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四つ角シード校大成が陥落、勢い止まらぬ木更津総合がベスト8入り決める・第38回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート③3回戦

(2016年3月27日)

※ eJudoメルマガ版3月27日掲載記事より転載・編集しています。
四つ角シード校大成が陥落、勢い止まらぬ木更津総合がベスト8入り決める
第38回全国高等学校柔道選手権男子団体戦レポート③3回戦
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国士舘高の先鋒・清水雅義が担ぎ技を先んじて仕掛け開星高・松村颯祐を封殺

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開星高の次鋒野口穂高が国士舘高・稲垣由生から内股「有効」

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最終戦、河田闘志が河野壮登を大外刈で攻める

ここまではシード校の脱落はなし。3回戦ではピックアップ8校から漏れた「シード格」の実力チームが各ブロックでこれらに対峙、下剋上に挑む。

いずれも非常な好カードばかりが並んだ3回戦8試合、戦前の注目は松村颯祐と河野壮登の2枚を押し立てる開星が大本命国士舘に挑むAブロック第1試合。Dブロックでは個人無差別準優勝者山下魁斗を押し立てて勢いに乗る大型チーム木更津総合が昨年度準優勝校の大成と対峙する第1試合、同じく個人無差別で河田闘志を倒してベスト8入りした星野太駆の活躍をテコに自信を増した作陽がシードチーム足立学園に挑む第2試合と非常に面白いカードが2試合組まれている。

【Aブロック】

国士舘高(東京)○二人残し△開星高(島根)
(先)清水雅義×引分×松村颯祐(先)
(次)稲垣由生△優勢[有効]○野口穂高(次)
(中)河田闘志○合技(1:44)△野口穂高(次)
(中)河田闘志○小外刈(1:38)△金塚啓五(中)
(中)河田闘志○優勢[僅差]△山口和馬(副)
(中)河田闘志×引分×河野壮登(大)
(副)本間壘
(大)飯田健太郎

開星は虎の子の大型2枚のうち松村を抜き役として先鋒に、河野を最終決戦戦力として大将にセパレート配置。一方の国士舘はカスタムオーダーを組まずにあくまで平常運航、磯村亮太をベンチに下げた上で先鋒には前戦でエース殺しの役を担った6番手の清水雅義を再び起用、次鋒にはジョーカー的活躍が期待できる注目の5番手・稲垣由生を投入して布陣した。どちらかというと対開星というよりは、上位対戦に備えて序盤の2戦目いかに戦うかという自軍の事情が濃く出た配列という印象。

先鋒戦は清水が左右の担ぎを軸に松村を封殺、力を出させぬまま引き分けを獲得。次鋒戦も稲垣が元気よく得意の「加藤返し」を発動、早い時間で抑え込み掛かるなど順調に思われた。が、動きの良さが受けの軽さという悪い目に転がってしまい、野口穂高の左内股を受けそこなって跨いだ体勢から吹き飛ばされ「有効」失陥。稲垣がこれを取り返せないまま試合は終了、先制点は開星のものとなる。

しかし国士舘は畳に上がった中堅河田闘志が落ち着いて野口と対峙。合技「一本」であっさり抜き返すと、続く中堅金塚啓五に小外刈「一本」、副将山口一馬には「指導」3つを奪っての優勢と3連勝。最後は大将河野と引き分けて一気のフィニッシュ、結果国士舘が二人残しで勝利してベスト8入りを決めることとなった。

開星は松村、河野が完封されてこの試合も本領発揮はならず。しかし野口が1勝を挙げて意地を見せた試合であった。地元で開催される今夏のインターハイまでにどのような上がり目のハシゴを用意してくるのか、今後が非常に楽しみなチーム。

国士舘はこの試合も順行運転の快勝。しかし全国大会初出場で「都大会のような活躍をしてくれればチームが楽になる」(岩渕公一監督)と指名を受けたジョーカー役稲垣が良い動きを見せながらいきなり敗戦、4人を相手にした河田も力通りに勝ち、そして分けたという印象で良くも悪くも破綻なし。星勘定だけでいえば勝敗に影響のないノリシロ部分ではあるが、河野をあくまで抜きに行かずに引き分けた姿は初戦で佐藤との引き分けを受け入れた磯村の姿と被る。

