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【eJudo’s EYE】アスタナ世界選手権男子日本代表総評、各選手採点表

(2015年9月11日)

※ eJudoメルマガ版9月11日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】アスタナ世界選手権男子日本代表総評、各選手採点表
■ 男子日本代表総評
男子日本代表 8.0
(※10点満点、団体戦含む)

強化スケジュール、強化合宿のありよう、所属との連携、階級別コーチの役割に日本代表選手に「求めるもの」の明示とあらゆる点に、誠実(この語彙がもっともふさわしいかと思われる)にメスを入れ続けた井上康生体制が一定以上の成果を挙げた、進むべき道が誤っていないことを証明した大会であったと言える。100kg超級では国内の弾丸数の増加に下支えされるがごとく七戸龍が「当たり前に」決勝進出、かつてのエース階級であり業界最激戦区のひとつである100kg級では羽賀龍之介が見事優勝と、就任時最大の課題に挙げていた重量級の立て直しにハッキリ成果が見えることが、なにより端的にこれを表している。階級創設以来世界選手権で金メダルがなかった81kg級における永瀬貴規の優勝も、日本が単に復活しているのではなく進化しているという印象を内外に与えるに十分だ。女子以上に、来年の五輪が怖くなってしまう好結果であったと総括出来るだろう。あとは、強豪各選手が一段、二段と地力を上げてくる五輪本番に向けて各人各選手が具体的に何を上積みして臨むのか、このプロデュースにしっかり力を貸してあげて欲しい。

減点ポイントは66kg級。4月に肩に重傷を負った海老沼匡の強行出場には様々な思いが絡むかと思われるが、入賞なしという結果は事実。海老沼不調の中にあって2枠目選手として起用された高市賢悟の極端なローパフォーマンスは選手投入戦略に関してネガティブな評価を受け入れねばならないはずだ。

ここまで陣容を充実させた日本の強化陣に、最後に求められるのは五輪に向けた強化、選抜スケジュールの整備。これは特に女子に言えることだが、もはや選抜体重別の実施には「なぜやる必要があるのか」、いやむしろ「なぜやめられないのか」を連盟(強化委員会ではない)がハッキリ説明する必要があるのではないだろうか。ロンドン五輪における選手の最大の負担が過密な選抜スケジュールであったことは論を待たず、かつ現体制の世界選手権における成功の所以が明らかにこの反省にある以上、強化陣は実は誰もが「選考対象者以外を含めたトーナメント戦を、五輪直前に行って代表を決める」ことの矛盾と負担の重さを骨身に染みてわかっているはずだ。それでもやらねばならない理由とはいったい何なのか、それは五輪の勝利と引き換えにしなければならないほど重いものなのか。どうしても最終選考会としての選抜体重別が必要ならば、必要な階級のみ、必要な対象者のみで行えばいい。少なくとも「なぜやらねばないか」を説明、議論出来ないのであればロンドンの最大の反省を、日本は次に生かせなかったということになる。強化に対する注文ではもはやなく、この件は項を改めてしっかり書かせて頂くつもりだが、日本代表が立て直しに成功して五輪前年まで辿り着いたこの世界選手権の総括にこの問題提起は外せない。ので敢えて先に、ここで記させてもらう。

■ 各選手採点表
※10点満点
※採点基準は順位ではなく各人が抱える「ミッションの達成度」とする
※個人戦代表の評価に団体戦は含まず

60kg級 志々目徹 7.0
淡白さと攻めの遅さという弱点を克服すべく策と覚悟を持って、粘り強い戦い。敗れたスメトフ戦では綻びが出たものの、キム・ウォンジンを倒しての3位入賞は高評価を受けて然るべき。優勝も十分ありえたという力関係に鑑みて減点したが、ワールドツアーの成績や内容からして銅メダル獲得は十分及第点、しっかり日本代表としての仕事を果たしたと言える。

66kg級 海老沼匡 4.5
4連覇というミッションが重すぎたということもあり、点は辛くならざるを得ない。多彩な方向性、かつ連続性のある攻めという昨年勝利の所以を見せられなかったことも残念。勝利自体を土台としていたその評価の根拠もいったん崩れ、出直しという印象。

