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得意の投技で全てを収拾、日本勢2人を連破し髙上智史が優勝飾る・グランドスラム東京66kg級レポート

(2015年12月16日)

※ eJudoメルマガ版12月16日掲載記事より転載・編集しています。
得意の投技で全てを収拾、日本勢2人を連破し髙上智史が優勝飾る
グランドスラム東京66kg級レポート
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1回戦、竪山将がアキリ・グジャコワ(コソボ)から左背負投「一本」

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3回戦、竪山は先手で攻撃、今季の世界選手権王者アン・バウルを完

前半戦の山場は3試合。竪山将(鹿屋体育大4年)とアン・バウル(韓国)がマッチアップしたプールDの3回戦と、髙上智史(旭化成)と髙市賢悟(東海大4年)の日本勢2人が激突したプールDの準々決勝、そして海老沼匡(パーク24)と今大会の海外勢でもっとも厄介な敵と目される「日本人キラー」ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)が戦ったプールCの準々決勝。

講道館杯を制したばかりの竪山は1回戦でアキリ・グジャコワ(コソボ)を背負投「一本」、2回戦はジャスパー・レフェブリー(ベルギー)を大内刈と横四方固の合技「一本」で下し順調な立ち上がり。一方アスタナ世界選手権を制したばかりの新世界王者アン・バウルは2回戦でアルセン・ガルスチャン(ロシア)戦という大山場があったが、終盤に背負投で「技有」を挙げ、そのまま縦四方固に抑え込む合技「一本」で快勝しこちらも好調な滑り出し。

昨年12月のグランプリ済州決勝では竪山が勝利し、今年のユニバーシアードではアンが勝利しているこのカードだが、今回は竪山が勝利。1分34秒に「指導」ひとつを失ったが右一本背負投に左袖釣込腰、左小内刈と粘り強く攻め続け、1分50秒にアンに手首を握って防御した咎で「指導1」、さらに2分50秒には袖口を絞った咎で「指導2」が与えられる。竪山は反抗を狙うアンの左背負投を止めては寝技に引き込んで展開を留保、残り1分を過ぎてからは取り味のある左背負投と右一本背負投を連発して展開を塗りつぶす。結果アンに反撃のきっかけを与えぬまま試合終了のブザーを聞き、「指導2」優勢を以て今季の世界王者を本戦トーナメントから弾き出すことに成功した。

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準々決勝、髙上智史が髙市賢悟から逆転の背負投「一本」

髙上智史と髙市賢悟による準々決勝は、髙市が右相四つの髙上の組み手を地力と巧さで塗りつぶし一貫して優勢。40秒には髙市のクロス組み手を受けた髙上が自ら膝を屈して偽装攻撃の「指導1」、1分36秒には右一本背負投を空振りした髙市に再び偽装攻撃で「指導2」が与えられる。
髙市は残り2分を過ぎたところで「指導」ひとつを失うも、展開は動的膠着で波乱の要素は一見して少なし。しかし残り24秒、髙上得意の右背負投が炸裂し髙市は一回転。主審は「技有」を宣告、一間あってこれは「一本」に修正されて試合は終了。地力と戦術性をテコに良い意味で「つまらない試合」を演出して主導権を得た髙市を、業師髙上が投技一発で逆転したという一番であった。

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勝負どころの準々決勝、海老沼匡がダバドルジ・ツムルクフレグから背負投「技有」

ダバドルジ・ツムルクフレグは日本勢に対し、この2年間の直近8試合で5勝3敗。髙上から2勝、阿部一二三から2勝、髙市から1勝を挙げている強者だ。海老沼にとってこの難敵とマッチアップする準々決勝はまさしく大一番であったが、開始早々の31秒に左背負投で頭から畳に叩き落としてみごと「技有」獲得。
以後も先に組むことと釣り手を激しく動かすこと、そして左大腰に隅返、左背負投と続く連続攻撃を以て、脇を差して密着を試みるダバドルジの意図を完封。3分55秒には組み際に左一本背負投を決めて「技有」を積み上げて勝負あり。階級きっての難敵を合技「一本」の完勝で退け、見事ベスト4へと名乗りを挙げた。

