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飯田健太郎中心に戦力揃った国士館が大本命、最大の山場は埼玉栄戦・全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦展望

(2016年3月17日)

※ eJudoメルマガ版3月17日掲載記事より転載・編集しています。
飯田健太郎中心に戦力揃った国士館が大本命、最大の山場は埼玉栄戦
全国高等学校柔道選手権大会男子団体戦展望
■ 有力校
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今年も日本武道館に全国から強豪が集う

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優勝候補筆頭は国士舘高、2年連続の3冠達成を目標に掲げている

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国士館高のエース・飯田健太郎は今代最大の大駒

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代替わりしてから躍進著しい本間壘はパワーをテコに大技を連発

第38回全国高等学校柔道選手権(3月19日~20日、日本武道館)がいよいよ今週末に迫った。第1日は個人戦10階級、そして最終日は男女の団体戦が行われる。

最注目カテゴリである男子団体戦の大本命と目されるのは、前代高校「三冠」を達成した国士舘高(東京)。前代のレギュラーから飯田健太郎、磯村亮太、河田闘志の3枚が残った。

典型的な本格派である磯村、歩留まりの良さに技の破壊力も加え、今代になって同僚飯田ばりの「やぐら投げ」を駆使するなど面白い方向で取り味を増している河田の重量級2枚は極めて強力。そして今代最大の大駒と目される全日本ジュニア100㎏級王者・飯田健太郎の強さは桁違い。細身だが背にしなやかな鉄骨が入っているかのような体幹の強さは抜群で、今代になってからはバランスを崩す場面すら僅少。得意技は内股だがすべての行動を投げに繋ぐ攻撃性と手立ての豊富さ、素早い寝技の移行も盛って全方位性を獲得しており、この選手を止める選手を今代の高校生から探すのはもはや難しい状況。

さらに4番手として本間壘が急成長。脇を差し、握った背を絞りに絞って裏投、小外掛に浮落と大技ばかりで冬の招待試合シリーズでは「一本」の山を築いた。その存在感はもはやエース級、今大会序盤戦では関係者を「本間クラッシュ」と唸らせた大技の嵐が吹き荒れる予感が漂う。

5番手を争うのは稲垣由生と1年生の清水雅義だが、都大会では稲垣が大活躍。独特の払釣込足と小外刈を駆使して素晴らしい「一本」を連発、国士館が伝統的に重視する「寝技が利く」選手でもあり、いまのところレギュラー候補としては稲垣が最有力。

というわけで、天才肌のエース1枚(飯田)に本格派重量級が2枚(磯村、河田)、有無を言わせぬパワーファイター(本間)がいて、相手を引っ掻き回すトリッキーな脇役1枚(稲垣)と、団体戦のチーム構成としては理想に近い陣容。90kg級の稲垣以外は登録全員が100kg以上とサイズもある。飯田1枚の保有という一事だけでも優勝候補筆頭に挙げる根拠としては十分過ぎるほどだが、この厚い陣容の周辺戦力を併せれば大本命に挙げるに異論はないだろう。オーソドックスタイプの重量級ゆえ前代意外な受けの脆さを見せることもあった磯村や河田を補完すべく入った選手が、自分のフィールドで我儘に試合をするタイプの本間であることも買いだ。

後を追う勢力は、過たずトーナメントの「四つ角」に収まった大成高(愛知)、日体荏原高(東京)、埼玉栄高(埼玉)の3校。

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水田杯、黒潮旗を制した大成は昨年度大会決勝の雪辱を期す

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渡辺神威は73kgの軽量ながら取り味十分

大成は昨年の高校選手権と金鷲旗で決勝進出、いずれも国士館に敗れており今大会の雪辱に掛ける思いは強い。前代から度々団体戦で起用されて来た73kg級の業師渡辺神威と、黒潮旗大会の大活躍でスケールの大きさを見せつけた本格派・森部篤知がチームの中心。これに機関車のような連続攻撃が売りでサイズのある清水祐希、左右に打点の高さを変えた担ぎ技のある田中大地、サイズとスピードを両立させた仕事師の1年生東部直希、愛知県予選の決勝を1人で担ったパワーファイター岩倉優希と今年も個性豊かな選手を揃え、良い意味で凹凸のある面白いチーム。招待試合シリーズの出場数は絞っているが、出場した黒潮旗と水田杯ではキッチリ優勝を果たしており、その戦闘力は高く評価されて然るべきだろう。

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東京都第2代表の日体荏原高は歴代とタイプの違う好チーム

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ハンガルオドウバータルは松尾杯決勝で河田闘志に一本勝ち、チームは国士館を破って優勝を決めた

