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平成28年全日本柔道選手権全試合詳細②2回戦

(2016年5月18日)

※ eJudoメルマガ版5月18日掲載記事より転載・編集しています。
平成28年全日本柔道選手権全試合詳細②2回戦
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滝大輔は大外刈で果敢に攻める

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青山正次郎が滝大輔に谷落で一本勝ち

青山正次郎(福岡県警)○谷落(2:11)△滝大輔(香川県警)

右相四つ。初出場の滝は178cm、125kgと堂々たる体格、しかし対する青山は186cm、160kgと大会屈指の巨漢でかつ今大会が全日本選手権6回目の出場。サイズと経験では青山に分があり。

試合が始まると体格に劣る滝はしかし敢えて引き手で袖の二の腕部分まで深く握り込み、釣り手は奥襟を叩く。これ以外に勝負の仕方は知らないとばかりの、あくまで自分のやり方を貫く強気の組み立て。青山が奥襟を持って迎え撃ちガップリ四つとなると、滝は右大外刈で先制攻撃を仕掛ける。揺るがずがっちり受け止めた青山は滝の釣り手を落として体勢を整えるが、しかし滝は再び釣り手を上げて右大外刈に飛び込む。青山今度は腰を落として突き放し防御、滝を伏せさると審判が「待て」を掛ける。滝の思わぬ先制攻撃にやや浮き足立った様子の青山はふぅと一息吐いて開始線に戻る。

滝が技数で展開を引っ張った格好の序盤だが、青山は滝の攻撃を二発受け止めることで固さが取れた模様、今度は体格差を織り込んで両襟で滝を捕まえると間を置かずに右内股を仕掛ける。ケンケンで回して跳ね上げたこの技に滝が大きく崩れて伏せ「待て」。
この一撃で力関係を十分に理解した青山は次のシークエンスで勝負に出る。滝が組み際に支釣込足を放つと青山は頭を下げて敢えて奥襟を与え、滝が大技を打てる形を作り出して待ちの構え。青山はこの「待ち」の間も奥襟を握った釣り手を離さず自らの最終防衛ラインはしっかり確保しており、迎撃態勢完全に整った印象。
滝が右大外刈を試みて片足になった瞬間青山動き、体重を浴びせた谷落で迎え撃つ。滝は完全に体が反って死に体、青山が両足を刈りながら覆い被さると滝は逃れられず天を仰いだまま畳に落下する。見事な後の先の一撃に主審迷わず「一本」を宣告。試合時間は2分11秒。

初出場の滝は思い切りの良い柔道を見せたが、大会常連の青山は落ち着いて力関係を測り、逆に滝の勢いを利用して「一本」で仕留めた。双方短い時間に持ち味を出し合った一番となった。

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王子谷剛志が豪快な大外刈で一本勝ち

 
王子谷剛志(旭化成)○大外刈(2:23)△西村久毅(敦賀高教諭)

優勝候補の一角を担う王子谷の初戦。一回戦をフルタイム戦いエンジンが温まった西村が相手ではあるが、王子谷得意の右大外刈は破壊力抜群。大外刈が仕掛けやすい相四つということもあり、この技が出るようならば勝負は一瞬で決着してもおかしくないという一番。

互いに右組みの相四つ。王子谷は試合開始から組み勝つも仕掛けが遅く、西村の左一本背負投に先手を許してしまう。続く展開では自分から技を出すものの、その技は低い左袖釣込腰という様子見な選択で意外なほどに大人しい出だし。王子谷の出来悪し、と観察されてもおかしくないところであったが、しかし王子谷両襟の圧力は掛け続け、左一本背負投に左小内刈と良く動く西村へのプレッシャーは怠らず。この圧力行動は59秒、西村への片襟「指導1」としてまず結実。以後も王子谷は両襟の圧力を緩めず支釣込足で西村を大きく崩す展開を2度作り、2分2秒、西村に2つ目の「指導」が宣告される。

王子谷はこの支釣込足の攻防でようやく自分の強さ、強みを思い出した感あり。続く展開で引き手で脇、釣り手で奥襟を得ると西村が左小内刈で座りこんだところを引き起こして、右大外刈に飛び込む。右足を大きく振り上げて鉈を叩き込むかのように刈り込むと、西村は堪らず王子谷にしがみつく。
しがみつかれた王子谷は西村を体に巻きつけたまま畳にダイブ。この一撃は西村の上半身が畳と王子谷の胸の間に完全にめり込む大迫力の「一本」となり、決着。試合時間は2分23秒。中盤までは固さを見せた王子谷であったが、最終的にはもっとも得意とする技で見事な一本勝ちを収めた。

