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グランドスラムパリ2016・男子第1日3階級(60kg級、66kg級、73kg級)レポート

(2016年2月11日)

※ eJudoメルマガ版2月11日掲載記事より転載・編集しています。
男子第1日3階級(60kg級、66kg級、73kg級)レポート
グランドスラムパリ2016
■ 60kg級・志々目徹が乱戦勝ち抜き手堅く優勝
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準決勝、志々目徹がホヴァネス・ダフチャンから支釣込足「有効」

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決勝に臨む志々目

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決勝、志々目がイルガー・ムシュキエフを攻める

(エントリー55名)

【入賞者】
1.SHISHIME, Toru(JPN)
2.MUSHKIYEV, Ilgar(AZE)
3.KHYAR, Walide(FRA)
3.KIM, Won Jin(KOR)
5.DAVTYAN, Hovhannes(ARM)
5.LUTFILLAEV, Sharafuddin(UZB)
7.ENGLMAIER, Tobias(GER)
7.PAISCHER, Ludwig(AUT)

Aシード選手4人のうち準々決勝まで進めたのは第1シードのキム・ウォンジン(韓国)のみ、そのキムも準決勝ラウンドに進むこと叶わずという大混戦。シード選手の「ポカ」はもちろん多々見受けられたが、どちらかというと60kg級の上位グループの層の厚さと実力の接近ぶりが炙り出されたという印象のトーナメント。

第2シードの14年世界選手権王者ガンバット・ボルドバータル(モンゴル)は地元で意地を見せたいソフィアン・ミルス(フランス)との2回戦でつまずきGS延長戦「指導2」で敗退。第3シードのオルハン・サファロフ(アゼルバイジャン)は同じく2回戦で無名選手のレニン・プレシアド(エクアドル)に左払腰「有効」で苦杯、第4シードのアミラン・パピナシビリ(ジョージア)は2回戦でアイベック・イマシェフ(カザフスタン)に送襟絞「一本」で敗れた。ほか、序盤戦ではフェリペ・キタダイ(ブラジル)が前戦でフランシスコ・ガリーゴス(スペイン)を破っているワリーデ・シャー(フランス)との2回戦を「指導3」で落としてしまっている。

強豪同士の対決が始まった3回戦における注目対決の結果を簡単に浚うと、プールAではイルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)が10月のパリ大会で2位と躍進した地元期待のヴィンセント・リマール(フランス)を一本背負投「技有」で下し、プールBでは大ベテランのルドウィグ・ペイシャー(オーストリア)がイマシェフから驚きの隅返「一本」を奪って久々のメジャー大会ベスト8入り決定。プールCではホヴァネス・ダフチャン(アルメニア)がダシュダヴァー・アマーツブシン(モンゴル)を「指導2」で下し地力の高さを見せつけた。

ベスト4に残ったのはムシュキエフ、シャラフディン・ルトフィラエフ(ウズベキスタン)、ダフチャン、志々目徹の4名。決勝には順当に志々目とムシュキエフが進むこととなった。

志々目は2回戦でユホ・レインバル(フィンランド)から大外返「有効」、内股「有効」と奪った末に「指導4」の反則により勝利。2回戦はアシュカット・テルマノフ(カザフスタン)からこれも4つの「指導」を奪って勝利し、準々決勝はワリーデ・シャーを左内股「有効」、左大外刈「有効」、左背負投「技有」、さらに左払腰「技有」と4度投げつけて圧勝。準決勝はホヴァネス・ダフチャン(アルメニア)から支釣込足「有効」を奪って優勢勝ちで決勝進出決定。

迎えた決勝は志々目が開始早々に大内刈から繋いだ左内股で「有効」奪取、さらに残り32秒で左内股「有効」を追加。ムシュキエフに山場を作らせないまま試合を終えて見事優勝を飾ることとなった。

