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大本命敬愛を止めるものなし、児玉ひかるの全勝テコに危なげなく優勝決める・第38回全国高等学校柔道選手権女子団体戦レポート②準決勝~決勝

(2016年4月16日)

※ eJudoメルマガ版4月16日掲載記事より転載・編集しています。
大本命敬愛を止めるものなし、児玉ひかるの全勝テコに危なげなく優勝決める
第38回全国高等学校柔道選手権女子団体戦レポート②準決勝~決勝
■ 準決勝
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準決勝、大成高の先鋒武田亮子が東大阪大敬愛高・刈谷美咲から「有効」を奪う

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大成高の大将粂田晴乃が東加珠から小外掛「技有」

2カードとも対戦構図は相似。順当に勝ち上がって来たAシード校2校に、シード校を倒してここまで這い上がって来た練度の高いノーシードチーム2校が挑む。いずれも少々戦力に差があるカードと見込まれる中、保有戦力に大きく優る大成と敬愛に大成に対し、ここまで集中力高く実直な戦いぶりで成果を上げてきた東大阪大敬愛と藤枝順心がどこまで粘ることが出来るかがこの準決勝戦2試合の焦点。

大成高 2-0 東大阪大敬愛高
(先)武田亮子○優勢[有効・背負投]△刈谷美咲
(中)山室未咲×引分×嘉重春樺
(大)粂田晴乃○合技[小外掛・崩上四方固](2:23)△東加珠

第1試合は大成が快勝。先鋒武田亮子が背負投「有効」による優勢、大将粂田晴乃が小外掛と崩上四方固による合技「一本」と、取るべき人がしっかり取ってフィニッシュ。最終スコア2-0という大差で勝利を収めた。大成はこの準決勝で前代チームが激戦を繰り広げた宿敵・埼玉栄との対戦を想定していたかと思われるが、ライバルが零れ落ちても気を緩めることなくまことに隙のない試合。

東大阪大敬愛は初戦からここまで凄まじい集中力、稽古の濃さが透けて見える骨太の戦いを繰り広げてきたが、手堅く力をスコアに反映させた大成の前に攻略の手掛かりを掴めず。準決勝で力尽きた。

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ビハインドを負った藤枝順心高の中堅水野瑚春は猛攻、小柳穂乃果から「指導」1つをリードする

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大将戦は敬愛高のエース児玉ひかるが伊藤七海を払腰「一本」に仕留めて試合終了

敬愛高 2-0 藤枝順心高
(先)寺田宇多菜○縦四方固(1:24)△菊池涼音
(中)小柳穂乃果×引分×水野瑚春
(大)児玉ひかる○払腰(0:42)△伊藤七海

大会最強のカードである児玉ひかるを大将に置く以上敬愛は前衛2枚で最悪1点失っても良し、一方の藤枝順心は先に2点取って試合を終わらせてしまう他に勝利の手立てなし、という構図はこれまでの試合と全く同じ。

敬愛は先鋒寺田宇多菜が菊池涼音を相手に手堅く縦四方固「「一本」で勝利。藤枝順心はこの日の躍進の立役者である水野瑚春が小柳穂乃果から「指導」1つをリードする奮戦を見せて粘ったが残った結果は引き分け、星勘定はこれでは足りず。大将戦は児玉が伊藤七海を僅か42秒の払腰「一本」に仕留めて試合をまとめ、敬愛がスコア2-0の圧勝で決勝進出を決めた。

■ 決勝
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2年連続で決勝に勝ち上がった大成高

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大本命の敬愛高は3年ぶりの高校選手権制覇を狙う

大成高は初優勝を狙って臨む決勝の畳。前代鍋倉那美らを擁した「黄金世代」が最後の大会であるインターハイで優勝、ついに全国制覇の壁を破ったその勢いを駆って大本命・敬愛越えに挑む。この日はまず2回戦で東京学館浦安高(千葉)を2-1、フルメンバーにチェンジした3回戦以降は新潟第一高(新潟)を2-0、富士学苑高(山梨)を2-1、東大阪大敬愛高(大阪)を2-1で下しての決勝進出。全ての試合で2得点以上を挙げたスコアほどの爆発力はないが、「攻めることで守る」とでもいうべき、攻撃性を前面に押し出し、その結果として生み出されるチーム総体の安定感は抜群。