66kg級 高市賢悟 2.0
初戦敗退。力関係が上にも関わらずベテランに粘りを許し、エマージェンシーを先送りした結果一発食うという最も悪いシナリオ。高市らしさが全く発揮出来なかった大会。

73kg級 大野将平 9.0
二本持てば誰でも投げると言わんばかりの圧倒的強さ。力を十分余した上での優勝劇だった。やり方をお互いよく知る中矢戦でワンチャンスを生かした勝負勘も買い。伸び盛りのアン・チェンリンに「技有」を許し、来年に向けて希望を残してしまったくらいが減点ポイントか。

73kg級 中矢力 8.0
大野とマッチアップした決勝以外は全試合一本勝ち。組み合わせに恵まれた感もあるが、それが些事に感じられるほど完ぺきな出来であった。昨年決勝で対戦したホン・カクヒョンを大外返「一本」で一蹴した準決勝は圧巻。複数個所の負傷が伝えられていたがここ一番に最高到達点を持ってくる調整力の高さはもはや職人の域。

81kg級 永瀬貴規 8.5
初優勝。ついにその実力を成績に反映させた。接戦にも気持ち折れずに粘り強く戦う様には自らの力と技への絶対の信頼が感じられた。奇襲にも動じる場面なく精神的成長は明らか。パワーファイターに形上組み負ける場面が多く、強さの一方で周囲に線の細さを印象づけてしまったところが減点ポイント。

90kg級 ベイカー茉秋 6.5
役者多き90kg級にあって銅メダル獲得は文句なしに立派な成果。ただし、形上組み負ける場面の多さとその打開を大内刈一択に頼る柔道には、異常なまでの勝負強さの一方で方法論的な閉塞感も強く漂った。敗戦の直接の因がもう1つの「出口」である引込返をかわされてのものであるという事実もこの観測を補強。次への展望の見せ方という点で、結果に見合うだけの高得点とはならなかった。結果をアドバンテージとして次に何を積むかが最大の課題。

100kg級 羽賀龍之介 9.0
6戦中4戦で決めた内股という決め技の威力は勿論だが、幾度も訪れた勝負の分岐点で心折れずに戦い切ったその精神的強さを何より評価したい。五輪に向けて方法論的な道筋をつけるところまでには辿り着かなかったが、ここ数年の100kg級の惨状と海外選手の充実度を考えればそれは贅沢というもの。日本のエース階級に復活の狼煙をあげたことは柔道史上に誇るべき、歴史的成果だ。

100kg超級 七戸龍 8.0
決勝までの勝ち上がりは多少の凹凸あれどほぼ危なげなし。2年連続の決勝進出で「リネールの次」の座を確たるものにしたと言える。リネール戦で見せた組み手のチャレンジは以後に向けて非常に興味深いものであった

団体戦 丸山剛毅 7.0
ドイツ戦1試合のみの出場であったが、相手がこの日絶好調のマレシュであったこととこのポジションが明らかな勝負の分水嶺であったこと、丸山の勝利が日本勝利の直接の因となったことで高評価としたい。

団体戦 吉田優也 6.0
3試合に出場、一本勝ち1つ、優勢勝ち1つ、優勢負け1つ。ヒルデブランド戦の「指導」ビハインドからの逆転勝ちは勝負強さを示すものであったが、吉田らしい爆発力を見せたとまでは言い難い。直接の敵であり評価の基準点であるガク・ドンハン戦で序盤に貰ってはいけないテクニカルな「指導」を受けたこと、そして敗退したことは、個人戦の代表選出に向けて少々ミソをつけた感あり。

団体戦 王子谷剛志 7.0
最大の勝負どころとなったキム・スンミン戦ではこの人の出世の原資であるたゆまぬ前進運動で相手を追い詰め、見事「指導」累積差で勝利。日本優勝の殊勲者であると言える。ただし、勝ちも負けもありえるシナリオの中で動いたピータース戦の「指導」差による敗退は余計であった。パフォーマンスに隙を見せた試合であり、勿体ない一番だった。



評者:古田英毅(eJudo編集部)
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版9月11日掲載記事より転載・編集しています。

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