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欧州柔道選手権2016・男子7階級概況

(2016年5月7日)

※ eJudoメルマガ版5月7日掲載記事より転載・編集しています。
欧州柔道選手権2016・男子7階級概況
■ 60kg級・世界ジュニア3位のキアが大躍進で欧州王座射止める、フランスの代表選考は大揉め必至
(エントリー30名)

【入賞者】
1.KHYAR, Walide (FRA)
2.SAFAROV, Orkhan (AZE)
3.DAVTYAN, Hovhannes (ARM)
3.MANZI, Elios (ITA)
5.OZLU, Bekir (TUR)
5.PAPINASHVILI, Amiran (GEO)
7.MOOREN, Jeroen (NED)
7.MUSHKIYEV, Ilgar (AZE)

【決勝】

ワリーデ・キア(フランス)○裏投(3:52)△オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)


大ダークホースのワリーデ・キア(フランス)が欧州選手権制覇の大仕事をやってのけた。1回戦でマリア・カーマイン・デロレト(イタリア)、2回戦でアスレイ・マッケンジー(イギリス)からともに「技有」の優勢で勝利を収めると、準々決勝では第2シードのアミラン・パピナシビリ(ジョージア)に一本勝ちを果たす大殊勲。「一番厳しい試合だった」と本人が振り返った準決勝のベキル・オズル(トルコ)戦も「韓国背負い」による「有効」優勢で勝ち抜けると、決勝では第1シードのオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)と対戦。序盤の2分で大内刈「有効」、大内刈「技有」と立て続けに2つのポイントを失ったが、3分52秒にケンカ四つの相手の横から背を抱いて間合いを詰めると。自らの脚を高く上げて投げ切る豪快な裏投「一本」で大逆転。見事初の欧州選手権制覇を成し遂げた。

キアは20歳、昨年の欧州ジュニアチャンピオンで世界ジュニア選手権でも3位に入賞している期待の新鋭だ。11月のグランプリ・青島でも3位(アイベク・イマシェフに敗退)、2月のグランドスラム・パリでは大躍進の3位入賞(志々目徹に敗退)を果たしているが、続くグランプリ・サムスンは初戦敗退(ルクミ・チュクビアニに敗退)を喫しており、今回の結果は驚くべきものと言える。

一方昨年からフランスの一番手扱いだったヴィンセント・リマール(フランス)は2回戦で55kg級上がりの20歳、まだシニアでの実績がないエリオス・マンツィ(イタリア)に敗れて入賞なしに終わっており、一時の勢いが完全に失せた印象。もともと線が細く戦術性に頼って結果を残して来たタイプであるため、マークされ始めるなり勝てなくなったここ数か月の来歴を考えると爆発的な上積みはもはや望めない。キアはこの日の戦いでワールドランキング21位、オリンピック出場ランキングも19位にまでポジションを上げており、ソフィアン・ミルスが衰え、リマールの勢いが止まった現状にあってはフランスの五輪代表争いが揉めることは必至。

本人は試合後にグランドスラム・バクー、グランプリ・アルマティ、そして「資格が与えられるなら」とワールドマスターズ・グアダラハラへの出場を明言してやる気十分。この日は初戦からいきなり3つの「指導」を失い、攻撃ポイント失陥も多し(「有効」2つ、「技有」1つ)。世界ジュニアの戦いぶりを見てもムラ気は否めないが、少なくとも一発屋としての存在感は十分。5月の3大会では最大限に注目すべき選手だろう。

キアに敗れたパピナシビリとオズルは3位決定戦を落として最終成績は5位。表彰台にはオズルとの壮絶な投げ合いを制したホヴァネス・ダフチャン(アルメニア)と、パピナシビリを「指導2」対「指導1」で凌いだもと55kg級欧州カデ王者のマンツィが上がることとなった。

欧州選手権で3度優勝、2連覇中だったベスラン・ムドラノフ(ロシア)は出場しなかった。

■ 66kg級・マグベラシビリが初優勝、決勝は戦術派オーツを豪快「一本」で粉砕
(エントリー33名)

