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グランプリ・デュッセルドルフ第1日5階級(60kg級、66kg級、48kg級、52kg級、57kg級)レポート

(2016年3月2日)

※ eJudoメルマガ版3月2日掲載記事より転載・編集しています。
第1日5階級(60kg級、66kg級、48kg級、52kg級、57kg級)レポート
グランプリ・デュッセルドルフ
■ 60kg級・キムウォンジン優勝、決勝はスメトフとの殴り合いを制す
(エントリー55名)
【入賞者】
1.KIM, Won Jin(KOR)
2.SMETOV, Yeldos(KAZ)
3.MUDRANOV, Beslan(RUS)
3.OZLU, Bekir(TUR)
5.PAPINASHVILI, Amiran(GEO)
5.PRECIADO, Lenin(ECU)
7.GANBOLD, Kherlen(MGL)
7.SAFAROV, Orkhan(AZE)

※日本選手の出場なし

第1シードのキム・ウォンジン(韓国)と第3シードのイェルドス・スメトフ(カザフスタン)。トーナメントの主役と目されていた強豪2人が順当に決勝進出。

キムは2回戦でユホ・レインヴァル(フィンランド)から払腰「有効」、さらに4つの「指導」を奪って快勝。3回戦はソフィアン・ミルス(フランス)から外巻込「有効」による優勢で勝利しベスト8入り。準々決勝はガンボルド・ケーレン(モンゴル)を相手に「指導2」のビハインドのまま試合を終盤に持ち込まれたが、相手が脇固の形のまま体を捨ててしまいダイレクト反則負け(4:29)。命拾いして迎えた準決勝もアミラン・パピナシビリ(ジョージア)に「技有」を先行されたが、浮落「技有」と背負投「技有」を連取し合技「一本」(2:45)で決勝への勝ち上がりを決めた。

アスタナ世界選手権の金メダリスト・スメトフは2回戦でアンドレイ・クロコフ(リトアニア)を横四方固「一本」で下し、順調な滑り出し。3回戦はツェンドチル・ツォグトバータル(モンゴル)を「指導2」優勢で下し、勝負どころと目された準々決勝のベスラン・ムドラノフ(ロシア)戦は拮抗の中ムドラノフが肩車を仕掛けたところで試合がストップ。潰れたムドラノフがスメトフの脚を触ったとの判断でダイレクト反則負けが宣告され、3分19秒スメトフの勝利が決定。山場を乗り越えて迎えた準決勝は全開、この日ここまで絶好調のベキル・オズル(トルコ)の左大外刈を抱え上げて豪快な移腰「一本」(1:22)でフィニッシュ。会場の喝采を浴び見事決勝へと辿り着くこととなった。

決勝は準決勝の勢いそのままにスメトフが攻勢に出、1分25秒に右内股「技有」を獲得。両者の拮抗した力関係からして決定的なポイントと思われたが、2分6秒にキムが左小外掛。一瞬肩車のフェイントを入れて相手を固めた一撃は見事決まって「技有」。

スコアがタイとなった中盤以降ペースはキム。2分40秒には左腰車でスメトフを完全に腰に載せる豪快な一発、主審の「一本」宣告は「有効」に訂正されたが、キムはペース落とさずさらに巴投「有効」も追加。結果勝ち越し点となった腰車「有効」を以て勝利を決定した。

キムを含めた韓国男子各階級のエース級は昨年終盤の東アジアシリーズから国際大会に軒並み連続出場中。五輪代表が確実なキムも大会に皆勤しているが、メダルクラスの強豪と毎回勝ち負けを繰り返すうちに逞しさが増した印象。力強さと裏腹の意外な脆さが同居していたこの選手だが、攻撃性を一段上げることで装甲の薄さを克服しつつある印象だ。3試合連続の逆転勝利という今回の結果はやはり脅威。昨年より一段警戒レベルを引き上げておくべき選手だろう。