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加藤博剛が「オモプラッタ」で攻める

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加藤が独特の袖釣込腰を見せる

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加藤が藤原浩司から隅返「技有」を奪う

 
加藤博剛(千葉県警)○優勢[技有・隅返]△藤原浩司(長崎県警)

例年独特のスタイルで全日本の舞台を盛り上げ、平成24年大会では優勝を果たしている業師加藤が登場、対するは初出場の藤原。
互いに左組みの相四つ。開始早々、加藤が絞り合いで藤原の膝を着かせ得意の寝技に持ち込むと横三角で激しく攻める。これは藤原、難なく耐えるがいきなり寝技の展開を許したことで加藤の土俵に上ってしまった印象。以降も加藤は巴投から寝技に引き込み両足で藤原の右腕を極めながら抑え込みを狙う。体を捨てながら腕を極め、かつほとんど間を置かず回す「巴オモプラッタ」ともいうべき面白い企みに会場大いに沸く。早くも畳上に「加藤ワールド」出現の感あり。
加藤さらに引き手で相手を大きく釣り上げ、立ち姿勢のままの肩車で相手を背中に乗せると右袖釣込腰の要領で敢えて相手を反対に抜いて畳に落とし、自身は腕から着地すると側転して相手の頭側に回りこみ、すかさず三角で攻める。異次元、かつ流れるような組み立て。
完全に加藤が試合を支配した試合の様相がスコアにも反映され、1分17秒藤原に消極的「指導1」。
中盤、加藤が釣り手で脇を差すと藤原は自ら膝を着いて伏せてしまう。加藤すかさず腕挫腹固から送襟絞に変化して攻める。これは藤原がしっかり防御して「待て」が宣告されたが、主審は藤原の自ら膝を着いて伏せた行為に対して「指導2」を宣告。試合時間は2分56秒、残り時間は3分4秒。

ここまで魅せる柔道を展開している加藤だが具体的に得たリードは「指導2」のみとやや物足りず。加藤自身もそれを感じたか、先に引き手を得ると釣り手で背中を狙い、得意の引込返を出せる体勢を作りに掛かる。しかし、藤原は頭を下げると相手の術中に嵌ってしまうことをここまでの攻防から十分理解しており、背筋を伸ばし容易に背中は与えない。しかしどうやら加藤はこの状況への対応策も当然備えている模様、引き手で袖を握ったまままず左内股巻込の形で腰を切る。藤原はこの見せ技に大きく反応して思わず腰を引いてしまい、加藤はすかさず正対し釣り手で藤原の背中越しに帯を確保する。そして藤原が上体を起こそうと踏ん張ったところに左脚を差し込み、体を右に滑りこませての隅返。潜り込んだ加藤は一度腹の上に相手を乗せてから差し込んだ足と両手のコントロールを効かせ、藤原を縦に一回転させる。主審は「有効」を宣告、次いでこれを「技有」に訂正。
勝負に出た加藤が狙い通り大きなポイントを得た形。真裏にめくり返す引込返では藤原の膂力で踏ん張られる可能性があったが、一度自分の腹の上に横たわらせてしまえば寝技の得意な加藤が相手の体をコントロールすることは容易い。と言葉では解説できるが、それを瞬間的に判断し実行するのは並大抵なことではない。加藤の細部まで作り込まれた技術の高さが光った一撃。

試合時間は残り2分、ビッグポイントを得た加藤は順行運転で試合を進めて残り時間は大過なし、最後は藤原の片襟大外刈をしっかり潰してタイムアップ。寝技、立ち技の両方で加藤が自分の世界に相手を引きずりこんでの完勝であった。

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上田轄麻が長尾翔太から内股「一本」

 
上田轄麻(新日鐵住金)○内股(5:28)△長尾翔太(兵庫県警)

上田が左、長尾が右組みのケンカ四つ。開始1分を過ぎるまでに体格で勝る上田が両襟の左内股で先制攻撃、長尾が逆の一本背負投を2発打ち返して対抗。
ここまでの攻防で両者が互いに力関係を把握し大枠の作戦を確定した感あり。以降上田は両襟で圧力を掛けながら左内股で攻め、対して長尾は上田に持たせたまま我慢し、掛けさせることでチャンスを見出すという展開が続く。