前代インターハイ2位の日体荏原は、中心選手として活躍していた全日本ジュニア81kg級王者の藤原崇太郎と長井晃志が今年もチームの軸。最重量のハンガル・オドウバータルが98kgという前代と打って変わった小型チームだが、66kg級の原田健士や73kg級の大吉賢の献身的な戦いぶりでチームが変質。歴代の荏原チームとは色合いが少々異なる、チーム全体でまとまって戦える好チームとして仕上がっている。

松尾杯決勝では磯村を欠く国士館を打倒して優勝しているが、東京都予選決勝の戦いぶりを見る限り国士館とは戦力的にまだまだ差がありそう。もう一段の上積みが必要なところだが、チーム内での評価が非常に高い百々雄弥の戦列復帰、まだまだ柔道が粗く明らかに伸びしろがあるハンガルの成長と期待できる上昇要素が2つある。これがどのように働くか、本番はここに期待。

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蓜島剛は唯一飯田に対抗しうる大駒、硬軟取り混ぜた柔道で取り味は抜群

そして、メンバーだけで見れば打倒国士館の一番手に挙げられて然るべき強豪チームが埼玉栄高(埼玉)。エースは全日本カデ王者で昨年のインターハイ100kg超級2位の蓜島剛、さらにインターハイ100kg級3位の今入晃也、90kg級2位の長濱快飛と好選手を揃えて攻撃力は大会随一。それぞれの選手が技が切れるタイプでもあり、非常に魅力のあるチームだ。戦いぶりの気風の良さは大会随一、もっとも華のあるチームといってもいいかもしれない。

ただし招待試合シリーズでのこのチームの出来はいま一つ。戦いぶりに波があり過ぎ、コンスタントに力を出せていない。これ以上ない舞台である全国大会では全員のモチベーションは当然高く、ゆえに正当に力を発揮すると観測されるが、チームとして手堅く戦って歯のきしむような接戦をものにしてきた経験、実直な戦いの成功体験が少ないこのチームが上位対戦における消耗戦にどこまで耐えられるかが焦点になるのではないだろうか。蓜島が今大会一、二を争う大駒である以上、この選手を生かす形でチーム全体としての戦いが出来るかどうかが優勝へのカギ。「乗れば強い」というダークホースステージを脱して、一段上の強豪に進化出来るか。このチームの戦い方は今季の高校柔道界の行方を左右する大きな注目ポイント。

有力校は数多いが、間違いなく中心はこの「四つ角」シード校。この4チームを配されたブロックそれぞれの注目ポイントを探ることで、今大会の展望を試みたい。

■ 組み合わせ
【Aブロック】

Aシード校:国士館高(東京)
Bシード校:崇徳高(広島)
有力校:神港学園神港高(兵庫)、本荘高(秋田)、開星高(島根)、常盤高(群馬)

上側、国士館高が配された山の密度が非常に厚い。大会屈指の激戦ブロックと評して差し支えなし。

神港学園神港、本荘、開星と強豪揃ったこの上側ブロックの最注目チームはなんと言っても開星。松村颯祐と河野壮登の重量2枚はなまなかな高校生では到底止めきれない、と関係者の評価が非常に高い。中央の招待試合シリーズに出ていないがゆえその力はまだ正確にマップされておらず、かつ点取り制で行われた中国ブロック新人戦では優勝出来なかったためシードピックアップには至らなかったが、ある意味今大会もっともファンが大物食いの「夢」を託せるチームだ。

本荘高の今代は1年生時から中央でも非常に評価が高かったチーム。東北ブロック大会では前評判通りの大暴れで優勝を掻っ攫っている。66kg級の板本広大の体幹の強さと100kg超級の大場悠斗の大型選手に似合わぬ運動能力の高さは全国でも十分上位を伺えるレベル。このチームはメジャーデビューともいうべき松尾杯での組み合わせが悪く早々(2回戦)に崇徳と対戦、1-2で競り負けてしまったためにシードピックアップには至らなかったが、力は十分。

このベスト8に残ってもおかしくない地方の強豪同士が2回戦で早くも激突、おそらくエース級二枚の突破力を生かして開星が3回戦に進むと推測される。

国士館は2回戦で小林礼弥と佐藤貴成の2枚が強力な神港学園神港の挑戦を受け、3回戦で開星と激突する。

この国士館-開星は大会前半戦最大の注目カード。松村、河野が国士館の堅陣を突き破って飯田健太郎を引っ張り出せるか、どの選手も他チームなら間違いなくエースという巨大戦力の国士館がこれをどう弾き返すのか。国士館の勝ち上がり自体はゆるぎないとみるが、絶対に見逃せない一番。

