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蓜島剛が圧勝、決勝の撃ち合いも「一本」で制し高校カテゴリ初優勝・全国高等学校柔道選手権男子無差別レポート

(2016年4月7日)

※ eJudoメルマガ版4月7日掲載記事より転載・編集しています。
蓜島剛が圧勝、決勝の撃ち合いも「一本」で制し高校カテゴリ初優勝
全国高等学校柔道選手権男子無差別レポート
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2回戦、蓜島剛が藤田慶二から大外刈「一本」

レギュレーションの変更により今大会から90㎏級、100kg級、100kg超級の3階級が統合されることとなった男子無差別は稀に見る激戦階級。これぞという強豪の多さ、団体戦の主役級の密度の高さに鑑み、簡単ながら4ブロックに分けて勝ち上がりを追ってみたい。

【Aブロック】

最激戦ブロック。第1シードの蓜島剛(埼玉・埼玉栄高)のほか、九州ブロック最重量級の覇者西田将樹(福岡・大牟田高)、この世代の少年カテゴリの覇者として君臨した辻湧斗(神奈川・東海大相模高)、中国ブロックで大暴れし団体戦でも全国屈指の抜き役の呼び声高い松島颯祐(島根・開星高)と非常な密度で役者が揃った。

上記で上側ブロックに置かれたのは蓜島のみ。蓜島は2回戦で藤田慶二(石川・津幡高)に大外刈「一本」(1:36)、3回戦では奥谷政城(茨城・水戸啓明高)から4つの「指導」を奪っての反則(2:45)で勝利して順調に準々決勝進出。

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2回戦、「有効」をリードした松島颯祐が辻湧斗の裏投を被り返して「一本」

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3回戦、松島颯祐が西田将樹から大内返「一本」

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蓜島と松村による準々決勝

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蓜島が右払腰で攻め込み続ける

下側ブロックでは1年生の松村が快進撃。1回戦は福井悠雅(高知・高知高)からの「技有」優勢による勝利に留まったが、辻を畳に迎えた2回戦は大内返「有効」を奪って先制、さらに相手の裏投と渡り合っての大内刈「一本」(2:58)と堂々たる戦果を挙げ、3回戦では前戦で井口大毅(京都・京都学園高)を合技「一本」(1:27)に仕留めるなどここまで2戦2一本勝ちの西田と対峙。松村が身長180センチ体重142キロ、西田が182センチ130キロというこの超大型対決を見事大内返「一本」で勝ち抜き、蓜島との準々決勝に辿り着くこととなった。


この試合は蓜島、松村右組みの相四つ。蓜島度々右大外刈を置きに行くが松村のサイズと近接戦闘の強さを警戒してか決定的なところまでなかなか踏み込めず、1分に双方に「指導」が与えられたのみで試合はGS延長戦へともつれ込む。

この延長も非常な消耗戦。スタミナが切れて来た松村は1分半を過ぎたところで密着抱き着きの勝負を試み場内大いに沸くが、蓜島は松村の突進を驚異的なバランスで残し自らの右内股に変換して「待て」。この一撃で松村は最後の体力を使い果たした感あり、蓜島の粘っこい攻撃に技を撃ち返せなくなりGS2分22秒に激戦決着。松村に2つ目の「指導」が宣告され、このブロックからの蓜島の勝ち上がりが決まった。

【Bブロック】

上側の山は90kg級の新垣慶一郎(沖縄・沖縄尚学高)が準々決勝進出。2回戦で阿部拓馬(山形・新庄東高)をGS延長戦「有効」(GS1:02)で破ると、山場の3回戦は近畿ブロック100kg超級王者の田中慎太郎(奈良・天理高)を「指導1」優勢で制してベスト8入り決定。

下側の山からは100kg級の高橋佑人(北海道・北海高)が芯の強い柔道でベスト8入り。1回戦の三好大成(徳島・阿波高)戦を内股「一本」(2:34)で勝ち抜くと、以降は強敵と連戦。2回戦で激戦区兵庫の王者佐藤貴成(兵庫・神港学園神港高)を「指導1」の優勢で凌ぐと、3回戦は団体戦の優勝候補にも挙がる大成高のポイントゲッター森部篤知(愛知・大成高)を体幹の強さと図太い前進で圧倒。「指導2」の優勢でこの試合にも勝利して準々決勝まで勝ち抜いた。

準々決勝は意外な早期決着。新垣が高橋を僅か47秒の裏投「一本」に仕留め、気をよくして蓜島剛が待ち受ける準決勝ステージへの勝ち上がりを決めた。

【Cブロック】

下側の山の3回戦で稀に見る大激戦が現出、演じた役者は激戦区東京代表の河田闘志(東京・国士舘高)と星野太駆(岡山・作陽高)の2名。この試合は団体戦の大本命である国士舘のポイントゲッターである河田に、星野がいかにも作陽らしい骨の太い前進行動で堂々渡り合って本戦3分では勝負がつかず試合はGS延長戦へ。互いにつま先立ちでバランスを取り合うような投げの打ち合いが幾度か訪れた末のGS4分19秒、星野の支釣込足についに河田の巨体が陥落、「技有」優勢を以て試合は決着。星野が堂々ベスト8入りを決めた。