つまりは2回戦に続き、例年岩渕監督が序盤戦の必須課題として挙げる「予想外の活躍をする周辺戦力が現れるかどうか」という上昇のハシゴを登るところまでは至らなかったという印象。総括すれば及第、と表現するほかはない。そもそも上積みの有無を喋々すること自体が贅沢な論点ではあるが、総合力の高さを押し立てた「普通の出来」での勝利であった。

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神垣和也と増田宙による第4試合

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空辰之輔がワンハンドで脇を差し、井口大毅を持ちあがる

崇徳高(広島)○二人残し△京都学園高
(先)兼藤仁士×引分×櫻井大地(先)
(次)森近唯×引分×奥田將人(次)
(中)神垣和也○合技(1:28)△勝部翔(中)
(中)神垣和也×引分×増田宙(副)
(副)空辰之輔○浮落(2:17)△井口大毅(大)
(大)長岡季空

しぶとさが売りの好チーム京都学園に対し、シード校崇徳がそれ以上に手堅い試合を展開。2戦引き分けを受けて畳に上がった中堅神垣和也が「一本」で1人を抜き、次戦は引き分けてしっかり仕事を果たす。続く最終戦ではこの1人差リードを得て登場した副将空辰之輔が京都学園のエース井口大毅に対峙、首を抱いた時計回りの浮落「一本」で勝利し危なげなくベスト8入りを決めた。隙の少ない相手に対し布陣が凹んだポイントで過たず得点、最後はエース対決で勝利を収めてと文句のつけようがない試合。

素晴らしい仕上がりの崇徳、次戦は大本命・国士舘に挑む。

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焼谷風太と境辰五郎による第2試合

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今入晃也と後藤龍真による100kg級の強者対決

鎮西は逆転を掛けてエース後藤龍真が畳に上がるが、埼玉栄はポイントゲッター役の今入晃也でこれを鎮圧。100kg級の強者同士の対戦は引き分けに終わり、結果この試合はスコア一人残しで埼玉栄の勝利に収着した。

北村、後藤に仕事をさせなければ総合力はやはり埼玉栄が一枚上。この試合も取って取られての殴り合いで始まった危うい滑り出しであったが、岩田の引き分け獲得で良い方向に試合が落ち着いた印象。殴り合った結果たまたま辿り着いたロースコアゲームというよりは、埼玉栄が出来上がった「場」に上手く乗った試合、最高到達点の高さ比べではなく総合力勝負に持ち込んで勝ち抜いた一番という印象だった。

鎮西のエース・後藤は今大会は一貫して元気がなかったが、今入を相手に連続攻撃を掛けた場面は迫力十分、幾度かあったこのラッシュ時だけはインターハイ時の素晴らしい出来を彷彿とさせた。遮二無二攻めることで本来の姿を取り戻した感あり、今夏再び輝くためのヒントになる試合だったのではいだろうか。

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東海大仰星高・岡虎が大牟田高・友清光から内股「一本」

大牟田高(福岡)○一人残し△東海大仰星高(大阪)
(先)樽見優作△内股(1:22)○吉村太一(先)
(次)友清光○優勢[有効]△吉村太一(先)
(次)友清光△内股(0:26)○岡虎(次)
(中)田中優大×引分×岡虎(次)
(副)西田将樹○大外刈(1:42)△坂元豪一(中)
(副)西田将樹○優勢[技有]△深山将剛(副)
(副)西田将樹△優勢[僅差]○海江田充輝(大)
(大)久保大喜○優勢[僅差]△海江田充輝(大)

九州新人大会で入賞なしという低空飛行からシードピックアップを受けた大牟田が晴れの舞台で力を証明。81kg級の友清光と100kg超級の西田将樹、九州個人王者2人の活躍で若潮杯3位の東海大仰星を退けることに成功した。

勝負の分水嶺は、西田が1人を抜いてスコアをタイに戻した直後の第6試合。東海大仰星が抑えのカードとして副将に配置したポイントゲッター深山将剛を西田が「技有」で抜き、さらに大将の海江田充輝を相手に敗戦を喫すもフルタイム畳に居残り、体重130キロの体を生かして海江田の体力を減殺。これが大将同士の対決における久保大喜の「指導」差優勢勝ちを呼び込み、大牟田が1人残しで勝利決定。みごと今年もベスト8進出の栄を獲得することとなった。