【入賞者】
1.MARGVELASHVILI, Vazha (GEO)
2.OATES, Colin (GBR)
3.BASILE, Fabio (ITA)
3.GALSTYAN, Arsen (RUS)
5.GOMBOC, Adrian (SLO)
5.SHERSHAN, Dzmitry (BLR)
7.OLEINIC, Sergiu (POR)
7.VAN GANSBEKE, Kenneth (BEL)

【決勝】

ヴァスハ・マグベラシビリ(ジョージア)○大外刈(3:52)△コリン・オーツ(イギリス)

優勝候補筆頭と考えられるべき第3シードのゴラン・ポラック(イスラエル)が初戦で、さしたる実績のないディミトリ・ミンコウ(ベラルーシ)に「指導3」まで奪われて敗退するという意外な形でトーナメントがスタート。

その中にあって、最激戦ブロックと目されたプールBから勝ち上がったヴァスハ・マグベラシビリ(ジョージア)が快進撃、みごと初優勝を飾った。マグベラシビリは2回戦と3回戦を「一本」で勝利すると、準々決勝では前戦で第4シードのスゴイ・ウリアルテ(スペイン)を破ったアルセン・ガルスチャン(ロシア)との乱戦を「有効」「技有」と2つのポイントを奪って勝ち抜け、準決勝では第1シードのディミトリ・シェールスハン(ベラルーシ)を「有効」優勢で破って決勝進出。

迎えた決勝は第2シードから勝ち上がったコリン・オーツ(イギリス)の長い手足と「指導」狙いの試合姿勢に手を焼いたが、3分52秒豪快な左大外刈「一本」を決めて優勝を勝ち取った。

線の細い戦術派オーツが決勝まで勝ち上がったことでわかる通り、ポラックが抜けたプールC-Dは明らかな人材不足。ゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)とミハエル・プルヤエフ(ロシア)の強者2人が参加しなかったこともあり、全体として少々熱量に欠ける印象の階級だった。

■ 73kg級・オルジョフ優勝、シャフダトゥアシビリとの決勝は「技有」ビハインドを逆転
(エントリー44名)

【入賞者】
1.ORUJOV, Rustam (AZE)
2.SHAVDATUASHVILI, Lasha (GEO)
3.DRAKSIC, Rok (SLO)
3.TATALASHVILI, Nugzari (GEO)
5.HOJAK, Martin (SLO)
5.IARTCEV, Denis (RUS)
7.VAN T WESTENDE, Sam (NED)
7.WANDTKE, Igor (GER)

【決勝】

ルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)○反則[指導4](4:51)△ラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)


人材多き階級、決勝まで進んだのは第1シードスタートのルスタン・オルジョフ(アゼルバイジャン)とBシード配置からスタートとなったラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)の2人。

オルジョフは2試合連続の一本勝ちで大会をスタート、ロク・ドラクシッチ(スロベニア)との準々決勝は「指導1」優勢の小差で勝ち抜け、準決勝のデニース・ヤルツェフ(ロシア)戦は再び「一本」で勝利し、5戦して4つの一本勝ちとここまでは充実の内容。

一方のシャフダトゥアシビリも2試合連続の一本勝ちで予選ラウンドを駆け上がり、同国のライバルであるヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)との準々決勝は「指導1」対「指導2」の反則累積差で辛勝。準決勝は3回戦で第2シードのセージ・ムキ(イスラエル)を破ったマルティン・ホヤック(スロベニア)を「技有」優勢で退けて決勝まで辿り着いた。

決勝はオルジョフが左、シャフダトゥアシビリが右組みのケンカ四つ。開始早々にシャフダトゥアシビリが両手で帯を掴んだ右大内刈でオルジョフを押し倒し「技有」を得るが、このポイントはオルジョフが尻餅をついたとの判断で取り消し。

以降は手足の長いオルジョフが釣り手で背を抱き接近、シャフダトゥアシビリが釣り手で前襟を持ってこの人としては珍しい肘抜きの背負投など繰り出しながら応戦する展開。しかし残り1分21秒でシャフダトゥアシビリが背中を抱える得意の形から右大内刈、オルジョフの腰を固定して決定的な「技有」を得る。