試合中盤、上田は長尾の作戦を受けて方針変更、圧力を掛け優位な状態を作り出したまま敢えて動きを少なくして「指導」を取りに出る。すると上田の目論見通り3分11秒、3分29秒と立て続けに長尾に「指導」が与えられる。「指導2」のビハインドを負った長尾は非常に苦しい展開。

出るしかない長尾は一本背負投から小内刈、体落と攻めるがポイントの気配無いまま残り時間は1分を切る。上田が引き手で袖を外側から、釣り手で奥襟を得ると、長尾は引き手で内側から袖を握る不利な状態から、釣り手を下から巻き返して勝負に出る。しかし上田は十分承知、長尾が釣り手を離して飛び込んできた隙に引き手を自分の腹に寄せ完全に組み勝つ。
投げるならここしかないと上田は勝負技の左内股、長尾は右足を高く上げて上田が跳ね上げた左足を外そうとするが、上田が相手の頭を制して回しこむとバランスを取り切れなくなった長尾は股を最大限に広げたまま縦に一回転、背中から畳に沈む。投げた上田が勢い余って畳に転がり込むと主審は迷うことなく「一本」を宣告。試合時間は5分28秒、熱戦遂に決着となった。

長尾は敢えて上田に持たせて掛けさせることでチャンスを伺ったが、6分の長丁場では地力の差を乗り越えるのは難しい。最後は自ら勝負を掛けにいったが逆に上田の一番良い形を作り出す結果となってしまった。

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河原正太が組み際の大内刈で須藤孝清を大きく崩す

 
河原正太(京葉ガス)○優勢[僅差・判定3-0]△須藤孝清(青森県警)

右相四つ。一貫して河原が巧みなインサイドワークでペースを握る。
体格で勝る須藤はまず両襟で捕まえ、釣り手で奥襟を確保し、次いで引き手を袖に持ち替えて完成、とセオリー通りの手順を踏む。しかし河原は奥襟を握られるとすかさず引き手で襟を突いて須藤の釣り手を切り、手四つで展開の進行を減速させる。

互いに組み合っては切り、「人」の字で膠着というやり取り数合を経た1分43秒、河原は引き手で襟を得ると、釣り手で須藤の引き手を握ったまま肘を上げさせての右大内刈に飛び込む。意表を突かれた須藤は大きく崩れるが体を捻って畳に伏せる。もちろんポイントにはならなかったが、まず序盤に河原が山場を一つ作った形。

両者ともに技が出ず膠着し、2分22秒双方に「指導1」が与えられる。直後、河原は両襟を得るとすぐさま右内股を繰り出す。河原は須藤の左足を上げさせると早々に自ら引き手を離して畳に付き、バランスをとりながら片手のケンケン内股でしつこく追って須藤を崩して伏せさせる。河原得意のこの攻撃、明らかにポイントを狙った技ではないが、結果的に中盤にまた一つ山場を作ることに成功した形。

さらに、3分35秒に河原が須藤を場外方向へと誘導すると須藤は内股を掛けながら試合場の外に出てしまい、須藤に2つ目の「指導」。

この後も河原は要所で手四つを使って須藤の攻撃の芽を摘み続け、互いにポイントの積み上げの無いまま試合は終了。旗判定は3-0で河原の勝利となった。須藤としては特に攻められている感覚は無かったはずだが、終わってみれば要所要所で山場を作った河原に旗を上げるしかない試合であった。

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七戸龍が制野孝二郎をケンカ四つクロスの内股で攻める

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制野の小内巻込に七戸はたたらを踏む

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試合終盤、制野が外巻込で七戸を大きく崩す

 
七戸龍(九州電力)○優勢[僅差]△制野孝二郎(センコー)

優勝候補の一人である七戸と、一昨年の全日本学生体重別100kg級王者の制野がマッチアップ。両者右組みの相四つ。制野は非常に気合の入った表情で畳にあがると開始早々に肩車で先制攻撃。これは七戸落ち着いて潰すが、続く展開も制野は小内刈、袖釣込腰、外巻込と先手を取り、試合開始から1分半に渡って七戸に何もさせないまま時計の針を進めることに成功する。