一方の敬愛高はこの決勝で3年ぶりの高校選手権制覇を狙う。個人無差別の覇者児玉ひかるを大将に据えた今大会の勝ち上がりは2回戦で奈良育英高(奈良)を1-0、3回戦で淑徳高(東京)を1-0、準々決勝で長崎明誠高(長崎)を2-0、準決勝で藤枝順心高(静岡)を2-0というもの。無失点で勝ち上がったここまでのスコアが示す通り、大将児玉の絶対的な得点力を背景に前2枚がしっかり試合を作る、この明確な指針を以て勝ち進んで来たこちらもまことに隙の少ないチームだ。

昨年度金鷲旗大会決勝では敬愛が大将児玉の2人抜きにより勝利を収め、インターハイ決勝では大成が辛勝しているという因縁カードだ。

開示されたオーダー順は下記。

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決勝戦が開始される

大成高 - 敬愛高
(先)武田亮子 - 寺田宇多菜
(中)山室未咲 - 小柳穂乃果
(大)粂田晴乃 - 児玉ひかる

大成の大将粂田はこの代の小学、中学カテゴリ重量級の覇者で前代から度々団体戦でも出場して来た強者。通常であればどのチームを相手にしても大駒カードとして通用するはずの選手だが、ただ1人児玉にだけはこの属性は反映されない。金鷲旗大会の対戦でも児玉が腰の重い粂田を払巻込で畳から引っこ抜き、合技「一本」で快勝している。大将戦は児玉の勝利を織り込んで試合を組み立てるべきで、例え代表戦になったとしても敬愛の圧倒的優位は動かしがたい。

ということはこの決勝も構図は同じ、大成は2点を取って中堅までで試合を終わらせるしか道がない。個人戦52kg級準優勝者の先鋒・武田は当然ながらしっかり戦えば十分得点を計算することが出来、ゆえに勝負のポイントは中堅戦。1年生レギュラー山室未咲の頑張りに全国制覇の成否が掛かる。

一方の敬愛は前半2戦をしっかり戦いタイスコアで、出来得れば1点リードで試合を繋いで、少しでもアクシデントの確率を減らし万全の体勢で大将戦を迎えたい。大枠順行運転で勝ちを得られるだけの力があるが、双方の意識の中にあるこの力関係自体が武器になるはず。1試合ごとに相手のモチベーションを削り取るような展開を続けて、児玉登場までに段重ねでシナリオを自軍に引き寄せていきたい試合。

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大成の先鋒武田亮子が右袖釣込腰で先制攻撃、寺田宇多菜危うく転がり掛かる

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停滞を打破し、残り1分半から武田が得意の担ぎ技を連発、計3つの「指導」を得る

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終了直前、武田の大内刈はあわやポイント

先鋒戦は大成・武田亮子、敬愛・寺田宇多菜ともに左組みの相四つ。盤面を頭に入れた寺田の守備志向ゆえかあっという間に両袖の形が出来上がるが、武田が思い切った右袖釣込腰でブレイク。寺田体が持っていかれるが、転がって決めようとした武田の回転を膝を着いて止め「待て」。

以後手先の組み手争いが続く。主審は武田の側の消極性を採る少々微妙な判断を為し、武田にのみ「取り組まない」判断による「指導1」を宣告。

中盤は上背に大きく優る寺田が奥襟の封殺を使い始め、武田は一時アイデンティティである担ぎ技の連続攻撃が鳴りやむ。しかし組み際を狙った一本背負投で打開の手ごたえを得ると、2分過ぎからは右袖釣込腰に片襟を差した左背負投で連続攻撃、さらに寺田の奥襟釣り手を右袖釣込腰で弾き飛ばした直後の2分28秒に寺田に対し消極的との判断による「指導」が与えられる。武田は自分に傾き始めた流れを離さず直後の展開も攻め続け、武田の大内刈を寺田が前技を偽装して耐えた2分55秒には寺田に偽装攻撃による「指導2」が宣告される。

武田は肘抜きの左背負投に左一本背負投で攻め続け、残り30秒を過ぎたところでひときわ威力のある左大内刈、寺田なんとかポイント失陥は回避するが激しく畳に落ちる。直後の3分34秒、主審は寺田に3つ目の「指導」を宣告。

ついに試合を決めるポイントを得た武田、以後の盤面を睨んであと1つの「指導」を得んと猛攻。最後まで攻撃のペースが落ちることはなかったが、以後ポイントの積み上げはなく試合は終了。結果、この試合は「指導3」対「指導1」による僅差優勢で武田が勝利することとなった。大成が1点を先制、敬愛はこれが今大会初失点。