スメトフは世界選手権の戴冠以来2度目のツアー出場。11月のグランドスラム・アブダビでは初戦敗退に終わっておりつまりはこれが実質的な復帰戦であったが、十分にその力を示したと言えるのではないだろうか。準決勝ではそのアブダビ大会で敗れたオズルを子ども扱いして豪快な一本勝ち、決勝も敗れたとはいえキムから「技有」を奪い、電池が切れたはずの中盤以降もキムの支釣込足を出足払、大内刈を背負投に変換してあくまで投げを狙い、危険な香りを撒き散らしていた。もともと狙った大会にフォーカスすることが上手い選手でもあり、やはり五輪ではもっとも手ごわい選手と考えておくべきだろう。

ムドラノフは2試合連続の一本勝ちも前述の通りダイレクト反則負けで本戦トーナメントから脱落。しかし3位決定戦ではライバルのパピナシビリをあっという間の腕挫十字固「一本」(0:53)に仕留めて銅メダル獲得、最終的には順当な位置に収まった。

オズルは3試合一本勝ちの末に準々決勝では第2シードのオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)をも打倒。準決勝は敗れたが3位決定戦ではここまで大健闘のレニン・プラシアド(エクアドル)を素晴らしい飛び込みの内股「一本」に仕留め、見事表彰台に辿り着いた。

というわけで、表彰台に上がったのはキム、スメトフ、ムドラノフ、オズルの4名。5位のパピナシビリとオズルの順位が入れ替わったくらいで、主役級が順当に力を出した、飲み込みやすい結果のトーナメントであった。
髙藤直寿が膝の負傷で欠場した日本勢は代替選手を立てず、この階級の日本人選手の出場はなかった。

【準々決勝】

キム・ウォンジン(韓国)○反則(4:29)△ガンボルド・ケーレン(モンゴル)
 ※脇固で体を捨てた行為によるダイレクト反則負け
アミラン・パピナシビリ(ジョージア)○優勢[有効・裏投]△レニン・プラシアド(エクアドル)
ベキル・オズル(トルコ)○優勢[有効・小内刈]△オルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)
イェルドス・スメトフ(カザフスタン)○反則(3:19)△ベスラン・ムドラノフ(ロシア)
 ※「足取り」によるダイレクト反則負け

【準決勝】

キム・ウォンジン(韓国)○合技[浮落・背負投]△アミラン・パピナシビリ(ジョージア)
イェルドス・スメトフ(カザフスタン)○移腰(1:22)△ベキル・オズル(トルコ)

【3位決定戦】

ベキル・オズル(トルコ)○内股(0:53)△レニン・プラシアド(エクアドル)
ベスラン・ムドラノフ(ロシア)○腕挫十字固(0:53)△アミラン・パピナシビリ(ジョージア)

【決勝】

キム・ウォンジン(韓国)○優勢[有効・腰車]△イェルドス・スメトフ(カザフスタン)

■ 66kg級・アンバウル復活V、「大回転投げ」で髙市下したポラックが2位入賞果たす
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この日の日本男子は66kg級の髙市賢悟のみが出場

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準決勝、ゴラン・ポラックが髙市賢悟から右小外掛「有効」を追加

(エントリー46名)

【入賞者】
1.AN, Baul(KOR)
2.POLLACK, Golan(ISR)
3.MARGVELASHVILI, Vazha(GEO)
3.PULYAEV, Mikhail(RUS)
5.SEIDL, Sebastian(GER)
5.TAKAICHI, Kengo(JPN)
7.OATES, Colin(GBR)
7.SOBIROV, Rishod(UZB)

決勝に進んだのは第1シードのアン・バウル(韓国)とBシードからスタートしたゴラン・ポラック(イスラエル)。

アスタナ世界選手権の覇者アンは2回戦の曲者スゴイ・ウリアルテ(スペイン)には「指導2」の優勢で辛勝。決して良い出だしではなかったがここから一気に加速、3回戦はバルチ・シマイロフ(イスラエル)から背負投「有効」、小内刈「一本」(3:38)と連取して圧勝、準々決勝はヴァスハ・マルグヴェラシビリ(ジョージア)を背負投と横四方固の合技(2:51)に仕留め、準決勝はセバスチャン・ザイドル(ドイツ)から横四方固「技有」を奪って勝利。敵少なきブロックを順当に勝ち上がっての決勝進出。