残り時間からしてシャフダトゥアシビリの優勝ほぼ決定かと思われたが、オルジョフはここから猛攻。走る勢いで相手に迫り続け、残り24秒でシャフダトゥアシビリに「取り組まない」、残り13秒で「極端な防御姿勢」による反則が宣告され、シャフダトゥアシビリの累積警告は合計「3」まで積み重なる。

ここで再びオルジョフが走ってアプローチするとシャフダトゥアシビリは手先を絡ませながらまっすぐ下がる。すると主審はすぐさま試合を止め、残り時間9秒で場外による「指導4」を宣告。シャフダトゥアシビリはさすがに納得がいかない様子だったが試合は逆転で決着、オルジョフが欧州選手権初制覇を成し遂げた。

僅か20秒弱で3つの「指導」が積み重なったわけだが、いずれの判定もルール通り。ただし、常の大会のIJF審判とは運用の文法が異なったように思われる。残り時間僅かであれば試合がひっくり返るような極端な「指導」の連続は控える、相手の反攻に対する評価は攻撃ポイントの優勢を翻さない範囲の反則累積に留めるという暗黙の(そして一種理不尽な)運用文法と異なる裁定であったことが、シャフダトゥアシビリの不満と戦術選択ミスの因であったのではないと思われるが、これは多くの選手の教訓になったはず。

残り試合時間や選手の力関係に鑑みて「指導」宣告を手控える運用傾向は日本国内にあってはさらに強く、現役選手からは「別のルールでやっているも同然」と評せられることすらある。国際大会に出場する選手はこれに慣れて「まさか」の事態を起こさぬよう、特にクロージングにあってはしっかり戦い抜くことを心掛けたい。

優勝したオルジョフは、昨年の欧州選手権(欧州競技大会)の初戦で肘を負傷、絶好調下にありながら世界選手権出場を見送った苦い経験がある。これを払拭する欧州初制覇劇であった。

一方ロンドン五輪66kg級王者のシャフダトゥアシビリは隅返一辺倒のスタイルからどうやら完全に脱却、ここ2年間「見せ技」として効果的に使っていたこの技を、決勝ではケンカ四つという仕掛けやすい関係にありながらただの一度も見せず、五輪に向けて戦い方を定めつつある感あり。ただし、前襟を持って試合を作り、肘抜きの右背負投を見せる「まともな」スタイルで戦いながらも、勝負技の大内刈ではやはりことごとく背を抱く。五輪ではここをきちんと踏まえての対策が求められるだろう。

■ 81kg級・カルモルゼフ初優勝、復調チリキシビリを決勝で下す
(エントリー37名)

【入賞者】
1.KHALMURZAEV, Khasan (RUS)
2.TCHRIKISHVILI, Avtandili (GEO)
3.IVANOV, Ivaylo (BUL)
3.PACEK, Robin (SWE)
5.DE WIT, Frank (NED)
5.DUMINICA, Valeriu (MDA)
7.BOTTIEAU, Joachim (BEL)
7.MUSIL, Jaromir (CZE)

【決勝】

カサン・カルムルザエフ(ロシア)○優勢[技有・谷落]△アヴタンディル・チリキシビリ(ジョージア)


決勝は第1シードの世界王者アヴタンディル・チリキシビリ(ジョージア)と第2シードのカサン・カルムルザエフ(ロシア)による対戦。チリキシビリはここまで全試合一本勝ち(準々決勝のヴェレリウ・ヅゥミニカ戦は指導4勝ち)。一方のカルムルザエフも準々決勝でうるさいヨアキム・ボットー(ベルギー)を「指導4」で退けるなどベスト4入りまではすべて一本勝ち、準決勝は第3シードのイヴァルロ・イワノフ(ブルガリア)を開始早々に奪った内股「有効」で下して決勝まで勝ち上がって来た。

