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【ROAD TO 高校選手権】シリーズ第1戦は手堅く戦った大成高が勝利、各校まだ仕上がらず戦力見通しは混沌・第39回黒潮旗武道大会高校男子マッチレポート

(2015年12月22日)

※ eJudoメルマガ版12月22日掲載記事より転載・編集しています。
【ROAD TO 高校選手権】シリーズ第1戦は手堅く戦った大成高が勝利、各校まだ仕上がらず戦力見通しは混沌
【ROAD TO 高校選手権】第39回黒潮旗武道大会高校男子マッチレポート
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第39回黒潮旗武道大会は19日、東海大学付属静岡翔洋高等学校アリーナで各カテゴリ(高校男子、高校女子、中学男子、中学女子)合わせて110チームが参加して行われた。

札幌で行われる松前旗武道大会と交互隔年開催となったこの大会、2年ぶりの開催となる39回大会は参加校を大幅に増やし、高校女子(団体・従来は個人戦)、中学男子、中学女子と3カテゴリを増設しての大規模イベントとなった。

その計4カテゴリの中から高校男子をピックアップして簡単にレポートを試みたい。大会レギュレーションは試合時間3分(決勝は4分)の点取り試合、オーダー配列は体重順、判定基準は「有効」もしくは「僅差」(指導「差」2以上)というもの。

冬季高校招待試合サーキットのうち、今年はこの黒潮旗に予想を超える数の強豪が集中。各校指揮官そのトーナメントの陣容の厚さには一様に警戒を表明しており、会場には単なる「戦力比べ、小手調べのシリーズ緒戦」といった扱いを遥かに超える緊張感が漂う。

■ 予選リーグ~決勝トーナメント1回戦
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国士舘高の先鋒織茂友多郎が横四方固「一本」、この1点が効きチームは京都学園高に2-2内容差で辛勝。

大会はA~Pの16ブロックに各3チームずつが配置されてまず予選リーグを行い、1位チームのみが決勝トーナメントに進出する方式。

激戦の結果決勝トーナメントに残ったのは、大成高(愛知)、桐蔭学園高(神奈川)、東海大付仰星高(大阪)、埼玉栄高(埼玉)、東海大浦安高(千葉)、四日市中央工高(三重)、京都学園高(京都)、国士舘高(東京)、作新学院高(栃木)、東海大付静岡翔洋高(静岡)、東海大甲府高(山梨)、日体荏原高(東京)、小杉高(富山)、安田学園高(東京)、木更津総合高(千葉)、東海大相模高(神奈川)の強豪16校。作新学院はシード位置の修徳高(東京)を3-1で破っての決勝トーナメント進出。桐蔭学園は既に全国高校選手権進出を決めている田村高(福島)を2-0で下し、木更津総合高は豊栄高(新潟)に3-2で競り勝っての予選リーグ突破。

この予選リーグで、前代高校「三冠」を奪取したばかりの王者・国士舘高にアクシデント。エース格の磯村亮太が、釣り手を掴みながら小外掛を試みた際に縺れて右肘を負傷。今大会はもちろん、少なくとも27日の若潮杯武道大会まで続く「招待試合シリーズ」の出場は難しい事態となった。もともと今大会の登録からはエース飯田健太郎を外しており、前代のレギュラー経験者から以後今大会で畳に残るのは河田闘志のみ。ここは周辺戦力の踏ん張りが期待されるところだが、決勝トーナメント1回戦の京都学園戦では、次鋒山田祐太が小内巻込「有効」で敗れ、その河田も隅落「有効」で敗れるというバタバタの試合。いずれも本来は「指導」累積で勝つべき試合を審判の反則裁定の遅さに焦ったというエクスキューズのある試合であり、先鋒織茂友多郎の横四方固「一本」、大将本間壘の袈裟固「一本」でこの試合はなんとか切り抜けたものの、三冠獲得チームには似合わぬ、いかにも新人戦らしい若さを露呈した一番であった。