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長井晃志が進地優志からあっという間の右足車「一本」

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長井は大外刈「一本」で3人抜き達成

【Cブロック】

日体荏原高(東京)○四人残し△津幡高(石川)
(先)塚本綾○優勢[僅差]△小坂慧太(先)
(先)塚本綾×引分×山口佳祐(次)
(次)長井晃志○合技(2:16)△長原侑矢(中)
(次)長井晃志○足車(0:06)△進地優志(副)
(次)長井晃志○大外刈(1:56)△藤田慶二(大)
(中)ハンガルオドバートル
(副)大吉賢
(大)藤原崇太郎

日体荏原は第1戦で5試合を戦った百々雄弥をベンチに下げ、勝利を決める「一本」を挙げたハンガルオドバートルを1ポジション後ろの中堅にずらすローテーション策。先鋒には東京都予選で度々起用して来た塚本綾を、次鋒にはエース格の長井晃志を配置して北信越の古豪・津幡に対峙した。

先鋒塚本はやや動きが硬かったが、第1試合を「指導」累積差で勝ち抜き、さらに次戦をしっかり引き分けで纏めて手堅く仕事を果たした形で退場。1人差リードを受けて登場した次鋒・長井はまず相手方の中堅長原侑矢を片手の背負投と袈裟固の合技「一本」で退け、続く試合も開始するなり両袖の足車「一本」を決めて鮮やかに勝利。最終戦は長井らしからぬ疲労の色が濃く見えた試合であったがチャンスをモノにする力は健在、豪快な大外刈「一本」で3人抜きを達成。結果、日体荏原が4人残しの大差でベスト8進出を決めた。

日体荏原はここまでの2戦をいずれも4人残しの快勝。それも特定個人が集中して試合を賄うのではなく、この圧勝の間に選手4人が畳に上がって「体を動かして」おり上位対戦への備えは十分。これ以上ないという形で勝ち抜いた序盤の2戦であった。

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天理高・田中慎太郎が高橋佑人を押し込む

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田中が北海高の大将丹羽福太朗から内股「一本」

天理高(奈良)○二人残し△北海高(北海道)
(先)仲尾航介○優勢[僅差]△幾島裕一朗(先)
(先)仲尾航介×引分×葛西純坪(次)
(次)冨安一真△優勢[僅差]○高橋佑人(中)
(中)矢野真我△優勢[有効]○高橋佑人(中)
(副)田中慎太郎○優勢[僅差]△高橋佑人(中)
(副)田中慎太郎○内股透(0:21)△佐々木歩(副)
(副)田中慎太郎○内股(0:10)△丹羽福太朗(大)
(大)笠原大雅

北海のエース、この試合は中堅に座った高橋佑人が2人を抜く活躍を見せ、4戦終了時点で試合は北海が1人差のリード。しかし天理は副将田中慎太郎が高橋を「止める」のではなくしっかり抜き返し、ここで勝負の潮目が変わる。田中は残る副将佐々木歩と大将丹羽福太朗をいずれも秒殺「一本」で抜いてあっという間にフィニッシュ。近畿ブロック王者のシード校天理が2人残しで勝利、しっかりベスト8進出を決めた。

【Dブロック】

大成高(愛知) - 木更津総合高(千葉)
(先)田中大地 - 長澤大雅
(次)森部篤知 - 大淵泰志郎
(中)清水祐希 - 兼原潤清
(副)東部直希 - 黒部健太
(大)渡邊神威 - 山下魁輝

大型選手を揃える木更津総合に対し、対戦相性によるシナリオ変化にナイーブなところのある今代の大成チームがどう戦い、具体的にどう星を上げていくのか。これが盤面を貫く一大テーマ。

そして大会戦前評とは異なる要素が一つ。前日の個人戦無差別で木更津総合の山下魁輝が素晴らしい柔道を披露して決勝まで進んだことだ。この前日の戦いぶりと成績によって山下、ひいてはこの選手を総大将に置く木更津総合の脅威レベルが一段上がり、結果として照射される盤面の意味が少々変わることとなった。

双方が本丸として最後衛に置くのは木更津総合がもちろん山下、一方の大成は個人戦73kg級王者の渡邉だが、跳ね技と刈り技が主戦武器の渡邉は山下に対し体格的な不利が否めない。常の相手であればたとえ体格差があっても技の切れ味をハシゴになんとかポイントを挙げてくる渡邉であるが、大会きっての大駒と目されるレベルの重量選手に上から目線の試合を繰り広げることはさすがに難しい。山下と渡邉、双方がともに相手の動きを封殺し自分のワールドに相手を塗りつぶして試合を進めるタイプであることも、体格差がダイレクトに跳ね返る可能性をいや増す。大成としては渡邉が追い掛ける、あるいは大将同士の対決で渡邉が勝利せねばチームの勝ちが得られないというような切羽詰まった状況での試合は非現実的。終盤まで1枚、2枚のリードが必須の試合である。