決勝は両組みのチリキシビリが左右に構えを変えながら内股を放ち、カルムズザエフが半身に腰を入れながら対応する展開。しかし中盤に差し掛かるところでチリキシビリは半身で左内股を絡ませながら駆け引きを挑むと、目の前に相手が片足で横腹を見せる絶好の形となったカルムルザエフが呼吸を合わせて谷落。チリキシビリ滑るように背中から真っ逆さま「技有」。

IJFの中継班が「ラッキー」と評したこのポイント以降、カルムルザエフは巧みに試合を減速。左右にこだわり過ぎずに片手は深く抱え、片手は手先を絡ませるという手段でチリキシビリの猛攻を封殺、その反撃を「指導3」までに抑えて逃げ切って欧州選手権初優勝を決めた。

チリキシビリは中途半端に「探り」を入れ続けるスローな展開を志向したことが仇となって思わぬ敗退。しかしトーナメントの進行を見る限りやはり一番の実力者であることは間違いないかと思われる。

3位にはイヴァノフ、そしてこの日2回戦でサボールチュ・クリージャン(ハンガリー)、3回戦でスヴェン・マレシュ(ドイツ)を下す大活躍を見せたロビン・パチェック(オランダ)が入賞。第4シードのロマン・モウストポロウス(ギリシャ)、Bシード選手のラズロ・チョクナイ(ハンガリー)とアレキサンドル・ヴィークツェルツァク(ドイツ)、そしてもと世界選手権銅メダリストのアラン・シュミット(フランス)はいずれも初戦で敗れた。

チリキシビリのライバル、永瀬貴規と「3強」を為すロイック・ピエトリ(フランス)は出場しなかった。

■ 90kg級・リパルテリアニ圧勝、復調トートを豪快な「一本」で屠る
(エントリー35名)

【入賞者】
1.LIPARTELIANI, Varlam (GEO)
2.TOTH, Krisztian (HUN)
3.KUCZERA, Piotr (POL)
3.NYMAN, Marcus (SWE)
5.IDDIR, Alexandre (FRA)
5.KUKOLJ, Aleksandar (SRB)
7.BAUZA, Karolis (LTU)
7.NHABALI, Quedjau (UKR)

【決勝】

ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)○外巻込(1:53)△クリスティアン・トート(ハンガリー)

トーナメント全体の密度は薄いが、強豪の影は濃い。歯ごたえのある陣容を縫って、第1シードのヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)と第2シードのクリスチャン・トート(ハンガリー)が決勝まで勝ち進んだ。

リパルテリアニは対戦が予想されたイリアス・イリアディス(ギリシャ)とマーカス・ナイマン(スウェーデン)の強豪2人とシリル・グロウスクラウス(スイス)までを加えたシード選手3名が全て対戦前に陥落するというトーナメント進行にも助けられ、4戦して2つの「一本」をマークして悠々決勝に進出。一方のトートも面倒な相手は準決勝のアレクサンドル・イディー(フランス)のみであったが、この試合はイディーが棄権。つまりは両者にとってこの決勝が唯一、そして最大の山場となった。

決勝は左に構える長身のリパルテリアニに対して短躯のトートが前に出ながら片襟の右背負投、左一本背負投を先んじて仕掛ける力強い柔道を披露、「指導1」を先行する。

これを受けたリパルテリアニはペースアップ。圧力を掛けてツイと前進し、トートが場外に詰まったところで大きく腕を回して右外巻込に打って出る。ただでさえ間合いを測りにくい長身選手の遠間からの飛び込み、さらに下がり際に技を合わされた形のトートはもはや踏ん張る材料がなく一回転「一本」。リパルテリアニが2年ぶり3度目の欧州選手権優勝を成し遂げた。

前述の通りこの2人以外の強豪は振るわず。その因となったのはほぼ無名と言って良いピョートル・クチェラ(ポーランド)の存在だ。クチェラは2回戦でアクセル・クルジェ(フランス)に「技有」優勢で勝利すると3回戦はイリアディスに一本勝ちする大仕事。準々決勝ではナイマンにも「技有」「一本」と立て続けに奪って圧勝、リパルテリアニに一本負けで回った3位決定戦でも難敵アレクサンダー・クコル(セルビア)に一本勝ち、見事表彰台まで辿り着いた。