一方のポラックは激戦区となったプールC-Dからの勝ち上がり。2回戦はフェルナンド・ゴンザレス(アルゼンチン)を肩車「一本」(0:54)、3回戦はベカ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)を裏投「有効」で下すと、最大の勝負どころと目された準々決勝のミハエル・プルヤエフ(ロシア)戦を「指導1」対「指導2」の僅少差で乗り越える。準決勝の髙市賢悟戦では、膠着するとみるや秘技を披露。左釣り手で帯を掴むと髙市を時計回りに振り回して1回転半、回転の勢いで髙市の体が浮くと左脚で跳ね上げを呉れて高さを増し、腰を切って投げに掛かる。高校時代のウルフアロンばりの「グルグル振り回し投げ」は見事決まって左跳腰「技有」。この技に毒気を抜かれた髙市の勢いが萎むと「指導1」奪取、さらに立ち直りかけた髙市の大内刈との投げ合いに勝って右小外掛「有効」も追加。大差の優勢勝ちで決勝進出決定。

決勝は開始32秒、左右の効くポラックが右で背中を探ったところにアンが鋭く左背負投を入れて「技有」奪取。強引な組み手で過程を飛ばしてしまおうとしたポラックの意図を察して釣り手で二度三度とブロック、持ちどころを探った相手の組み手をディレイさせたところに入れた会心の一撃。

試合巧者のアンが大量リードを得たことで、試合の行方は見えた感あり。アンは釣り手で間合いを上手く作って距離を詰めたいポラックの意図を挫き、良い意味で試合を流してタイムアップまで辿り着く。結果「技有」優勢でアンの勝利が決まった。

アンは10月のグランドスラム・アブダビ以来キャリア2度目のツアー優勝。グランドスラム東京では入賞なし(竪山将に敗退)、グランドスラムパリでは3位(海老沼匡に敗退)と2大会連続で日本選手に敗れていたが、久々しっかり力を示した大会となった。アンは強引に自分の形を作るタイプではなく、組み手の駆け引きや間合いの出し入れの中で技を仕掛けていくタイプで相変わらず線の細さは否めないが、それでもトップグループにあり続ける力をあらためて証明したと言える。

ツアー3度目の準優勝、惜しくも初優勝を逃したポラックは銅メダルを獲得したアスタナ世界選手権以来の大ブレイク。プルヤエフとの消耗戦を勝ち切る地力の高さはもちろん、滅多に飛ばない髙市を吹っ飛ばした「大回転投げ」などいかにもこの人らしい面白さも見せた。比較的歩留まりの良い戦術派が揃って序列が膠着しがちな66kg級戦線にあって、こういう意外性は非常に貴重。一発勝負の五輪で本当に怖いのは、力が高くても戦い方が読めるメダル常連の強豪たちではない。警戒すべきはランキング的な上下関係の外側で序列を登攀し得る「ハシゴ」を持つ選手であり、ポラックの創造性はそのハシゴ要素が十分あるとみる。注意しておきたい。

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3位決定戦、髙市は痛恨の「ブリッジ一本」で敗れる

髙市賢悟は前述の通りポラックの力技一発に吹っ飛び本戦トーナメント脱落。迎えた3位決定戦は失意ゆえか開始早々に内股を食い、思わずブリッジで回避して技評価を引き上げてしまうミス。僅か13秒の「一本」で表彰台から転落、最終成績は5位となった。

ポラック戦は相手の「面白さ」に髙市の手堅さが飛び越えられてしまった試合である。髙市は持ち前の戦術性の防壁の高さによってその意外性を弾き返さねばならなかったはずだが、3回戦のアントワーヌ・ブシャー(カナダ)戦で「指導1」ビハインドから「指導2」を奪回しての優勢勝ち、準々決勝のソビロフ戦では隅落「技有」失陥から最終盤で隅落「有効」奪回、さらに縦四方固に抑えての一本勝ちとこの試合まで既に2度逆転劇を演じており、心と体のリソースを使い果たしていたという印象。その意味では今大会の結果は意外な技一発によるアクシデント負けではなく、総力戦の結果届くべき地平に到達出来ずに敗れたシビアな実力評価として捉えられるべきだろう。
髙上智史は大会直前にインフルエンザを発症し無念の欠場。五輪代表争いは海老沼匡が大きくリードして、最終章の選抜体重別へと引き継がれる。