強豪密集のトーナメント、それも乱戦と言って良い荒れ模様となった大会をしっかり勝ち上がって優勝まで辿り着いた志々目、なによりその結果は高く評価されるべき。優勝必須の大会でしっかり勝ち抜いた精神力も称えられて然るべきだろう。ただし相手の落ち際をことごとく決め切れず「一本」奪取を逃した初戦、「有効」リードの終盤に両手を離した技を仕掛けて偽装攻撃の「指導」、さらにクロス組み手の「指導」と立て続けに反則ポイントを失った準決勝と、試合運びの粗さという積年の課題はクリアならず。また、高藤直寿が圧倒的に有利な立場にある五輪代表争いを勝ち抜くには周囲を圧する爆発力、あるいは今後「確変」が起こり得るような柔道自体の質的変化を見せることが必要であったと思われるが、地力の高さで手堅く勝ち抜いたという体の今大会の内容ではそういったエクストラポイントを得るところまでは至らなかったのではないだろうか。もと世界選手権覇者という実績に加えあまりにインパクトある勝ちぶりを続ける高藤を、それも追い掛けなければならない今の立場までを考えれば物足りなさは否めない。乱戦の負の側面と言うべきか、勝つこと自体が評価に繋がるような超強豪とのマッチアップがなかったことも惜しい。この点、トーナメントの様相自体に高評価に繋がるハシゴが掛かっていなかったという印象だ。

結果は良し、ただし逆転に必要な「高み」までは登り詰められずと総括されるべき、志々目の欧州シリーズであった。

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60kg級入賞者。左からムシュキエフ、志々目、キム、シャー。

【準々決勝】

イルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)○優勢[有効・支釣込足]△キム・ウォンジン(韓国)
シャラフディン・ルトフイラエフ(ウズベキスタン)○優勢[指導3]△ルドウィグ・ペイシャー(オーストリア)
ホヴァネス・ダフチャン(アルメニア)○片手絞(2:58)△ソフィアン・ミルス(フランス)
志々目徹○合技[一本背負投・内股](1:55)△ワリーデ・シヤー(フランス)

【準決勝】

イルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)○優勢[技有・肩車]△シャラフディン・ルトフイラエフ(ウズベキスタン)
志々目徹○優勢[有効・支釣込足]△ホヴァネス・ダフチャン(アルメニア)

【3位決定戦】

キム・ウォンジン(韓国)○優勢[指導3]△ホヴァネス・ダフチャン(アルメニア
ワリーデ・シヤー(フランス)○優勢[指導2]△シャラフディン・ルトフイラエフ(ウズベキスタン)

【決勝】

志々目徹○優勢[有効・内股]△イルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)


【日本代表選手勝ち上がり】

志々目徹(了徳寺学園職)
成績:優勝

[2回戦]
志々目徹○反則[指導4](3:33)△ユホ・レインバル(フィンランド)

[3回戦]志々目徹○反則[指導4](3:35)△アスカット・テルマノフ(カザフスタン)

[準々決勝]
志々目徹○合技[一本背負投・内股](1:55)△ワリーデ・シヤー(フランス)


[準決勝]
志々目徹○優勢[有効・支釣込足]△ホヴァネス・ダフチャン(アルメニア)

[決勝]
志々目徹○優勢[有効・内股]△イルガー・ムシュキエフ(アゼルバイジャン)

■ 66kg級・ターゲット2人を「一本」で粉砕、海老沼匡が見事優勝飾る
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決勝の畳に向かう海老沼匡

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決勝、海老沼匡がダバドルジ・ツムルクフレグから内股「一本」

(エントリー44名)

【入賞者】
1.EBINUMA, Masashi(JPN)
2.DAVAADORJ, Tumurkhuleg(MGL)
3.AN, Baul(KOR)
3.LE BLOUCH, Kilian(FRA)
5.JEREB, Andraz(SLO)
5.KIM, Limhwan(KOR)
7.BASILE, Fabio(ITA)
7.VAN GANSBEKE, Kenneth(BEL)

海老沼匡が見事優勝。トーナメント内で海老沼の牙城に迫る域にあると思われたのは第2シードのアスタナ世界選手権覇者アン・バウル(韓国)と第1シードのアジア大会王者ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)の2人だったが、海老沼はこの両者を過たず「一本」で料理。

準々決勝ではまずアンと対戦。ケンカ四つの相手を右袖釣込腰と左背負投で攻め続けて追い詰めると、圧を感じたアンが右一本背負投を掛け潰れてまず偽装攻撃の「指導1」。リードを得た海老沼は直後組み際に大内刈を引っ掛けると間をおかずに左内股に連絡、アンは受け止めて透かそうとしたが海老沼は片手を離して側転しながら投げ切り「一本」。思い切りの良さと勝負を見る目、そして抜群の身体能力と海老沼の良さが余すところなく出た一番だった。