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3回戦、髙上智史がアレキサンダー・ベタから背負投「技有」

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準決勝、海老沼匡が竪山将から大内刈「技有」

【決勝】

髙上智史〇優勢[技有・肩車]△海老沼匡

決勝進出を果たしたのは髙上と海老沼の2名。

髙上は2回戦でリオ世界選手権銀メダリストのアザマト・ムカノフ(カザフスタン)を背負投「有効」、3回戦ではアレキサンダー・ベタ(ポーランド)を得意の背負投で2度投げつける合技「一本」(2:10)で一蹴。前述の通り準々決勝では高市賢悟を背負投「一本」(4:40)で退け、準決勝は3回戦で第1シードのゲオルギー・ザンタライア(ウクライナ)を肩車「有効」、支釣込足「技有」、小内刈「有効」と立て続けに投げて勝利しているセルジュ・オレイニック(ポルトガル)を背負投「有効」による優勢で下す。高市戦以外はこれという強豪と戦うことはなかったが、その勝負どころ一つをしっかり「一本」で勝ち抜いての決勝進出。

一方、4連覇を狙ったアスタナ世界選手権で予選ラウンド敗退、今大会に再起を期す海老沼は1回戦でエリオ・ヴェルデ(イタリア)を背負投「有効」で下し、2回戦も今季好調のゴラン・ポラック(イスラエル)からも同じく背負投「有効」優勢で勝利、強豪2人を立て続けに下して大会をスタート。3回戦はマー・ドゥアンビン(中国)を大外刈「有効」による優勢、そして準々決勝では前述の通りダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)に合技「一本」(3:55)で快勝し、準決勝では竪山将の挑戦を組み際に過たず決めた左大内刈「技有」を以て退ける。ヴェルデ、ポラック、ダバドルジ、そして竪山と強豪4人にしっかり勝利して決勝の畳に臨む。

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決勝、髙上は開始早々の肩車に海老沼を捉え「有効」獲得

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髙上は再度の肩車で「技有」も得て圧倒的なリード

決勝は髙上が右、海老沼が左組みのケンカ四つ。
開始早々の15秒、引き手争いのモーションを上手く利用して髙上が海老沼の左へ肩車。右小外掛に体を捨てる形で放ったこの技に海老沼あっという間に一回転「有効」。

ビハインドを負った海老沼は組むなり手順を飛ばして左内股、さらに左大外刈に乗り込む連続攻撃を見せる。いずれも試合が落ち着いてしまう前に投げて追いつこうとの意図明らかな、投げの成立に必要なポイントに最短距離でアプローチする怖い一撃。さらに右一本背負投で髙上を伏せさせ、左内股で攻め込んでと主導権は完全に海老沼に移るかと思われたが、ここで髙上が再び海老沼の左へ肩車。左背負投、片襟の右背負投と続いた海老沼の連続攻撃を捌くなりまず自身の左へスライドステップを踏み、相手が踏み止まろうとした瞬間に右脚を流し入れて「戻した」この一撃に海老沼ものの見事に引っ掛かり、これは「技有」。経過時間は1分53秒、残り時間は3分7秒、髙上、圧倒的なリード。

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海老沼が左内股「有効」、激しく追撃

髙上は海老沼の生命線である左釣り手の袖をまず殺し、両袖、あるいは自身が左組みとなる形を厭わずその攻めを封殺。この一手目の徹底管理が袖口の絞り込みと判断されて2分38秒髙上に「指導」ひとつが宣告されるが、大勢には影響なし。しかし苦しい立場のはずの海老沼はこれが仕事とばかりに淡々と取り味のある投げを繰り出し続け、3分すぎには両襟組み手から釣り手を振り立て左内股で相手の股中に侵入することに成功。これに感触を得ると、続くシークエンスでも左釣込腰の大技に打って出る。腹の良く出たこの一撃で髙上を腰に載せると左内股に連絡して投げ切り「有効」。経過時間は3分7秒。

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決定的な2つ目の「有効」も得た髙上は寝技で時間を消費、タイムアップまで走り切る