【準々決勝】

アン・ボウル(韓国)○合技[背負投・横四方固](2:51)△ベズハ・マルグヴェラシビリ(ジョージア)
セバスチャン・ザイドル(ドイツ)○優勢[技有・背負投]△コリン・オーツ(イギリス)
ゴラン・ポラック(イスラエル)○優勢[指導2]△ミハエル・プルヤエフ(ロシア)
髙市賢悟○縦四方固(2:37)△リショド・ソビロフ(ウズベキスタン)

【準決勝】

アン・ボウル(韓国)○優勢[技有・横四方固]△セバスチャン・ザイドル(ドイツ)
ゴラン・ポラック(イスラエル)○優勢[技有・跳腰]△髙市賢悟

【3位決定戦】

ベズハ・マルグヴェラシビリ(ジョージア)○内股(0:13)△髙市賢悟
ミハエル・プルヤエフ(ロシア)○腕挫十字固(3:33)△セバスチャン・ザイドル(ドイツ)

【決勝】

アン・ボウル(韓国)○優勢[技有・背負投]△ゴラン・ポラック(イスラエル)

【日本代表選手勝ち上がり】

髙市賢悟(旭化成)
成績:5位

[2回戦]
髙市賢悟○横四方固(4:25)△ネイサン・バーンズ(イギリス)

[3回戦]
髙市賢悟○優勢[指導2]△アントワーヌ・ブシャー(カナダ)

[準々決勝]
髙市賢悟○縦四方固(2:37)△リショド・ソビロフ(ウズベキスタン)

[準決勝]
髙市賢悟△優勢[技有・跳腰]○ゴラン・ポラック(イスラエル)

[3位決定戦]
髙市賢悟△内股(0:13)○ヴェスハ・マルグヴェラシビリ(ジョージア)

■ 48kg級・ガルバトラフがムンクバットに連勝、優勝さらったのはジョンボキョン
(エントリー30名)

1.JEONG, Bo Kyeong(KOR)
2.GALBADRAKH, Otgontsetseg(KAZ)
3.MESTRE ALVAREZ, Dayaris(CUB)
3.MUNKHBAT, Urantsetseg(MGL)
5.CLIMENCE, Aurore(FRA)
5.KONDRATYEVA, Nataliya(RUS)
7.CHERNIAK, Maryna(UKR)
7.LOKMANHEKIM, Dilara(TUR)

※日本選手の出場なし

準々決勝でガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)とムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)の因縁対決が実現。もとモンゴルの2番手であったガルバトラフはグランドスラム・パリ決勝でムンクバットを打倒、ついに序列をひっくり返すことに成功したばかり。

この試合は1分19秒にムンクバットが肩車「技有」を獲得、以後も飛びつきながらの隅返に横三角と試合を優位に進める。さすがにアクシデントは2度続かぬと思われたが2分20秒に様相一転、再びムンクバットが肩車に出たところを待ち構えたガルバトラフが被り返し、空転したムンクバット激しく畳に落ちこれは「技有」。顔色変わったムンクバットは「巴十字」さらに再び肩車に打って出るがこれもガルバトラフが捩じり返し浮落「技有」。3分9秒合技「一本」でガルバトラフの勝利が決まった。

2度の「技有」はいずれも微妙な判定ではあったが結果は結果。同一選手に連敗という事態は重い。実力はともかく少なくとも相性の悪さは認めなければならないだろう。世界王者ムンクバット、五輪を前に意外な「苦手」の出現。この2人の配置は本大会のトーナメント進行に大きな影響を与えることになりそうだ。

決勝に進んだのはツアー2大会連続優勝を狙うガルバトラフとジョン・ボキョン(韓国)。

ガルバトラフは1回戦でオルファ・サウダ(チュニジア)に横四方固で一本勝ち(3:38)、2回戦はカタリナ・メンツ(ドイツ)を払釣込足「有効」で下し、準々決勝は前述の通りムンクバットに合技で一本勝ち(3:09)。準決勝はダヤリス・メストレ アルヴァレス(キューバ)に「指導2」対「指導1」の優勢で勝利して決勝進出決定。