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山室未咲が右大外刈、崩れた小柳穂乃果は相手に背を向け場外までたたらを踏んで逃れる

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山室は釣り手をクロスに入れて右大外刈を連発

中堅戦は大成・山室未咲、敬愛・小柳穂乃果ともに右組みの相四つ。

開始23秒、袖口を絞ったとの判断で山室に「指導1」。九州ブロック個人王者で学年が上の小柳に分があると目された試合であったが、山室は肩越しのクロス組み手に手応えを得て右大外刈を連発。小柳捌き切れず一度は場外に逃れ、さらに手を突いて耐えるが直後の1分11秒小柳に「指導1」。

山室は肩越しクロスの鉾を収めず、釣り手で肩越しに背中を得ては相手の首をくぐらせての「標準的な組み手」との出し入れを試みながら攻める。2分半過ぎには肩越しクロスから左小外刈、さらに支釣込足の形で相手の右足を細かく蹴り崩す。敬愛ベンチからは「行けって!」と小柳に激しい檄が飛ぶが、主審は山室にクロス組み手の咎による「指導2」を宣告する。経過時間は2分33秒、残り時間は1分27秒。

しかし山室はこの「指導」宣告に怖じず、流れを掴んだ因であるこの肩越しクロスという手立てを手離さない。続く展開も釣り手を肩越しに入れて右大内刈に右大外刈と攻め、結果残り56秒で小柳に2つ目の「指導」が宣告されるに至る。

以後も山室攻め続け、クロス組み手と奥襟の「標準的な組み手」を渡り歩きながら攻める。反則を食わないよう十分留意しての攻めと思われたがあまりの頻度の高さゆえかクロスの印象が強くなった模様、主審残り35秒で山室に少々タイミングのずれた「指導3」を宣告する。

山室それでもこの有利な形を辞めず、釣り手を肩越しに入れて小柳の頭を下げさせると、めくり上げるような右大内刈で小柳を転がす。あわやポイントという場面だったが小柳なんとか身を捩じって回避。この時点で残り時間は数秒、最後まで山室が攻め続け小柳が耐える構図のままタイムアップ。中堅戦は結局引き分けに終着する。

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大将戦、粂田晴乃は袖を絞って児玉ひかるに厳しい組み手で対峙

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残り20秒を過ぎたところでようやく万全の組み手を得た児玉が左内股、押し込んで「一本」

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スコアは1-0、大成のリードは僅差(「指導」累積差)による1点のみ。スコアではビハインドながら、盤面は敬愛有利という様相。

大将戦は大成・粂田晴乃、敬愛・児玉ひかるともに左組みの相四つ。23秒、袖を抑えて試合展開の減速を図った粂田に対し、袖口を絞った咎で早くも「指導1」。

粂田きちんと児玉の釣り手を落として粘り強く試合を進めるが、児玉は釣り手の位置を揚げた50秒過ぎから連続攻撃。小内刈に引き続き腰を切る前技動作を連発、さらに左内股で攻める。粂田体落で対応するが、偽装攻撃の咎により59秒粂田に2つ目の「指導」。

以後も児玉何度か山場を作りかかるが、粂田は低い重心を生かして良く耐え、後の先の返し技に左一本背負投、左大外刈で抗して決定的なポイントは与えず。残り1分を過ぎたところで児玉は左大外刈に左大内刈、左内股と明らかに勝負に出るが取り切れず、直後テーピングを巻きなおす中断があり、追い詰められかかった粂田が一息ついて試合展開は減速。

しかし残り20秒を過ぎたところで、児玉が釣り手を一旦自ら切って奥襟を掴むことに成功。ここまで丁寧に試合を進めて来た粂田だが、体力が切れたか肘を曲げたまま脇のあたりを突いて対応曖昧なままこの形を受け入れてしまう。

児玉呼吸を整えるなり左内股。下がった相手に合わせて後方に追い込むと、この試合初めて児玉の力を正面からまともに受けた粂田耐えきれず吹っ飛び「一本」。

試合時間は3分42秒、最終スコアは1つの「一本」対1つの「僅差優勢」の内容差。この瞬間敬愛3年ぶりの高校選手権制覇が決定した。

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優勝の瞬間、抱き合う敬愛の選手たち

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インタビューに応える児玉は2日間全勝でチームを牽引した。

