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大成高が2連覇、埼玉栄と崇徳は力出し切れずベスト8敗退・第15回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会男子マッチレポート

(2015年12月28日)

※ eJudoメルマガ版12月28日掲載記事より転載・編集しています。
大成高が2連覇、埼玉栄と崇徳は力出し切れずベスト8敗退
第15回水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会男子マッチレポート
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開会式。男女合わせて86チームが集った。

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選手宣誓は清水祐希(大成高)、仲田奈央(桐蔭学園高)の2選手

冬の招待試合サーキットシリーズにあって年々存在感を増す重要大会、水田三喜男杯争奪選抜高等学校柔道大会が26日に城西国際大学スポーツ文化センター(東金市)で男子46チーム、女子40チームが参加して行われた。

この時期に関東に遠征するチームは数多く、23日に行われた松尾杯、翌27日に同じ千葉で組まれる若潮杯の間に挟まったこの大会は時宜と地の利を得た関東遠征シリーズ有数の錬磨の場として年々参加校が増え、いまや全国大会で優勝を狙うレベルから全国大会出場クラス、また関東を中心に県上位を狙う有力校と幅広い層のチームを飲みこむシリーズ屈指の大型大会に成長。出場16校のみで参加校のチョイスに偏りが出始めた翌日の若潮杯を補完し、2日間「セット」で高校柔道界の様相を炙り出すという位置を担う重要大会となっている。

今大会で特に注目すべきは、ともに全国高校選手権「四つ角シード」が有力視されている大成高(愛知)と埼玉栄高(埼玉)の強豪2チーム。ともに今代を代表するチームながら若潮杯には出場せず、今季この2チームの激突が見られる可能性があるのはこの日の時点においては水田杯だけ。ほか、松尾杯、水田杯、若潮杯と連続出場しいずれも例年通り惜しみなく主力を全試合に注ぎ込む崇徳高(広島)、松尾杯で3位入賞を果たして意気揚がる四日市中央高(三重)、前代が全国大会で活躍し新たな千葉の盟主として注目を浴びる木更津総合高(千葉)、松尾杯で躍進したつくば秀英高(茨城)、今シリーズここまで振るわないものの黒潮旗から3大会全てでシード校に挙げられている修徳高(東京)などに注目が集まる。

まずは準々決勝までの戦いを、トーナメントをA~Dの4ブロックに分けて簡単に振り返ってみたい。

■ 1回戦~準々決勝
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2回戦、大成高の大将田中大地が安田学園高・杉山寛恭から支釣込足「技有」

【Aブロック】

2連覇を狙う第1シード校・大成が順調に勝ち上がる。黒潮旗大会で負傷したポイントゲッター森部篤知を直前で登録から外すこととなったが、その戦いぶりに大きな影響はなし。安田学園高(東京)との2回戦は急遽登録の軽量選手近藤佑哉を先鋒に、清水祐希、岩倉優輝、粟野諒平、田中大地という布陣で臨み、近藤と粟野が引き分けたものの3つの一本勝ちを並べて3-0で勝利。続く3回戦は同じオーダーで前橋商高(群馬)を3-1で下す。この試合ではエース格の清水が池田涼馬に隅返「一本」で敗れる波乱があり、以後の戦いへの影響が心配されるところ。

下側の山では3回戦で國學院栃木高(栃木)が黒潮旗ベスト8、松尾杯3位の四日市中央工高(三重)を食う殊勲。先鋒伊藤達人が井上稜栞に小外刈「有効」、そして次鋒下川幸大がポイントゲッター柳川昂平に内股「有効」で勝利すると中堅戦は深井優衣が横四方固「一本」を獲得。副将以降に控える堤大志と山口陸人のエース格2枚が畳に上がる前に1年生3人で試合を決めて見せ、最終スコア3-2でベスト8に進出することとなった。

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準々決勝、大成の次鋒田中大地が國學院栃木高・伊藤達人から体落「技有」

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大成の大将・渡辺神威が國學院栃木高・下川幸太から払腰「一本」

[準々決勝]