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大成高・森部篤知と木更津総合高・大淵泰志郎による次鋒対決

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大成高・東部直希が黒部健太から左一本背負投「一本」

この事情から考えた場合、勝敗のポイントとなるのは明らかに大成の次鋒・森部篤知の出来。前日の個人戦無差別で体重93キロの森部は北海高・高橋佑人の体の強さを乗り越えられず2戦目で敗退(「指導2」優勢)しているが、この2試合の覇気に欠ける戦いぶりはMVP級の活躍を見せた黒潮旗大会のそれとはかなり異なる印象であった。大型選手に対しても必ず一発取る「大駒」としての活躍が期待できるかどうかににわかに疑問符がつき始めた印象で、森部が事前評通りにこの職能が果たせるかどうかに大成の運命は掛かると言って良い。配列を一瞥した瞬間、明らかに森部がポイントと感じた関係者も数多いはずだ。

先鋒戦の引き分けを受けて登場した森部はしかし前日の映えない動きから脱することが出来ず、攻撃散発のまま大淵泰志郎を相手に引き分け。170センチ110キロの大淵の体が時にその体格以上に大きく見える、森部の意外なまでのおとなしさが印象的な試合であった。

引き分けの瞬間、というよりもこの2戦目で森部が相手との「やりとり」を許容して動的膠着を受け入れた瞬間盤面は大きく木更津総合に傾いた。以降は清水祐希と兼原潤が引き分け、そして東部直希が防壁薄い巨艦黒部健太から払巻込「有効」、一本背負投「一本」と連取して大成がリードを得るが、この1人差リードを以てしてもなお試合のペースは山下が盤面に睨みを利かす木更津総合にあり。

1人差ビハインドで登場した大将・山下は閃くような支釣込足と右内股の連続攻撃で東部を突き放し続け、図太く「指導」2つを奪って勝利。試合の行方は大将同士の対決へと引き継がれる。

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山下魁斗が渡邊神威に鋭い技を連発

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代表戦、山下が渡邊の払腰を返して「有効」

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勝利を決めた山下は観客席に向かって拳を突き上げる

この大一番は渡邉が左、山下が右組みのケンカ四つ。本来技のキレと連続攻撃をテコに先手攻撃を為すべきは軽量の渡邉のはずだが、山下は右内股の連続攻撃と鋭くステップを切っての支釣込足、さらに右払腰と取り味のある大技を連発。渡邉は釣り手を突いて前に出ることで対応、むしろ試合を鎮静化させるような場面が増えることとなる。山下の勢いのある技を、しかし渡邉が抜群の身体能力と体の強さ、そして的確な状況判断で凌いで差を作らせないという構図のままあっという間に3分が経過。この試合は引き分けとなり、チームの勝敗は代表者1名同士による決定戦に委ねられることとなる。

代表戦は大成が渡邉、木更津総合も躊躇なく山下を投入。

山下は3連戦のハンデを感じさせないパワフルな動き。前進、押し込み、そして捩じってと体格差をフルに生かして試合を塗りつぶしに掛かる。機は良しと放った右内股は渡邉が腹を出してブロック、垂直方向に力を逃がして「待て」。

1分半過ぎ、渡邊がついに動いて思い切った左払腰。素晴らしいスピードに鋭い回旋、いかにも渡邉らしい野性味溢れる一撃だったが、ここが勝負と見極めた山下は相手の軸足側に覆いかぶさって隅落で返しに掛かる。「体格で潰す」という絶対値の高い初動を、両手の牽引を効かせて釣り手側に体を預けるという理でまとめたこの一撃に渡邉逆らえず畳に押し付けられてこれは「有効」。乾坤一擲の勝負に出た渡邉の行動は結果片足で体格差をまともに受けるという残酷な結果となり、山下はそのまま横四方固。渡邉動けず「一本」が宣告されてアップセット完成。四つ角シード校大成が陥落、木更津総合が初の全国大会準々決勝への勝ち上がりを決めた。

