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グランドスラムパリ2016・男子最終日4階級(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)レポート

(2016年2月24日)

※ eJudoメルマガ版2月24日掲載記事より転載・編集しています。
男子最終日4階級(81kg級、90kg級、100kg級、100kg超級)レポート
グランドスラムパリ2016
■ 81kg級・チリキシビリがしっかり優勝、再爆発の21歳イヴァノフが2位に食い込む
(エントリー63名)

【入賞者】
1.TCHRIKISHVILI, Avtandili(GEO)
2.IVANOV, Ivaylo(BUL)
3.PENALBER, Victor(BRA)
3.WANG, Ki-Chun(KOR)
5.CSOKNYAI, Laszlo(HUN)
5.KHUBETSOV, Alan(RUS)
7.KERMARREC, Julian(FRA)
7.MOUSTOPOULOS, Roman(GRE)

決勝に進んだのは大本命の第1シード選手アブタンディル・チリキシビリ(ジョージア)と、ノーシードからスタートした注目の新鋭イヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア)。

チリキシビリは2回戦からアラン・シュミット(フランス)とマッチアップするなかなか歯ごたえのある組み合わせだったが、この試合はシュミットが「足取り」を犯しダイレクト反則負け(4:20)。3回戦はニール・ファン・デ・カメール(オランダ)と「指導2」を奪い合った後のGS延長戦1分27秒に内股で「一本」を奪って勝利。準々決勝はシード選手のラズロ・チョクナイ(ハンガリー)を大腰「一本」(4:07)、準決勝はAシード選手のセルジュ・トマ(UAE)が欠場したプールBを勝ち上がってきたアラン・クベトソフ(ロシア)を「指導1」の僅少差で凌いで決勝進出決定。

一方のイヴァノフは、まったくの無名から昨年10月のグランドスラム・アブダビでいきなり優勝、注目を集めたばかりの21歳。この日はノーシードからスタートし、まずエリ・ヘムバツ(中国)を右背負投と縦四方固の合技で「一本」(4:37)、2回戦ではバレリウ・ドミニカ(モルドバ)を「指導2」の優勢で下してベスト16入り。そしてここからが圧巻、3回戦はスヴェン・マレシュ(ドイツ)を袖釣込腰「一本」(2:52)、さらに準々決勝でヴィクトール・ペナウベル(ブラジル)を背負投「一本」(1:57)とシード選手2人を一蹴。準決勝はワン・キチュン(韓国)を「指導2」対「指導1」の優勢で退け、見事決勝まで辿り着くこととなった。

決勝はイヴァノフが左組み、両組みのチリキシビリは右と左の構えを使い分けながら対峙。イヴァノフが隅返を先んじて放ち、チリキシビリは左の袖釣込腰に体を捨てること数度。しかしイヴァノフの姿勢が良いためかチリキシビリの技はなかなか効かず、2分30秒過ぎに思い切って放った内股もイヴァノフが小外刈に変換して回避、ポイントには至らず。

しかし2分56秒、チリキシビリがイヴァノフの右へ座り込むように小外掛。相手の脇下に頭を突っ込み半ば肩車となったこの技にイヴァノフたまらず転がり「技有」。しかしイヴァノフも意地を見せ、失点からまださほどの時間も経たぬ3分29秒、釣り手を肩襟に差した右背負投に潜り込む。いままでとは異なる構成のこの技にチリキシビリ吹っ飛ぶが手をつき、さらに自ら回転してと必死の防御、その甲斐あってこの一撃は「有効」に留まる。以後イヴァノフは猛攻、「指導」2つを得るがチリキシビリは残り時間を計算しながら試合を流して終戦。結果、チリキシビリが「技有」優勢で勝利して優勝を飾ることとなった。

トーナメント全体を通してみても、目立っていたのはやはり決勝進出を果たした2人。チリキシビリは決して本調子ではなさそうだったが、しっかり「一本」で勝ち上がった序盤戦、手堅く勝ち抜いた準決勝以降と、状況に応じて排水量を変えることが可能な、力の喫水線の高さが印象的だった。投げずば勝てぬと踏んだイヴァノフ戦の急激なペースアップと「技有」獲得後の安全運転ぶりにこの様相は端的。