しかし1分42秒に七戸が奥襟を叩いて制野を潰すと、制野に「極端な防御姿勢」の咎で「指導1」が宣告される。七戸はこれをきっかけに積極的に奥襟を取り、右内股、さらに腕を半ば極めての支釣込足と攻める。続く展開で、七戸が奥襟を握ると制野が首を抜いて逃れ「指導2」。どうやら七戸が主導権を取り戻す。

しかし制野はここから一段ギアを上げて再び素早い攻めを見せ、4分過ぎには右小内巻込で七戸を大きく崩す。さらに強気に奥襟を叩いて右内股に飛び込み、七戸を浮かせると会場は大きくどよめく。リードは「指導2」のみ、もし1つでも「指導」を失えば旗判定まで勝負を持ち込まれてしまう立場の七戸はここで押し切られてはいけないと、右大内刈で押し込み、寝技で時間を消費に掛かる。しかし制野が終了間際に右外巻込であわやポイントという見せ場を作って試合終了。結果、七戸は辛くも「指導2」の僅差で優勢勝ちを果たした。制野は敗れたが、時間が経つほどに動きが良くなり優勝候補七戸相手に大健闘を見せた。七戸のライバルである日大の先輩・原沢久喜の援護射撃を為すべく最後まで畳に立ち続けた、執念の一番であった。

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小川雄勢が上四方固で小林督之を抑え込み「一本」

 
小川雄勢(明治大2年)○上四方固(3:43)△小林督之(旭化成)

両者ともに左組みの相四つ。小川は体格差を活かして両襟を高い位置で握り圧力を掛ける。小林は両手で小川の釣り手を落とそうと試みるが、小川が構わず前進圧力を掛けると小林は逆らえずに場外に出てしまい、試合開始から僅か13秒で「指導1」を失う。その後も小川は前進し続け、小林は内股で小川の圧をいなそうとするもそのまま場外に押し込まれて55秒「指導2」。

僅か1分足らずで「指導」2つのリードを得た小川はここから左大外刈、左大内刈、左内股と具体的な技での攻めを見せ、2分38秒には、全く技の出せない小林に3つめの「指導」。奮起した小林は左大外刈、左内股と攻め返すが小川を崩すには至らず。小川は小林の反攻を見て取るや、再び左内股のモーションを見せながら小林を場外へと押し込む。もう後が無い小林が押し返すと、小川は振り返りながら支釣込足、小林はつんのめって伏せる。小川は確信的に寝勝負に移行、袖を握った引き手を離さず、小林の左腕を「後ろ手」の形で極めたまま肩関節が極まる方向に回りこむ。小林は自ら仰向けになって逃れるが、小川は待ち構えて上四方固で抑え込む。これはほぼ完全に決まり、小林必死に暴れるも小川は涼しい顔で20秒を抑え切って一本勝ち。小川の前進圧力は時間が経過するほどに効果を発揮、辿り着いた結果は「一本」。圧勝であった。

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長澤憲大が田中大貴を内股で攻める

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田中が大内刈で長澤を攻め込む

 
田中大貴(新日鐵住金)○優勢[判定3-0]△長澤憲大(パーク24)

互いに左組みの相四つ。距離を詰めて圧力を掛けたい田中と、体格で劣るぶん簡単には捕まりたくない長澤の思惑がかち合い、序盤戦は双方持っては切ってを繰り返す激しい組み手争いに消費される。組み手の作り合いに1分近くを費やすもどかしい展開の中、先制攻撃を仕掛けたのは田中、両襟を得ると多少不十分な形ではあるが左内股を先んじて仕掛ける。これは長澤が引き手で襟を突いて距離を取り不発も、田中は釣り手を一旦離して引き手に添えると今度は片袖の左足車を仕掛ける。長い拮抗も先に田中が技を仕掛けたというこの形を主審が評価、1分28秒、長澤に「指導1」が宣告される。

以降、奮起した長澤は不十分ながら先に左内股、左支釣込足と放って技数では上回る。しかし田中も圧力をかけ続け、左内股、左大内刈と大きく崩す場面を作って対抗。主導権は圧力を掛け続けて威力のある技を見せる田中、一方の長澤は技を掛けることでなんとか圧力をいなそうとしているという印象。結局ポイントの積み上げがないまま試合は終了し、勝敗の行方は旗判定に委ねられる。結果、旗3本が揃う大差で田中の勝利が決まった。長澤は巧みなインサイドワークで試合を作ったが、途中何度か危ない場面を作られてしまった結果、なんとか凌いでいるという印象を審判に持たせてしまった。長澤の試合力を田中の圧力と投げに対する志向が突破したという一番。