一方のジョンは1回戦でミラ・ウルリッヒ(ドイツ)に浮落「技有」、2回戦はミリカ・ニコリツ(セルビア)に肩車「技有」、準々決勝はオロール・クラモンス(フランス)にGS「指導2」優勢(GS2:35)という勝ち上がり。ここまでは決して良い出来ではなかったが、準決勝ではこの日出色の出来を見せていたナタリア・コンドラチェワ(ロシア)を開始12秒の背負投で秒殺「一本」(0:12)、気を良くして決勝に臨む。

ガルバトラフ有利と思われた決勝はしかし、パワー自慢で後の先が得意なガルバトラフとしぶとさが売りのジョンというそれぞれの個性が噛み合ってしまい、意外なほどの泥試合。粘戦4分の結果、最終的には「指導3」対「「指導2」の優勢でジョンの勝利が決まった。ジョンはこれがワールドツアー初優勝。

表彰台にはジョンとガルバトラフのほか、ムンクバットとメストレアルバレスが登壇。

メダル獲得者以外に目立っていたのはコンドラチェワ。1回戦でクリスティーナ・ブデスチュ(モルドバ)を腕挫十字固(1:59)、2回戦でタシアナ・リマ(ギニアビサウ)を腕挫十字固(1:11)、準々決勝はマリナ・チェルニアク(ウクライナ)を横四方固(3:48)と得意の固め技で3試合連続の一本勝ち。3位決定戦でムンクバットに僅差で敗れたが、特徴を十分発揮した大会であった。

第2シードのシャーリーン・ファンスニック(ベルギー)は2回戦でクラモンスに大外刈「技有」を食って敗退、いまひとつパフォーマンスに安定感がない昨今の傾向は変わらず。第4シードのディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)も今年は調子が上がらず準々決勝でメストレアルバレスに一本負け、敗者復活戦もムンクバットに横四方固「一本」で敗れた。

日本選手の出場はなかった。

【準々決勝】

ガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)○合技[浮落・浮落](3:00)△ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)
ダヤリス・メストレアルバレス(キューバ)○背負投(1:30)△ディアラ・ロクマンヘキム(トルコ)
ジョン・ボキョン(韓国)○GS指導2(GS2:35)△オロール・クラモンス(フランス)
ナタリア・コンドラチェワ(ロシア)○横四方固(3:48)△マリナ・チェルニアク(ウクライナ)

【準決勝】

ガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)○優勢[指導2]△ダヤリス・メストレアルバレス(キューバ)
ジョン・ボキョン(韓国)○背負投(0:12)△ナタリア・コンドラチェワ(ロシア)

【3位決定戦】

ムンクバット・ウランツェツェグ(モンゴル)○優勢[指導1]△ナタリア・コンドラチェワ(ロシア)
ダヤリス・メストレアルバレス(キューバ)○優勢[指導3]△オロール・クラモンス(フランス)

【決勝】

ジョン・ボキョン(韓国)○GS指導2(GS2:01)△ガルバトラフ・オトコンツェツェグ(カザフスタン)

■ 52kg級・志々目愛が優勝、準々決勝でミランダを下す
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志々目愛とプリシラ・ネトによる決勝

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(エントリー27名)
【入賞者】
1.SHISHIME, Ai(JPN)
2.GNETO, Priscilla(FRA)
3.BABAMURATOVA, Gulbadam(TKM)
3.CHITU, Andreea(ROU)
5.KIM, Mi-Ri(KOR)
5.MUNKHBAATAR, Bundmaa(MGL)
7.MIRANDA, Erika(BRA)
7.PARK, Da Sol(KOR)