イヴァノフはアブダビ大会の再現とでもいうべき大活躍。東アジアシリーズでは一旦勢いが止まった印象だったが、攻めること自体で流れを掴む、己の出世の源泉を自覚したか今回は本領発揮とでもいうべき大会だった。マレシュ、ペナウベル、ワンと立て続けに抜いた3試合は圧巻。戦術性ではなく地力と技の威力を上げることで序列を這い上がってきている印象で、まだまだ伸びる選手と考えておくべきだろう。

3位にはペナウベルとワンが入賞。韓国の2番手で昨年来度々良い試合を見せているイ・センスはヤキョー・イマモフとの初戦を払腰返「技有」で制したが、Bシード選手アラン・クベトソフとの次戦で背負投「技有」を食って敗れた。


【準々決勝】

アブタンディル・チリキシビリ(ジョージア)○大腰(4:07)△ラズロ・チョクナイ(ハンガリー)
アラン・クベトソフ(ロシア)○優勢[技有・大外返]△ジュリアン・ケルマヘック(スロバキア)
ワン・キチュン(韓国)○優勢[技有・背負投]△ロマン・モウストポロウス(ギリシャ)
イヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア)○背負投(1:57)△ヴィクター・ペナウベル(ブラジル)

【準決勝】

アブタンディル・チリキシビリ(ジョージア)○優勢[指導1]△アラン・クベトソフ(ロシア)
イヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア)○優勢[指導2]△ワン・キチュン(韓国)

【3位決定戦】

ワン・キチュン(韓国)○優勢[技有・内股]△ラズロ・チョクナイ(ハンガリー)
ヴィクター・ペナウベル(ブラジル)○横四方固(1:22)△アラン・クベトソフ(ロシア)

【決勝】

アブタンディル・チリキシビリ(ジョージア)○優勢[技有・肩車]△イヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア)

※日本選手の出場なし

■ 90kg級・西山大希が優勝、五輪代表争いに再び名乗り
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アレクサンドル・イディーとの決勝を戦う西山大希

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西山はイディーを支釣込足で崩して横四方固

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90kg級入賞者。左からイディー、西山、ガク、リパルテリアニ。

(エントリー49名)
【入賞者】
1.NISHIYAMA, Daiki(JPN)
2.IDDIR, Alexandre(FRA)
3.GWAK, Dong Han(KOR)
3.LIPARTELIANI, Varlam(GEO)
5.GOBERT, Ludovic(FRA)
5.GROSSKLAUS, Ciril(SUI)
7.BETTONI, Eduardo(BRA)
7.BUFFET, Romain(FRA)

非常に役者の揃ったトーナメントであったが、これぞという強豪が序盤戦でことごとく畳から去る荒れた展開。そんな中、天王山となったガク・ドンハン(韓国)との準々決勝を制した西山大希が一気に頂点を極めた。

この準々決勝、西山は組み手にうるさいガクの「手を出しては引っ込める」「引っ込めては手を出し直して良いところだけを掴もうとする」一手目に過剰反応せず、敢えて持たせることで組み合いに持ち込むことを選択。ガクに抑えられた左釣り手の袖をそのまま持たせておくことで逆に胸元にアプローチ、相手の左襟を掴んで自分の形を作ることに成功。間を置かずに右袖釣込腰であっという間に相手を腰に載せ、体を捨てて投げ切ると主審は「技有」を宣告。これは「有効」に訂正されたが、投げた瞬間に「一本」が想起される素晴らしい一撃だった。その後「指導」2つを失ったがこの一撃の余波が効いて試合はそのまま終了。西山の勝利が決定した。

決勝の相手は地元のエース、アレクサンドル・イディー(フランス)。こちらの山場も準々決勝にあり、この試合では優勝候補のヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)を相手に「技有」ビハインドも残り1秒の一本背負投「一本」で逆転するという劇的勝利で会場を沸かせた。打点の高い豪快な一撃はこの大会のベスト「一本」に選ばれてもおかしくないもの。準決勝は、3回戦で第3シード選手ノエル・ファンテンド(オランダ)をGS大内刈「有効」で破っているシリル・グロウスクラウス(スイス)を一本背負投「有効」で破って決勝進出決定。

