向を一段加速させかねない攻防であった。

これで中村はアスタナ世界選手権優勝以降2つこなした国際大会をいずれも優勝、無敗のまま五輪を迎えることとなる。階級内における中村の立場は2013年、2014年と世界選手権を連覇し絶対王者として君臨したケルメンディとの「2強」の一。五輪で確実に実現するであろう2人の初対決が、今から楽しみでならない。今大会が終わった時点でのワールドランキングはケルメンディが2位、中村が3位。直接対決は、準決勝だ。

準決勝で敗れたキトゥは、3位決定戦で好調オデット・ジュッフリダ(イタリア)に内股「技有」を失い惜敗。ジュッフリダは敗者復活戦でマー、3位決定戦でキトゥと強豪2人を立て続けに破り非常な存在感を見せた。中村に敗れたミランダは3位決定戦でアナベール・ウラニー(フランス)の懐の深さに歯車噛み合わないまま「指導2」の優勢で敗れた。

ウラニーが3位を獲得する一方で、フランス代表争いのライバルであるプリシラ・ネトは初戦で敗退。しかし大会後、フランス代表はネトとのやや意外な発表があった。

トーナメント全試合の結果は下記。

【1回戦】

ヨアナ・ラモス(ポルトガル)○袈裟固(3:34)△プリシラ・ネト(フランス)

【2回戦】

アンドレア・キトゥ(ルーマニア)○反則(0:56)△ルス・オリヴェラ(メキシコ)
 ※「足取り」によるダイレクト反則負け
ギリ・コーエン(イスラエル)○優勢[指導2]△グルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)

アナベール・ウラニー(フランス)○内股巻込(2:03)△ムンクバータル・ブンドマー(モンゴル)
ナタリア・クズティナ(ロシア)○横四方固(3:32)△ダリヤ・スクリプニク(ベラルーシ)

エリカ・ミランダ(ブラジル)○GS指導2(GS0:43)△アディヤサンブ・ツォルモン(モンゴル)
オデット・ジュッフリダ(イタリア)○片手絞(3:28)△ローラ・ゴメス(スペイン)

中村美里(日本)○背負投(2:44)△エヴェリン・チョップ(スイス)
マー・イーンナン(中国)○優勢[技有・小外刈]△ヨアナ・ラモス(ポルトガル)

【準々決勝】

アンドレア・キトゥ(ルーマニア)○大内刈(1:48)△ギリ・コーエン(イスラエル)
ナタリア・クズティナ(ロシア)○優勢[指導1]△アナベール・ウラニー(フランス)
エリカ・ミランダ(ブラジル)○大外刈(1:27)△オデット・ジュッフリダ(イタリア)
中村美里○優勢[指導1]△マー・インナン(中国)

【敗者復活戦】

アナベール・ウラニー(フランス)○合技[裏投・肩固](3:16)△ギリ・コーエン(イスラエル)
オデット・ジュッフリダ(イタリア)○優勢[指導1]△マー・イーンナン(中国)

【準決勝】

ナタリア・クズティナ(ロシア)○優勢[有効・一本背負投]△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)
中村美里○優勢[有効・袖釣込腰]△エリカ・ミランダ(ブラジル)

【3位決定戦】

アナベール・ウラニー(フランス)○優勢[指導2]△エリカ・ミランダ(ブラジル)
オデット・ジュッフリダ(イタリア)○優勢[技有・内股]△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)

【決勝】

中村美里○横四方固(3:27)△ナタリア・クズティナ(ロシア)

■ 57kg級・松本薫初戦で一本負け、第1シードのドルジスレンがマスターズ3連覇達成
(エントリー17名)

【入賞者】
1.DORJSUREN, Sumiya (MGL)
2.RECEVEAUX, Helene (FRA)
3.KARAKAS, Hedvig (HUN)
3.KIM, Jan-Di (KOR)
5.BEAUCHEMIN-PINARD, Catherine (CAN)
5.LIEN, Chen-Ling (TPE)
7.MALLOY, Marti (USA)
7.SMYTHE-DAVIS, Nekoda (GBR)

