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講道館杯全日本柔道体重別選手権・最終日男子3階級レポート

(2015年11月17日)

※ eJudoメルマガ版11月17日掲載記事より転載・編集しています。
最終日男子3階級(90kg級、100kg級、100kg超級)レポート
講道館杯全日本柔道体重別選手権
■ 90kg級・伏兵大辻康太が小林悠輔破り初優勝、学生王者江畑丈夫が3位に食い込む
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準々決勝、大辻康太が垣田恭平から背負投で3つ目の「有効」

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準々決勝、小林悠輔が釘丸太一から左内股「技有」

【決勝】

大辻康太(日本エースサポート)〇優勢[指導3]△小林悠輔(筑波大4年)

決勝に進んだのはともに初優勝を狙う大辻康太(日本エースサポート)と小林悠輔(筑波大4年)の2名。

大辻は1回戦でもとインターハイ王者前田宗哉(東海大2年)を袈裟固「一本」(1:37)で破り、2回戦では8月の全日本実業個人を制した優勝候補・西山将士(新日鐵住金)を「指導1」の優勢で下す。準々決勝の曲者・垣田恭平(旭化成)戦は背負投、小内刈、背負投と3つの「有効」を奪う完勝で突破し、準決勝は前戦で長澤憲大(東海大4年)に勝利したベテラン山本宣秀(日本中央競馬会)を「指導2」の優勢で下して決勝進出決定。

一方の小林は1回戦で五十嵐遼介(新潟県警)から内股「一本」(4:29)、2回戦で三山悟司(京都刑務所)から大内刈「有効」、準々決勝は釘丸太一(センコー)から大内刈「有効」、内股「技有」と連取して勝利し、準決勝は大橋賢人(1:12)を内股「一本」で下して初の決勝の畳へと乗り込む。

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決勝、「指導」をリードした大辻が小林の内股を捌く

決勝は左相四つ。双方組み手に厳しく攻めの形が作れないまま序盤戦が過ぎ、51秒、片手の咎で両者に「指導1」。
直後小林が組みつきながらの左内股を放ち、しかし回された大辻は膝から落ちてノーポイント。小林が先んじて思い切った一撃を放った形だが、直後大辻が左一本背負投。これは小林が抱きつぶすが、大辻はさらに組み手を一旦切り離して良いタイミングの左一本背負投を見せる。ここで主審は大辻の攻勢を認め、直後の1分50秒小林に「指導2」。

小林奮起して両襟を掴んで圧、さらぶ引きずり回すような左内股に左大内刈と放って展開を獲りに掛かるが、大辻は右一本背負投、さらに両手を揺するようにあおりながら左背負投を放って対抗。小林も背負投崩れの左大外刈と良い技を見せるが、左右の手をスイッチしながら動的膠着を狙う大辻を崩しには至らず、残り42秒で双方に「取り組まない」咎の「指導」。反則の累積は小林が「3」、大辻が「2」。

直後小林釣り手を叩き入れながらの左大内刈に打って出るが大辻は予期して回避。残り20秒でスクランブルを掛けた小林が一本背負投崩れの左大内刈を放つと大辻潰して横三角、寝技でしっかり時間を使って「待て」が掛かったときには残り時間僅か2秒。このまま試合は終了し、「指導3」対「指導2」の反則累積差で大辻の優勝が決まった。

大辻は埼玉大学4年時、最終学年の全日本学生体重別でメジャー大会初タイトル獲得(2012年)、一昨年の関東選手権で優勝を飾って存在感を見せた遅咲きの強豪。昨年の5位から一気に躍進して強化選手外から見事優勝、グランドスラム東京という檜舞台の出場権を得るに至った。

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2回戦、西山将士が大辻康太を内股で攻めるが不発

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試合終了、思わず顔を覆う西山

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準々決勝、山本宣秀が長澤憲大を大外刈「一本」に仕留める

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2回戦、釘丸太一が向翔一郎を完封、「指導」差で勝利する

昨秋に左膝を手術し、8月の全日本実業個人で復活優勝を遂げたばかりのロンドン五輪銅メダリスト西山将士は1回戦で今季のインターハイ王者神鳥剛(大成高3年)を小内刈「有効」で破ったが、前述の通り2回戦で大辻に敗れトーナメント脱落。この時点でリオ五輪の挑戦権はなくなり、大会終了後には報道陣に現役引退を示唆。実業個人終了後に「五輪を目指すのは現役選手の使命、あきらめたらその時点で引退」と語っていた覚悟を証明した形の、潔い引き際であった。