決勝トーナメント1回戦8試合の結果は下記。蓜島剛と今入晃也、長濱快飛のエース級3人を外して布陣した埼玉栄は、東海大仰星に2-0で敗れた。

【決勝トーナメント1回戦結果】

大成高 4-1 桐蔭学園高
東海大仰星高 2-0 埼玉栄高
四日市中央工高 2-1 東海大浦安高
国士舘高 ②-2 京都学園高
東海大静岡翔洋高 4-0 作新学院高
日体荏原高 3-0 東海大甲府高
小杉高 ①-1 安田学園高
東海大相模 5-0 木更津総合高

■ 準々決勝
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準々決勝、日体荏原高の先鋒大吉賢が東海大静岡翔洋高・渋谷恭英から浮落「一本」

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準々決勝、東海大相模高の中堅平下麟太郎が小杉高・駒沢祐馬から内股「一本」

大成高 3-0 東海大仰星高
(先)渡辺神威○内股△吉村太一
(次)田中大地×引分×岡虎
(中)森部篤知○大外刈△深山将剛
(副)清水祐希○優勢[有効・小外掛]△宮ヶ原康平
(大)東部直希×引分×海江田充輝

前代高校選手権2位、インターハイ3位の大成高が順当に勝利。昨年団体戦を経験している渡辺神威と清水祐希、さらに今代でポイントゲッターとしての活躍が期待される森部篤知がしっかり得点し、中学時代のレギュラー田中大地と1年生の東部直希が引き分けて無失点でこの試合を終え、ベスト4進出決定。

国士舘高 4-0 四日市中央工高
(先)山田祐太○小外掛△井上稜茉
(次)稲垣由生○後袈裟固△柳川晃平
(中)清水政義×引分×堤大志
(副)河田闘志○横四方固△山口陸人
(大)本間壘○裏投△弓矢凌輔

飯田健太郎、磯村亮太を欠く国士舘高は前戦からメンバーを微調整。1年生の織茂を下げ、次鋒に2年生の稲垣由生を投入して同じく2年生の山田祐太を先鋒に前出し。前戦で失点した山田と河田がしっかり取り、最後は本間が一本勝ちしてフィニッシュ。この試合は大過なく4-0で突破を決めた。

日体荏原高 3-2 東海大静岡翔洋高
(先)大吉賢○浮落△渋谷恭英
(次)藤原崇太郎○横四方固△斎藤太河
(中)長井晃志○優勢[僅差]△南條伯海
(副)繁田陽介△優勢[有効・大外刈]○佐藤威基
(大)ハンガルオドバータル△優勢[技有・大外刈]○米山竜生

インターハイ2位の日体荏原は全日本ジュニアチャンピオンの藤原、前代レギュラーで90kg級の東京代表を務めた長井晃志、国体東京代表の大吉賢と実績ある3人が3連勝して、あっさり準々決勝突破決定。
しかし続く副将戦からは東海大静岡翔洋が2連勝。佐藤威基が繁田陽介から大外刈「有効」で勝利すると、大将戦では米山竜生が前代から団体戦に出場しているハンガルオドバータルから大外刈「技有」といずれも投げて得点を挙げ、最終スコアは3-2。中堅長井も決して圧勝というわけではなく、勝利したのは日体荏原だがどちらかというと東海大静岡翔洋の健闘が印象に残った一番。計算できる藤原、長井が止めに来られたときの確実性、そして4番手、5番手の確定という今代の日体荏原が抱える課題が見えた一番だった。


東海大相模高 4-0 小杉高
(先)原伸之輔○優勢[技有・内股]△澤田大輝
(次)松谷竜馬×引分×濱谷拓斗
(中)平下麟太郎○内股△駒沢祐馬
(副)辻湧斗○払腰△南雲陸
(大)河内優斗○上四方固△出村一馬

今大会一貫して好パフォーマンスの平下、そして前代チームでエースを張った辻、河内の計算できる3枚を軸に東海大相模がしっかり獲った一番。小杉は戦闘力のあった前代を経てまだ新チームが粗削り、チームのスタート時点で素材が揃った東海大相模にスコアで引き離されるのは致し方なしという印象であった。