それにしても、本荘、開星の地方のこれぞという強豪2チームが初戦(本荘にとっては)で潰し合い、しかも次戦が大本命の国士館という組み合わせはいかにも過酷、というより興業として非常に勿体ない。シード校選出の歪み、大人の事情の犠牲になった形であるが、巨大大会の胴元として柔道人口激減の折に地方を元気づける、大会を盛り上げるという視点はなかったものか。中央偏重や無理筋の介入に耐えられるような、かつてのような層の厚さはもはやわが業界にはない。主催者には一考を促したい。

下側のブロックは試合巧者を揃えた崇徳の勝ち上がりがほぼ確実。しぶとさが売りの京都学園高(京都)、体重135kgの加賀谷武弘1枚を押し立てて若潮杯ベスト8進出を果たした常盤高(群馬)をもってしてもここを勝ち抜くのは難しいとみる。

そしてブロック勝ち上がりは国士館とみて間違いない。崇徳は相手の強弱に関わらずやりとりの中でワンチャンスを狙える勝負師タイプが揃っている面白いチームだが、タイプの違う大型を揃えた国士館を相手にするには線の細さが否めない。1試合のアップセットではなく2度、3度と相手の歯車を狂わせていくことが必要だが、もともとの戦力差に加え、シナリオの「狂い」まで計算に入れて万全のシミュレーションを重ねている国士館が崇徳の台本を受け入れる事態は想像しづらい。ベスト4進出は国士館。

【Bブロック】

Aシード校:埼玉栄高(埼玉)
Bシード校:大牟田高(福岡)
有力校:鎮西高(熊本)、四日市中央工高(三重)、東海大仰星高(大阪)、桐蔭学園高(神奈川)

九州ブロック王者の鎮西と、なぜか鎮西を差し置いて九州枠どころか「福岡枠」行使という荒業で今年もシード校にピックアップされた大牟田の九州勢2校が同居するブロック。

上側の山の勝ち上がり最有力は埼玉栄だが、初戦(2回戦)で四日市中央工戦という山場がある。山口陸人と堤大志の勝負師タイプ2人を中心にする今代の四中工は格上チームとの我慢の戦いはむしろ得手ではないかと推察され、メンタル面に不安定感のある埼玉栄が、それもこれまでと異なり勝つことを義務付けられたシード校という立場で大会を滑り出す、その初戦で戦う相手としてはかなり嫌なチームのはず。

埼玉栄はここを勝ち抜くと3回戦で鎮西との対戦が濃厚。素晴らしい技の切れ味で奈良インターハイを沸かせた後藤龍真がエースを務める鎮西が、どこまで試合を揉めさせることが出来るかに注目。

つまり埼玉栄は、初戦ではチーム全体で粘戦志向、縺れれば錐を揉みこむような山口の担ぎ技で得点を狙ってくる四中工、本格派後藤とパワーファイター北村博樹で殴りつけてくる鎮西と、タイプが違う面倒なチームを立て続けに相手にすることになる。事前予測としては埼玉栄の勝ち上がりを推すが、埼玉栄の課題である「チーム」としての仕上がりがはっきり炙り出される2試合になるだろう。

下側の山は、東海大仰星と桐蔭学園が勝ち上がり候補。若潮杯で準決勝まで進んだ東海大仰星は攻撃力のある深山将剛を中心に良く鍛えられた好チーム。桐蔭学園は66kg級の石郷岡秀征が一点突破、周辺にしぶとい選手を揃えてまとめを図るこれも小型ながらなかなかの好チームだ。総体の戦力は東海大仰星が上だが、桐蔭学園の試合力と作戦立案、遂行能力はかなりのレベル。東海大仰星の勝ち上がりを推すが、直接対決の2回戦は非常な見もの。

準々決勝は埼玉栄と東海大仰星の対決が濃厚。この対決はインターハイ1回戦で東海大仰星が上位候補の埼玉栄を3-2で食ったという因縁カードである。抜き試合であることと蓜島剛の保有を考えて埼玉栄のベスト4勝ち上がりを推すが、これも見逃せない好カード。

【Cブロック】

Aシード校:日体荏原高(東京)
Bシード校:天理高(奈良)
有力校:静岡学園高(静岡)、つくば秀英高(茨城)、田村高(福島)、白鴎大足利高(栃木)

