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日本が全試合5-0の圧勝V、純戦力と「団体戦の知見」の高さで他国を全く寄せ付けず・アスタナ世界選手権女子団体戦レポート

(2015年9月7日)

※ eJudoメルマガ版9月7日掲載記事より転載・編集しています。
日本が全試合5-0の圧勝V、純戦力と「団体戦リテラシー」の高さで他国を全く寄せ付けず
アスタナ世界選手権女子団体戦レポート
■ 1回戦
日本 5-0 ブラジル
[52kg級]中村美里〇GS指導3(GS0:59)△エリカ・ミランダ
[57kg級]山本杏〇小内刈(2:18)△ラファレラ・シウバ
[63kg級]田代未来○片手絞(0:44)△マリアナ・シウバ
[70kg級]新井千鶴〇優勢[指導2]△マリア・ポーテラ
[70kg超級]山部佳苗〇払腰(3:12)△ロチュレ・ヌネス

15ヶ国が参加したトーナメント、ライバルと目されるフランスがシード権を得る中で日本は1回戦からの登場。しかもいきなり強敵ブラジルとマッチアップという厳しい配置となった。
とはいえ個人戦で3階級を制している日本の圧倒的優位は動かない。57kg枠のラファエラ・シウバが個人戦で見せた酷い出来を考えれば、顔合わせ的に唯一、そして非常に厳しいのが52kg枠。個人戦で優勝した中村が、準決勝で対戦し敗戦一歩手前まで追いつめられた強敵エリカ・ミランダとの対戦に臨む。

この試合は予想通りの激戦となった。開始早々ミランダの圧を受けた中村に16秒「指導」、3分12秒双方に「指導」。中村は反則ポイント1つのビハインドで終盤戦を戦うこととなったが、前に出続けてプレッシャーを掛け続けると残り6秒でミランダが偽装攻撃の反則を犯し「指導」。これでスコアはタイとなり延長戦突入、ここが勝負と中村は巧みな組み手と前進圧力で粛々と陣地を前に進め、59秒には我慢できなくなったミランダがその左腕を抱えて外巻込崩れの倒れ込みに打って出る。両手が離れたこの技は明らかな偽装攻撃でミランダに3つめの「指導」宣告。中村が厳しい試合を競り勝ち、日本は先制を果たす。

57kg枠では山本杏が今大会不調の13年リオ世界選手権王者ラファレラ・シウバを一蹴、一本背負投の形に腕を抱えた左小内刈でまっさかさまに叩き落として「一本」。63kg枠でも田代未来がマリア・ポーテラを左内股で崩すと襟を首に食い込ませ、さらに前に体を捨てて足を抱えてと淀みなく手順を進行し片手絞「一本」。日本はこの時点で早くも勝利を決める。

しかし70kg枠は新井千鶴が個人戦に引き続き調子上がらず。ケンカ四つのポーテラに「指導」1つずつのタイスコアのまま終盤に試合を持ち込まれる。残り5秒でポーテラが抱きつきの右大内刈、新井が膝をついてたえると胸をあわせて押し込み返す。この場面の後主審は試合をとめ、ベアハグによるポーテラの「指導」を宣告。結果新井が「指導1」対「指導2」の優勢で勝利することとなった。

最終戦は山部佳苗がロチェレ・ヌネスを払腰「一本」で一蹴。日本、殊勲者中村をきっかけに5試合全てを勝利して次戦に駒を進めることとなった。

1回戦全体を通して最大の注目対決はこの日本-ブラジル戦。

同じプールCのキューバ-中国戦は中国が3-2で勝利。52kg枠でマー・インナンがヤネット・ベルモイアコスタを小内刈「有効」からの横四方固「一本」、57kg枠でリウ・ヤンが相手のダイレクト反則負けによる勝利と、70kg枠の不戦勝により3点を挙げた。キューバの超級枠はヤレニス・カスティーヨが出場し、中国はこの枠に選手を起用せず。イダリス・オルティスとユー・ソン、マー・スースーら超級の大物は出場しなかった。

[1回戦結果]

ロシア 4-1 オーストラリア
ドイツ 4-1 メキシコ
ポーランド 5-0 アルジェリア
日本 5-0 ブラジル
中国 3-2 キューバ
モンゴル 5-0 カザフスタン
韓国 4-1 チュニジア

■ 準々決勝
ロシア 3-2 フランス
[52kg級]ユリア・リツォヴァ〇内股透(3:35)△アナベール・ウラニー
[57kg級]タチアナ・カゼニュク△袈裟固(3:37)〇オトーヌ・パヴィア
[63kg級]パリ・スラカトヴァ〇反則(1:23)△クラリス・アグベニュー
※足取りによるダイレクト反則負け
[70kg級]イアナ・クリユコワ△優勢[有効・横四方固]〇ジブリス・エマヌ
[70kg超級]アレクサンドラ・バビンチェワ〇横四方固(4:00)△エミリー・アンドル