結果決まった準決勝カードは、

大成 - 国士舘
日体荏原 - 東海大相模

の2試合。
いずれも高校柔道界の主役級チーム。非常に見ごたえのあるカードとなった。

■ 準決勝
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準決勝、大成高の先鋒渡辺神威が国士舘高・山田祐太から払腰「有効」

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田中大地が背負投、袖釣込腰で稲垣由生を攻める

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大成高・森部篤知が国士舘高・清水政義から出足払「有効」

大成高 - 国士舘高
(先)渡辺神威 - 山田祐太
(次)田中大地 - 稲垣由生
(中)森部篤知 - 清水政義
(副)清水祐希 - 河田闘志
(大)東部直希 - 本間壘

大成は好メンバーを揃えるがチームが滑り出したばかりのこの段階では上位対戦における得点のしどころがまだ固定できず、一方飯田健太郎と磯村亮太を欠く国士舘も河田闘志がエース格と規定出来るが、他はどこで得点するかがなかなか想定しにくい陣容。

客観的に見れば前代にたびたび起用され、都度斬り込み役として「暴れまくる」という表現がふさわしい活躍を見せた大成・渡辺神威には得点を期待して良いはず。副将戦は前代団体戦で活躍しどちらのチームも得点を期待して良い人材である大成・清水祐希、国士舘・河田闘志がマッチアップしたが、いずれの選手も決してここまで出来が良いとはいえず終着点としては引き分けを予想するのが妥当。ということは、試合が壊れずに順行運転で進めば大成が1-0でフィニッシュする可能性がもっとも高いのではないかと予想出来る。

とはいえこれは新人戦。どちらも新チームの編成まっさい中であり、その中でレギュラー定着、あるいはエースの座を奪うべく実戦の中で一段上の力を出す選手が出てくる可能性もまた大。両監督がまさにこのシリーズに求めているであろう、順行運転に留まらない「力以上の力」を出す選手が現れるかどうかが勝負の分かれ目だ。

先鋒戦は大成・渡辺神威が山田祐太から序盤に左払腰で「有効」を奪って勝利。前代の渡辺の試合ぶりを考えれば拍子抜けするような手堅い試合ではあったが、まずしっかり得点を挙げて大成が先制する。

次鋒戦は大成・田中大地が低い重心を生かした「立ち背負い」で度々面白い形を作るが、稲垣由生が持ち前のしぶとさを発揮して決定的な場面を作らせず引き分け。

大成の1点リードで迎えた中堅戦は大成・森部篤知がスケールの大きい柔道を披露。取り味のある大外刈は直接得点に結びつくことはなかったが、閃くような左出足払でマークした「有効」ポイントで値千金の2点目を挙げる。

副将戦は大成・清水祐希が巨人・河田闘志の圧力にあくまで大外刈を撃ち返すことで対抗し、3分間の動的膠着の末に引き分け。大将戦は1年生の東部直希がきょうの国士舘の中ではもっとも充実した働きを見せている本間壘に仕事をさせずこれも引き分けで乗り切り、通算スコア2-0でチームの勝利を決めることとなった。

大成高 2-0 国士舘高
(先)渡辺神威○優勢[有効・払腰]△山田祐太
(次)田中大地×引分×稲垣由生
(中)森部篤知○優勢[有効・出足払]△清水政義
(副)清水祐希×引分×河田闘志
(大)東部直希×引分×本間壘

双方かなり大人しい、良くも悪くも破綻のない試合。先鋒渡辺の地力の高さと、全戦域に渡る試合運びの巧さで大成がしっかり勝ち抜けたという試合。双方力を出し切れない分、大成の経験値と面子の良さがそのままスコアに反映されたという体の一番であった。

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準決勝、東海大相模高の副将辻湧斗が日体荏原高・繁田陽介から小外刈「一本」

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東海大相模高の大将河内優斗がハンガルオドバータルから足車「技有」

東海大相模高 3-2 日体荏原高
(先)古庄涼哉○優勢[有効・大内刈]△大吉賢
(次)原伸之輔△大内刈○藤原崇太郎
(中)平下麟太郎△小外掛○長井晃志
(副)辻湧斗○小外刈△繁田陽介
(大)河内優斗○合技[支釣込足・足車]△ハンガルオドバータル