海老沼はさらに両襟で接近、横落に足車と技を積むと、3分45秒には釣り手を突いて防御した髙上に2つ目の「指導」。流れを掴んだ海老沼はさらに左大内刈、左背負投に右小内刈と猛攻を見せ残り1分を切ったところで明らかな攻勢となる。残り39秒には素晴らしいタイミングの左背負投に潜り込み、髙上は逆側に抜け落ちて腹這いで回避「待て」。

しかしあと一息で海老沼の技が決まるのでは、あるいはあと2つの「指導」奪取もあり得るのではと思われたこのタイミングで、髙上の担ぎ技がまたも炸裂。組み際に袖を殺して右袖釣込腰、海老沼逆側に回避するがいち早く体を捨てた髙上が作った下向きの力に逆らえずズルリと滑り落ちて「有効」。

もはや髙上の勝利は決定的。髙上は寝技で攻め続けたまま残り4秒まで時計の針を進めて、無事タイムアップ。髙上が「技有」に「有効」2つ、海老沼が「有効」1つというスコアのまま試合は終了し、髙上が2013年大会以来2年ぶり3度目のグランドスラム東京優勝を決めることとなった。

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優勝の髙上智史

決勝は先制攻撃の肩車「有効」が決定的だった。髙上はもはやこれ以上守れば展開、あるいは試合自体をも失うというギリギリのところまで追いつめられながらも、相手が追いかけてくるという大枠の構造を生かして投げを2度決め、事態を収拾。展開を塗りつぶされながらも担ぎ技一発で逆転した高市戦も含め、売りである投げ一発の切れ味で全てを克服、見事頂点まで駆け上がったという大会であった。

五輪代表争いは、圧倒的なアドバンテージがある海老沼に対し、可能性がある唯一の対抗馬という立場に髙上が残った「形」となった。

しかし「形」はあくまで「形」。海老沼が世界選手権3連覇という圧倒的な実績を残していること、今大会も強敵を立て続けに下してしっかり決勝まで勝ち上がっていること、一方の髙上がまだ世界選手権という圧力のある場を経験していないこと、直近2シーズンでダバドルジ、ポラック、ザンタライアら階級の主役と目される選手にいずれも黒星をつけられていることなどを考えると、海老沼の立場はほとんど揺らいでいないと観察して良いのではないだろうか。土俵際に残ることに成功し、現時点で唯一挑戦権のある髙上は今後の欧州国際大会、そして選抜体重別での「強敵を倒しての優勝」という完璧なシナリオを続けることに、最後の望みを繋ぐ。
レペチャージラウンドに回った高市と竪山は3位決定戦で直接対決、「指導1」で勝利した高市が表彰台に登り、世界王者アン打倒という大仕事を成し遂げた竪山は5位に甘んじることとなった。

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66kg級入賞者。左から海老沼、髙上、髙市、ダバドルジ

【入賞者】
(エントリー45名)
1.TAKAJO, Tomofumi(JPN)
2.EBINUMA, Masashi(JPN)
3.DAVAADORJ, Tumurkhuleg(MGL)
3.TAKAICHI, Kengo(JPN)
5.OLEINIC, Sergiu(POR)
5.TATEYAMA, Sho(JPN)
7.KATZ, Nathan(AUS)
7.OATES, Colin(GBR)

髙上智史選手のコメント
「今日獲らないとその時点で(五輪代表)戦線脱落、と思っていました。決勝は自信になりました。ようやくスタートラインに立てたということで、これから背中を追っていこうと思います。海老沼選手にはこれまで1勝4敗、(肩車は)狙っておらず咄嗟に出た技です。勝因は、リードした後に攻め続けられても強い気持ちで戦えたこと、そこから投げに行けたこと。自分の得意技が担ぎ技なのはどの選手にもバレているので、『今日は背負投を使わずに投げる』『足技だけで稽古する』など条件を決めた稽古をしてきたのですが、その取り組みが生きたことは良かったと思います。同級生の大野(将平)や羽賀(龍之介)に置いて行かれて悔しいですし、やっている以上はあくまでオリンピックを目指して頑張ります」