豪華メンバーを揃えたフランスがロシアに食われる波乱。
52kg枠でアナベール・ウラニーがユリア・リツォヴァを相手に「技有」を先行しながら終盤内股透「一本」で敗れてしまう。先鋒戦の逆転負けという団体戦最大のタブーを犯したフランス、当然ながらここから場の雰囲気がおかしくなった。57kg枠はオトーヌ・パヴィアが内股「有効」から袈裟固に抑え込んで順当に勝利したが、勝利確実と思われた63kg枠で2度目のアップセット。クラリス・アグベニューがまったくの格下のパリ・スラカトヴァを相手にした「際」の攻防で、寝姿勢の攻防と見て下穿を握って防御。試合を止めた主審は精査の結果これを所謂「足取り」と判断、アグベニューのダイレクト反則負けを宣告する。

それでも70kg枠を個人戦の王者ジブリス・エマヌが「一本」で取りスコアは2-2、しかも70kg超枠はエミリー・アンドルに遥か格下のアレクサンドラ・バビンチェワがマッチアップと慌てる状況ではなかったはずだが、アンドルは袖釣込腰を小外刈で返され「有効」失陥。得意の大内刈「有効」で追いつくものの終盤横四方固で抑え込まれてしまい万事休す。このままバビンチェワの「一本」で試合は終了、スコア3-2でロシアが準決勝へと駒を進めることとなった。明らかに優勝を狙っていたフランスは失意の敗退。ミスがミスを呼ぶ、団体戦におけるアップセットのお手本のような試合だった。

ポーランド 3-2 ドイツ
[52kg級]カロリナ・ピンコフスカ△優勢[技有・大内刈]〇マレーン・クラエー
[57kg級]アレタ・ポドラック〇優勢[指導3]△ヴィオラ・ベヒター
[63kg級]アガタ・オズドバ△合技[小内刈。横四方固](3:28)〇マルチナ・トラジドス
[70kg級]カタリナ・クリス〇優勢[有効・背負投]△スザンドラ・ディードリッヒ
[70kg超級]ダリア・ポゴジャレッツ〇優勢[有効・大外返]△ルイーズ・マルツァーン

フランスに続きドイツも敗退。盤面を見る限りポーランドが勝利を確実に織り込めるポジションは皆無で、勝利をイメージ出来る力関係にあるのは辛うじてカタリナ・クリスが登場する70kg枠のみ。しかもスザンドラ・ディードリッヒは売り出し中の難敵である。
70kg超枠にはツアー常連のダリア・ポゴジャレッツを配したがここには同じ78kg級で銅メダルを獲得したばかりのルイーズ・マルツァーンがマッチアップ。得点を織り込むのは無理がある。57kg枠は「どちらも強くない」勝負ポイントだが、事前に勝利を予測できるほどの戦力差はなし。

普通に試合が進めばドイツの勝利は動かないところだが、ポーランドはドイツの防壁が薄くなる57kg枠でアレタ・ポドラックがヴィオラ・ベヒターを「指導2」対「指導3」の最小ポイント差で倒して1点獲得、後半2戦をじっと待つ。

70kg枠はカタリナ・クリスがスザンドラ・ディードリッヒから右大外刈から繋いだ右背負投で「有効」を奪って勝利。迎えた最終戦でダリア・ポゴジャレッツは「指導1」のリードを持ったまま終盤まで試合を持ち込むことに成功、焦ったルイーズ・マルツァーンが中途半端に仕掛けた右大外刈を返して「有効」を積み、そのまま試合終了。最終スコアは3-2、ポーランドはこれしかないという勝ち方でベスト4進出決定。ドイツは57kg枠で譲った、その時点では軽微に思われた「指導」ひとつの差で結果的には全てを失ってしまうこととなった。序盤の「流れを作る」段の危機管理を誤ることで流れを失う、これも非常に典型的な団体戦の失敗ケースであった。

日本 5-0 中国
[52kg級]中村美里〇優勢[指導1]△マー・インナン
[57kg級]山本杏〇合技[小内刈・縦四方固](3:24)△ヤン・リウ
[63kg級]田代未来○小外刈(2:34)△ヤン・ジュインシュア
[70kg級]ヌンイラ華蓮〇合技[大内刈・隅落]△ゾウ・チャオ
[70kg超級]山部佳苗〇不戦