第1シードの長澤憲大は前述の通り準々決勝で山本宣秀に敗退。「指導2」をリードしたが2分47秒に大外刈「有効」を失い、「指導3」まで追い縋ったものの残り2秒で大外刈「一本」を食うという完敗だった。続く敗者復活戦でも垣田恭平に一本背負投「一本」で屈し、最終成績は7位で表彰台には上がれず。勝った垣田は3位決定戦の大橋賢人戦を横四方固「一本」で終えて3位に入賞した。

もう1人の銅メダリストは今季の学生王者江畑丈夫(国士舘大2年)。1回戦で佐藤和幸(愛知県警)を払腰「一本」(3:06)、2回戦で二見省吾(國學院大1年)を内股「一本」(4:31)と勝ち抜いたが、大枠優位に進めた準々決勝の大橋賢人戦に落とし穴。タイスコアで迎えた3分15秒に放った大外刈の戻りに動きを合わせて押し込まれ、首を制されて「有効」(公式記録は小外刈)失陥。そのまま優勢負けで本戦トーナメントから脱落することとなった。しかし敗者復活戦の釘丸太一、3位決定戦の山本宣秀という難敵2人をいずれも「指導2」優勢で下し、表彰台まで辿り着く健闘。無事強化選手(B)にも指定され、来季に繋がる大会だった。

全日本ジュニア2連覇者向翔一郎(日本大2年)は2回戦で釘丸太一に「指導2」対「指導1」で敗退。大学卒業後躍進、昨年来国際大会にも派遣されて活躍していた菅原健志(パーク24)は1回戦で古居頌悟(東海大3年)に内股「一本」(0:31)で敗退。高校選手権覇者の田嶋剛希(国士舘高3年)は持ち前の融通無碍の組み手も爆発的な担ぎ技も見せる気配なく、1回戦で田村優樹(國學院大3年)に「指導2」対「指導1」で屈した。

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初優勝の大辻康太

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90kg級入賞者。左から小林、大辻、垣田、江畑。

【入賞者】

優 勝:大辻康太(日本エースサポート)
準優勝:小林悠輔(筑波大4年)
第三位:垣田恭平(旭化成)、江畑丈夫(国士舘大2年)

大辻康選手のコメント
「なかなか結果が出ないところがありましたが、所属のエースサポートはじめ沢山の方々が応援してくれて優勝することが出来ました。ありがとうございます。もう25歳で決して若くないので、やっと結果が出せてうれしいです。自分の良さはスピードとスタミナだけ、その良さを出すことを5分間徹底しました。いままで国際大会に出たことがないので、その重みを感じながら、グランドスラム東京では頑張りたいです」

【準々決勝】

山本宣秀(日本中央競馬会)〇大外刈(4:58)△長澤憲大(東海大4年)
大辻康太(日本エースサポート)〇優勢[有効・背負投]△垣田恭平(旭化成)
小林悠輔(筑波大4年)〇優勢[技有・内股]△釘丸太一(センコー)
大橋賢人(筑波大2年)〇優勢[有効・小外刈]△江畑丈夫(国士舘大2年)

【敗者復活戦】

垣田恭平〇一本背負投(1:36)△長澤憲大
江畑丈夫〇GS指導2(GS1:08)△釘丸太一

【準決勝】

大辻康太〇優勢[指導2]△山本宣秀
小林悠輔〇内股(1:12)△大橋賢人

【3位決定戦】

垣田恭平〇横四方固△大橋賢人
江畑丈夫〇優勢[指導2]△山本宣秀

【決勝】

大辻康太〇優勢[指導3]△小林悠輔

■ 100kg級・国際大会2連勝中のウルフアロンが初優勝、決勝は迫力のスクランブル攻撃で逆転「一本」
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2回戦、飯田健太郎が小野卓志の左小外掛を呼び込んで抱き返し、反時計回りに捻り落として「一本」

大会序盤戦の花形は全日本ジュニア王者飯田健太郎(国士舘高校2年)。1回戦でシニアカテゴリの強者高橋良介(警視庁)を「指導2」を奪った末の大内刈「一本」(1:55)で倒して会場をあっと言わせると、2回戦では小野卓志(筑波大教)と対戦。観衆固唾を呑んで見守るこの一番は1分38秒に小野が抱きつきの左小外掛。押し込まれた飯田膝をついてそのまま勝負あったかに思われたが、飯田は踏み止まると小野の首を抱えて反時計回りに捻り返して右浮腰「一本」(1:38)。小野はガッカリ、勝った飯田は表情を変えずに勝ち名乗りを受ける。飯田の際の強さ、体幹の強さと何より投げに対する執念が垣間見えた素晴らしい「一本」だった。