上側の山では、2回戦における川井康平(静岡・静岡学園高)と加賀谷武弘(群馬・常盤高)の潰しあい(「有効」優勢で川井が勝利)を3回戦で待ち構えたシード選手・長岡季空(広島・崇徳高)が「有効」優勢でこの試合に勝利、ベスト8進出を決める。

激戦必至と目された準々決勝だが、星野は7分半を戦った前戦で精根尽き果てていた印象。投げ際に強い長岡と再びギリギリのつばぜり合いを再び演じる力は残されておらず、この試合は2分44秒大内返「一本」で長岡が快勝。栄光のベスト4の座を勝ち取ることとなった。

【Dブロック】

下側の山では九州100kg級王者の後藤龍真(熊本・鎮西高)と堤大志(三重・四日市中央工高)が1回戦で戦うという過酷なカードが組まれた。双方初戦、しかも強敵相手、かつケンカ四つということで互いにやや慎重な内容となり、残り18秒で堤が「指導1」のビハインドを追いついて試合はGS延長戦へ。後藤が奇襲の右一本背負投に左内股で半歩抜け出すと、ひとまず攻勢を取り返したい堤は片手内股を2度繰り出す。これが偽装攻撃と判断されてしまい、GS2分30秒堤に2つ目の「指導」宣告、後藤の勝利が決まった。

堤という蓋を取り除かれたこれ以後後藤は快進撃。2回戦は山中広夢(宮城・仙台育英高)を大内刈「一本」(0:48)、3回戦は田﨑稜太(新潟・帝京長岡高)を内股「一本」(0:17)で仕留めてベスト8入り決定。

上側の山では山下魁輝(千葉・木更津総合高)が大暴れ。1回戦で出村一馬(富山・小杉高)を「指導4」による反則(2:40)、2回戦は東北ブロック王者の大場悠斗(秋田・本荘高)に小外掛「一本」(2:05)、3回戦は国分裕輝(福島・田村高)に支釣込足「一本」(2:21)と快勝続きでベスト8進出の栄を得る。

迎えた準々決勝は山下の勢いが後藤を凌駕。2分28秒、後藤の背に食いついた山下が所謂「腰絞め」を完全に決めて「一本」。ここまで全試合一本勝ちの素晴らしい成績でベスト4入り決定。後藤はインターハイとは打って変わって初戦から一貫して煮え切らない試合が続いていたが、戦いやすかった2、3回戦で糊塗出来ていた元気のなさが強敵山下を相手に一気に結果として噴き出たという一番だった。

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準決勝、蓜島剛が新垣慶一郎からあっという間の払腰「技有」、そのまま袈裟固に抑え込む

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山下魁輝が長岡季空の内股をめくって返し「有効」

【準決勝】

松村との激戦を乗り越えた蓜島は開放されたようにあっという間の勝利。新垣を僅か55秒の合技「一本」に仕留め、決勝進出決定。

長岡と山下による第二試合は激戦。本戦3分では勝負がつかず、迎えたGS延長戦1分32秒、山下の内股返「有効」で熱戦決着。ノーシードスタートの山下、5戦して4つの一本勝ちという素晴らしい出来でついに決勝の畳まで辿り着くこととなった。

【決勝】

決勝は蓜島、山下ともに右組みの相四つ。試合が始まると先に良い形を作ったのは山下。引き手で蓜島の前襟を得ると、次いで釣り手で奥襟を確保。蓜島の頭を下げさせると、引き手を袖に持ち直し一息で組み手を完成させる。蓜島は山下の奥襟を両手で落とそうと試みるもその動きに合わせて山下が支釣込足。蓜島は大きく崩れて伏せ、待て。続く展開でも山下が組み手で優位を保ち試合の主導権を握ると、1分5秒には蓜島に「取り組まない」咎による「指導1」が与えられる。実力に勝るはずの蓜島だが、山下の丁寧な組み立てと体の強さをやや持て余している印象。

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決勝、山下は巧みな組み手と足技で蓜島に対峙

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GS延長戦開始11秒、蓜島の作用脚が山下の膝を捉える

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蓜島巻き込んで「一本」

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熱戦決着、観客席の歓声に応える蓜島

山下の巧みな組み手の前になかなか流れを掴めない蓜島は一方的に組み勝った状態を作ることは難しいと判断したか、山下に奥襟を与えたまま自らも奥襟を叩きガップリ四つの状態を作る。このことによって試合は右支釣込足、右大外刈と互いによく技が出る展開となる。蓜島ようやくペースを掴み、右払腰と右大外刈を繰り出しながら山下を場外まで追いやると、1分14秒山下に場外による「指導」が与えられスコアはタイ、残り時間は46秒。以降も組み合ったまま技を出し合うがポイントは入らず本戦は終了。試合はGS延長戦に突入する。