そして決勝のダバドルジ戦。海老沼は下がるダバドルジの引き手を掴むと釣り手の手首を立てながら左大内刈。このアクションでまず作用足を相手の股中に放り込み、背中を抱いた相手に耐えさせたまま左内股に連絡する。後の先の得意なダバドルジがあくまで受け止めようと我慢すると、一旦両足で踏ん張り直してさらにもう一段の左内股。ついにダバドルジの上体が捻じれるとみるや足を一段高く振り上げ体を捨てて決め切れば、返しを狙い続けたがために出来上がった剛体が仇となったかダバドルジ一瞬にして宙を舞いこれは文句なしの「一本」。試合時間僅か47秒、鮮やかな一本勝ちで海老沼の優勝が決まった。

優勝という結果に、ターゲット2人との戦いをいずれも早い時間の投技「一本」で決めるという抜群の内容を加え、今回の海老沼はほぼ満点と言って良い出来。海老沼の技を返してやろう、あるいは海老沼に投げ合いを挑もうなどと下手な考えを起こせば却って手ひどい傷を受ける、と満天下にその強さを再び示した大会であった。

第3シードのリショド・ソビロフ(ウズベキスタン)は2回戦でアドリアン・ゴンボツ(スロベニア)に「指導2」対「指導1」の優勢で敗退。第4シードのロイック・コーバル(フランス)も2回戦でアンドラッツ・ジェレブ(スロベニア)に「指導2」対「指導1」で敗れ、昨年躍進し今回はプールAにBシード選手として配されたゴラン・ポラック(イスラエル)は3回戦でキム・リマン(韓国)に崩袈裟固「一本」で敗退。世界選手権で存在感を見せた大ベテランのスゴイ・ウリアルテ(スペイン)は1回戦でアキル・ジャコヴァ(コソボ)に支釣込足「技有」で敗れた。

また、圧倒的な出来を示した海老沼に「指導2」優勢までで耐えた選手が2人いる。3回戦の対戦相手フェリディナンド・カラペシアン(アルメニア)は決してランクの高い選手ではないが、1回戦のタル・フリッカー(イスラエル)戦は内股「一本」、2回戦のヴァスハ・マルグヴェラシビリ(ジョージア)戦は浮落「一本」で勝ち抜いており、その体幹の強さは印象的だった。乱戦のプールDを勝ち上がって海老沼との準決勝までたどり着いたキリアン・ルベルーシュは3位決定戦も制してワールドツアー初の表彰台確保、昨年ヨーロッパオープン2大会で優勝を飾りながらなかなか届かなかったIJF主催大会のメダルをついに獲得することとなった。ただし海老沼戦までの勝ち上がりは「指導」優勢が2試合、「有効」優勢が1試合でこちらは決してインパクトのある戦いぶりではなかった。

海老沼、アン、ダバドルジの3強の力が他選手から一段抜けたトーナメントという事前評は大会後も変わらず。その中で海老沼がさらに頭一つ上を行く力を見せた大会であったと総括したい。

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海老沼は文句なしの出来で優勝決定

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66kg級入賞者。左からダバドルジ、海老沼、ルベルーシュ、アン。

【準々決勝】

ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)○優勢[有効・隅返]△キム・リマン(韓国)
アンドラッツ・ジェレブ(スロベニア)○優勢[技有・内巻込]△ケネットウ・ファン・ガンスベケ(ベルギー)
海老沼匡○内股(2:55)△アン・バウル(韓国)
キリアン・ルベルーシュ(フランス)○優勢[指導2]△ファビオ・バジーレ(イタリア)

【準決勝】

ダバドルジ・ツムルフレグ(モンゴル)○抱分(2:30)△アンドラッツ・ジェレブ(スロベニア)
海老沼匡○優勢[指導2]△キリアン・ルベルーシュ(フランス)

【3位決定戦】

キリアン・ルベルーシュ(フランス)○優勢[有効・小内刈]△キム・リマン(韓国)
アン・バウル(韓国)○内股透(4:58)△アンドラッツ・ジェレブ(スロベニア)

【決勝】

海老沼匡○内股(0:47)△ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)

【日本代表選手勝ち上がり】

海老沼匡(パーク24)
成績:優勝

[2回戦]
海老沼匡○崩上四方固(1:51)△ドフトン・アルタンスフ(モンゴル)

[3回戦]海老沼匡○優勢[指導2]△フェリディナンド・カラペシアン(アルメニア)

[準々決勝]
海老沼匡○内股(2:55)△アン・バウル(韓国)

[準決勝]
海老沼匡○優勢[指導2]△キリアン・ルベルーシュ(フランス)

[決勝]
海老沼匡○内股(0:47)△ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)

■ 73kg級・アンチャンリンの勢い加速、「一本」連発で圧勝V
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73kg級入賞者。左からヤルツェフ、アン、ムキ、秋本。