決勝に進んだのはプリシラ・ネト(フランス)と志々目愛の2人。

国内の激しい五輪代表争いの渦中にあるネトは2回戦でブリジット・エンテ(オランダ)を「指導3」の優勢、準々決勝はグルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)を「指導3」の優勢で下し、準決勝はこの日の優勝候補筆頭の第1シード選手アンドレア・キトゥ(ルーマニア)に大内刈「有効」をリードされながら袖釣込腰「技有」を奪って逆転勝利。見事決勝進出を決めた。

一方の志々目は1回戦でペトラ・ナレクス(スロベニア)を内股「一本」(1:15)、2回戦でマリア・エイテル(ドイツ)をこれも内股「一本」(1:39)と順調な立ち上がり。最大の勝負どころと目された準々決勝では第2シードのエリカ・ミランダ(ブラジル)を「指導2」対「指導1」の優勢で下し、準決勝は2回戦でマー・インナン(中国)の首級を上げたノーシード選手キム・ミリ(韓国)を「指導1」の僅少差で破り決勝進出決定。

決勝は志々目が左、ネトは左構えベースの右組み。奥襟の欲しいネトに志々目が粘り強く対処、逆に釣り手で奥襟を得た場面では得意の内股を入れ続けて1分20秒ネトに「指導」、片襟の左大外刈を入れた1分35秒にはネトに2つ目の「指導」が宣告される。拮抗の中で志々目がしっかり攻勢を取った良い時間帯だったが、ここで志々目はネトの右釣腰を乗り越えて着地するなりいきなり自ら膝を屈して伏せる不可解な選択。エクスキューズなきこのアクションに主審迷わず偽装攻撃の「指導」を宣告、一気に雲行きが怪しくなる。この時点で残り時間1分20秒、さらに志々目は再開されるなり不十分な組み手から先に頭を突っ込んでバランスを失った左内股、返されかけてなんとか伏せるという危ない場面を演じてしまう。露骨な回避行動に掛け潰れ紛いの内股と、リード時の悪い癖をまたもや発症したかと思わせる非常に良くない展開。しかしここで僥倖、ネトが頭の下がった志々目の肩越しに帯を掴んで再び右釣腰、志々目は頭を下げて腕を突っ張ったまま場外に引きずり出されるピンチとなったが、主審は冷静にネトのクロス組み手に対し3つ目の「指導」を宣告。

残り時間はわずか30秒。この反則裁定で心が折れたか以後ネトの攻撃は減速、さしたる動きないまま試合は終了。結果「指導1」対「指導3」の優勢で志々目が7月のグランプリ・ウランバートル以来となるキャリア2度目のワールドツアー優勝を達成することとなった。

勝つ以外に道のない大会で、しかも強敵ミランダを倒して優勝した志々目はまさしく見事。しかしメダルクラスの強豪との対戦がミランダのみで今大会で倒すべき「的」であるキトゥとの対戦がなかったこと、準決勝で辛勝したキムが3位決定戦であっという間に負けてしまい「爆発的な伸びを示した手ごわい無印」という評価すべき地位から滑り落ちてしまったこと、そして何より課題を払拭しきれなかった試合内容を考えると、満点評価は与えにくい。ここが勝負というシークエンスでの待ちや掛け潰れが多く、決勝のみならず準々決勝、準決勝ともに率直に言って審判傾向にかなり助けられた部分があった。勝つに勝ったがその組み立てはロジカルとは言い難く、刹那的。五輪代表候補筆頭の中村の長所がシナリオをしっかり組み立てて戦い、「理由のある」勝ち負けを為すことであることからすれば、今回の内容では追撃するには不十分。合格点だが抜群ではない、逆転に必要な高みまでは上り詰められなかったが最低限のハードルはクリア。そう総括されるべき優勝劇だった。

2位のネトはアナベール・ウラニーとの熾烈な五輪代表争いの渦中にあり、地元のグランドスラム・パリではウラニーに投げられて敗れたばかり。この時の最終結果はともに3位だったが、今大会は負けられないグラウンドを背負っての大会だった。優勝こそ出来なかったが、キトゥを破っての2位入賞ということで一歩前に進んだ大会だったのではなかったかと推測される。

そのキトゥは3位決定戦をしっかり勝って表彰台を確保、ワールドランキング1位をキープ。もう1つの3位決定戦はグルバラム・ババムラトワが打点高くキム・ミリを担ぎ上げて開始11秒の「一本」、会場の喝采を浴びて3位に滑り込んだ。