GSが始まると試合はいきなり激しく動く。組み手は変わらずガップリ四つ、山下は先んじて右小外刈から右払腰へと繋ぐが、蓜島はこれを腰で弾きながら自らの右払腰に吸収。山下腰を落として右足を引いて耐えるが、蓜島は二度三度と右払腰を叩き込み続けて攻撃の手を緩めない。山下はこの蓜島による波状攻撃を受け止めきれなくなり、蓜島が伸ばした作用脚がついにその右膝を捉える。山下の動きを止めたと見るや蓜島は足車の理合で回旋を呉れ、体を捨てて思い切り巻き込む。GS開始からここまで僅か11秒、山下抗せず宙を舞い右払巻込「一本」。優勝候補筆頭の蓜島が決勝を見事な「一本」で制して優勝を決めた。

拮抗の続いた試合だったが、主導権は一貫して蓜島にあった。山下が体の強さと丁寧な組み手構成、そして常に技を撃ち返す強気で、蓜島に「下手に行くと返されるかもしれない」との警戒感を抱かせたことが延長戦に縺れ込む熱戦の因であったと観察する。そのリスクを冒してでも投げにいかねば試合は終わらない、と蓜島に腹を括らせたのがいうサドンデスのGS延長戦突入という事態。一段明らかにギアを上げ、そして取り切る地力の高さは見事であった。

階級混在の新人戦ということで事前の力関係が読みにくいところのある大会であったが、この日の戦いで翌日の団体戦の様相がやや見えた感あり。蓜島の強さはもちろんだが、目立っていたのはなんといっても山下、そして長岡、星野、松村、高橋。

もともとサイズのある選手を揃えている木更津総合は山下の大活躍で一気に勢いを得た印象、翌日Dブロックで四つ角シード校大成と戦うその背に良い風を得たかと思われる。長岡の所属である崇徳と星野を送り出した作陽は、エース級がこれだけの出来を見せるとなるとチーム全体でかなり仕上がりの良さが期待できる。松村は詰めの甘さが見えるものの地力は上位対戦でも十分星を期待出来るものであり、島根・開星は名を挙げる可能性十分。高橋の逞しい柔道も北海チームの出来の良さを予感させた。3回戦敗退ながら大牟田・西田将樹も2つの一本勝ちで地力の高さを発揮した。

ベスト8の後藤龍真は王道柔道で突っ走ったインターハイ時に比べると、逆の一本背負投という選択肢が増えた分か少々柔道が小さくなった印象。大成・森部は地力の部分で不安を残し、同じく天理・田中も攻撃の詰めに課題を見せ、両シード校ともこの試合から透けて見えるチーム全体の仕上がりは決して良くはない印象。

そして団体戦の本命・国士舘の純エース格である河田の陥落が翌日に向けた最大のトピックだ。体力自慢の河田が疲労に疲労を重ねた挙句、得意の近接戦闘から一発転がってしまったあの負けのインパクトは大きい。国士舘の絶対性に傷がつき、周囲に希望を与える一番だった。

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優勝の蓜島剛

【入賞者】

優 勝:蓜島剛(埼玉・埼玉栄高)
準優勝:山下魁輝(千葉・木更津総合高)
第三位:新垣慶一郎(沖縄・沖縄尚学高)、長岡李空(広島・崇徳高)
敢闘賞:松村颯祐(島根・開星高)、高橋佑人(北海道・北海高)、星野太駆(岡山・作陽高)、後藤龍真(熊本・鎮西高)

蓜島剛選手のコメント
「高校カテゴリでは今まで2位や3位で、ようやく高校でてっぺんに立てます。疲労骨折で稽古に復帰したのは一週間前から。焦りもプレッシャーもありましたが周りにすごく応援してもらい、先生からも『やって来たことがあるんだから、焦るな』と。それで頑張れました。決勝は左手が封じられていましたが、まあ大丈夫だろうと開き直っていました。最後は一本で決められたので、終わりよければ全てよし、です。自分の強みは重量級では器用なことと、足技です。春、夏連覇と大口叩いていたのでようやくこれでスタートラインに立てました。インターハイも勝ちます。将来の目標は前と変わらず、大企業に就職することです。(-全国中学大会のインタビューでは『googleを目指します』と言っていました?)それはさすがに。現実見ます(笑)」

【準々決勝】

蓜島剛○GS優勢[指導2](GS2:22)△松村颯祐
新垣慶一郎○裏投(0:47)△高橋佑人
長岡李空○大内返(2:44)△星野太駆
山下魁輝○片手絞(2:28)後藤龍真

【準決勝】

蓜島剛○合技(0:55)△新垣慶一郎
山下魁輝○GS優勢[有効](GS1:32)△長岡李空

【決勝】

蓜島剛○払巻込(GS0:11)△山下魁輝

(取材・文:古田英毅、原輝地)

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