日体荏原は次鋒藤原、中堅長井にチームの重心があり、一方の東海大相模は副将辻、大将河内が核の後ろ重心配置。前代から団体戦のエース格で有り続けた双方2枚ずつがキッチリ仕事を成した結果、盤面上の分水嶺であった先鋒戦を獲った東海大相模が勝ち抜けたという一番。ビハインドからしっかり「一本」で同点(内容差では逆転)に追いついた辻、「技有」リードにも関わらずパワー自慢のハンガルを足車で投げ捨てて「一本」まで持っていった河内の貪欲さはさすがであった。

日体荏原は藤原、長井という全国屈指の中量級2枚を保有しながら勝ち切れず。この大会は体重順配列ゆえどうしても各チーム本格派の重量選手が後衛に並ぶことになるが、その中でここ数年続く傾向でもある日体荏原の重量級の「我慢の出来なさ」がクローズアップされた格好の一番であった。

■ 決勝
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大成-東海大相模による決勝戦

大成高 - 東海大相模高
(先)渡辺神威 - 古庄涼哉
(次)田中大地 - 原伸之輔
(中)森部篤知 - 平下麟太郎
(副)清水祐希 - 辻湧斗
(大)東部直希 - 河内優斗

大成は先鋒戦と中堅戦で得点を狙い、東海大相模は前半に粘って副将、大将の後衛2枚で勝負を掛けたいはず。

前代から試合を観察する限り、辻と河内の得点力が相手をねじ伏せるような絶対値の高いものではなく上位対戦においてはどちらかというと駆け引きの中で大技に繋ぐタイプであること、ケレン味なく地力と大技で試合を塗りつぶしてくる清水と1年生ながら状況に応じた試合が出来る東部がともにある意味歩留まりの良いタイプであることを考え合わせると、東海大相模としては追撃戦に希望を見出すのは少々難しい。少なくともタイスコアでこの2人を畳に送り出したいはず。一方の大成もビハインドで試合の巧い辻と河内を追い掛ける展開で勝利はありえず、試合のポイントは間違いなく前衛3試合。特に先鋒戦で大成・渡辺神威が得点を挙げることが出来るかどうかが非常に大きいのではないかと思われる。

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先鋒戦、渡辺神威が古庄涼哉を攻めるが投げ切るには至らず

先鋒戦は大成・渡辺神威が左相四つの古庄涼哉と横変形で組み合い、左大外刈に左内股、左小内刈と技を繰り出すものの肝心の勝負どころで慎重となり、最後まで追い切れず。「指導1」奪取後もギアを上げる気配は見えず、要所で古庄の反抗を許して展開に差がつかないままこの試合は引き分け。

次鋒戦は大成・田中大地、東海大相模・原伸之輔ともに右組みの相四つ。開始早々に田中が放った左袖釣腰はポイント付与が妥当かと思われたが、回転数が増して縺れたこの一撃を難しい角度に立っていた主審が判断仕切れずスルー。副審1人は「有効」を示したがそのまま試合は流され、田中に消極の「指導」、原に「極端な防御姿勢」の「指導」ひとつずつが宣告されたのみで試合終了。この試合も引き分けに終わる。

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大成・森部篤知が東海大相模・平下麟太郎から隅落「有効」

迎えた中堅戦は大成・森部篤知、東海大相模・平下麟太郎ともに左組みの相四つ。森部開始の声が掛かるなり思い切った左大外刈、さらにその刈り足を着いて右小外刈と繋ぐ大技。これは平下がうまく体を入れ替えて切り返したが、森部は続くシークエンスも釣り手を叩き入れながら左大外刈に飛び込み攻勢。

この迫力に気圧されたか、抗して平下が放った左内股は意外なほどに緩慢な動き。おそらくは牽制の意図で起こしたこの反転行動に森部鋭く反応、相手の釣り手側に回り込んでその体を制し、足を掛けながら斜め前に転がし落として「有効」奪取。