クチェラは21歳、昨年の世界ジュニアで3位に入賞している新鋭。IJFワールドツアー(グランプリ以上)の参加はまだなく、おそらくエントリーを為すであろう5月のツアーの出来が非常に楽しみ。

イリアディスはグランドスラム東京(予選ラウンド敗退)、グランプリ・デュッセルドルフ(2敗して7位)に続きまたしても表彰台に手が届かず。試合ぶりからも、さすがに地力の衰えを疑わざるを得ず、特に受けの脆さは深刻。現在ランキングは14位で五輪出場はほぼ確実だが、本戦に向けて明るい展望が抱きにくい状況だ。

有力選手ではランキング4位のノエル・ファンテンド(オランダ)、同6位のキリル・デニソフ(ロシア)が出場回避の策を採り、畳に姿を現さず。「5月の3大会」で最後の顔見世を行うかと観測される。

■ 100kg級・大荒れ大会は復活グロルの連覇達成で幕
(エントリー27名)

【入賞者】
1.GROL, Henk (NED)
2.NIKIFOROV, Toma (BEL)
3.KORREL, Michael (NED)
3.MINASKIN, Grigori (EST)
5.GASIMOV, Elmar (AZE)
5.KRONBERGER, Christoph (AUT)
7.BORODAVKO, Jevgenijs (LAT)
7.FLETCHER, Benjamin (GBR)

【決勝】

ヘンク・グロル(オランダ)○谷落(3:04)△トマ・ニキフォロフ(ベルギー)

31歳となったヘンク・グロル(オランダ)が2年連続3度目の欧州制覇を達成。このところの息切れを反映してスタート位置はぎりぎりのBシード、しかも直下には五輪出場権獲得に燃える20歳のヴェカ・グビニアシビリ(ジョージア)が配されてと上位進出が想起される状況ではなかったが、2回戦で組まれたこの試合は「有効」ビハインドを跳ね返して見事一本勝ち。これで波に乗ると最大の山場と目された準々決勝では試合巧者ぶりを如何なく発揮、第1シードのエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)を「指導1」対「指導3」の反則累積差で退けることに成功する。準決勝では2回戦でディミトリ・ピータース(ドイツ)を食う大仕事を成し遂げたクリストフ・クロンベルガー(オーストリア)をこれも「指導3」で退けて決勝進出決定。

決勝ではこちらも大荒れとなったプールC-Dをしぶとく勝ち上がったトマ・ニキフォロフ(ベルギー)と対戦。「指導」ひとつ差をリードした3分4秒に相手の中途半端な右内股に鋭く反応、右腕で相手を制しながら真裏に叩き落し、この谷落「一本」でみごと優勝を決めた。

荒れた大会であったが、強豪との対戦皆無で勝ち上がったニキフォロフではなく、グビニアシビリとガシモフの難敵2人を下したグロルの最終的な勝利は妥当な結果であった

カールリヒャード・フレイとの熾烈な五輪代表争いの渦中にあるピータースは初戦敗退の大失態。5月の3大会に生き残りを掛ける。

第2シードのルーカス・クルパレク(チェコ)は初戦でグリゴリ・ミナスキン(エストニア)に「技有」を奪われ、反撃は最終盤の「有効」1つに留まりあっさりここで終戦。第3シードのシリル・マレ(フランス)も初戦でマイケル・コレル(オランダ)に「指導2」対「指導1」で敗れ、このところしぶとく成績を残して来たマーティン・パチェック(スウェーデン)も全く我慢が利かず初戦で「指導」累積により優勢負け、エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)は初戦のアドラン・ビスルタノフ(ロシア)との注目対決を「技有」対「一本」の殴り合いで制したがまるで糸が切れたように次戦であっさり敗退。強豪たちのこの大会に掛けるモチベーションに大きな差があり、その中でこの大会に是が非でも勝つ「必要があった」グロルが結果を出した大会と総括すべきかと思われる。

