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グランドスラムパリ2016・最終日男子4階級ひとこと展望

(2016年2月5日)

※ eJudoメルマガ版2月5日掲載記事より転載・編集しています。
最終日男子4階級ひとこと展望
グランドスラムパリ2016
■ 81kg級・チリキシビリ中心に安定のハイレベルトーナメント、数少ない不確定要素はGPアブダビ王者のイヴァノフ
(エントリー63名)

永瀬貴規とロイック・ピエトリ(フランス)という階級をリードする強者2人が欠場したが、いわば「3強」を形成する関係の14年チェリャビンスク世界選手権王者アヴタンディル・チリキシビリ(ジョージア・WR1位)が出場を敢行。

もちろん第1シード配置のチリキリビリを中心にAシード選手にはアントワーヌ・ヴァロアフォルティエ(カナダ・WR3位)、ヴィクター・ペナウベル(ブラジル・WR5位)、セルジュ・トマ(UAE・WR7位)とBグループの強豪たちが過たず顔を揃え、例年の「パリ・クオリティ」を保ったとでもいうべき安定のハイレベルトーナメントが実現した。優勝候補筆頭はチリキシビリだが、チリキシビリは世界選手権で踵を負傷し、12月のグランドスラム東京は「まさか優勝するとは思わなかった」と自ら振り返る状態。勝ち負けよりもまず、チリキシビリらしいパフォーマンスが出来るかどうかを注視したいところ。

Bシードで脇を固めるのはスヴェン・マレシュ(ドイツ・WR12位)やラズロ・チョクナイ(ハンガリー・WR16位)といった常連選手だが、不確定要素として挙げるとすればこれら良くも悪くも力が読める強豪たちよりもむしろノーシード配置に面白い選手、カードが揃った。

序盤の好カードは地元の2番手、もと世界選手権銅メダリストのアラン・シュミット(フランス・WR41位)がチリキシビリに挑むプールAの2回戦、81kg級での戦い方が板につき始めたワン・キチュン(韓国・WR20位)がヴァロアフォルティエと相対するプールCの1回戦。

「人」として注目しておきたいのは、昨年11月のグランドスラム・アブダビでほぼ無名の状態からいきなり優勝して見せたイヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア・WR19位)。以後はグランプリ青島で丸山剛毅に敗れて3位、済州大会では韓国選手に敗れて予選ラウンド敗退、先週のヨーロッパオープン・ソフィアでも初戦敗退となかなか勝つことが出来ていないが、21歳という若さ、そしてあくまで投げにいく攻撃への執念は伸びしろ十分。再度のブレイクあるかどうか、勝ち負け以上に内容をよく見ておきたい選手だ。

イヴァノフの配置はプールD。柔道の上手いペナウベルとマレシュ、そして常に大物食い要素を孕む小外刈職人イワン・ヴォロベフ(ロシア・WR22位)が同居する。前述の2ブロックとは違った観点で、非常に面白い山だ。

【プールA】
Aシード選手(第1シード):アヴタンディル・チリキシビリ(ジョージア)
Bシード選手:ラズロ・チョクナイ(ハンガリー)
有力選手:アラン・シュミット(フランス)

【プールB】
Aシード選手(第4シード):セルジュ・トマ(UAE)
Bシード選手:アラン・クベトソフ(ロシア)
有力選手:ヤキョー・イマモフ(ウズベキスタン)、イ・センス(韓国)、ナシフ・エリアス(レバノン)

【プールC】
Aシード選手(第2シード):アントワーヌ・ヴァロアフォルティエ(カナダ)
Bシード選手:ロマン・モウストポウロス(ギリシャ)
有力選手:ワン・キチュン(韓国)

【プールD】
Aシード選手(第3シード):ヴィクター・ペナウベル(ブラジル)
Bシード選手:スヴェン・マレシュ(ドイツ)
有力選手:イワン・ヴォロベフ(ロシア)、ヨアキム・ボットー(ドイツ)、イヴァルロ・イヴァノフ(ブルガリア)

■ 90kg級・主役級揃った注目階級、ガクと西山の因縁対決は準々決勝
(エントリー49名)

現役世界王者のガク・ドンハン(韓国・WR1位)を筆頭に、13年リオ世界選手権王者アスレイ・ゴンザレス(キューバ・WR8位)、ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア・WR2位)、クリスチャン・トート(ハンガリー・WR5位)とチャンピオンクラス4人がエントリー。非常に面白いトーナメントとなった。