以後は横変形で対峙して双方に「指導1」。森部の次なる大技に期待したい展開だが、平下が勇を鼓して釣り手を奥襟に叩き入れると意外にあっさり森部の頭が下がる。数合この展開が続いたことで平下は自信を回復、「奥襟を持てば行ける」とばかりに左大内刈、左大外刈と連続攻撃を見せて後半は一方的な平下優位の展開。もはやいつ逆転の一撃が決まってもおかしくない情勢だが、平下は詰めきれず。最終盤に見せた左大外刈は巻き込んで状況を流してしまい、残り時間僅かで放った隅返は相手に読まれてあっさり回避される。「巻き込みじゃない!」「(隅返)そうじゃない!」とのベンチの声も届かずこの試合はそのまま終了。序盤のみ森部が圧倒的優位、以後は完全に平下の試合であったが、自身に流れがある時間帯にしっかり得点までたどり着いた森部が「有効」優勢で勝利、大成が貴重な1点を獲得することとなった。

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辻湧斗と清水祐希(右)による副将対決

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大将戦は東部直希が河内優斗に仕事をさせず

副将戦は大成・清水祐希が左、東海大相模・辻湧斗が左組みのケンカ四つ。序盤は辻が左体落に左内股と攻めて攻勢「指導1」を得るが、これをきっかけに清水が奮起。右大外刈を撃ちまくって主導権を奪い返し、中盤には東海大相模ベンチから辻に「返し(を狙うんじゃ)じゃないよ!」との声が飛ぶに至る。しかし、一度出来上がった流れは変わらず、辻は相手の大外刈モーションに合わせた支釣込足などの瞬間芸的な巧さは見せたものの清水が最後まで攻めまくってフィニッシュ。疲労困憊となりながらも攻撃の手を緩めなかった清水の気迫に辻が押される形のままこの試合は終了、副将戦も引き分けに終着した。

大成の1点リードで迎えた大将戦は大成・東部直希が左、東海大相模・河内優斗が右組みのケンカ四つ。河内両襟を握って相手をあおりながらの右小内刈、大内刈と連発するが序盤の連続攻撃が終わるとパタリと攻め手が止まる。東海大相模ベンチからは「動きがないよ!」と激が飛ぶが、潮目の変化を感じた東部は引き手争いを巧みに制して袖を押し込み捌き、崩れた河内は膝を屈して回避。直後河内に「取り組まない」判断による「指導1」が宣告される。

奮起した河内は足車、大内刈と技を繰り出しはじめ、いずれも潰れたものの残り1分20秒で東部に「指導1」。しかし河内はまたも自身に傾いた流れに乗り切れず、膠着のまま時間を消費。最終盤に放った両襟の右足車も手を放して亀の形に潰れてしまい、面白い場面を作れないまま試合終了。東部が巧みな攻守の押し引きで4分間を戦い切ったという体でこの試合も引き分けに終わり、結果スコア1-0で大成の勝利が決まった。

大成高 1-0 東海大相模高
(先)渡辺神威×引分×古庄涼哉
(次)田中大地×引分×原伸之輔
(中)森部篤知○優勢[有効・隅落]△平下麟太郎
(副)清水祐希×引分×辻湧斗
(大)東部直希×引分×河内優斗

優勝決定直後、大成・石田輝也監督は選手を集めるなり「なぜ攻めない!なぜ弱気になる!なんで思い切りやらないんだ!これは次に繋がる試合なのか!」と激しい檄。この台詞に周囲が思わず頷いてしまう、双方ともにやや消化不良の感ありの一番だった。

特に前代、充実戦力の3年生の傘の下で斬り込み役、あるいはジョーカー役として存分の働きを見せた渡辺の大人しさは意外であった。狙われる立場になって急に試合が落ち着いてしまい、ために自身の取り味の源泉である愚直なまでの連続攻撃を失って結果爆発力を発揮できなかった日体荏原・長井晃志や国士舘・河田闘志らと同様の「上級生の陥穽」に嵌っていた印象がある。おそらくチームが渡辺に期待するのは手堅い1点の獲得ではなく奔放な攻撃、相手を恐怖させしめるような思い切りの良い技ではないかと思われるが、その観点で言えば選手たちがチームの中における自身の立ち位置を定められていない印象も残した。