大成高 4-1 國學院大栃木高
(先)岩倉優輝○縦四方固(0:57)△宮坂友希
(次)田中大地○合技[体落・袈裟固](1:56)△伊藤達人
(中)清水祐希○大外刈(1:04)△深井優衣
(副)東部直希△横四方固(0:55)○大賀廣和
(大)渡辺神威○払腰(0:50)△下川幸太

大成高が準々決勝も快勝。先鋒岩倉優輝が浮落「有効」からの縦四方固、田中大地が体落「技有」からの合技、清水祐希の大外刈「一本」と中堅までの3連勝であっさり勝負を決めた。國學院栃木は副将大賀廣和が支釣込足「有効」から横四方固に繋いで東部直希を下して矢を報いたが、大成はこの試合から投入された大将・渡辺神威があっという間の払腰「一本」で試合を締めて、良い形を保ったままベスト4進出決定。

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2回戦、崇徳高・神垣和也が一関学院高・田村暢基から開始15秒の払腰で一本勝ち

【Bブロック】

3回戦で崇徳高と九州学院高(熊本)が激突。崇徳は今秋の中国新人戦王者、一方の九州学院も10月に行われた県新人戦(点取り形式)で今季の全九州新人戦王者・鎮西高を1-1で下している強者だ。崇徳は2回戦では一関学院高(岩手)に補欠登録の枇杷木勇樹木が失点したものの4-1で勝利しまずまず順調な立ち上がり。

一方の九州学院の2回戦は千葉経済大附高(千葉)の練れた柔道にスタイルが噛み合わない印象、2失点を喫して3-2の辛勝で3回戦に進んで来た。

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3回戦、九州学院高の中堅緒方景太が崇徳高・長岡季空から払腰「技有」

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九州学院は大将中熊駿が崇徳・空辰乃輔から2つ目の「有効」獲得

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投げられた空は逆に中熊を抑え込んで逆転勝ちを果たす

[3回戦]

崇徳高 3-1 九州学院高
(先)福永矩宣×引分×末永俊平
(次)森近唯○優勢[僅差]△川口辰巳
(中)長岡季空△合技[払腰・袈裟固]○緒方景太
(副)神垣和也○優勢[僅差]△詫田真輝
(大)空辰乃輔○後袈裟固△中熊駿

この試合は大熱戦。崇徳高は次鋒森近唯が手堅く「指導」を積んで先制するが、九州学院は中堅のエース緒方景太が長岡季空から払腰「技有」を奪うとそのまま抑え込み合技の一本勝ち。この時点で1-1ながら内容差でリードを得る。

崇徳は副将戦で神垣和也がこれも「指導」累積による優勢で詫田真輝を下すが、中堅戦で失った「一本」一つがチームに重く圧し掛かる。大将戦は九州学院の1年生大将中熊駿が空辰乃輔から「有効」リードのまま試合を終盤に持ち込み崇徳は絶体絶命。さらに残り15秒、中熊が場外際で小外刈を決め2つ目の「有効」獲得、勝負は終わったかに思われた。しかし投げられた空は後袈裟固に抑え込んで中熊を立たせず、大逆転の「一本」獲得。崇徳、持ち前の勝負強さを発揮して準々決勝進出決定。

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桐蔭学園高の中堅関根聖隆が崇徳・長岡季空から横四方固で一本勝ち

[準々決勝]

桐蔭学園高 2-1 崇徳高
(先)湯本祥真×引分×福永矩宣
(次)石郷岡秀征○優勢[有効・背負投]△森近唯
(中)関根聖隆○横四方固(2:10)△長岡季空
(副)酒井清将×引分×神垣和也
(大)佐藤城△優勢[有効・小外刈]○空辰乃輔

ここまで作新学院高(栃木)を5-0、関西高(岡山)を4-0と完璧な戦いで勝ち上がって来た桐蔭学園高がフルメンバーの崇徳を打倒。石郷岡秀征が森近唯を、関根聖隆が長岡季空をとそれぞれポイントゲッターを倒してダメージを呉れると、副将酒井清将が神垣和也と引き分けて勝利確定。小兵揃いながらその戦いぶりは迫力十分、昨年に続いて今年もベスト4入りを決めた。