飯田は準々決勝で小林大輔(ALSOK)と対戦、「指導」を計3つ奪って全時間帯に渡って大枠攻勢も3分16秒に食った大内刈一発「有効」のビハインドを取り戻せず惜敗。敗者復活戦は大会随一の試合巧者穴井亮平(東海大付熊本星翔高教)の「大人の柔道」に封じられ「指導1」の優勢で敗戦、最終結果は7位に留まったが、順位だけでは測れない潜在能力の高さ、「モノの良さ」を見せつけた大会だった。

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2回戦、ウルフアロンが乙津瑞希から小外掛「有効」

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準決勝、ウルフアロンが小林大輔から小外刈「一本」

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準決勝、下和田翔平は体格差を生かして羽沢頼誠に対峙

【決勝】

ウルフアロン(東海大2年)〇内股(4:19)△下和田翔平(京葉ガス)

決勝に進んだのはウルフアロン(東海大2年)と下和田翔平(京葉ガス)の2名。

第1シードのウルフは初戦で大会有数の不確定要素・乙津瑞希(東芝プラントシステム)、さらに準々決勝で試合巧者穴井亮平と対戦するという非常に厳しい組み合わせだったが、乙津戦を小外掛「有効」、穴井戦を引込返「技有」で突破すると、準決勝は小林大輔(ALSOK)を得意の飛び込むような決めの小外刈「一本」(4:37)で下す。優勝候補筆頭のプレッシャーをものともせず、順当に決勝の畳へと勝ち上がって来た。

一方の下和田は1回戦で前野玲音(山梨学院大2年)を大外刈と後袈裟固の合技「一本」(1:54)、で破り、2回戦は昨年の世界ジュニア王者後藤隆太郎(慶應義塾大3年)との大激戦をGS延長戦の末小外掛「有効」(GS0:31)で突破。準々決勝は阪本健介(東海大4年)を「指導1」対「指導2」の優勢で退け、準決勝は羽沢頼誠(パーク24)を「指導1」の優勢で振り切って決勝進出決定。

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決勝、下和田が組み際の左大内刈で「有効」を先制

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ウルフの左内股が炸裂、「一本」で逆転劇完成

決勝はウルフが左、下和田が右組みのケンカ四つ。ウルフが釣り手を下から突いて前へ、下和田は上から被せて対峙しての引き手争い。

ウルフはフェイントの左小外掛に釣り手を巻返しながらの左大腰、片手の左浮腰と立て続けに大技を繰り出すが、懐の深い下和田の重心に力を伝えきれず、なかなか獲り切れない。さらに2分40秒には組み手のやりとりの中で「後ろ手」で腕を残したまま反転するミスを犯し、自ら潰れる「指導」ギリギリの場面を演じて序盤の攻勢はやや減速。


ここで下和田が強烈な一撃。2分1秒、組み際の右大内刈でウルフを捕まえて真裏に刈り落とす。「一本」にならないのが不思議なほど強烈な技だったが、ウルフ瞬時に身を捻りこれは「有効」。下和田そのまま縦四方固に抑え込むが、ウルフ数秒で気持ちを立て直すと下和田の肘を下から押して拘束を外し、11秒で「解けた」、この抑え込みは「有効」に留まる。主審が「待て」を掛けた時点で経過時間は2分31秒。

「有効」2つのビハインドを受けてウルフはスクランブル態勢。釣り手を下から入れての左内股、あるいは帯を握っての「出し投げ」と技を積んで3分5秒「指導1」、3分32秒には下和田の偽装攻撃による「指導2」と次々反則ポイントを奪うものの、どうしても手足の長い下和田の腰を捕まえ切れず、残り時間はあっという間に1分を切る。ウルフ脇を差して接近を試みるが、下和田は先んじて足を高く揚げて右内股の形で潰れ決定的なチャンスを与えない。

しかし次のシークエンスで状況一変。ウルフはついに釣り手を巻き返して帯を掴むという万全の形を作り上げることに成功する。下和田一瞬対応が遅れ、ウルフはこのチャンスを逃さず思い切り左内股。やや入りが浅かったがウルフはここしかないとばかりにケンケンで無理やり間合いを詰め、畳を蹴る動作に合わせて自らの頭を下げて相手に縦回転を強いる。釣り手の拘束が良く効いたこの決めに、下和田たまらず一回転。