(エントリー57名)

【入賞者】
1.AN, Changrim(KOR)
2.IARTCEV, Denis(RUS)
3.AKIMOTO, Hiroyuki(JPN)
3.MUKI, Sagi(ISR)
5.NAKAYA, Riki(JPN)
5.TATALASHVILI, Nugzari(GEO)
7.DUPRAT, Pierre(FRA)
7.SAINJARGAL, Nyam-Ochir(MGL)


秋本啓之と中矢力の日本人世界王者2人が早くも準々決勝でマッチアップ。秋本は前戦でロンドン五輪66kg級金メダリストのラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)を「指導1」による優勢、中矢はディルク・ファンティシェル(ベルギー)を崩袈裟固「一本」でそれぞれ下しており、山場を一つ越え満を持しての激突だ。五輪代表が有力視される大野将平への挑戦権を得るのは秋本かはたまた中矢か。日本のファンにとってはじっくりその戦いぶりを堪能したいところだったが、試合時間僅か1分30秒、秋本の低い背負投に中矢が反応したシーンで主審は試合を止め、長いビデオチェックの末に中矢の「足取り」による反則負けを宣告。なんともやり切れない幕切れとなった。

一般に配信された映像の角度からは確認しにくいが、主審は中矢が手を突っ込むシーンを自身の真ん前で確認しており、「待て」の宣告もマット外に促されてのものではなく自ら、それも即座に下したもの。立ち姿勢から寝姿勢の見極め、そして「足取り」との関係は1月末のIJFセミナーで数多くのシミュレーションが為されたばかりの最重要事項でもあり、主審には余程の確信があったものと思われる。微妙な場面ではあったが、ここまでの判定例に照らしても中矢の反則にエクスキューズは少なかった。この判定は、少なくとも現行ルールの中では妥当なものであったと評しておきたい。

そして次なる大一番、準決勝の秋本対アン・チャンリン(韓国)というビッグゲームはアンが完勝。開始57秒、アンがまず左の「韓国背負い」で勢いよく秋本をめくり返すと主審は即座に「一本」を宣告。これは「技有」に訂正されたが、秋本が激しく追い掛け「指導3」まで迫った直後の4分13秒、アンは前に出る秋本の出端を右背負投に捉え、あたかも投げ込みのように深く担いで文句なしの「一本」奪取。秋本、最後に食らった背負投はもはや追い掛けるしかない時間帯に前のめりになったところを迎え撃たれたもので展開上致し方ないところがあるが、2度完全に投げられての敗戦というこの負け方のダメージは大きい。

アンはグランドスラム決勝で敗れたばかりの秋本にこれ以上はないという完璧な形で勝利。その驚異的な成長スピード際立つ一戦だった。

決勝はアンとデニース・ヤルツェフ(ロシア)がマッチアップ。

アンは2回戦でムサ・モグシコフ(ロシア)を内股と体落の合技「一本」(4:17)、3回戦でサーヒィ・ドレボット(ウクライナ)を一本背負投「一本」(3:46)、準々決勝はピエール・デュプラ(フランス)を送襟絞「一本」(0:43)、そして準決勝は秋本啓之を背負投「一本」(4:13)と全試合一本勝ちという圧倒的な内容での決勝進出。一方のヤルツェフは2回戦でギヨーム・シェヌ(フランス)を体落「有効」、3回戦はアンドレ・アルヴィス(ポルトガル)を送足払「一本」(2:08)、準々決勝はヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)を「指導2」優勢、最大の勝負どころと目された準決勝のセージ・ムキ(イスラエル)戦を小外刈「技有」で乗り越えての決勝進出。

決勝は「指導1」ずつを取り合って迎えた4分31秒、アンが右襟を両手で握った左背負投に深々と入り込む。腰に引っ掛けたヤルツェフの体を立ったまま畳に投げ捨てると、主審は「技有」を宣告。結果、アンがこのポイントを以て勝利を決めることとなった。

両手を離してしまったためポイントこそ「技有」に留まったが、しぶといヤルツェフを完全に担ぎ上げ、叩き付けるように投げ捨て、そして畳にめり込んだ相手と主審の技宣告を一顧だにせず身を翻して開始線に戻るその様はまさしく強者の貫禄十分。無理やり粘ってともかく背中を付かせるような一杯一杯の「一本」を遥かに超えるインパクトがあった。