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制野龍太郎が支釣込足で北見剛から「一本」を奪う

 
制野龍太郎(宮城県警)○支釣込足(3:09)△北見剛(警視庁)

制野が右、北見が左組みのケンカ四つ。北見が釣り手で奥襟、引き手で袖を得て左内股で攻め、一方の制野は釣り手を背中に回し、引き手で襟を掴む接近戦志向の構えで対抗する。北見が先んじて左内股で攻めると1分32秒に制野に「指導1」。制野はここから徐々に右小外刈を出しながら前進圧力を掛けてペースを握り始め、2分32秒には低い右一本背負投で北見を大きく崩す山場を作る。北見は左内股で対抗するが制野の前進が良く利き、跳ね上げる前に潰れてしまいノーポイント。

この攻防の直後、勝負は決着。制野が釣り手を背中に回すと、北見はこれまで間合いを保つべく前襟を持っていた釣り手で一転脇を差し、接近戦に応じる。

制野は頭を北見の胸に密着させ距離を詰めると左足を一歩中に踏み込む。北見はこれに反応して釣り手側に回り込もうと左足を外側に踏み出す。制野は北見の左足が一瞬浮いたまさにその瞬間に右小外刈で北見の左膝裏を刈り、膝がカクンと折れた北見は瞬く間にバランスを崩す。ここに至って制野の密着組み手が効果を発揮、支釣込足の形で相手の上体を崩すと胸を合わせて北見を背中から畳に落とす。背中から畳に吸い込まれた北見は主審の「一本」宣告を確認すると思わず天井を仰ぎ見る。
試合時間は3分9秒。瞬間のフェイント、瞬間の崩し、瞬間の刈りと、決め。欠くことが出来ない足技の要素を過たず満たした制野が見事な一本勝ちを収めた。

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西潟健太が逆の右内股で攻める

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尾原琢仁が果敢に大外刈で攻める

 
西潟健太(旭化成)○大外巻込(3:21)△尾原琢仁(筑波大4年)

両者左組みの相四つ。巨人・西潟は両襟を組み手からの強烈な左右の大外刈と「ハンドル投げ」が身上、対する尾原も長身で体の力は十分。大型対決だ。

序盤、西潟が両襟で圧力を掛けると、尾原は両襟を突っ張り腰を引いて防御姿勢を取る。これを受けた西潟が左に腰を切る動きを見せると尾原は両手を離して潰れてしまう。尾原の西潟のパワーに対する警戒明らか。西潟は両襟を握って釣り手を奥襟に入れる強気の組み手を度々完成、これは西潟が最も力を出し得る得意の形だが、尾原が突っ張って距離を取りながらもあくまで頭を下げずに対峙すると、西潟は得意の左右の大技を繰り出しても崩し切ることが出来ない。
1分55秒、技が出ない尾原に「指導1」。奮起した尾原が自ら左大内刈を仕掛けると、この一撃に意外にも西潟は体勢を崩し、たたらを踏む。この攻防に尾原はやや自信を得たか、西潟との接近を怖がらず近距離での大技の打ち合いに応じ始める。
しかしこうなってしまえば西潟の一撃はやはり強力。西潟が左大外刈、距離が近くなった分この技は十分深く入り、最後は巻き込んで自分の左半身もろとも尾原を畳に沈めて豪快な「一本」。試合時間は3分21秒だった。

尾原は途中から「意外にやれる」とばかりに西潟の距離で勝負してしまったが、ゆえに西潟の力が最大限出せる近距離戦を許してしまい結果としては一本負け。しかし、西潟相手に堂々と渡り合った経験は大きい。今後に繋がる一戦となったであろう。

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上川大樹が意表をつく逆の左払腰で一本勝ち

 
上川大樹(京葉ガス)○払腰(3:58)△佐藤和幸(愛知県警)