崇徳は圧勝もないが大差の負けもないというパフォーマンスの安定感が今度は悪い方向に作用したという一番。地力の高さをどう生かすかまだ掴みきれないまま戦っている印象で、桐蔭学園の腹を括った戦いぶりに、一発殴られたあとに追撃戦を戦うだけの余力がなかった。ここまでの2大会で結果が出ずもはや勝ち以外はありえないとキリリと巻き上がってシリーズ最終戦に臨んだ桐蔭学園の覚悟の高さと、一方長駆関東に遠征して3連戦をこなすさ中の崇徳高、そのテンションの差が試合を分けたと総括すべきと思われる。

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2回戦、文星芸大附高の伊沢風我が修徳高・中村力也を抑え込む

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準々決勝、田村高の大将国分裕輝が長崎南山高・迫中優から「技有」獲得

【Cブロック】

シード校修徳が3回戦敗退。2回戦は文星芸大附高(栃木)を2-1でなんとか退けたが、3回戦は前戦でつくば秀英を2-2の内容差で振り切る殊勲を挙げた長崎南山高(長崎)を相手に最後まで得点を挙げられず、2-0で敗れることとなった。エース増山香輔を温存して育成にフォーカスした結果ではあったが、黒潮旗の予選リーグ敗退、松尾杯の初戦敗退に続きいかに育成力が売りの修徳とはいえ例年とはあまりに差のある成績。強豪ひしめく東京予選を勝ち抜くには非常に厳しい状況だ。

つくば秀英は長崎南山を相手に中堅の黒田拳伍が寺田亘志に引き分けられ、先鋒野上廉太郎が深江周太から背負投「一本」、副将岡田英志が和田幸樹から僅差優勢で勝利したもののこれら主戦の3枚以外がいずれも一本負け。シード校修徳が消えた大チャンスを生かせず入賞を逃した。

[準々決勝]
田村高 3-1 長崎南山高
(先)杉山海△優勢[有効・支釣込足]○寺田亘志
(次)瀧澤秀斗○優勢[僅差]△中道瑛志
(中)熊田海星○優勢[僅差]△和田幸樹
(副)斉藤大輔×引分×深江周太
(大)国分裕輝○合技[大外刈・袈裟固]△迫中優

大混戦となったこのブロックを制したのは東北の雄・田村高(福島)。東京学館高(千葉)を3-0、箕島高校(和歌山)を3-0で下すと、準々決勝は長崎南山との競り合いから中盤の連勝で抜け出して大将国分裕輝の一本勝ちでトドメ。2007年大会以来、今年度招待試合シリーズ東北勢初のベスト4進出を果たすこととなった。

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2回戦、市立船橋高・中野航希が埼玉栄・長濱快飛から大外返で一本勝ち

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2回戦、埼玉栄・蓜島剛が市立船橋高・戸山源己から開始17秒の払腰「一本」

【Dブロック】

2強と目された埼玉栄高と木更津総合高がベスト8入り。

埼玉栄は2回戦から登場、市立船橋高(千葉)を相手に焼谷風太、長濱快飛、配島剛、今入晃也のレギュラー4人に梅野雅崇を入れて本気度の高い布陣。しかし次鋒長濱が中野航希に余裕を持って試合を進めながら大外返で「一本」を失う意外な敗戦でスコアは4-1、波乱含みの滑り出し。続く3回戦は梅野を池田直輝に入れ替え、先鋒に入った池田の払腰「一本」をきっかけに5連勝で勝利決定、どうやら立ち直って準々決勝を迎える。

一方の木更津総合は松尾杯の最終戦で下げたエース山下魁輝を初戦から投入、メンバー5人を固定し2回戦で豊栄高(新潟)を4-1、3回戦では東海大第四高(北海道)に長澤大雅、兼原潤、大淵泰志郎による3つの一本勝ちをテコに3-2で勝ち抜けてベスト8入り。

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準々決勝、木更津総合の兼原潤が池田直輝を攻める。直後内股で「技有」獲得。

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蓜島剛は大淵泰志郎を相手に詰めきれず、勝利も内容は「指導」2つの獲得に留まる