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52kg級入賞者。左からネト、志々目、ババムラトワ、キトゥ。

【準々決勝】

アンドレア・キトゥ(ルーマニア)○崩上四方固(3:54)△パク・ダソル(韓国)
プリシラ・ネト(フランス)○崩上四方固(2:55)△グルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)
志々目愛○優勢[指導2]△エリカ・ミランダ(ブラジル)
キム・ミリ(韓国)○優勢[指導1]△ムンクバータル・ブンドマー(モンゴル)

【準決勝】

プリシラ・ネト(フランス)○優勢[技有・袖釣込腰]△アンドレア・キトゥ(ルーマニア)
志々目愛○優勢[指導1]△キム・ミリ(韓国)

【3位決定戦】

グルバダム・ババムラトワ(トルクメニスタン)○背負投(0:11)△キム・ミリ(韓国)
アンドレア・キトゥ(ルーマニア)○優勢[技有・内股透]△ムンクバータル・ブンドマー(モンゴル)

【決勝】

志々目愛○優勢[指導3]△プリシラ・ネト(フランス)


【日本代表選手勝ち上がり】

志々目愛(帝京大4年)
成績:優勝

[1回戦]
志々目愛○内股(1:15)△ペトラ・ナレクス(スロベニア)

[2回戦]
志々目愛○内股(1:39)△マリア・エイテル(ドイツ)

[準々決勝]
志々目愛○優勢[指導2]△エリカ・ミランダ(ブラジル)

[準決勝]
志々目愛○優勢[指導1]△キム・ミリ(韓国)

[決勝]
志々目愛○優勢[指導3]△プリシラ・ネト(フランス)

■ 57kg級・絶好調キムジヤンディを一蹴、迫力の寝技披露した松本薫が圧勝V
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57kg級は世界王者松本薫がトーナメントを席捲

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決勝、松本がルスヴォを寝技に引きずり込む

(エントリー29名)

【入賞者】
1.MATSUMOTO, Kaori(JPN)
2.RECEVEAUX, Helene(FRA)
3.LIEN, Chen-Ling(TPE)
3.SMYTHE DAVIS, Nekoda(GBR)
5.KIM, Jan-Di(KOR)
5.SILVA, Rafaela(BRA)
7.AMARIS, Yadinys(COL)
7.MINAKAWA, Camila(ISR)

第3シードでスタートした現役世界王者・松本薫がみごと優勝。2回戦はルゥ・トーンジュエン(中国)を右小内刈と横四方固の合技「一本」(2:00)、そして最大の山場と目されたラファエラ・シウバ(ブラジル)との準々決勝は2分23秒に奪った「指導」ひとつのアドバンテージを譲らず優勢勝ち。

圧巻はキム・キャンディ(韓国)との準決勝。現在国際大会3連勝中で最高峰大会グランドスラム・パリを制したばかりのキムを、松本は序盤から寝技で圧倒する。まず大内刈で潰れたキムに食いつくと、「国士舘返し」から横三角、脚で腕を挟むとオモプラッタ風のめくり返し、外れて正対すると側転で乗り越えてパス、さらに下から引込返を試みる。これは「待て」となったがあまりの連続性と迫力に圧倒されたか、再開以後もキムは体が固まりなかなか技が出ない。松本今度は袖釣込腰でキムを崩すとまず正対、相手に足を絡ませておいてパス、脚を引き抜いて「マウント」、相手の脚が入って距離を取られそうになると横からパスし直して首にアプローチ、相手が伏せるとまず国士舘返し、さらに左手で下から襟を掴んで腹を包み、右で首をロックしながらめくり返す。勢いがつき過ぎて相手が伏せると再度これを試み、最後はネックロック風の崩袈裟固に抑え込んで「一本」。おそらく1分近くに渡る長い寝技の攻防はどの時間軸で切っても「効く攻撃」であり、主審が「待て」で介入するタイミングは皆無。次元が違うと評すべき凄まじい連続攻撃であった。