主審迷わず「一本」を宣告してここに劇的な逆転劇完成。大学2年生ウルフアロンの講道館杯初制覇が決定した。

大物食いの得意な選手が並んだ厳しい組み合わせを突破した安定感、間合いを詰めての一撃以外に逆転の目がない状態から見せた迫力満点のスクランブル攻撃に、しっかり「一本」を獲り切ったミッション遂行能力と、この日のウルフのパフォーマンスは表彰台の真ん中に立つに相応しいもの。グランプリ大会2連勝で得た「国際大会への適性」という要素をさらに補強する、明らかに評価を一段上げた1日だった。

グランドスラム東京代表にはアドバンテージのあった羽賀龍之介と髙木海帆のほか、この日決勝を争ったウルフと下和田が順当に選出された。

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2回戦、昨年アジア大会代表を務めた熊代佑輔は自ら仕掛けた裏投が「自爆」、一本負けを喫する

3位には小林大輔と穴井亮平、ともに飯田健太郎を下した2人が入賞。

第2シードの熊代佑輔(ALSOK)は2回戦敗退。羽沢頼誠を裏投で持ち上げたまま自ら背中から落ちてしまい、主審の判定は羽沢の「一本」(2:18)。羽沢が熊代をコントロールしていたとは見えず非常に微妙な判定であったが、結果は結果。勿論グランドスラム東京への進出も叶わず、ついに強化選手からも落選することとなってしまった・

足首の負傷が癒えぬ佐藤和哉(日本大2年)は1回戦での藤井岳(パーク24)との大消耗戦の末に「指導4」(GS2:01)で敗退。全日本ジュニア2位の伊藤好信(新田高3年)は浅沼拓海(センコー)に計7分半戦う健闘を見せたが袖釣込腰「一本」(GS2:29)で屈し2回戦敗退に終わっている。

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初優勝のウルフアロン

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準々決勝、ウルフアロンが穴井亮平から引込返「有効」

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100kg級入賞者。左から下和田、ウルフ、穴井、小林。

【入賞者】

優 勝:ウルフアロン(東海大2年)
準優勝:下和田翔平(京葉ガス)
第三位:穴井亮平(東海大付熊本星翔高教)、小林大輔(ALSOK)

ウルフアロン選手のコメント
「(決勝は)スタミナに自信があるので、積極的に圧を掛けていきました。目の前ひとつひとつの試合を勝っていけばおのずと世界選手権、五輪に繋がっていくと思っています。頑張ります」

【準々決勝】

ウルフアロン(東海大2年)〇優勢[有効・引込返]△穴井亮平(東海大付熊本星翔高教)
小林大輔(ALSOK)〇優勢[有効・大内刈]△飯田健太郎(国士舘高2年)
羽沢頼誠(パーク24)〇優勢[指導2]△辻本拓記(兵庫県警)
下和田翔平(京葉ガス)〇優勢[指導2]△阪本健介(東海大4年)

【敗者復活戦】

穴井亮平〇優勢[指導1]△飯田健太郎
辻本拓記(〇背負投(2:54)△阪本健介

【準決勝】

ウルフアロン〇小外刈(4:37)△小林大輔
下和田翔平〇優勢[指導1]△辻本拓記

【3位決定戦】

穴井亮平〇GS肩車(GS1:28)△羽沢頼誠
小林大輔〇優勢[指導3]△辻本拓記


【決勝】

ウルフアロン〇内股(4:19)△下和田翔平

■ 100kg超級・上川大樹が2年ぶりの優勝、西潟健太は持ち味出せず失意の2位
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2回戦、西潟健太が田中源大からGS延長戦の末に大外刈「一本」

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準決勝、西潟が岩尾敬太からGS延長戦大外刈「有効」で勝利を決める

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準決勝、上川大樹が高橋和彦から大外返「一本」

【決勝】

上川大樹(京葉ガス)〇優勢[有効・浮落]△西潟健太(旭化成)

決勝に進んだのは第1シードの西潟健太(旭化成)と第2シードの上川大樹(京葉ガス)の優勝候補2人。

今季の選抜体重別王者・西潟は1回戦で全日本実業個人2位の赤迫健太(新日鐵住金)を支釣込足「技有」による優勢で破り、2回戦はGS延長戦の末に田中源大(明治大1年)を大外刈「一本」(GS0:45)で下す。準々決勝は尾原琢仁(筑波大3年)を大外刈「一本」(2:13)、準決勝は前年度優勝者岩尾敬太(京葉ガス)との計9分に迫る激戦を大外刈「有効」(GS3:57)で締めて決勝進出決定。