優勝候補に挙げられる上川が登場、対するのは体重95kgと全日本選手権では中量級にカテゴライズされる佐藤。

上川が右、佐藤が左組みのケンカ四つ。上川は釣り手で前襟を握ると組み際の右出足払で佐藤を崩す。さらに佐藤が一本背負投に飛び込むと壁のように全く崩れず、ガチンと跳ね返す。ここまでの試合時間は30秒足らずだが、タイミングの良い足技と、相手の担ぎ技にびくともしない受けから推察するに上川のコンディションは上々。

その後も上川は右内股、右出足払と迫力十分の技を繰り出すが佐藤が反応良く受けてポイントには至らない。双方膠着した2分41秒、両者に「指導1」。その後上川が一方的に攻め、3分58秒に佐藤に「指導2」が与えられる。

直後の展開、上川は両手で佐藤の釣り手側の前襟をはだけさせると、そのまま釣り手を握る王道の手順を踏む。この手順はこの試合一貫して見せており、佐藤も釣り手で前襟を得て応じる。しかし上川ここで突然スピードを上げ、左引き手をはだけさせた佐藤の左前襟に差し込みながら組み手と逆の左払腰に飛び込む。まさかの出来事に佐藤は全く反応できずに宙を舞い、上川が体を預けると背中から畳に落ちる。これは文句なしの「一本」。

ここまで抜群の受けのよさで粘った佐藤であったが、この逆技には反応できず。上川、コンディションの良さに加え「逆技使い」という新たな面もみせて上々の立ち上がり。

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小川竜昂が左大外刈から右小外刈に繋ぐが北野裕一は必死に耐える

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北野が小川の大外刈の打ち終わりに引込返を合わせる

 
小川竜昂(新日鐵住金)○優勢[僅差]△北野裕一(パーク24)

互いに左組みの相四つ。小川は先に引き手で前襟を確保すると、奥襟を叩きながら左内股、左大外刈に飛び込む一発狙いの組み立てを続ける。1分9秒には奥襟を叩きながら左大外刈、これを北野が体を捻って耐えると右小外掛に連絡して大きく崩す。ここで北野に消極的との咎で「指導1」。奮起した北野が隅返、背負投と打ち返した直後の2分27秒には小川がまたもや組み際の左大外刈、これは完全に自身の体が相手の裏に抜け決定的な技になるかと思われたが北野はまたも体を捻って回避、驚異的な反応の良さを見せて伏せる。小川はすかさず横三角で返すが、北野は自ら後転して逃れる。この攻防が終息したところで北野に2つ目の「指導」。

小川はなおも攻撃の手を緩めず大外刈を叩き込み続け、4分25秒には3つ目の「指導」を得るものの技でのポイントはなかなか奪えず。逆に北野は終盤に掛けて動きが良くなり、小川が大外刈で潰れたところに引込返を合わせて小川の背中を畳につける場面を3度作り出すが、これは寝姿勢との判断でポイントは得られず。以降のポイントの上積みはなく、結果小川が「指導3」のアドバンテージによって僅差の優勢勝ちを収めた。思い切りのよい大外刈で常ならば「一本」という場面を幾度も作った小川の骨の太い攻撃もさることながら、北野の異常とも言える際の強さもまた光った一番であった。

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高橋和彦が豪快な払腰で具志堅一弘を捕まえ「一本」

 
高橋和彦(新日鐵住金)○払腰(3:38)△具志堅一弘(天理大4年)

両者左組みの相四つ。両襟で圧力を掛けた高橋が左大車で具志堅を崩すと、具志堅は両襟で釣り手を煽りながらの左大内刈、さらに左内股に連絡して対抗。具志堅は釣り手を絞られることを嫌い、高橋が両襟から引き手を袖に持ち替えると自ら釣り手を離し片襟の背負投でいったん潰れ、展開をリセットする。

その後数段のやり取りを経て迎えた3分半過ぎ、先に引き手で襟を得た具志堅は釣り手を確保するなり思い切った左大内刈に飛び込む。高橋はこれをガッチリ受け止めると同時に具志堅の片襟を確保、返す刀で左払腰一閃。具志堅の体は大きく宙を舞い背中から畳に沈む。体格差のある高橋相手に粘っていた具志堅だが、投げられた瞬間に一本負けを悟り手で顔を覆って悔しがる。試合時間は3分38秒。高橋、豪快な投げ技「一本」で上々の滑り出し。

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百瀬優の大外刈に下和田翔平が大外返で対抗する

 
百瀬優(旭化成)○優勢[僅差・判定3-0]△下和田翔平(京葉ガス)