決勝は西山がイディーを圧倒。1分48秒に右袖釣込腰で「有効」を奪うと、終盤に差し掛かるところで支釣込足。崩れた相手を崩上四方固に捉えて「一本」を取り切り、見事優勝を決めた。

西山、世界王者のガクを倒し、ツアー最高峰大会であるグランドスラムパリを制したという結果はまさしく見事。メダルクラスの超強豪との試合はガクとの1試合だけであったが、そのガク戦を投技のポイントを挙げて乗り切ったことも加点ポイント。決して抜群の出来ではなく西山本来の爆発力を如何なく発揮したとは言い難かったが、それでも勝ち切ったしぶとさは十分評価されるべきだ。淡白な試合ぶりに終始したグランドスラム東京大会で見せた、まさしくその弱点を克服して一段階段を上った大会であったと評価したい。「組めば勝てるのだから」とばかりにガクとの組み手争いに良い意味で「乗らなかった」準々決勝は、投げの威力を何よりの持ち味とする西山の、今後の戦いの基準点になり得るものだったのではないだろうか。

第4シードのクリスチャン・トート(ハンガリー)は初戦でリ・コツマン(イスラエル)に「指導3」対「指導2」で敗れ入賞戦線に全く絡めず。アスレイ・ゴンザレス(キューバ)は初戦でマルク・オーデンタール(ドイツ)に低い右体落を仕掛けた際にバランスを失い右膝を負傷。そのまま棄権して畳を去った。 


【準々決勝】

西山大希○優勢[有効・袖釣込腰]△ガク・ドンハン(韓国)
ルドウィック・ゴベル(フランス)○合技[大内刈・浮落](3:50)△エドゥアルド・ベットーニ(ブラジル)
アレクサンドル・イディー(フランス)○一本背負投(5:00)△ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
シリル・グロウスクラウス(スイス)○一本背負投(3:38)△ロマン・ブフェ(フランス)

【準決勝】

西山大希○優勢[指導2]△ルドウィック・ゴベル(フランス)
アレクサンドル・イディー(フランス)○優勢[有効・一本背負投]△シリル・グロウスクラウス(スイス)

【3位決定戦】

ガク・ドンハン(韓国)○優勢[技有・背負投]△シリル・グロウスクラウス(スイス)
ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)○優勢[技有・内股巻込]△ルドウィック・ゴベル(フランス)

【決勝】

西山大希○崩上四方固(3:25)△アレクサンドル・イディー(フランス)

【日本代表選手勝ち上がり】

西山大希(了徳寺学園職)
成績:優勝

[2回戦]
西山大希○反則[指導4](3:30)△カロリス・バウザ(ラトビア)

[3回戦]
西山大希○優勢[指導3])△アクセル・クルジェ(フランス)

[準々決勝]
西山大希○優勢[有効・袖釣込腰]△ガク・ドンハン(韓国)

[準決勝]
西山大希○優勢[指導2]△ルドヴィク・ゴベル(フランス)

[決勝]
西山大希○崩上四方固(3:25)△アレクサンドル・イディー(フランス)

■ 100kg級・マレが素晴らしい出来で大会3連覇達成、ウルフアロンがクルパレク倒し3位に食い込む
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3位決定戦、ウルフがマイケル・コレルを攻める

(エントリー54名)

【入賞者】
1.MARET, Cyrille(FRA)
2.REYES, Kyle(CAN)
3.FREY, Karl-Richard(GER)
3.WOLF, Aaron(JPN)
5.GASIMOV, Elmar(AZE)
5.KORREL, Michael(NED)
7.FONSECA, Jorge(POR)
7.MAMMADOV, Elkhan(AZE)

強豪がみっしり参加、どのブロックにも主役級の大物が2枚、3枚と配された非常にハイレベル、かつ高密度なトーナメント。

その中で上側の山からは第4シードのシリル・マレ(フランス)が決勝進出。2回戦でアヴァド・マージョウブ(イラン)を腰車と袈裟固の合技「一本」(3:44)、3回戦はアルチョム・ブロシェンコ(ウクライナ)を「指導2」優勢で破り、準々決勝では初戦でディミトリ・ピータース(ドイツ)を破った台風の目ホルヘ・フォンセカ(ポルトガル)に腕挫十字固「一本」(1:14)で圧勝。準決勝では第1シードのエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)を肩車「一本」(2:35)に仕留めて決勝進出決定。