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黒部健太が内股で長濱快飛を大きく崩す

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黒部はそのまま抑え込み、一本勝ち。

[準々決勝]
木更津総合高 2-1 埼玉栄高
(先)長澤大雅×引分×焼谷風太
(次)兼原潤○合技[内股・横四方固](0:40)△池田直輝
(中)大淵泰志郎△優勢[僅差]○蓜島剛
(副)黒部健太○袈裟固(1:40)△長濱快飛
(大)山下魁輝×引分×今入晃也

木更津総合が埼玉栄高を下す金星。唯一得点を狙えるポジションと目された次鋒戦で兼原潤が池田直輝から内股「技有」奪取、そのまま横四方固に抑え込んで一本勝ちを挙げると、中堅戦は大淵泰志郎が蓜島剛に最後まで決定的な場面を作らせず、1点献上も「指導」累積による優勢までで踏みとどまって後半戦に望みをつなぐ。

そして1-1、内容差リードという状況で迎えた副将戦で黒部健太が長濱快飛から一本勝ちを挙げる大殊勲。内股で崩すと首を抱えて袈裟固に抑え込んで最後まで立たせず、1分40秒「一本」の宣告とともに木更津総合の勝ち抜けが決定。会場は本日の主役と目された埼玉栄の早期敗退に騒然となった。

埼玉栄は今夏のインターハイ100kg超級2位の蓜島、90kg級2位の長濱、そして100kg級3位の今入と大駒3枚を抱えながら準々決勝敗退、内容も「不甲斐ない」と評されて然るべき低調なものであった。メンバーを敢えて落として強豪校との対戦ないまま終わった黒潮旗、勝負どころで無理が利かずに3位に甘んじた松尾杯に続き、最終戦となるこの水田杯もほぼフルメンバーで臨んだにも関わらずベスト8終戦という予想外の結果。

シリーズ通じて目立ったのは戦力の高さと裏腹の淡白さ、そしてあるべきシナリオから外れた際の意外なまでの脆さ。この試合も次鋒戦の一本負けは仕方がないとして、一本勝ち必須の中堅戦でラッシュを掛け切れずに圧倒的な実力差をスコアに反映出来なかった蓜島、少なくとも負けてはならない試合でミスから相手に決勝点を献上した長濱と、団体戦の戦い方を叩き込まれた強豪チームならば決して為さないミスを、格下のはずの相手に連発してしまった。中堅戦における「指導」裁定の遅さはあったが、その内容は審判傾向が決定的なエクスキューズになるようなものでは全くなかった。

元気のある格下チームに殴り合いを挑まれてあっさり一歩譲ってしまったこの試合は、学年が下にも関わらず一発の強さと向こうっ気の強さで上級生たちをやりこめて来た今までの埼玉栄のやり口を「逆にやられた」と言っても過言ではない。

長期戦略、戦術、切所におけるディティールとあたかも「力の出しどころ」を選ぶかのようなムラ気のある今季の戦い方は、率直に言って買えない。東海大相模と国士館の伝統校2強時代を経て以後頂点に立った(この2校以外の)チームはいずれも「単に競技力が上であるだけでは優勝出来ない」とばかりに勝ち続けることで歴史的な力関係を変えよう、敵味方に染みた今代の力だけでは解決出来ない序列意識を変えよう、団体戦戦略をチームに染みさせようと毎大会真摯実直にアプローチし、結果最終的には頂点を極めるに至った。ムラ気の天才肌選手を並べて史上稀に見る「悪ガキ」チームであったベイカー茉秋代の東海大浦安ですら、勝ち続けること以外に「やったことがない」全国優勝に続く道はなしとばかりに背水の陣を敷いて、あたかもそれが全国大会本番であるかのような高いテンションでこのシリーズを戦っていた。要領の良い調整で頂点を極めることが可能なのは、いま、現時点で勝ち続けているチーム、先輩が勝ち続けている背中を見続けその方法論が骨身に染みている立場のチームだけであるはず。100パーセントの力を出し切る癖のついていないチームが全国大会の本番、上位対戦におけるギリギリの切所で力を発揮できるかどうかは正直疑問だ。