わけても注目しておきたいのはゴンザレス。2014年冬に肩を手術、15年の復帰以降は緩やかに試合出場を続けながらコンディションを上げて来たが、12月のグランドスラム東京でついに全開、全盛時を彷彿とさせる凄まじい背負投を連発するに至った。狭い間合いからあっという間に反転、相手を畳に叩き付けるその切れ味とスピードはまさしく異次元、決勝ではベイカー茉秋に屈したがインパクトでは明らかに会場ナンバーワンであった。1月のグランプリ・ハバナでは準決勝まですべて「一本」、決勝ではトートに勝って優勝を飾っておりその復帰曲線は明らかに上向き。今大会はハバナで「指導1」差の辛勝だったトートと同じブロックに配されており、その戦いは両者の爆発力とともに、戦術対応能力を計測する絶好の機会とみる。

序盤の注目対決は上記のゴンザレス-トート戦のほか、プールAの準々決勝で組まれた西山-ガクの因縁対決。西山は技の切れ味で勝負するタイプであるが、グランドスラム東京の敗戦時に見えた課題は柔道のタイプや相性、技術的の巧拙を超えたところにあった。明らかなキャリアの分岐点、具体的にはここで逆転せねば五輪代表の目が潰えるという状況にあるに関わらず一種敗戦を受け入れたかのような淡白な終盤の戦いぶりには、失望を覚えたファンも多かったのではないだろうか。組ませず、組まず、やりたい時だけ技を掛けてくるガクを相手に持ち味を出すには技術以上に強気と我慢、そして執念といった精神力がまさしく必要。かつて海外選手の誰もが一番怖がったと伝えられる強者西山、ここはぜひ意地を見せて欲しいところ。

【プールA】
Aシード選手(第1シード):ガク・ドンハン(韓国)
Bシード選手:西山大希

【プールB】
Aシード選手(第4シード):クリスチャン・トート(ハンガリー)
Bシード選手:アスレイ・ゴンザレス(キューバ)

【プールC】
Aシード選手(第2シード):ヴァーラム・リパルテリアニ(ジョージア)
Bシード選手:アレクサンドル・イディー(フランス)

【プールD】
Aシード選手(第3シード):ノエル・ファンテンド(オランダ)
Bシード選手:ラグワスレン・オトコンバータル(モンゴル)

■ 100kg級・役者揃ったハイレベル階級、ウルフアロンは最激戦区プールCに配置
(エントリー54名)

この階級の陣容も重厚。Aシード選手は順にエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン・WR1位)、ルーカス・クルパレク(チェコ・WR2位)、カールリヒャード・フレイ(ドイツ・WR4位)、シリル・マレ(フランス・WR5位)の4人。フレイまでの3人がこのトーナメントの軸だが、ガシモフが配されたプールA以外はどこも厄介な選手が複数配されており、好カードが目白押しだ。

居並ぶ役者たちのうち最も注目されるのはベカ・グビニアシビリ(ジョージア・WR79位)、いわずと知れた90kg級の強豪である。ベイカー茉秋と同世代のライバルであったこの選手は先輩リパルテリアニとの階級重複を避けて昨年12月のグランドスラム東京から100kg級に転向、この大会は成績こそ5位であったが、関係者が「どうやら100kg級でも十分やれる」と口を揃える、可能性十分の戦いぶりを披露していた。現在のランキングは79位、もし五輪を狙うのであれば欧州シリーズで勝ちに勝ち捲らねばならない立場のこの選手の底力やいかに。組み合わせの運はランキングに比すれば決して悪くなく、3回戦の大一番ディミトリ・ピータース(ドイツ・WR6位)戦さえ越えれば準々決勝はAシード選手ではもっとも戦いやすいマレ。表彰台に手が届くかどうかはひとえにピータース戦に掛かる。

不確定要素の若手、大化け要素を孕む曲者、あるいはベテランの試合巧者が揃って詰め込まれて見どころ十分なのがプールCとプールD。

プールCはシード選手クルパレクの直下に、チェリャビンスク世界選手権銀メダリスト、この大会でのみ輝いた経験を持つホセ・アルメンテロス(キューバ・WR12位)が配され、かつこの選手が初戦でアドラン・ビスルタノフ(ロシア・WR13位)と対戦。さらにその勝者はウルフアロンと2回戦を戦い、ここに勝ったものがようやく3回戦でクルパレクと対戦叶うという超過酷ブロックとなった。クルパレク自身も初戦からラムズディン・サイドフ(ウズベキスタン)という強豪にマッチアップしており、まったく気が抜けない。下側の山のシード選手トマ・ニキフォロフ(ベルギー・WR8位)、ヘンク・グロル(オランダ・WR14位)、エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン・WR20位)という陣容がのどかに思えるほどの高密度ブロックだ。