ピータースの敗退以外は比較的順当に進んだ上側の山と比較すると、人材揃った下側の山は大荒れの大激戦。その主役は日本代表のウルフアロンとカヨル・レイズ(カナダ)の若手選手2人だ。

プールCに配されたウルフは初戦で早くも最初の山場、前戦でチェリャビンスク世界選手権銀メダリストであるホセ・アルメンテロス(キューバ)を横四方固「一本」で下しているアドラン・ビスルタノフ(ロシア)と対戦。背中を叩いて攻撃意志を演出、ウルフが組み手を直すととっとと切って離れる相変わらず意地の悪い柔道のビスルタノフに一計を案じたウルフ、背中を深く握って相手を固定し小外掛に打って出るがビスルタノフは落ち際に体をねじって返し「有効」。非常に良くない展開であったが、ウルフは慌てず前進継続、「指導2」を得ると潮目の変化を逃さず隅返「有効」を奪回。ここに至ってついにビスルタノフがウルフの前進、掌握の連続行動に根負け。脇を差すことを許してしまうとウルフ間をおかず内股で引っこ抜き「技有」。この一撃をテコに勝利決定。

難しい試合を良い形で勝ち抜いて勢いづいたウルフは続く3回戦でチェリャビンスク世界選手権の覇者ルーカス・クルパレク(チェコ)を隅落「有効」で下す大殊勲。準々決勝はエルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)をも「指導2」対「指導3」の優勢で下して、ついにこの激戦プールを抜け出しベスト4入り確定。

一方のレイズはプールDに配置。比較的組み合わせに恵まれた序盤戦はベンジャミン・フレッチャー(イギリス)に「指導4」勝ち、クレモン・デルヴェール(フランス)戦は大内刈「有効」、上四方固「技有」と連取して優勢勝ち、ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)戦は膝車「有効」からの横四方固「一本」と非常に順当な勝ち上がり。最大の勝負どころとなった準々決勝では、ここまでイワン・レマレンコ(UAE)とツブシンバヤル・ナイダン(モンゴル)を退けてきた、アスタナ世界選手権銀メダリストであるカールリヒャード・フレイ(ドイツ)を小外刈「技有」で下して準決勝へと勝ち上がった。

ウルフとレイズによる準決勝は左相四つ。ウルフが抱きつき、手を合わせとあらゆる行動を取りながらとにかく前に出続ける積極的な試合を披露。しかし1分22秒に放った肩車が潰れてしまい偽装攻撃の「指導」、2分22秒には下がるレイズを逃がすまいときつく袖を握り込んだ行動がいわゆる「袖口絞り」と判断され2つ目の「指導」を受けてしまう。しかしレイズもウルフの前進をいなそうと掛けた背負投が横を向いたまま潰れてしまい、2分9秒、3分11秒と偽装攻撃の「指導」を食らってスコアはタイ。しかし4分5秒、大内刈の仕掛け合いとなったところでレイズが鋭く反応、ウルフの左大内刈をほとんど出足払と言って良い勢いで振り回し返し大内返「有効」獲得。

ウルフ激しく追いかけ3つ目の「指導」も得たがそのまま終戦。内容は一貫してウルフ優勢、しかし結果は技一撃を決めたレイズという様相で試合は決着、「有効」優勢を以てレイズが勝利し決勝へと駒を進めることとなった。

決勝はマレが右、レイズが左組みのケンカ四つ。会場の大声援に背中を押されるように溌剌としたした動きを見せるマレが開始30秒、引き手争いに混ぜ込んで深く身を捨て「横巴」。レイズ上体を引きずり込まれて体が伸びてしまい、回避行動間に合わずこれは「有効」。
以後もマレは攻勢継続、残り2分に差し掛かるところでレイズの左へ横落。レイズこれはなんとか耐えたが、裏に抜けたマレは釣り手で襟を確保し続けたままレイズを立たせず正面に回り込み直し、上からその首を抱え込む。このまま真裏に押し込んでレイズに背をつかせると、絡まれた脚を引き抜いて所謂「襟袈裟固」へと連絡する。レイズは動けず「一本」、マレの優勝が決まった。