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表彰式に臨む敬愛チーム

敬愛高 ①-1 大成高
(先)寺田宇多菜△優勢[指導3]○武田亮子
(中)小柳穂乃果×引分×山室未咲
(大)児玉ひかる○内股(3:42)△粂田晴乃

武田があと1つの「指導」で相手を反則負けに追い込むところまで辿り着いた先鋒戦の3分34秒からタイムアップまでの26秒間、そして山室が「指導1」を奪ってからクロス組み手で攻めに攻めまくり自身の組み手の反則評価による「指導」を貰うまでの71秒間、さらにこの試合の最終盤山室の大内刈が決まり掛けあわやポイントかと思われた瞬間、と勝負が揺れる場面はいくつかあったが、決定的な分岐点はことごとく敬愛が死守。大枠最初から最後まで敬愛のシナリオで進んだ試合と評価して良いかと思われる。女子柔道における「絶対的な重量級エースの価値」の重さをあらためて知らしめる大会であった。

ライバル各校に役者が揃っていた前代、前々代の激戦を潜り抜けさせ、育成の難しい女子重量選手をしっかり作り上げておいた敬愛の勝利、児玉という大駒一枚の育成が優勝最大の因であった、とは衆目の一致するところだろう。チーム事情からすれば決して噛み合わせが良いとは言えない今大会のレギュレーションでしっかり仕事が出来る選手を準備出来る、その選手層の厚さも他を圧していたと言って良い。各校これぞという役者が抜けて全体的に土壌が痩せた大会であったが、その中でもっとも力を保ち続けた敬愛の組織力の勝利。相対的な力関係からすれば、今代は「三冠」も十分手に届く状況かと思われる。

大会全体としては、事前評の「小粒な大会」という言葉を覆さず、そのまま大会評として充てて良いのではないだろうか。児玉と堂々渡り合う重量級のライバルも、大本命として全てのチームに狙われるはずの敬愛を危機に陥れるチームも現れず、本命が最初から最後までほとんど全く危なげなく勝ち抜くというドラマ少なき低空飛行の大会であった。競技としての強弱はともかくとしても、これぞという個性派の少なさには業界全体の閉塞感を感じずにはいられない。この状況が続けば高校女子柔道という狭いカテゴリのみならず、女子柔道競技全体の危機だ。各地の選手たち、指導者たちの奮起に期待したい。

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優勝の敬愛高

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吉元幸洋監督の胴上げ。日本武道館では3年ぶりに宙を舞った。

【入賞者】

優 勝:敬愛高(福岡)
準優勝:大成高(愛知)
第三位:東大阪大敬愛高(大阪)、藤枝順心高(静岡)
敢闘賞:埼玉栄高(埼玉)、富士学苑高(山梨)、長崎明誠高(長崎)、市立川口総合高(埼玉)

最優秀選手:児玉ひかる(敬愛高)
優秀選手:寺田宇多菜(敬愛高)、粂田晴乃(大成高)、刈谷美咲(東大阪大敬愛高)、水野 瑚春(藤枝順心高)

敬愛高・吉元幸洋監督のコメント
「最後まであきらめない柔道、必ず『一本』を取る柔道をと指導して来ました。結果が出て嬉しいです。ただ、今日は疲れました(笑)。1回戦から厳しい戦いと思っていました。児玉がいるから、とは言われますが、ハッキリ言って確実に取られないという自信はなかったですし、皆さんが仰るほどるほど簡単に考えてはいませんでした。最後まで全員が気持ちを切らさずやってくれたのが一番の勝因です。小柳の調子が良くなく替えるべきかと悩みましたが、キャプテンの意地で決勝も引き分けて来てくれた。言い続けてきた『児玉に頼る戦いをするな』という課題が達成出来たとは言い切れないですが、全員本当に頑張ってくれたと思います。反省は一杯なので、次の試合に生かします」

【準々決勝】

東大阪大敬愛高(大阪) 3-0 埼玉栄高(埼玉)
大成高(愛知) 2-1 富士学苑高(山梨)
敬愛高(福岡) 2-0 長崎明誠高(長崎)
藤枝順心高(静岡) 1-0 市立川口総合高

【準決勝】

大成高 2-0 東大阪大敬愛高
敬愛高 2-0 藤枝順心高

【決勝】

敬愛高 ①-1 大成高

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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