両者右組みの相四つ。序盤は静かな展開、長身の下和田が奥襟を叩いて横変形で構えると、百瀬は引き手で袖を持ち、やや腰を引いて顎で下和田の釣り手を殺す。この形で足技を細かく出し合い膠着すると1分24秒両者に「指導1」。2分には百瀬が片襟で組んだまま動きを止めてしまい百瀬にのみ「指導2」。そして3分32秒には再びの膠着、両者に「指導」が与えられ、この時点での累積警告は下和田が「2」、百瀬が「3」。百瀬は後が無い状況に追い込まれる。

ここに至ってようやく百瀬が勝負に出始めて両襟の左大外刈を連発、これに下和田が応じて試合は大外刈の打ち合いとなる。こうなると形勢は逆転、体のある百瀬の圧力が効き始め、百瀬が左大外刈で惜しい場面を作った直後の4分45秒に下和田に「指導3」。下和田は突如変わった試合のペースに対応できず百瀬の圧力を受け入れてしまい、最後も支釣込足で潰されてタイムアップ。旗判定の結果3-0で百瀬の優勢勝ちが決まった。

百瀬は1回戦に続いて追い込まれてからようやく自分の柔道を取り戻すというもどかしい試合。下和田は序盤すんなりと優位を作れた所為か後半の百瀬のペースアップに対応出来ず。

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神谷快が内股で攻め込む

 
神谷快(筑波大4年)○優勢[僅差・判定3-0]△影野裕和(愛媛県警)

互いに右組みの相四つ。神谷が袖口を握り続けて35秒「指導1」が与えられる。序盤は体格で劣る影野が距離を取りつつ片襟の右大外刈、背負投、小内刈と攻め込み、2分18秒には神谷に2つ目の「指導」。ここまでは先に攻めた影野がペースを握った形。

しかし3分半過ぎ、神谷が距離を取ろうとする影野をクロスで引き寄せてからの小外刈で捕まえ伏せさせると、以降は地力の差が出始める。神谷が両手を確保して攻め込む時間が長くなり、4分0秒に影野に「指導1」。さらに残り22秒のところで影野に「指導2」が与えられ、タイスコアのまま試合終了。旗は3本が揃う大差となり、結果判定3-0の優勢で神谷の3回戦進出が決定した。

影野は前半間合いを取り上手く戦ったが、徐々に地力の差が出始め逃げ切れず。惜しくも敗退となった。

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原沢久喜が垣田恭平を片手内股で攻める

 
原沢久喜(日本中央競馬会)○優勢[僅差・判定3-0]△垣田恭平(旭化成)

優勝候補筆頭の原沢と、担ぎ技ファイターで大会屈指の曲者である垣田がマッチアップ。

原沢が右、垣田が左のケンカ四つ。原沢が上から、垣田が下から釣り手を持ち合う形から、原沢の鋭い片手内股が飛び出す。これは垣田が右手を畳に着いてかわすが、二つ持たせたらただでは済まないという恐怖心を持たせることには成功した模様で垣田はこの後引き手争いで持ち合わず、43秒に垣田に「指導1」。

原沢は自分より小さい相手に対しあくまで両襟を掴む強引な組み手を為さず、釣り手を確保してから引き手で袖を狙うという丁寧な手順を踏み続ける。このことによって生まれた引き手争いは垣田の望んだ展開、双方技が出ずに膠着し2分49秒両者に「指導」。
ここからは垣田が肩をずらしながら懐に入っては、巴投、小内刈、背負投と攻め、一方の原沢は片手の内股を連発し垣田を大きく跳ね上げる場面を作って、と互いに攻め合うも具体的なポイントは得られず。あっという間に6分間が過ぎ去って試合は終了。原沢の片手内股が優勢との評価を受けた格好で、旗判定3-0で原沢の勝利が決まった。

原沢の初戦はやや慎重な立ち上がり。持ち前の思い切りの良さがなく、垣田の曲者ぶりへの警戒感からか全ての技で踏み込みが浅かった。一方の垣田は原沢の動きの硬さに付け込んで、ずらし、潜り、誘い、透かしと鋭い動きで自在の試合ぶり。残った結果は2回戦敗退であるが、MVP級の出来であった。


取材・文:古田英毅/原輝地

※ eJudoメルマガ版5月18日掲載記事より転載・編集しています。

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