いずれ、フルメンバーを投入して、しかも超強豪校以外に敗れての水田杯ベスト8という結果は重い。戦力的には四つ角シード間違いなしと評される埼玉栄チームであるが、一段評価を落とした大会であった。

今代最大の大駒である飯田健太郎(国士館高)と唯一対峙出来る蓜島剛を保有し、2年生3人が揃ってインターハイの重量3階級の3位以上に入賞するという快挙を演じた埼玉栄は今年の高校柔道界に欠かすことの出来ない好役者。このチームが沈んでしまっては今季の高校柔道は面白くない。予選での練磨によるチームの脱皮という機会に恵まれない県内1強チームである埼玉栄が今後どのような手立てをとって巻き返しを図るのか。再躍進に注目、そして大いに期待したい。

結果決まった準決勝カードは、

大成 - 桐蔭学園
田村 - 木更津総合

の2カードとなった。

■ 準決勝
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清水祐希が桐蔭学園高・佐藤城から大内返「技有」

大成高 3-1 桐蔭学園高
(先)渡辺神威○内股(0:43)△湯本祥真
(次)岩倉優輝△優勢[有効・背負投]○石郷岡秀征
(中)田中大地×引分×関根聖隆
(副)東部直希○優勢[技有・払腰]△酒井清将
(大)清水祐希○優勢[有効・大内返]△佐藤城

桐蔭学園の異常な勝負への執着心によってスコア以上に縺れた試合だが、結果は3-1で大成の勝利に終着。先鋒渡辺の早い時間での「一本」が最後まで効いた試合であった。

ライバル校が次々敗れた大成としては、ここで粘りに粘る桐蔭にポイント失陥を重ねながらもしっかり勝ち切る経験が出来たことは大きい。フラフラになりながら最後まで大技で攻め続け、結果大内返「有効」で勝利まで得た清水の戦いぶりは、いまだ完成度が高いとはいえない大成チームの今後の伸びしろを大いに感じさせるものであった。

桐蔭は切れ味ある担ぎ技を次々繰り出す石郷岡秀征の面白さ、松尾杯での元気のなさから打って変わって一種太々しい試合を繰り広げた関根聖隆と存在感を発揮した大会。同県内のライバルである東海大相模とはかなりの戦力差があるが、歴代の先輩たちが発揮した「対相模戦」の強さを発揮してくれるのではと、来月に迫った高校選手権神奈川県予選に期待を抱かせる内容であった。

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準決勝、田村高の先鋒・杉山海が木更津総合高・長澤大雅から「技有」獲得

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田村・瀧澤秀斗と木更津総合高・黒部健太による副将戦

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瀧澤は果敢に寝技で攻め、2度「抑え込み」の宣告を受ける

田村高 2-1 木更津総合高
(先)杉山海○優勢[技有・小内巻込]△長澤大雅
(次)熊田海星×引分×大淵泰志郎
(中)斉藤大輔○払腰(1:30)△兼原潤
(副)瀧澤秀斗×引分×黒部健太
(大)国分裕輝△払巻込(1:46)○山下魁輝

大熱戦は田村の勝利に終着。決して楽観出来る試合ではなかったが、先鋒杉山海の「技有」優勢で先制、中堅戦は木更津総合のポイントゲッター兼原潤を斉藤大輔が払腰「一本」に仕留めるというこれ以上ない展開。

引き分ければ田村の勝ちが決まる瀧澤秀斗と黒部健太の試合は今大会の上位対戦におけるベストバウトの一つ。身長195センチ体重147キロの巨漢黒部に瀧澤は一歩も引かず、寝勝負の攻防では首を抱えて下からめくり返し縦四方固で2度「抑え込み」の宣告を聞き、そしていずれも黒部が鉄砲返しで返して逆に抑え込みに掛かるという激しい攻防。双方「有効」を取り合い、息が上がり切るところまで戦い抜いた一番は引き分けに終わり、この時点で田村の勝利が決まった。

大将戦は木更津総合・山下魁輝が国分裕輝を払巻込「一本」に仕留めて意地を見せ最終スコアは2-1。決勝進出は田村高となった。

■ 決勝
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決勝、大成の先鋒田中大地が杉山海から袖釣込腰「一本」

