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平成28年全日本柔道選手権全試合詳細③3回戦

(2016年5月22日)

※ eJudoメルマガ版5月22日掲載記事より転載・編集しています。
平成28年全日本柔道選手権全試合詳細③3回戦
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王子谷剛志が浮落で「技有」を奪う

王子谷剛志(旭化成)○合技[浮落・横四方固](2:20)△青山正次郎(福岡県警)

優勝候補の王子谷と大会屈指の巨漢の青山がマッチアップ。
両者ともに右組みの相四つ。青山が先んじて両襟を掴みに掛かると、王子谷は引き手で袖を取り顎で青山の釣り手を抑え、同時に釣り手を確保。王子谷の組み手完成をに危機を覚えた青山は引き手を袖に持ち替えて不十分な体勢ながら右大外刈、しかし、王子谷は引き手の抑えを利かせて逆に青山の体勢を崩し、時計回りの方向に転がす。体を浴びせながら押し込むと青山はごろりと一回転、これは浮落「技有」。経過時間は20秒。

王子谷はさらに右内股、釣込腰と攻めて32秒「指導1」を奪う。
試合が始まるなり出来上がったこの一方的展開は以後も止まず。打開を期した青山は王子谷が形を作り上げる前に引き手で袖を得るとすぐさま右内股巻込で倒れ込むが、王子谷余裕を持ってその体を捲って返し隅落「有効」奪取。そのまま横四方固で抑え込み、合技「一本」が確定、試合時間は2分20秒。重量級同士で相四つ、と均衡も予想される一番であったが、試合はこの対戦相性のもう1つのアスペクトである「力関係が反映されやすい」という方に転んだ。王子谷の地力の高さが光る一番であった。

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加藤博剛が上田轄麻を巴投で転がし「有効」奪取

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上田が加藤を大内刈で攻める

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上田は加藤を場外へ押し込む

 
加藤博剛(千葉県警)○優勢[有効・巴投]△上田轄麻(新日鐡住金)

両者ともに左組みの相四つ。開始1分に勝負師加藤がいきなり仕掛ける。両袖の絞り合いに持ち込んで上田を前屈みの状態にさせると、右回りに滑り込む巴投で上田の股下に潜り込む。上田は上体を立てて踏ん張るが、加藤は右手の引きを効かせて上田を横倒しにし「有効」奪取。

試合巧者加藤に対して「有効」のビハインドは重い。早い段階から勝負に出ざるを得ない上田は加藤を両襟で捕まえて前進、3分過ぎには大内刈で加藤を大きく崩す場面を作るが早くも逃げ切り態勢に入った加藤をなかなか捉えることが出来ない。しかしその後も圧力を掛け続けると終盤これが一気に結実、4分39秒に「指導1」、5分31秒に「指導2」、5分36秒に「指導3」と立て続けに反則ポイントを奪って加藤を追い詰める。この時点で試合時間は残り24秒、あと1つの「指導」があれば逆転勝利となる上田はさらに前進して加藤を場外へと押し込むが、加藤は場外際で片襟の背負投を掛けながら体を入れ替えて場内へと回り込む。結果的に最後の勝負どころとなったこの攻防で時間を十分使った加藤が、上田の最後の一刀である組み際の出足払もかわしところでタイムアップ。加藤が序盤の巴投「有効」を守り切って優勢勝ちを決めることとなった。

加藤は中途で親指の爪を割った様子でこれが減速の一因となった模様。さすがの戦闘力を見せた一番であったが、以後に不安を残した試合でもあった。

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河原が袖釣込腰で攻める

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七戸が河原を内股で捉え一本勝ち

七戸龍(九州電力)○内股(3:37)△河原正太(京葉ガス)

優勝候補の七戸に対するは中量級の試合巧者河原。
双方右組みの相四つ。河原は試合が始まるなり、片襟の右背負投に片袖の左大内刈、さらに「飛びつき十字」と組み際の技を立て続けに仕掛けて七戸に的を絞らせない。七戸は右内股で攻め返すが河原が引き手で襟を突いて距離を取ると振り上げた右足は空振り、なかなか河原を捉えることが出来ない。直後、河原が右外巻込で掛け潰れると河原に偽装攻撃の「指導1」、経過時間は1分31秒。スコアは七戸リードだがペースは完全に河原、七戸は組み合う時間を作れないためプレッシャーを与えることが出来ない。

その後も河原が片襟の右体落、片襟の右大内刈、逆の左袖釣込腰と先んじて攻める。しかし3分半、七戸は先に引き手で袖を得ると、河原が両襟で掴みに前に出てきたところを釣り手で奥襟を取りながら引き出しの右内股に飛び込む。七戸が遠心力を利用してブンと回旋を呉れると河原は先に畳に着いた右肩を支点に縦に一回転。主審迷わず「一本」を宣告して試合は決着、試合時間は3分37秒であった。
七戸は河原に翻弄されるも、相手が両手を離した隙を逃さず内股一閃。見事な一本勝ちで難敵を下した。