アスタナ世界選手権の覇者、優勝候補一番手の松本薫が初戦敗退。コマツ所属の連珍羚(台湾)の前進圧力を嫌気して集中が切れたか、昨年来得意としている座り込みの右小内刈を返されて伏せた展開からあっと言う間に横三角を食ってしまう。連が松本の足を抱えて「抑え込み」が宣告された時には既に「参った」をしないことが不思議なほどにガッチリ頭と腕が拘束されており、さすがの松本も万事休す。3分35秒、そのまま一本負けが確定した。

松本の戦い方に何が欠けていたかというと、これは非常に難しい。ディティールの力強さと細部に染み込んだ強気がいま一歩足りない気はしたが、前に出ながら釣り手の手首を動かし、相手を下げながら小外刈を当てて試合を作るという方法論自体は好調時と変わらず。本人が「合宿をやり過ぎて疲れてしまっていた」と調整失敗を認めたとの談話が伝わって来たが、これがまさしく「一歩足りない」との印象の因なのだろう。周辺の状況を聞く限りではちょっと試合が出来る状態ではなかったようだ。
とはいえ敗戦は事実。勝つための方法論が言葉にしにくかった松本、スタイルを得た現在でもその勝利の必要要件の中核が、曰く言葉にしがたい精神的、あるいは肉体的な「コンディション」にあること、その構造のナイーブさが明らかになった大会とも言える。

松本の強さは、相手が怖がれば怖がるほど加速する型のもの。恐怖されることそれ自体でアドバンテージを得て来た松本としては、その絶対性に傷がついたということで五輪に向けて失ったものの決して小さくない大会でもあった。

松本に呼応するかのように、ライバルである2013年リオ世界王者ラファエラ・シウバ(ブラジル)も初戦敗退。五輪代表争いで同国の先輩オトーヌ・パヴィアを猛追するエレン・ルスヴォ(フランス)に内股巻込「有効」、崩上四方固「一本」(3:03)と立て続けに失って良いところのまったくないまま畳から姿を消した。

松本とシウバという爆発力ある強者2人を早々に失ったトーナメントを決勝まで勝ち残ったのはドルジスレン・スミヤ(モンゴル)とルスヴォ。

マスターズ3連覇を狙うドルジスレン・スミヤは2回戦でサンネ・フェルハーヘン(オランダ)に片襟の左背負投「一本」(1:43)で勝利し快調に大会をスタート。準々決勝では好調ネコダ・スミスデヴィス(イギリス)と大消耗戦を演じたがGS延長戦で左背負投から連絡した大内刈で「技有」を奪って勝ち抜け(GS0:40)、準決勝は松本に勝った連珍羚を左背負投崩れの内巻込で投げて「技有」奪取、このポイントを以て決勝進出決定。

一方のルスヴォは前述の通りシウバに勝利し、準々決勝は第3シードのマーティ・マロイ(アメリカ)の小外刈に合わせた隅落「一本」(3:17)で快勝。準決勝はキャサリン・ブーシュミンピナード(カナダ)を「指導」2つの優勢で破り決勝への勝ち上がりを決めた。

決勝はドルジスレンが左、ルスヴォが右組みのケンカ四つ。ドルジスレンが引き手で不十分ながら袖の外側を掴み、ルスヴォが敢えてこれを嫌い過ぎず持たせたまま互いに足を飛ばし合い、その中で加速のタイミングを計るという展開。1分27秒、ドルジスレンが片手の左背負投で座り込んで潰れると、主審はこの行為に偽装攻撃の「指導」を宣告。

続くシークエンス、ドルジスレンは両袖の組み手から背負投の形に腕を纏めて左袖釣込腰。低く座り込んだこの技に対し、ルスヴォは右へ体をずらしながら相手の体をまたいで腕挫十字固を狙うという判断ミス。爪先を踏ん張ったドルジスレンの体は死んでおらず、立ち上がりながらルスヴォを畳に叩き落しこれは「有効」。

この時点で残り時間は2分7秒。地力に勝るドルジスレンがリードを得たことで試合の動きは止まる。ルスヴォは釣り手を相手の首裏に回して接近戦を試みるが、ドルジスレンは守りたいときには後ろ重心で間合いを取り、攻めたいときだけ担ぎに飛び込むというまったくの順行運転。残り50秒でドルジスレンに「指導」が与えられたが状況が大きく動くことはなく、そのまま試合終了。結果ドルジスレンが2013年、2015年に続くワールドマスターズ大会3連覇を達成することとなった。