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中堅戦、東部直希が腕挫手固の形で斉藤大輔を崩す

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副将戦、清水祐希が瀧澤秀斗から小内刈「技有」

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大将戦終盤、渡辺神威は引き分けを受け入れず国分裕輝から左内股「技有」

大成高 5-0 田村高
(先)田中大地○袖釣込腰(3:18)△杉山海
(次)岩倉優輝○優勢[僅差]△熊田海星
(中)東部直希○袈裟固(1:56)△斉藤大輔
(副)清水祐希○優勢[技有・小内刈]△瀧澤秀斗
(大)渡辺神威○優勢[有効・内股]△国分裕輝

大成が5連勝。個々の対戦は決して一方的なものばかりではなく攻防の局面それぞれは緊迫したものであったが、最終的なスコアは5-0という大差の試合となった。

先鋒戦は大成・田中大地が長身の杉山海の組み手をいなしては左右の背負投に小内刈、大内刈とキビキビ技を打ち込み1分5秒に「指導1」奪取。杉山が自身の左の担ぎに良いタイミングの右内股を合わせ始めたとみるや田中はさらに一段加速、片手の左袖釣込腰を放って2つ目の「指導」を奪う好展開。直後引き出しの左小内刈で転がし動きを封じると、左袖釣込腰一閃「一本」。

次鋒戦は大成・岩倉優輝が右、田村・熊田海星が左組みのケンカ四つ。引き手争いが続き、1分7秒熊田に「取り組まない」咎による「指導1」宣告。以後も双方の監督が同時に「組め!」と発語する組み手の駆け引きとリセットが続き、結果としては1分42秒、2分47秒と熊田にのみ「指導」が累積。残り25秒に熊田が良いタイミングの右内股で岩倉を伏せさせるが、大勢動かず「指導3」の僅差優勢で岩倉が勝利。

中堅戦は大成・東部直希が斉藤大輔を圧倒。ケンカ四つの相手に抱きつきの小外刈を2連発するなど1分過ぎから流れを掴み、距離を取ろうとする相手をあおってじわじわ引き寄せ1分29秒斎藤に「指導1」。直後東部は腕挫手固の形に肘を極めながら支釣込足、主審的確に判断してこの投技自体にポイントは付与しなかったが、東部構わずそのまま押し込んで袈裟固。斉藤は動けず1分56秒「一本」が宣告されて試合は決着。この時点でスコアは3-0、大成の2連覇が決まった。

副将戦は大成・清水祐希、田村・瀧澤秀斗ともに右組みの相四つ。
開始早々の26秒、清水に片襟の「指導」。続くシークエンスは双方横変形に組み合うが、清水釣り手が伸びたままの苦しい体勢のまま委細構わず真裏に踏み込み右大外刈。当然ながら瀧澤返さんと耐えて一瞬体勢は拮抗、これは清水の状況判断の誤りかと思われたが強引に投げ切り「有効」、55秒。投げるという意志の強さと判断の早さで体勢の悪さをフォローしたという体の一発。

続く1分30秒、清水は大外刈に混ぜ込んで同じ踏み込みから岡田弘隆ばりの「掛け倒す」右小内刈。愚直なまでに大外刈一辺倒のこれまでの組み立てとこの技のギャップは大きく、瀧澤まともに食らってこれは「技有」。
2分45秒には瀧澤が思い切った大外刈で清水を仰け反らせる場面もあったが、清水は得意の右大外刈の鉾をあくまで収めず、右小外刈も織り交ぜながら残り時間を攻め続けたまま終了。この試合は清水の「技有」優勢で終了となる。