なかなか世界大会で成績が出ないマレだが、今年も地元パリでは大活躍。圧勝と言って良い出来で見事大会3連覇を飾った。世界大会での表彰台という悲願を五輪の場で達成することが出来るか今年はまさしく勝負の年。

レイズは線の細さが垣間見えたが、技の切れ味を生かして決勝進出。あらゆるタイプが揃うこの階級にあって「次も必ず勝てる」と予感させるような安定感や骨の太さを見せるまでには至らなかった印象だが、「技」のある選手の最高到達点の高さを見せつけたと評したい。五輪では間違いなく危険な選手として扱われるだろう。

ウルフはしっかり3位を確保。前進、掌握、攻撃の三段アクション、そしてそれを間断なく継続する戦術構成は迫力十分。機関車が突っ込み続けるようなこのやり口はどんな強豪にとっても厄介なはず。あとはこのいわば「高いレベルでの順行運転」から一段抜け出す技なり発想なり、なにがしかの飛躍が欲しいところ。1ミリずつの実直な登攀行動ではどんなに高い標高にあっても必ず相手は対応してくる。一瞬で相手を置き去りにする、「ギャップ」を手立てに持てるかどうかが次のステップではないだろうか。

マレ、レイズ、ウルフの高評価は当然として、以下の選手でこの日目立っていたのはなんといってもホルヘ・フォンセカ(ポルトガル)。2回戦では国内の凄絶な五輪代表争いの渦中にあるディミトリ・ピータース(ドイツ)を僅か1分5秒、裏投「一本」で畳に沈めるなど、技の切れ味と素晴らしいパワーを二つながら披露。準々決勝でマレに敗れ、敗者復活戦ではマイケル・コレル(オランダ)から「指導3」を奪いながら寝技の対応を誤り抑え込まれてしまうなどメンタル的にも技術的にも安定感があるタイプではないが、この先注目しておくべき、危険な選手だ。

100kg級に転向、デビュー戦のグランドスラム東京で5位に入賞したベカ・グビニアシビリ(ジョージア)は初戦敗退。イギリスの無名選手が放った右釣腰を抱え込もうとしてしまい、そのまま思い切り吹っ飛んで一本負けを喫した。相手に背中越しに帯を掴まれ、苦し紛れに首を抜き、背中を抱えたその姿勢のまま剛体となって投げられたこの形は明らかに相手の技の威力の見積もりミス。まだ100kg級に対応出来ていないと評されて然るべき「力負け」であった。

五輪代表を激しく争う先輩ピータースの初戦敗退という大チャンスを得たカールリヒャード・フレイはしかしレイズに敗れてしまい、3位決定戦を落とせばアドバンテージ消失という大ピンチ。しかしエルマー・ガシモフとの大熱戦をGS延長戦の腰車「一本」で制して、なんとか表彰台は確保した。

代表争いということでいえば、気になるのはロシア勢。現在最前線兵士としてツアーに送り込まれ続けているビスルタノフは前述の通り今回も酷い試合でウルフに敗退、終盤は正座して息を整え、勝手に帯を解いては結び、主審の注意を無視し、間合いを冷却すると一転開始線に戻らずそのままの位置から飛び掛かるという相変わらずの小策士ぶり。試合が終えると握手を拒否し、相手を無視して悪役に徹したまま畳を去った。本当にこんな選手とあのカイブラエフを競らせているのか、ロシアの育成戦略の迷走ぶりは五輪イヤーに至ってさらに明らか。今後の展開が注目される。

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100kg級入賞者。左からレイズ、マレ、ウルフ、フレイ。

【準々決勝】

エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・肩車]△マイケル・コレル(オランダ)
シリル・マレ(フランス)○腕挫十字固(1:14)△ホルヘ・フォンセカ(ポルトガル)
ウルフアロン○優勢[指導3]△エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)
カヨル・レイズ(カナダ)○優勢[技有・小外刈]△カールリヒャード・フレイ(ドイツ)

【準決勝】

シリル・マレ(フランス)○肩車(3:25)△エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
カヨル・レイズ(カナダ)○優勢[有効・大内返]△ウルフアロン