アンに始まり、アンで暮れた印象の今大会だったが、敢えてもう1人このトーナメントの主役を挙げるとすれば間違いなく第2シードのセージ・ムキ。2回戦ではフローラン・ウラニ(フランス)を2度投げつけ最終的には払腰「一本」(4:35)、3回戦はしぶとさが売りのデックス・エルモント(オランダ)を僅か50秒の袖釣込腰「一本」で畳に置き去り、そして準々決勝はパワー自慢のサインジャルガル・ニャムオチル(モンゴル)から大外刈崩れの右背負投「一本」、これが「技有」に訂正されると直後今度は左に同じく大外刈崩れの左背負投で投げつけ2度目の「一本」を奪って見せ、会場の度肝を抜いた。準決勝は前述の通りヤルツェフに敗れて最終結果は3位だったが、昨年までの「ワールドツアー限定の強者」という生息域からいよいよ脱け出しつつある印象を受けた。上昇ベクトルにある選手が何より強いという傾向がある五輪では、こういう選手にこそ警戒が必要と思われる。

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3位決定戦、セージ・ムキの袖釣込腰で中矢は右腕を負傷

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中矢は3位決定戦でこのムキと対戦。ムキが中矢の右腕を脇に抱え込む形で右袖釣込腰を放つと高空から伏せる形で畳に落ちた中矢は関節が極まってしまったこの右腕を負傷。当然ながら試合続行は不可能となり、棄権負けで最終順位は5位となってしまった。非常に微妙なダイレクト反則負けに負傷による棄権負けといずれも自身の責任とは言い切れない形ではあったが結果は結果。まさしく失意の大会であった。

ほか。ガンバータル・オドバヤル(モンゴル)はシード選手のロク・ドラクシッチ(スロベニア)に内股「一本」で勝利するなど順調だったが、地元のピエール・デュプラとの3回戦で横四方固「有効」を失って敗れた。ヴィクター・スクボトフ(UAE)は初戦でアレックス・ウイリアム・ポンポダシウバ(ブラジル)を得意の出足払に捉えたが、両足を宙に挙げて吹っ飛んだ相手の体が自身の膝と足首をロックする形で落ちてくる大アクシデント。この負傷で試合続行が不可能となり棄権負けで畳を去った。負傷のシーンを見る限りでは、五輪出場が微妙になる重症の可能性も十分。五輪のメダル戦線を左右する大事件であった。

【準々決勝】

アン・チャンリン(韓国)○送襟絞(0:43)△ピエール・デュプラ(フランス)
秋本啓之○反則(1:30)△中矢力
※足取りによるダイレクト反則負け
セージ・ムキ(イスラエル)○背負投(3:18)△サインジャルガル・ニャムオチル(モンゴル)
デニース・ヤルツェフ(ロシア)○優勢[指導2]△ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)

【準決勝】

アン・チャンリン(韓国)○背負投(4:13)△秋本啓之
デニース・ヤルツェフ(ロシア)○優勢[指導2]△セージ・ムキ(イスラエル)

【3位決定戦】

秋本啓之○優勢[指導2]△ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)
セージ・ムキ(イスラエル)○棄権(1:15)△中矢力

【決勝】

アン・チャンリン(韓国)○優勢[技有・背負投]△デニース・ヤルツェフ(ロシア)

【日本代表選手勝ち上がり】

秋本啓之(了徳寺学園職)
成績:3位

[2回戦]
秋本啓之○合技[背負投・崩袈裟固](2:56)△アンドレア・レジス(イタリア)

[3回戦]
秋本啓之○優勢[指導1]△ラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)

[準々決勝]
秋本啓之○反則(1:30)△中矢力

※足取りによるダイレクト反則負け

[準決勝]
秋本啓之△背負投(4:13)○アン・チャンリン(韓国)

[3位決定戦]
秋本啓之○優勢[指導2]△ヌグザリ・タタラシビリ(ジョージア)

中矢力(ALSOK)
成績:5位

[2回戦]
中矢力○送襟絞(1:56)△アレックスウイリアム・ポンポダシウバ(ブラジル)

[3回戦]
中矢力○崩袈裟固(4:02)△ディルク・ファンティシェル(ベルギー)

[準々決勝]
中矢力△反則(1:30)○秋本啓之

※足取りによるダイレクト反則負け

[敗者復活戦]
中矢力○合技[背負投・背負投](2:25)△ピエール・デュプラ(フランス)

[3位決定戦]
中矢力△(1:15)棄権○セージ・ムキ(イスラエル)

※負傷による棄権


文責:古田英毅
写真提供:Gabi Juan

Text by Hideki Furuta
Photo by Gabi juan

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