勿論、どのチームもまだ戦力が粗削りで戦い方が定まっていない中で一種大人の試合が出来たこと、手堅く地力の高さを発揮したことこそが今回の大成の勝利の所以ではあるが、俺こそエースとばかりに互いが互いの力を見せつけ合うような試合を繰り広げてのし上がった前代チームの迫力と比べるといささかの物足りなさも感じる。アクシデントで1か月近く稽古を休み最大の長所であるスタミナを失いながらも攻めに攻めたファイター清水の試合ぶりが一つ救いではあったが、大成が大成らしさを発揮するには地力以上に、本来の持ち味である攻撃に対する貪欲さが必要。まずはエース1枚を確立すること、エースの自覚のある選手を育てることが重要ではないかと思われる。

東海大相模は、前述の通り、エースの辻が上位対戦においては絶対値高く相手をねじ伏せるような型の選手ではなく、駆け引きの中で力を発揮し、結果としては「一本」を残すというまとまりの良いタイプ。勝ち抜くには全員で辻が相手と「駆け引きしていい」、相手が「来る」状況を作るような試合が必須ではないかと思われる。今回出場していない山科良悟や笹谷健らを含めた総合力アップが次なる課題。山科がジョーカー的な働きが出来るところまで成長すれば今季は面白い存在となりうる。

優勝した大成も含めてどのチームもまだまだあまりに粗削りで、チームとしての力を測るには時期尚早。招待試合シリーズを含め、これからの経験と指導にすべてが掛かっていると総括して間違いないかと思われる。

飯田健太郎と磯村亮太の出場していない国士舘、勝って勝って成長するのではなく戦力をまずは「取りおいて」上がり目を狙う埼玉栄、今大会出場していない西日本勢、昨年終盤で追い込みを見せた東海大仰星や作陽ら育成力の高さが売りの強豪各校と、まだまだこの大会だけでは見えない要素も数多い。まずはこの冬季の「招待試合サーキット」でこれらのチームにどのような化学変化が起こるか、どれだけの伸びしろを見せてくれるか、以後松尾杯、水田杯、若潮杯と見逃せない戦いが続く。



文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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2連覇達成の大成高

【入賞者】
(エントリー48チーム)
優 勝:大成高(愛知)
準優勝:東海大相模高(神奈川)
第三位:国士舘高(東京)、日体荏原高(東京)

最優秀選手:森部篤知(大成高)
優秀選手:渡邊神威(大成高)、辻湧斗(東海大相模高)、本間壘(国士舘高)、藤原嵩太郎(日体荏原高)

大成高・石田輝也監督のコメント
「もっと攻めないと次に繋がらないと思いますし、他がまだ万全で来ていないというのもあります。額面通りに受け取るのは難しい勝利ですが、どんな大会でも優勝するというのは本当に難しい。しっかり勝ったことは本人たちの自信になったかと思います。普段の稽古だけでは測りきれない長所や短所が『対外』戦でかなり見えてきましたので、これは収穫です。長所を伸ばし、短所を潰していくということしかありません。体が大きくないので、稽古量、スタミナ、それに柔道技術で勝負していきたい。(-森部選手が頑張りました?)決勝で、もっと『一本』を取りに行っての勝ちや引き分けであればもっと嬉しかったのですが。次に繋がる部分だったと思います。まだ軸が見えてこないチーム、『その気になる』選手に出てきてもらいたいですね」

【準々決勝】

大成高(愛知) 3-0 東海大仰星高(大阪)
国士舘高(東京) 4-0 四日市中央工高(三重)
東海大相模高(神奈川) 4-0 小杉高(富山)
日体荏原高(東京) 3-2 東海大静岡翔洋高(静岡)

【準決勝】

大成高 2-0 国士舘高
東海大相模高 3-2 日体荏原高

【決勝】

大成高 1-0 東海大相模高

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