【3位決定戦】

ウルフアロン○合技[大内刈・横四方固](4:47)△マイケル・コレル(オランダ)
カールリヒャード・フレイ(ドイツ)○GS腰車(GS0:23)△エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)

【決勝】

シリル・マレ(フランス)○崩袈裟固(2:19)△カヨル・レイズ(カナダ)

【日本代表選手勝ち上がり】

ウルフアロン(東海大2年)
成績:3位

[1回戦]
ウルフアロン○優勢[技有・体落]△インベニーク・インジャイェ(セネガル)

[2回戦]
ウルフアロン○優勢[技有・内股]△アドラン・ビスルタノフ(ロシア)

[3回戦]
ウルフアロン○優勢[有効・隅落]△ルーカス・クルパレク(チェコ)

[準々決勝]
ウルフアロン○優勢[指導3]△エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)

[準決勝]
ウルフアロン△優勢[有効・大外返]○カヨル・レイズ(カナダ)

[3位決定戦]

ウルフアロン○合技[大内刈・横四方固](4:47)△マイケル・コレル(オランダ)

■ 100kg超級・七戸龍衝撃の敗退、優勝は原沢久喜が攫う
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100㎏超級入賞者。左からサッソン、原沢、モウラ、メイヤー。

(エントリー34名)

【入賞者】
1.HARASAWA, Hisayoshi(JPN)
2.SASSON, Or(ISR)
3.MEYER, Roy(NED)
3.MOURA, David(BRA)
5.MATIASHVILI, Levani(GEO)
5.SHICHINOHE, Ryu(JPN)
7.KOKAURI, Ushangi(AZE)
7.OUCHANI, Hamza(FRA)

日本勢2人が頭一つ抜け出た優勝候補であったが、予選ラウンドの主役となったのは間違いなくオール・サッソン(イスラエル)。得意の担ぎ技がこの日は切れまくり、初戦で第4シードのバルナ・ボール(ハンガリー)を袖釣込腰「有効」、3回戦ではスタニスラフ・ボンダレンコ(ウクライナ)を背負投「一本」(0:40)、準々決勝はハムザ・ウーチアニ(フランス)を背負投で2度投げつけて合技「一本」(3:11)と快勝続き。この時点でも相当危険な香りを漂わせていたが、圧巻はなんといっても準決勝。優勝候補の七戸龍に内股「有効」を奪われるも、1分17秒左背負投を鮮やかに決めて逆転の「一本」(1:17)。世界選手権で2大会連続銀メダル、国際的にはテディ・リネール(フランス)の「次」の座を確定していた七戸を下す大殊勲で、見事決勝進出を決めた。

名だたる強豪が敗れ続け、荒れた大会の中を勝ち上がったもう1人の決勝進出者は原沢久喜。初戦からアブドゥロ・タングリエフ(ウズベキスタン)という超曲者との対戦だったが、この試合は4つの「指導」を奪って手堅く勝利、3回戦はエルメイディ・マルキ(モロッコ)を内股と横四方固の合技「一本」(3:43)、準々決勝は難敵ロイ・メイヤー(オランダ)から右内股「有効」を奪うと、最後は糸の切れた相手を横四方固「一本」に抑え込んで勝利決定。準決勝はレヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)を右内股「技有」で下して、余裕を持って決勝進出を決めた。

決勝はサッソン、原沢ともに右組みの相四つ。七戸の敗戦を見た原沢はさすがに慎重な試合運びでなかなか具体的な技が出ず、サッソンの左一本背負投を捕まえ潰した1分52秒原沢に消極的との咎で「指導1」。
しかし奮起した原沢が迫力十分に右大外刈を放つとサッソンは両手で相手の組み手を切り離して回避、この行為によりサッソンに「指導」。残り2分を過ぎてからは原沢がギアを一段上げて内股の連続攻撃を見せ、片膝をついたサッソンを引きずり回した直後の1分2秒サッソンに2つ目の「指導」、さらに残り34秒でサッソンに今度は場外の咎による「指導3」が与えられる。原沢は以後も余裕を持って試合を進め、結果「指導3」の優勢で危なげなく勝利を決めた。