一貫して勝負が遅く持ち前の思い切りの良さが出ない西潟に対し、一方の上川は全日本実業個人(優勝)に続き好調な勝ち上がり。1回戦は学生カテゴリの強者黒岩貴信(筑波大4年)を切れ味鋭い払腰「一本」(1:02)で斬り落とし、2回戦はインターハイ王者山田伊織(国士舘高3年)をこれも払腰「一本」(2:35)で一蹴。準々決勝は前戦で百瀬優(旭化成)を「指導2」で下した影浦心(東海大2年)をGS延長戦内股「有効」(GS1:04)で退け、高橋和彦(新日鐵住金)との準決勝は「指導3」をリードした末に大外返「一本」(4:36)で勝負あり。持ち味発揮の勝ち上がりをバックに、2年ぶりの優勝を目指して決勝の畳に臨む。

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決勝、双方組み手に拘り中盤まで試合は膠着

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最終盤、上川が西潟の支釣込足を浮落に切り返し「有効」を獲得

決勝は西潟が左、上川が右組みのケンカ四つ。引き手争いが長く続き、西潟が両襟で圧を掛け上川が絞り落とそうとしたところで主審が介入。49秒双方に消極的との咎で「指導」を宣告する。

以後も圧の掛け合いと釣り手の落とし合い、足技の牽制合戦が続いてなかなか試合が動かない。西潟の左大外刈を上川が頭を捻りながら耐えた直後の2分21秒、主審は双方に2つ目の「指導」を与える。

西潟両襟を狭く持って大外刈を仕掛けるが、上川は図太く組み手を直し続け、引き手で袖、釣り手は高い位置で襟を持つことに拘り続ける。具体的な技は時折繰り出す支釣込足があるのみだが、西潟の攻撃も散発で展開に差はつかず、3分26秒には双方に「指導3」が宣告されることとなる。

あと1つの「指導」があれば反則負けとなる状況とあってさすがに双方の攻撃は加速。西潟が支釣込足を繰り出すと、上川残り45秒を切ったところで得意の右足車。西潟が腰を切って耐え、双方重ね餅に潰れて「待て」が掛かった時点で残り時間は36秒。

西潟、釣り手で奥、引き手で袖を得ると反時計回りの支釣込足に打って出る。左足で上川の左を蹴り、次いで力足を踏んで浮落に連絡。支釣込足崩れに相手を捻り倒す西潟得意の「ハンドル投げ」だが、待ち構えた上川はその蹴り戻りに合わせて逆に上体を捻り返して対抗。後襟を掴んでいた右が良く効き、西潟は左肩を下にグルリと転倒、一旦伏せかかるが上川が押し込み切りこれは「有効」となる。

この時点で残り時間は13秒。そのままタイムアップとなり、「有効」優勢を以て上川の講道館杯2年ぶり2度目の優勝が決まった。

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2回戦、上川大樹がインターハイ王者山田伊織を払腰「一本」で一蹴

この日の上川は充実の出来。黒岩貴信、山田伊織を葬り去った払腰は間合いを測るなり一呼吸で相手を斬り落とすまさに名刀の切れ味と評すべき一撃であり、高橋和彦を捻じ伏せた大外返はその膂力と投げに対するカンの良さを示すもの。優勝は正当な結果であった。

パリ世界選手権、ロンドン五輪、リオ世界選手権と世界大会で3大会連続で、それも持ち味を全く出せないままの敗退を繰り返したことで強化陣の上川に対する評価は既に決している感あり、リオ五輪代表争いではアウトサイダーと評して差し支えないかと思われるが、「成績に準じて選ぶ」今回一貫した選考のフェアさに救い上げられる形で上川はグランドスラム東京代表の4枠目に滑り込み成功。期待を裏切り続けたこれまでの前歴からして代表争いに絡むには圧倒的な結果と内容が必要な状況だが、「全て勝つしかない」との本人の言葉に期待して以後を見守りたい。