決勝は躍進中のエレン・ルスヴォ(フランス)と対戦。松本は常に前進して相手を追い詰め小外刈、さらに左大腰に打って出ると窮したルスヴォは反射的に右内股で反応。待ち構えた松本はこれを潰して、下から首と腹を抱えてめくり返し、崩上四方固。ルスヴォが8秒で逃れるとまたもや「待て」を差し挟ませない連続攻撃で後ろ手に首を抱えた崩袈裟固。自身の左手首を右で握って作り上げた拘束の輪にルスヴォの首を挟み込んだまま抑え切り2分49秒「一本」の声を聞く。松本この試合も圧勝で、見事優勝を飾った。

松本の強さが際立った大会。特にこれまでグランプリ・タシケント優勝、グランドスラム・アビダビ優勝、グランプリ済州優勝、そしてグランドスラム・パリ優勝と国際大会4連勝中のキムを一蹴した準決勝の印象は鮮烈だ。国際大会に皆勤してつば競り合いの中で細かく序列を上下する強豪たちに、あたかも子供の背比べに突如大人が紛れ込んで来たかのような格の違いを印象付けたのではないだろうか。

唯一の不安要素はグランドスラム東京で一本負けを喫しているムラ気の天才肌・シウバとの戦いの様相。勝つには勝ったが決定的に相手を崩した場面はなく結果は「指導1」の小差。当初ケンカ四つの腰の入れ合いを忌避していたシウバも中途からはすっかり慣れ、得意の腕挫十字固に深く入り掛ける場面も現出。率直に言って松本はやりにくそう、一方シウバは再び手ごたえを得た試合と見受けられた。この様相は次戦以降の布石としてしっかり記憶しておきたいところ。

キムは気落ちしたか3位決定戦ではネコダ・スミスデヴィス(イギリス)に谷落「有効」、小外掛「技有」と後の先の技を2発食って敗退。中途半端に腰を入れ続け、ために相手に狙われるという悪い循環の試合、覇気の感じられない一番であった。思い切りの良さをエンジンに一段階段を上がったはずのキムの、弱点が垣間見えた試合とも観察できる。

シウバも3位決定戦では持ち前のムラ気を悪い方向に発揮、レン・チェンリン(台湾)の粘り強い戦いに我慢が効かずに組み手のミスを繰り返し、最後は「押し出し」行為による4つ目の「指導」を受けて終戦。最終成績は5位に終わった。

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57kg級入賞者。左からルスヴォ、松本、スミスデヴィス、レン。

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【準々決勝】

レン・チェンリン(台湾)○上四方固(2:44)△ヤドニス・アマリス(コロンビア)
エレン・ルスヴォ(フランス)○合技[小外刈・袈裟固]△ネコダ・スミスデビィス(イギリス)
キム・ジャンディ(韓国)○優勢[技有・浮落]△カミラ・ミナカワ(イスラエル)
松本薫○優勢[指導1]△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

【準決勝】

エレン・ルスヴォ(フランス)○GS有効・内股(GS1:38)△レン・チェンリン(台湾)
松本薫○崩袈裟固(2:38)△キム・ジャンディ(韓国)

【3位決定戦】

ネコダ・スミスデビィス(イギリス)○優勢[技有・小外掛]△キム・ジャンディ(韓国)
レン・チェンリン(台湾)○反則[指導4](4:14)△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

【決勝】

松本薫○崩袈裟固(2:49)△エレン・ルスヴォ(フランス)

【日本代表選手勝ち上がり】

松本薫(ベネシード)
成績:

[2回戦]
松本薫○合技[小内刈・横四方固](2:00)△ルゥ・トーンジュエン(中国)

[準々決勝]
松本薫○優勢[指導1]△ラファエラ・シウバ(ブラジル)

[準決勝]
松本薫○崩袈裟固(2:38)△キム・ジャンディ(韓国)

[決勝]
松本薫○崩袈裟固(2:49)△エレン・ルスヴォ(フランス)


文責:古田英毅
写真:Gabi Juan

Text by Hideki Furuta
Photo by Gabi Juan

※ eJudoメルマガ版3月2日掲載記事より転載・編集しています。

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