【日本代表選手成績】

髙上智史(旭化成):優勝
海老沼匡(パーク24):2位
髙市賢悟(東海大4年):3位
竪山将(鹿屋体育大4年):5位

【準々決勝】

セルジュ・オレイニック(ポルトガル)〇合技[肩車・肩車](1:55)△ネイサン・カッツ(オーストラリア)
髙上智史〇背負投(4:33)△髙市賢悟
海老沼匡〇合技[背負投・一本背負投](3:55)△ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)
竪山将〇合技[内股・背負投](3:15)△コリン・オーツ(イギリス)

【敗者復活戦】

髙市賢悟〇優勢[指導3]△ネイサン・カッツ(オーストラリア)
ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)〇優勢[指導3]△コリン・オーツ(イギリス)

【準決勝】

髙上智史〇優勢[有効・背負投]△セルジュ・オレイニック(ポルトガル)
海老沼匡〇優勢[技有・大内刈]△竪山将

【3位決定戦】

髙市賢悟〇優勢[指導1]△竪山将
ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)〇優勢[有効・体落]△セルジュ・オレイニック(ポルトガル)

【決勝】

髙上智史〇優勢[技有・肩車]△海老沼匡

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準決勝、髙上がセルジュ・オレイニックから「有効」獲得

【日本代表選手勝ち上がり】

髙上智史(旭化成)
成績:優勝

[2回戦]
髙上智史〇優勢[有効・背負投]△アザマト・ムカノフ(カザフスタン)

[3回戦]
髙上智史〇合技[背負投・背負投](2:10)△アレキサンダー・ベタ(ポーランド)

[準々決勝]
髙上智史〇背負投(4:40)△高市賢悟

[準決勝]
髙上智史〇優勢[有効・背負投]△セルジュ・オレイニック(ポルトガル)

[決勝]
髙上智史〇優勢[技有・肩車]△海老沼匡

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2回戦、海老沼匡がアスタナ世界選手権3位のゴラン・ポラックから背負投「有効」

海老沼匡(パーク24)
成績:2位

[1回戦]
海老沼匡〇優勢[有効・背負投]△エリオ・ヴェルデ(イタリア)

[2回戦]
海老沼匡〇優勢[有効・背負投]△ゴラン・ポラック(イスラエル)

[3回戦]
海老沼匡〇優勢[有効・大外刈]△マー・ドゥアンビン(中国)

[準々決勝]
海老沼匡〇合技[背負投・一本背負投](3:55)△ダバドルジ・ツムルクフレグ(モンゴル)

[準決勝]
海老沼匡〇優勢[技有・大内刈]△竪山将

[決勝]
海老沼匡△優勢[技有・肩車]△髙上智史

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3位決定戦、竪山将を得意の寝技で攻め込む髙市賢悟

髙市賢悟(東海大4年)
成績:3位

[2回戦]
髙市賢悟〇優勢[技有・背負投]△シュ・ゼンロン(中国)

[3回戦]
髙市賢悟〇横四方固(3:29)△キム・リムワン(韓国)

[準々決勝]
髙市賢悟△背負投(4:40)〇高上智史

[敗者復活戦]
髙市賢悟〇優勢[指導3]△ネイサン・カッツ(オーストラリア)

[3位決定戦]
髙市賢悟〇優勢[指導1]△竪山将

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準々決勝、竪山将がコリン・オーツから背負投「技有」

竪山将(鹿屋体育大4年)
成績:5位

[1回戦]
竪山将〇背負投(1:44)△アキリ・グジャコワ(コソボ)

[2回戦]
竪山将〇合技[大内刈・横四方固](2:24)△ジャスパー・レフェブリー(ベルギー

[3回戦]
竪山将〇優勢[指導1]△アン・バウル(韓国)

[準々決勝]
竪山将〇合技[内股・背負投](3:15)△コリン・オーツ(イギリス)

[準決勝]
竪山将△優勢[技有・大内刈]〇海老沼匡

[3位決定戦]
竪山将△優勢[指導1]〇高市賢悟


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