プールDはフレイの直下に、アルメンテロスとキャラが被る一発屋イワン・レマレンコ(UAE)が置かれ、隣の山にはルシアーノ・コヘア(ブラジル・WR17位)とツブシンバヤル・ナイダン(モンゴル・WR18位)が同居。つまりは3回戦までに世界王者2人と銀メダリスト1人、銅メダリスト1人が潰し合って入賞圏に挑戦できるのはただ1人のみという激戦ぶりだ。下側、シード選手がラマダン・ダーウイッシュ(エジプト)の山に入った日本大のカヨル・レイズ(カナダ・WR31位)はまだしもラッキーというべきだろう。

【プールA】
Aシード選手(第1シード):エルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)
Bシード選手:マーティン・パチェック(スウェーデン)

【プールB】
Aシード選手(第4シード):シリル・マレ(フランス)
Bシード選手:ディミトリ・ピータース(ドイツ)
有力選手:ベカ・グビニアシビリ(ジョージア)

【プールC】
Aシード選手(第2シード):ルーカス・クルパレク(チェコ)
Bシード選手:トマ・ニキフォロフ(ベルギー)
有力選手:アドラン・ビスルタノフ(ロシア)、ホセ・アルメンテロス(キューバ)、ウルフアロン(日本)、エルハン・ママドフ(アゼルバイジャン)

【プールD】
Aシード選手(第3シード):カールリヒャード・フレイ(ドイツ)
Bシード選手:ラマダン・ダーウィッシュ(エジプト)
有力選手:イワン・レマレンコ(UAE)、ツブシンバヤル・ナイダン(モンゴル)、カヨル・レイズ(カナダ)

■ 100kg超級・リネール欠場、七戸と原沢の決勝対決に注目集まる
絶対王者テディ・リネール(フランス)が欠場したもののトーナメントのレベルは高い。アダム・オクルアシビリ(ジョージア・WR6位)にファイセル・ヤバラー(チュニジア・WR3位)、バルナ・ボル(ハンガリー・WR5位)にダビド・モウラ(ブラジル・WR10位)、ロイ・メイヤー(オランダ・WR8位)とキム・スンミン(韓国・WR12位)、さらに久々登場のラファエル・シウバ(ブラジル・WR14位)も加えて海外のこれぞという「リネール以外」の強豪がほぼ全員出揃ったハイレベルトーナメントだ。しかし、それでも、贔屓目なしに、優勝候補は七戸龍(WR2位)と原沢久喜(WR4位)の日本勢2人と考えて間違いなし。この階級はパリに舞台とした五輪日本代表争いに痺れるのが、もっとも妥当かつ胸躍る楽しみ方と言えるだろう。

七戸は世界選手権で2大会連続銀メダル獲得中、原沢は国際大会6連勝中で当面の敵七戸との直接対決にも3連勝中。五輪代表選出までは今大会、選抜体重別、そして全日本選手権と最大3度の対戦があるわけで、これはいずれも見逃せない大会。のちに柔道史レベルで俯瞰されることになるであろうこの3戦、歴史的な戦いはぜひ生中継で楽しんでもらいたい。具体的には、組み続けることで優位を得ようとした原沢と、切所でこれを嫌がり間合いを取ろうとしてアドバンテージを失った七戸、この前回の対戦の様相がどのように加速、あるいは修正されるかが注目ポイントだろう。

ほか、見ておくべきは、一時低調で国際大会の一番手をモウラに譲り8か月に渡って一線から姿を消していたシウバの出来か。復帰戦となった1月のグランプリ・ハバナでは初戦でローランカーのアレックス・ガルシアメンドーサ(メキシコ)に敗れて入賞なし。シウバはインサイドワーカーだがその戦術の源泉は圧倒的な体格と「転ばない」バランスの良さ、そして体の強さ。コンディション不良であれば最大の武器である歩留まりの良さを発揮できない可能性は十分にある。モウラとどちらが代表で出てくるのかを読むにあたり、今回のパフォーマンスは一見の価値あり。初戦からレヴァニ・マテアシビリ(ジョージア)という強敵とマッチアップ、まずこの試合をしっかり見ておきたい。

【プールA】
Aシード選手(第1シード):七戸龍
Bシード選手:ダビド・モウラ(ブラジル)
有力選手:キム・スンミン(韓国)

【プールB】
Aシード選手(第4シード):バルナ・ボル(ハンガリー)
Bシード選手:アダム・オクルアシビリ(ジョージア)

【プールC】
Aシード選手(第2シード):ファイセル・ヤバラー(チュニジア)
Bシード選手:レヴァニ・マテアシビリ(ジョージア)
有力選手:ラファエル・シウバ(ブラジル)

【プールD】
Aシード選手(第3シード):原沢久喜
Bシード選手:ロイ・メイヤー(オランダ)
有力選手:アブドゥロ・タングリエフ(ウズベキスタン)

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