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小川雄勢が内股を出しながら田中大貴を場外へ追いやる

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田中は小川の圧を受けて消耗が激しい模様

 
小川雄勢(明治大学)○優勢[僅差]△田中大貴(新日鐡住金)

恵まれた体格を生かしてた圧殺を得意とする小川に対して技の切れる田中、同じ重量級でもタイプがまったく違う2人がマッチアップ。両者とも組み手は左。相四つとなれば小川の武器である圧力が効きやすいという見立てが可能、田中の不利は否めない。
試合が始まると、やはり小川が奥襟を確保して前進、一方の田中は両襟を突いて距離を取ろうとするという絵が現出。小川はこの構図を十分織り込み済み、幾度も奥襟を叩き直して田中の頭を下げせるとあおりながら場外方向へと相手を引っ張り、場外際まで辿り着くと確信的に体を入れ替える巧みな進退。位置を入れ替えるなり相手を今度は場外へ追い込みながら左内股で振り回す。田中は必死に場内に留まろうとするが我慢しきれず場外へ出てしまい「指導1」失陥。経過時間は1分7秒。
続く展開、奮起した田中が今度は小川の圧力をいなしながら左大内刈、左足車で果敢に攻める。しかし小川の圧力の強さに潰れてしまい、これは奏功せず。

反攻を受けた小川は圧殺傾向に拍車を掛け奥襟を叩いてさらに圧力、支釣込足を出しながら相手を場外へと追い込む。田中粘るが波が寄せるような小川の圧力に残り1分40秒でついに根負け、極端な防御姿勢の咎で「指導2」。

ここまで4分半近く小川の圧力を受け続けた田中は激しく消耗。しかしこのまま流されじと残り1分を過ぎたところから奥襟を叩き返して最後の反撃を試みる。一発のある田中だけに何が起こるかわからない状況とも思われたがしかし小川は表情を変えず、引き手でしっかり田中の釣り手を落として危なげなくクロージング。結果、「指導」2つの優勢で小川の勝利が決まった。
小川の圧殺は想像以上に強力、全日本選手権のレベルでもこの武器が通用することを十分示した試合と言える。次戦の七戸戦でこのスタイルがどこまで通用するか非常に楽しみ。

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開始早々、制野龍太郎が西潟健太を小外掛で崩す

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西潟が小外掛で「有効」を奪う

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西潟が左浮落で攻める

 
西潟健太(旭化成)○優勢[有効・小外掛]△制野龍太郎(宮城県警)

左右に大砲を持つ両襟ファイター西潟と、一方脇を差しての接近戦が得意な制野がマッチアップ。
西潟が左、制野が右組みのケンカ四つ。制野は釣り手で脇を差しての右小外掛で先制攻撃、西潟一瞬バランスを崩すが、体勢を立て直して得意の両襟で制野を捕まえる。危機と思われた制野はしかし釣り手と引き手をともに相手の二の腕部分深くを持ち、これを引き寄せつつ頭を相手と自分の間に入れ間合いが寄り過ぎないようにコントロール。「人」の字の形で一旦体勢を作り直すと、西潟に寄せられる前に左袖釣込腰に潜って展開を一旦リセットする。
続く展開では互いに様子見となり膠着、主審は双方に「指導1」を与える。経過時間は2分24秒。

ここで西潟は襟を掴んだ引き手を上下に振り、制野にこの手を固定させないまま右払腰を一つ見せる。制野は西潟に自由に動かれると焦ったか、奥襟を叩いての右大外刈に飛び込んで一気の勝負。しかしこれで密着が出来上がると西潟はためらわず左小外掛で迎え撃ち、制野を左肩から畳に落として「有効」獲得。経過時間は2分47秒。
以後西潟は先んじての大技で相手を封殺、制野が前に出ると左大外刈、さらに制野が釣り手で上から背中を取ると脇を差しての左浮落と、ペースを渡さぬまま時間を消費する。

残り1分を切ると西潟は逃げ切り態勢。制野の右大内刈のラッシュも無理をせず受け流して安全運転、最終盤に場外「指導2」を貰う場面はあったが勝負の趨勢に影響はなくそのまま試合は終了。西潟が小外掛「有効」を以って優勢勝ちを決めた。

西潟はどんな相手でも左右のハンドル投げで根こそぎ捻り潰していた全盛期から比べればパワーダウンした印象だが、その分相手の嫌がることを察知し、自分の土俵に相手を引き寄せるという点での巧さを見せた。新しいスタイルへの変貌を感じさせる試合だった。

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上川大樹は集中した表情で小川竜昂と対峙

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小川が片襟の大内刈で攻める

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上川が大外返で豪快に一本勝ち

 
上川大樹(京葉ガス)○大外返(4:12)△小川竜昂(新日鐡住金)