木更津総合高(千葉)○代表戦△大成高(愛知)
(先)長澤大雅×引分×田中大地(先)
(次)大淵泰志郎×引分×森部篤知(次)
(中)兼原潤×引分×清水祐希(中)
(副)黒部健太△一本背負投(0:23)○東部直希(副)
(大)山下魁輝○優勢[僅差]△東部直希(副)
(大)山下魁輝×引分×渡邊神威(大)
(代)山下魁輝○横四方固(1:50)△渡邊神威(代)

木更津総合が前日から続く勢いと体格をテコに見事勝利したという一番。エース山下登場までのスコアは一人差で大成リードであったが、前述の通り終始木更津総合のペースで進んだ試合であった。

大成は、12月に「リーダー役がなかなか出てこない」と石田輝也監督が漏らしたチーム構成の弱点がそのままオーダー順に反映された。具体的には、性格的にも体格的にも「前衛で暴れまわる抜き役」であるべきであった渡邉が抜き試合レギュレーションの総大将として最後衛を務める、1番バッターが4番を張るようなロールの噛み合わなさだ。渡邉は俊足好打に加えジャストミートをそのままスタンドに放り込むような強打も併せ持っている素晴らしい選手だが、やはり軽量。4番の存在がそこに至るまでの攻防の組み立て全てを規定してしまうような、体格を含めた駒としての絶対値の高さに欠ける。

黒潮旗大会における森部の素晴らしい出来と、石田監督が語った「まだ気持ちが出てこない。なかなかエースになれる存在が出てこない」とのコメントは試合だけをみた限りではかなり違和感があるものであったが、今大会を見る限りではやはり正当であったと言わざるを得ない。そのチーム内評価がそのまま反映されたのがこの試合の配列であるということになる。本来、体のある森部なり清水なりが渡邉に前で仕事をさせるような後衛の大駒として機能するのがもっともチームの力を出す形ということになるのだろうが、この策を採り得るまでにチームが成長しきれなかったと総括するべきだろう。

この状態に加え、今代の大成がもっとも扱いにくい「全員体のあるチーム」が、二段も三段も大きく見える「勢いに乗った状態」でやって来たのである。この結果は、実は論理的な帰結でもあったのではないだろうか。

初戦、二戦目通じてどこか萎縮したような大成の選手たちの戦いぶりは同じく体格に凹凸がありながら「俺がエースだ」とばかりに個性派の選手が功を競い合った前代チームとは明らかに異なるものがあったし、黒潮旗大会時点でトップ水準にあったチームが、招待試合シリーズを経たこの数か月で相対的に他チームに抜かれたと観察することも可能。前代のリベンジを誓い、全国制覇を狙った大成にとっては極めて厳しい結果であった。

しかし、大成には「新人戦スタート時のトップチームが高校選手権までにスケールを落とした」「しかしインターハイまでに驚くほどの成長を遂げて優勝レベルの戦いを繰り広げた」という成長曲線の経験値がある。一昨年、川田修平を中心として夏にセンセーションを巻き起こしたチームがそれだ。大成があの「どうやってここまで伸ばしたんだ」と周囲を驚かせたような素晴らしい育成を、再び成し遂げることに期待したい。

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安田夢飛と白石隼人による最終戦

作陽高(岡山)○一人残し△足立学園高(東京)
(先)揚原崧聖×引分×上江一平(先)
(次)村田大征×引分×雨森俊成(次)
(中)久野壱虎○内股(2:25)△山本瑛介(中)
(中)久野壱虎×引分×佐々木卓摩(副)
(副)安田夢飛×引分×白石隼人(大)
(大)星野太駆

作陽がまたしても「図太い」とでも形容すべき安定したスコアでシード校足立学園を打倒。2戦引き分けを受けて登場した中堅久野壱虎が山本瑛介を内股「一本」、さらに佐々木卓摩に引き分けとエース2枚を1人で引き受ける大活躍。最終戦は副将安田夢飛が白石隼人と引き分けて危なげなく勝利を決定。ここまでの3試合のうち、2試合が「1勝全分け」というまことに物のわかった試合ぶりは片々たる技術のみに頼らない「地力由来の試合巧者」作陽の面目躍如。次戦ではベスト4入りを掛けて、木更津総合とノーシード校同士の激突が待ち受ける。

結果決まった準々決勝のカードは、

国士舘高(東京) - 崇徳高(広島)
埼玉栄高(埼玉) - 大牟田高(福岡)
日体荏原高(東京) - 天理高(奈良)
木更津総合高(千葉) - 作陽高(岡山)

の4試合となった。

※ eJudoメルマガ版3月27日掲載記事より転載・編集しています。

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