両シード校の準々決勝対決が濃厚。

日体荏原は初戦で静岡学園との対戦が見込まれる。身長183センチ体重136キロの川井康平を擁する好チームだが、総合力を考えれば日体荏原の勝ち上がり自体は揺るがないとみる。川井の奮戦と、川井が暴れた場合に日体荏原がどう対処するのか、上位対戦に向けてここが大きな観戦ポイント。

天理は冨安一真、田中慎太郎ら田主丸中出身の重量選手でレギュラーを固めた大型チーム。若潮杯ではリーグ戦2敗で予選ラウンド敗退の屈辱に甘んじたが、もともと冬以降に力を伸ばすチームでもあり、1月の近畿ブロック大会ではしっかり優勝を飾っていることを考えると一定以上の仕上がりは見込んで良いはず。地元のインターハイで見せた意外なほどのおとなしい戦いぶりを脱して本来の力を発揮すれば上位進出は現実的。

この天理の山には黒田拳伍、野上廉太郎、岡田英志ら技の切れる選手を並べたつくば秀英、水田杯2位の田村、若潮杯ベスト8の白鴎大足利と小粒ながら面白いチームが揃った。勝ち上がり候補は天理だが、大型の攻撃志向ゆえ足回りの防壁が薄い印象の天理チームに対して、2回戦で対戦するつくば秀英の柔道が噛み合えば相当に面白い試合が期待出来るのではないだろうか。

準々決勝は小型で良くまとまった日体荏原と攻撃志向の大型を揃えた天理という対照的なチームの対戦。試合が縺れれば藤原崇太郎の保有をテコに日体荏原が勝ち上がるとみる。天理はしっかり潜在能力を出せれば勝ちあがりの可能性も十分だが、現時点では組み手が練れた日体荏原を粉砕するほどには地力が仕上がっていないのでないかと推測する。日体荏原の戦術性か、大型天理の一発か、というわかりやすい構図の好カード。

【Dブロック】

Aシード校:大成高(愛知)
Bシード校:足立学園高(東京)
有力校:木更津総合高(千葉)、作陽高(岡山)

上側の山は大成と木更津総合の3回戦が最注目カード。木更津総合は三冠世代の東海大浦安から続く「千葉の遺伝子」とでもいうべきか、ヤンチャさと表現したくなるような強気が売り。前代は高校選手権と金鷲旗でベスト16に残ったばかりかいずれの大会でも強豪チームと凄まじい殴り合いを演じて存在感を発揮、そのメンバーからエース格の山下魁輝が残った今代チームも大型選手を揃え12月の水田杯ではほぼフルメンバーの埼玉栄の打倒に成功している。総合力は文句なく大成だが、度々石田監督からその大人しい試合ぶりに発破を掛けられて来た今代大成チームがこの「元気の良い」木更津総合をどう退けるのか、その内容に注目したい。

下側の山は、東京から3チーム目のシードピックアップというこれも相当な荒業の結果シード権を与えられた足立学園と作陽による3回戦に注目。足立学園は金鷲旗3位のメンバーから雨森俊成、山本瑛介、佐々木卓磨、白石隼人が残ったが、今代になってからあの輝きを再び放った試合はいまのところほとんど1試合もなく、招待試合シリーズ全体を通じて精彩を欠いた。全国大会というこれ以上ない場でシード校にふさわしい力を見せることが出来るかどうかに注目。

作陽は登録全員が体重100キロ以上、うち120キロ以上が4人という大型チーム。今代は恒例の関東の招待試合シリーズ出場を行わず、いまのところその戦力が正確にマップされていない状況にある。川野一道監督は、9月の全日本ジュニアでは彼の代名詞であるはずの「声掛け」を一切封印、無言のままで選手に考えさせながら試合をさせる姿を見せており、なにがしかの方針変更があった模様。育成力が売りの作陽がその方法論を変え、どんな柔道を見せてくれるか非常に興味深い。ここのところ全国大会では組み合わせに恵まれなかったが、久々チャンスのある山に入ってモチベーションは相当に高いはずだ。

ベスト4勝ち上がりには大成を押すが、金鷲旗で対戦経験のある足立学園、大型で作戦遂行能力の高い作陽、どちらとの戦いも非常に面白い。

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金鷲旗大会における飯田-蓜島戦。この試合は飯田が「指導2」で勝利し、前年度全日本カデのリベンジを果たした

【準決勝~決勝】

国士館 - 埼玉栄
日体荏原 - 大成

の「四つ角」シード校による2カードが実現濃厚。

国士館と埼玉栄は昨年の金鷲旗と松尾杯で対戦経験があり、いずれも国士館が勝利している。前代の対戦も含めてほとんど今回と変わらない顔ぶれであるので、参考までにこの2試合のスコアを書き出しておく。