上川が右、小川が左組みのケンカ四つ。小川は釣り手を下から突いて一旦距離を取ると、両手で引き手側の襟を取って片襟の左大内刈に飛び込む。しかし上川はびくとも動かず小川を捕まえると右出足払で小川を大きく崩す。上川の強さ際立つ攻防だったが小川はあくまでひるまず、今度は釣り手を下から突いて左大内刈から左体落に連絡する。しかし、これも上川は難なく受け止めて右内股を打ち返す。48秒には小川に消極的との判断で「指導1」が与えられる。力の差は歴然、小川が先んじて攻めてもその倍の威力を以って上川が打ち返して小川の攻撃を塗り潰してしまう。1シークエンス毎に力関係がはっきりしてくる展開。

その後、上川は力関係を織り込んで両襟ならぬ両奥という自信満々な組み手で圧力を掛け、小川の左大内刈を潰し続ける。残り2分を過ぎたところで、上川が再び両奥で小川の頭を下げさせると、小川は一か八か思い切った左大外刈に飛び込む。しかし上川は右足を一歩下げこれをがっしりと受け止めると左組みに変化して左大外返、小川は為す術無く宙を舞い、上川の下敷き。
これは文句なしの「一本」、試合時間は4分12秒であった。上川は左右に強力な払腰を打てるという自信から両奥という極めて強気な組み手を選択、それが見事に嵌った形となり、この試合も豪快な一本勝ち。素晴らしい内容で4回戦勝ち上がりを決めた。

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高橋和彦が百瀬優の圧力を自らの内股に吸収

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百瀬が大内刈で攻める

百瀬優(旭化成)○優勢[僅差]△高橋和彦(新日鐡住金)

百瀬が右、高橋が左組みのケンカ四つ。百瀬は釣り手を上から入れると前進圧力を掛け、序盤から積極的な試合姿勢。高橋は両襟で突き返すが百瀬の前進を止められず場外に出てしまい、開始17秒で早くも「指導1」失陥。

この後も百瀬が圧力を掛け続け、押し込まれた高橋が相手の前進を利用して隅返、内股を仕掛けるという展開。しかし百瀬のプレッシャーの前にいずれの技も潰され、あるいは場外へ押し出されてしまい、高橋には2分30秒に「指導2」、2分51秒に「指導3」と立て続けに反則ポイントが累積。以降も細部まで良く染みた百瀬のプレッシャーの前に高橋が反撃の糸口を掴めないままあっという間に時間が経過、スコア動かぬまま百瀬の僅差による優勢勝ちで試合は終了となった。

ここまでの2戦では前半相手の柔道に合わせて勢いに乗れず「指導」失陥、追い込まれると開き直って自分の柔道を展開するという試合を見せていた百瀬だが、この試合は一変。序盤から一貫して前進圧力を掛ける本来の戦い方を見せ、引き出しの多い高橋にその引き出しを開けさせないまま押し切る形でしっかり優勢勝ちを果たした。

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原沢久喜が内股で神谷快を攻める

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神谷の内股巻込を原沢がガッチリ受け止める

原沢久喜(日本中央競馬会)○優勢[僅差]△神谷快(筑波大4年)

重量級ながら均整の取れた体型で運動能力は抜群、いかにも現代的本格派のアスリートタイプである原沢に対するは、腰が重く受けが強いこちらは典型的な「昭和の重量級」タイプである神谷。
両者ともに右組みの相四つ。神谷は両襟で組み付き、間合いを詰める。一方の原沢は引き手で襟を掴んでひとまず距離を取ると釣り手で奥襟、次いで引き手を脇に変えてとしっかり手順を踏んで組み手を完成させる。神谷は自身の頭が下がりかけたことを嫌って支釣込足で一旦この形をリセット。再び原沢が組み、神谷が切ってリセットするという相似の展開を経た1分半過ぎ、原沢が三たび同じ手順で組み勝つと今度は相手に切られる前に右大内刈で先んじて攻める。ここで神谷に消極的との咎で「指導1」が与えられる。経過時間は1分43秒。

ここまでの展開で相手が嫌がるやり方を見つけた原沢は手順を変えず、奥襟を叩いて右大内刈、右内股と一方的に攻め3分43秒に神谷に2つ目の「指導」。さらに、原沢が奥襟を持つと神谷は下げられた頭に自身の柔道衣が被さってしまい、その状態のまま原沢が「小内払い」を掛けると神谷は膝を着いて一方的に潰れて逃げる。直後の展開、原沢が組み手を完成させて右内股に入ると神谷の道衣が完全に脱げて「待て」、ここで神谷に3つ目の「指導」。

残り時間はこの時点で1分18秒、以降原沢は神谷の反撃をしっかり潰してクロージング、「指導3」の僅差で優勢勝ちを果たした。間合いを詰めたい神谷を原沢がしっかり組み止めてその意図を潰し一方的に勝利した試合とも、柔道衣をはだけ、潰れ、とにかく一本負けだけは逃れようと畳に居残り続けた神谷を原沢が仕留め損ねた一番とも解釈可能。いずれ、双方にとって煮え切らない試合であった。


取材・文:古田英毅/原輝地

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