大将戦は大成・渡辺神威が左、田村・国分裕輝が右組みのケンカ四つ。渡辺は引き出しの小内刈で転がすなど良い技を繰り出し続ける、体格に勝る国分も右小外刈を中心に粘り強く抵抗、一発を警戒する渡辺はなかなか決定的な位置関係と組み手を作り出すことが出来ない。
もはや引き分け濃厚の残り27秒、しかし勝利をあきらめない渡辺ついに良い位置関係を得ることに成功、釣り手の状況は完璧ではなかったが間髪いれずに左内股に打って出る。低い軌道で引きずり出したこの一撃、国分伏せたが乗り込んだ渡辺の勢いに体勢が崩れこれは「有効」となる。渡辺は残り13秒で「指導」ひとつを失ったがそのまま試合は終了、この試合は渡辺の「有効」優勢による勝利となり、大成はスコア5-0のパーフェクトゲーム達成。見事水田三喜男杯2連覇を決めた。

石田輝也監督は「森部が出られず厳しい試合になるかと思ったが、なんとか勝つことが出来てホッとしています」と第一声。黒潮旗優勝時は「この試合では次に繋がらない」と試合が終わるなり選手に激しい檄を飛ばしていたものだが、今回は「現時点での彼らの力は出せたかと思う」と穏やかに語り、手ごたえを得た様子だった。

大成はこれで冬季の招待試合出場を終了、あとは1月の県予選に備えて地元で力を錬ることになる。周囲が仕上がっていなかった黒潮旗、手合わせが予想された崇徳や埼玉栄との力比べが出来なかった今大会とこの段階でこなしておくべきプログラムに若干の狂いはあったかと思われるが、2タイトル獲得の経験を積ませ、今代チームに一定以上の力があることを確認出来たことは収穫のはず。準決勝で見せた撃ち合いに引かぬメンタルの強さ、決勝で見せた渡辺のあくまで勝利を求める貪欲さなど、黒潮旗で挙げた課題に突破口が見つかった大会でもあった。「徹底して長所を伸ばす」(石田輝也監督)と定めた強化方針を以って高校選手権本番までどれだけ力を上積んでくるか、非常に楽しみである

大成の安定と緩やかな上昇傾向、埼玉栄の強さと裏腹の不安定さ、崇徳と四日市中央工の入賞「ボーダーライン」から僅かな針の振れ幅で零れ落ちたナイーブさに田村の頑張り、木更津総合のここ一番の爆発力と有力各校の様々なアスペクトを炙り出して第15回水田杯は終了。「サーキット」は翌日同じ千葉・勝浦で組まれる若潮杯武道大会へと引き継がれる。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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2連覇の大成高

【入賞者】
優 勝:大成高(愛知)
準優勝:田村高(福島)
第三位:桐蔭学園高(神奈川)、木更津総合高(千葉)
優秀校:國學院大栃木高(栃木)、長崎南山高(長崎)、埼玉栄高(埼玉)、崇徳高(広島)

最優秀選手賞:渡辺神威(大成高)
優秀選手賞:田中大地(大成高)、斉藤大輔(田村高)、山下魁輝(木更津総合高)、石郷岡秀征(桐蔭学園高)、空辰乃輔(崇徳高)、今入晃也(埼玉栄高)、寺田亘志(長崎南山高)、宮坂友希(國學院大學栃木高)

大成高・石田輝也監督のコメント
「ホッとしました。森部の欠場で厳しいかなと思いましたが、対戦すると思っていたチームが上がって来なかったり、運もあったかと思います。黒潮旗と同じくまず自分の力がどれだけのものか試せ、と送り出しました。去年のチームと比べるとまだまだのレベルですが、彼らの現時点での力は出せたかなと思います。渡辺や田中にも『自分が軸にならなくては』という気持ちが見えてきました。東部も肩の怪我が治ればもっとしっかりしてくると思います。長所も課題も見えましたが、短所を直そうとすると柔道が小さくなったり、守りの気持ちになってしまったりしますから、『攻撃は最大の防御』ということで、良いところを伸ばすことで短所を消していくような稽古を目指していきます」

【準々決勝】

大成高(愛知) 4-1 國學院大栃木高(栃木)
桐蔭学園高(神奈川) 2-1 崇徳高(広島)
田村高(福島) 3-1 長崎南山高(長崎)
木更津総合高(千葉) 2-1 埼玉栄高(埼玉)

【準決勝】

大成高 3-1 桐蔭学園高
田村高 2-1 木更津総合高

【決勝】

大成高 5-0 田村高


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