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準々決勝、西潟が尾原琢仁から大外刈「一本」

西潟は失意の2位。全日本選抜体重別選手権優勝という素晴らしい成績を残しながら世界選手権の派遣どころかグランドスラム東京への進出権すら失うこととなってしまった。あの優勝の「対価」がアジア選手権への派遣とワールドツアー(それも非メジャー大会)2大会への派遣のみであったとするとこれはいかにも釣り合わない話ではあるが、結果は結果。残念ながらこの日の出来は優勝に相応しいものではなかった。奔放に大技を仕掛け続けた春先の豪快さと思い切りの良さ、柔道の面白さは感じられず、初戦の赤迫健太戦は「技有」リードに甘んじたまま試合終了。「一本」で勝利した田中源大戦もGS延長戦45秒に至るまで思い切った勝負に出ることが出来ず、GS大外刈「有効」で勝利した岩尾敬太との準決勝も勝負の決意を固めるまでに実に8分57秒の時間を擁した。覚悟を決めた技の威力が凄まじい分、それまでの慎重さと意外なまでの覇気のなさがかえってクローズアップされてしまった印象。悠揚構えて決して勝負が早いわけでなかった上川に双方「指導3」失陥という形で試合を縺れさせてしまった因は今大会一貫した西潟らしからぬ積極性の欠如であり、最終的に食った「浮落返し」も、上川の準備が整っていたことは勿論、左足を軽く蹴って戻してしまった自身の迷いが生んだものと観察できる。失うものがない状態で暴れまくった春先と、ここで勝たねば全てを失う「ミッション」に縛られた今大会は勝手が違ったのか。少なくともこの日の西潟は「獣人」ではなく、その出世の因であった猛々しさと溢れる自信は感じられなかった。

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3位決定戦、小川雄勢が高橋和彦を払巻込「一本」

この日の白眉は3位入賞の小川雄勢と影浦心の若手2名。小川は1回戦で遠藤翼(国士舘大4年)を「指導3」で破ると、2回戦ではパワー自慢の石井竜太(日本中央競馬会)の大外刈の戻りに合わせて豪快な浮落「一本」(2:26)を決めて見せた。準々決勝は高校の先輩である岩尾敬太に大内刈を返されて敗れたが、3位決定戦では高橋和彦を払巻込「一本」(1:49)で破り会場をあっと言わせた。試合構成力が高さが売りで戦術派と目されていた小川だが、石井、高橋というベテランの本格派2人をいずれも「一本」で畳に沈めたのはまさしく快挙。課題の投技の取り味を着々上げていると評して間違いないだろう。その柔道が完成したとき、どれほどの高みに到達することが出来るのか。今後がまことに楽しみだ。

影浦は1学年下の小川、田中らの勢いと2学年下の充実ぶりに押されてやや存在感の薄れた1年であったが、締めの大会と言うべき講道館杯で底力を発揮。3位決定戦では岩尾から背負投「有効」、横四方固「一本」と奪って完勝しており、再び若手世代の旗手の座を手にせんとする覚悟を感じさせた。シニアの強者2人から一本勝ちした小川と合わせ、重量級セカンドグループの世代交代が強く印象付けられた大会だった。

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2年ぶり2度目の優勝を飾った上川大樹

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100kg超級入賞者。左から西潟、上川、小川、影浦。

【入賞者】

優 勝:上川大樹(京葉ガス)
準優勝:西潟健太(旭化成)
第三位:小川雄勢(明治大1年)、影浦心(東海大2年)

上川大樹選手のコメント
「1週間くらい風邪気味で、熱も38度くらいあった。先生や奥さんに支えてもらってなんとか勝つことが出来ました。これで優勝出来ないとグランドスラム東京に出られないので、首の皮一枚繋がったかなと思います。最後は気持ちで勝ちました。この先全て勝つしかないので、一戦一戦必勝でやっていきたい」

【準々決勝】

西潟健太(旭化成)〇大外刈(2:13)△尾原琢仁(筑波大3年)
岩尾敬太(京葉ガス)〇小外掛(0:26)△小川雄勢(明治大1年)
上川大樹(京葉ガス)〇GS有効・内股(GS1:04)△影浦心(東海大2年)
高橋和彦(新日鐵住金)〇払腰(0:34)△江藤大暁(福岡県警)

【敗者復活戦】

小川雄勢〇優勢[指導3]△尾原琢仁
影浦心〇優勢[指導1]△江藤大暁

【準決勝】

西潟健太〇GS有効・大外刈(GS3:57)△岩尾敬太
上川大樹〇大外返(4:36)△高橋和彦

【3位決定戦】

小川雄勢〇払巻込(1:49)△高橋和彦
影浦心〇横四方固(2:02)△岩尾敬太

【決勝】

上川大樹(京葉ガス)〇優勢[有効・浮落]△西潟健太(旭化成)

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