ドルジスレンはこれでワールドランキング1位を確保したまま認定期間をフィニッシュ、五輪の第1シードを確定させた。銀メダル獲得で420ポイントを上積みしたルスヴォはランキング3位となったが大会後の選考会議でフランス代表は同6位のパヴィアに決定。グランプリサムスン決勝の直接対決の一本勝ちに今大会の準優勝と勢いは十分だったが欧州選手権の失策(5位、パヴィアは優勝)を取り戻すには、あと一歩実績の積み上げが足りなかったとみられる。

3位にはヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)とキム・ジャンディ(韓国)が入賞。連は3位決定戦でキムに「指導4」で敗れて表彰台を逸した。

ただでさえ混戦の57kg級は、4月の欧州選手権からワールドマスターズまでの4大会でさらにその熱が高まった印象。ドルジスレン、パヴィアといった安定株の充実に加え、スミスデヴィスやキム・ジャンディなど昨年来上昇曲線にある選手たち、今回も当日にエントリーを取り消しロンドンでの「死んだフリ」からの銀メダル獲得の再現を狙うかのような沈黙を続けるコリナ・カプリオリウ(ルーマニア)ともはや試合に一切出て来ずひたすら五輪のハイジャンプに向けて体を屈めるテルマ・モンテイロ(ポルトガル)ら深く静かに潜航するベテラン勢、そして不安定だが爆発力十分のシウバに松本とそれぞれの属性と志向の違いは非常に面白い。これら方向バラバラの分子運動が総体で生み出す熱量は、例えば松本優位で上位に絡む選手の面子が相当に限定されていた今年当初に為された予測よりも、はるかに高い。五輪は過去3大会の世界選手権とは比べものにならない、一段上の面白い戦いが期待出来そうだ。

トーナメント全試合の結果は下記。

【1回戦】

ヴィオラ・ベヒター(ドイツ)○優勢[技有・隅返]△アガタ・ポドラック(ポーランド)

【2回戦】

ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○背負投(1:43)△サンナ・フェルハーヘン(オランダ)
ネコダ・スミスデヴィス(イギリス)○袈裟固(1:37)△ミリアム・ローパー(ドイツ)

ヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)○不戦△コリナ・カプリオリウ(ルーマニア)
レン・チェンリン(台湾)○崩上四方固(3:45)松本薫(日本)

キム・ジャンディ(韓国)○内股(0:18)△ヴィオラ・ベヒター(ドイツ)
キャサリン・ブーシュミン ピナード(カナダ)○優勢[指導1]△ザブリナ・フィルツモザー(オーストリア)

マーティ・マローイ(アメリカ)○腕挫十字固(2:34)△カーラ・タピア(メキシコ)
エレン・ルスヴォ(フランス)○崩上四方固(3:03)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

【準々決勝】

ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○GS技有・大内刈(GS0:40)△ネコダ・スミスデヴィス(イギリス)
レン・チェンリン(台湾)○崩上四方固(1:48)△ヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)
キャサリン・ブーシュミン ピナード(カナダ)○腕挫十字固(2:05)△キム・ジャンディ(韓国)
エレン・ルスヴォ(フランス)○隅落(3:17)△マーティ・マローイ(アメリカ)

【敗者復活戦】

ヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)○優勢[指導2]△ネコダ・スミスデヴィス(イギリス)
キム・ジャンディ(韓国)○裏投(3:58)△マーティ・マローイ(アメリカ)

【準決勝】

ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○優勢[技有・内巻込]△レン・チェンリン(台湾)
エレン・ルスヴォ(フランス)○優勢[指導2]△キャサリン・ブーシュミン ピナード(カナダ)

【3位決定戦】

ヘドウィグ・カラカス(ハンガリー)○優勢[指導2]△キャサリン・ブーシュミン ピナード(カナダ)
キム・ジャンディ(韓国)○反則[指導4](2:10)△レン・チェンリン(台湾)

【決勝】

ドルジスレン・スミヤ(モンゴル)○優勢[有効・袖釣込腰]△エレン・ルスヴォ(フランス)



文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版6月2日掲載記事より転載・編集しています。

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