■ 100kg超級・リネール全試合一本勝ち、マティアシビリが敢闘賞ものの大健闘為す
(エントリー24名)

【入賞者】
1.RINER, Teddy (FRA)
2.SASSON, Or (ISR)
3.MATIASHVILI, Levani (GEO)
3.NATEA, Daniel (ROU)
5.BOR, Barna (HUN)
5.GORDIIENKO, Oleksandr (UKR)
7.BREITBARTH, Andre (GER)
7.METTIS, Juhan (EST)

【決勝】

テディ・リネール(フランス)○腕挫十字固(4:54)△オール・サッソン(イスラエル)


絶対王者テディ・リネール(フランス)が全試合一本勝ちで優勝。スコア上は今回も完璧な出来であったが、最終盤まで決着が延びた後半2試合、わけても準決勝のレヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)戦はリネール攻略という観点から非常に興味深い試合だった。

マティアシビリは短躯重量、かつ左組みで左右に担ぎ技がある、世評の「リネールの嫌いなタイプ」にピタリと嵌る選手。先にリネールの釣り手の袖を抑え、手を絡ませるように前進しながら担ぎのチャンスを狙うこの選手に対しリネールは明らかにやりにくそう。「絶対的に有利な形でしか行けない」性格が攻めを遅らせてしまい、残り1分8秒にマティアシビリに「指導2」が与えられたところでようやく反則ポイント1つのリードを得るという状況。残り16秒で放った膝車もマティアシビリの右外巻込に変換されて潰れ、残り時間はあとわずか。

ここでリネールは、相手の右袖を引き手で織り込んで押し込み、相手に完全に背を向かせる。この時点で「それまで」を確信したマティアシビリが両手を離して場外に向かって歩き始めると、リネールは走って追い掛けて背中を引っ掴み、左脚を投げ出す浮技の形で体を捨てて無理やりの谷落「一本」。記録上の試合時間は5分0秒、スコアにも「一本」が残されたが、会場にはブーイングも巻き起こり、後味の悪い結末となった。

決勝のサッソンも両方に担ぎ技がある選手だが線が細い分徐々に体力差が出て、リネールにマティアリビリ戦ほどの恐怖感はなし。ただし開始1分には左背負投で崩される場面も現出、残り19秒までに3つの「指導」は得たもののやはり煮え切れない試合。そんな中で残り6秒、サッソンが深く右一本背負投に入り込んで会場は大いに沸く。しかしリネールはその腕を一跨ぎ、膝を着いた相手の右肘を立ったまま腕挫十字固に極めて一本勝ち。この試合も難戦をスコアで無理やり塗りつぶした形でしっかり優勝を決めた。

左組み(サッソンはどちらでも組むが)相手のこの2試合、リネールが攻撃を為したのは、組み際に先に袖を一方的に抑えて奥襟を叩いた「100-0」上体、組み手の左右が関係なくなる「自分の形」が出来上がったときのみ。奇襲であったマティアシビリ戦の谷落すら、この「相手の組み手を無力化した」「一方的な形」と規定することが出来る。左組み×短躯重量×担ぎ系というリネール突破のキャラクター的要素はこれに嵌る駒を持たない日本には直接の参考にはならないかもしれないが、戦術立案という観点においてはヒント満載の2試合であった。

マティアシビリは大善戦、力の絶対値はともかく相性的にはいまやリネール攻略の一番手と呼ぶべきだろう。同時出場した先輩アダム・オクリアシビリ(ジョージア)は初戦敗退に終わっており、オクルアシビリ最後のチャンスと目された準々決勝での新旧エース直接対決はなし。どうやら五輪出場も確実にしたと見ておいてよいだろう。

リネール自身が「強い」と認めた来歴があるバルナ・ボール(ハンガリー)は第2シードに配されたが準決勝でダニエル・ナテア(ルーマニア)に「技有」優勢で敗退。3位決定戦ではマティアシビリに「指導3」を奪われて2敗目、最終成績は5位に終わった。

※ eJudoメルマガ版5月7日掲載記事より転載・編集しています。

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