原沢はこれで国際大会6大会連続の優勝。ライバル七戸龍と敢えて同時に投入されるという過酷な代表選抜対象大会で、しっかり最高の結果を残した充実の遠征であった。

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3位決定戦、ロイ・メイヤーが七戸龍から大内刈「有効」

一方3位決定戦に回った七戸はロイ・メイヤーに抱きつきの左大内刈を食ってしまい「有効」失陥、これを奪い返せずなんと1大会で2敗。最終成績は5位となってしまった。ダニエル・ナテア(ルーマニア)を内股2発でなで斬り、さらに意外性のあるジャンセバスチャン・ボンヴォワサン(フランス)を「指導4」で退け、ブラジルの一番手の座を確定しつつある強敵ダビド・モウラ(ブラジル)を小外刈「技有」で沈めてと充実の出来を見せていた序盤戦の出来から一転、この結果はまさしく意外の一言。攻撃力の高さに比しての受けの意外な脆さはかつて国際大会でのし上がる以前の七戸の弱点であり、この大事な時期に見せてはいけないものを見せてしまったという印象。世界選手権で2大会連続銀メダルという圧倒的な実績をテコに優位に進めてきた代表レースの行方もこれでいよいよわからなくなって来た。

トーナメント全体を見渡すと、「ロンドン-リオ期」を牽引してきたベテラン達がほぼ全滅。キム・スンミン(韓国)は初戦でモウラ得意の巴投を思い切り食って一本負け、第2シードのファイセル・ヤバラー(チュニジア)は3回戦でウサンジ・コカウリ(アゼルバイジャン)に「指導4」で敗退、アダム・オクリアシビリ(ジョージア)も初戦でハムザ・ウーチアニに「指導4」で敗退、久々国際大会に戻ってきたラファエラ・シウバ(ブラジル)も初戦でマティアシビリに「指導2」対「指導3」で敗退。キム以外はその強さの源泉となっていた体力が明らかに落ちている印象で、ようやくたどり着いた五輪イヤーの序盤戦としては一種残酷な様相の大会であった。

【準々決勝】

七戸龍○優勢[技有・小外刈]△ダビド・モウラ(ブラジル)
オール・サッソン(イスラエル)○合技[背負投・背負投](3:11)△ハムザ・ウーチアニ(フランス)
レヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)○優勢[指導3]△ウサンジ・コカウリ(アゼルバイジャン)
原沢久喜○横四方固(5:00)△ロイ・メイヤー(オランダ)

【準決勝】

オール・サッソン(イスラエル)○背負投(1:17)△オール・サッソン(イスラエル)
原沢久喜○優勢[技有・内股]△レヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)

【3位決定戦】

ダビド・モウラ(ブラジル)○反則[指導4]△レヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)
ロイ・メイヤー(オランダ)○優勢[有効・大内刈]△七戸龍

【決勝】

原沢久喜○優勢[指導3]△オール・サッソン(イスラエル)

【日本代表選手勝ち上がり】

原沢久喜(日本中央競馬会)
成績:優勝

[2回戦]
原沢久喜○反則[指導4](3:15)アブドゥロ・タングリエフ(ウズベキスタン)

[3回戦]
原沢久喜○合技[内股・横四方固](3:43)△エル メイディ・マルキ

[準々決勝]
原沢久喜○横四方固(5:00)△ロイ・メイヤー(オランダ)

[準決勝]
原沢久喜○優勢[技有・内股]△レヴァニ・マティアシビリ(ジョージア)

[決勝]
原沢久喜○優勢[指導3]△オール・サッソン(イスラエル)

七戸龍(九州電力)
成績:5位

[2回戦]
七戸龍○内股(1:02)△ダニエル・ナテア(ルーマニア)

[3回戦]
七戸龍○反則[指導4](2:37)△ジャンセバスチャン・ボンヴォワサン(フランス)

[準々決勝]
七戸龍○優勢[技有・小外刈]△ダビド・モウラ(ブラジル)

[準決勝]
七戸龍△背負投(1:17)○オール・サッソン(イスラエル)

[3位決定戦]
七戸龍△優勢[有効・大内刈]○ロイ・メイヤー(オランダ)



文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

写真:Gabi Juan
Photo by Gabi Juan

※ eJudoメルマガ版2月24日掲載記事より転載・編集しています。

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