[金鷲旗・準々決勝]
国士舘高〇不戦二人△埼玉栄高
(先)磯村亮太〇内股△焼谷風太(先)
(先)磯村亮太〇小外掛△高橋拓巳(次)
(先)磯村亮太△合技〇今入晃也(中)
(次)河田闘志〇優勢[有効・内股]△今入晃也(中)
(次)河田闘志×引分×長濱快飛(副)
(中)飯田健太郎〇優勢[指導2]△蓜島剛(大)
(副)竹村昂大
(大)山田伊織

[松尾杯・準決勝]
国士舘高 2-1 埼玉栄高
(先)山田祐太×引分×長濱快飛
(次)稲垣由生△内股(1:57)○今入晃也
(中)河田闘志×引分×蓜島剛
(副)飯田健太郎○内股(0:23)△岩田歩夢
(大)本間壘○裏投(0:25)△焼谷風太

見ての通り、埼玉栄のスポット的な抵抗はみられるものの、盤面全体としては一貫して国士館が有利。埼玉栄は最大のポイントゲッターであり今大会のシードピックアップの因である蓜島が、この2試合ではまったく仕事をさせてもらえていない。

埼玉栄が勝利するには今入、長濱の得点をテコに、エース蓜島と飯田の試合がそのままチームの雌雄を決する状況を作り出すほかはない。蓜島の柔道は柔らかく、相手が勝負してくる限りは力関係に関わらず一発で状況をひっくり返す面白さがある。ゆえにこの「1試合限定」に持ち込んだ場合に国士館サイドに与える恐怖感はかなりのものがあるはず。

一方の国士館としては、出来得れば大将(おそらく)に配置される飯田を使わずに試合を終えること、飯田との対戦あるにしてもそこまで蓜島の体力を削げるだけ削いでおくことが譲れないミッション。少なくともここまでの試合を見る限り、蓜島は、疲労し切ったところからもう一段二段と前に出て自身の体の奥から未知の力を引っ張り出せるような貪欲なタイプではない。よって国士館が、蓜島自身が「もう良いだろう」と飲み込めてしまうレベルまで体力を擦り減らす策に出てくることは間違いない。逆に埼玉栄は蓜島をフレッシュな状態で最終戦に送り込めるよう、周辺戦力が全力を尽くすことが唯一最大の勝利への道。

巨大戦力を擁する国士館にとって、抜き試合レギュレーションの中でもっとも怖いのは、そこそこの高い戦力を5枚並べた優等生チームではなく、自軍のエースである飯田健太郎を一瞬でも凌ぎ得るような面白みのある大駒1枚を持ったチーム。埼玉栄はこの形にぴたりと嵌る。この準決勝が大本命・国士館優勝への最大の山場となるだろう。

日体荏原-大成は様相読みがたし。この段階で考えておくべきことがあるとすれば、日体荏原が大将に起用するであろう大駒・藤原崇太郎をめぐる両軍の力関係だ。拮抗が続き、最終的に藤原がフレッシュな状態でまとめの試合に出てくる状況となってしまえば、もはや老成と表現すべき域にあるその戦術性を打ち破るだけの爆発力を今の大成の選手に求めるのは難しい。全体戦力的には均衡、藤原以外の周辺戦力の総合力は大成がわずかに上ではないかとみるが、その小差で競った戦力比較とは関係なく、大成の勝利のシナリオあるとすれば実はこれは「序盤からの圧倒を志向すること」以外にないのではないだろうか。この実現をもって、力関係はようやく拮抗と考えておきたい。

そして決勝。日体荏原と大成いずれが上がってきても、純戦力、対戦相性ともに国士館の圧倒的有利は否めない。

繰り返しになってしまうが、都大会決勝で手ひどい負けを食らっている日体荏原としては、新戦力である百々や成長を続ける大型選手ハンガルといった「上積み要素」に期待するほかはない状況。大成にしても事情は同じで、どのように巧みに布陣しても最終的に飯田健太郎を潰さねばならない以上順行運転では国士館を倒すには至らず、森部や渡辺の予想を超える大爆発といった未知の上積みがないと優勝は難しい。

二段、三段とアクシデントを続けて起こす、これまでにない「道」を切り開かねば日体荏原、大成ともに勝利はおぼつかず。となれば少なくとも事前予測の段階では国士館を推すのが当然。

しかし高校生の試合の面白さはまさしく予想を越えるシナリオ、これまでにない道が本番ギリギリの舞台で切り開かれていくことにある。国士館の強さの発揮とともに、ライバル各校の奮戦に大いに期待したい。

文責:古田英毅

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