初戦に続きまたしても中村だけが突出してハードルの高い相手。冬季欧州国際大会で大活躍し中村にも土をつけているマー・インナンがマッチアップ。
個人戦を見る限り非常に良い仕上がりにある中村、今回はマーのパワーをきちんとコントロール。良い形で得意の寝技に持ち込むがここでマーのパワーが存分に発揮される。中村はマーの掛け潰れを片手絞から横三角、相手に足を絡まれると腕を括って横四方固と粛々手順を進行して抑え込むが、マーは暴れて拘束をずらすと足を絡んで6秒で「待て」。中村再び足抜きを試み、返されるリスクを低く、抜く瞬間に足首で一旦相手の脚の内側を抑える丁寧な手順で縦四方固に抑え込むが、これもマーはブリッジで激しく暴れ、中村を上側に送り飛ばして2秒で「解けた」。

決めるべき寝技で2度取り逃した中村だがあくまで冷静。左小外刈に内股と粛々技を積み、個人戦同様握り込んだ引き手の袖を決して離さず、マーに組み手の「やり直し」をゆるさず攻めを積み続ける。残り28秒に「指導」ひとつを獲得して手堅く試合をまとめ、中村の「指導1」による優勢勝ちで日本は1点先制。

以後は力関係通りに日本が独走。山本杏が左背負投フェイント、さらにもう1回左背負投フェイントを重ねて左小内刈を閃かせるとヤン・リウは全く反応できずに「技有」。さらに山本は終盤戦でのリウの掛け潰れを逃さず縦四方固に抑え込み、合技の一本勝ちでこの試合を締める。
田代はワールドツアー常連のヤン・ジュインシュアを一蹴、2分30秒過ぎに左小外刈を仕掛けると両手のハンドル捌きの良く効いたこの技にヤンは驚くほど大きく吹っ飛び「一本」。ヌンイラ華蓮は大内刈「技有」に相手の右一本背負投を両手で首を抱いて切り返すパワフルな「技有」追加で合技の「一本」。大将戦は不戦で、日本女子は2試合を終えて通算10勝0敗。圧倒的なスコアで準決勝へと駒を進めることとなった。


モンゴル 3-2 韓国
[52kg級]ムンクバット・ウランツェツェグ〇優勢[指導3]△キム・ミリ
[57kg級]ドルジスレン・スミヤ△袈裟固(1:25)〇キム・ジャンディ
[63kg級]ツェデフスレン・ムンクザヤ〇優勢[指導2]△パク・ジユン
[70kg級]ツェンドアユシュ・ツェレンナミド〇反則(2:09)△キム・センヨン
[70kg超級]バトゥルガ・ムンクフツヤ△上四方固(1:29)〇キム・ミンジョン

57kg枠で韓国のキム・ミリがドルジスレン・スミヤを破る快挙。ドルジスレンがバランスを崩したところをここしかないとばかりに抑え込み、袈裟固で一本勝ちを果たす。

しかしこの頑張りはチームの勝利には繋がらなかった。ほぼ勝利間違いなしと思われた70kg枠で、キム・センヨンが組み手争いの際に相手の顔に手を当ててしまい、これを故意と判断した主審はキムのダイレクト反則負けを宣告。
キムは頽れて号泣。試合を見る限りでは単なるアクシデントにも思われたが、審判団にはアジア大会その他で「パンチ」を連発していた韓国女子チームに対する警戒感があったのか、この事態に厳格に対処した。いずれ韓国はこの時点で3点失点、トーナメント本戦からの脱落が決定した。

結果決まった準決勝カードは、

日本 - モンゴル
ポーランド - ロシア

の2戦となった。

[準々決勝結果]

ロシア 3-2 フランス
ポーランド 3-2 ドイツ
日本 5-0 中国
モンゴル 3-2 韓国

■ 敗者復活戦
ドイツ 3-2 フランス
[52kg級]マレーン・クラエー〇優勢[指導1]△アマンディーヌ・ブシャー
[57kg級]ミリアム・ローパー〇小外刈(1:53)△オトーヌ・パヴィア
[63kg級]マルチナ・トラジドス△GS有効・大外刈(GS2:46)〇クラリス・アグベニュー
[70kg級]スザンドラ・ディードリッヒ〇優勢[指導2]△ジブリス・エマヌ
[70kg超級]ヤスミン・クルブス△反則[指導4(3:07)]〇エミリー・アンドル

前戦のショックを引きずったか、優勝候補フランスが連敗。ドイツは勝負どころの52kg枠を小差でモノにすると、57kg枠でミリアム・ローパーがオトーヌ・パヴィアをハンドル操作の利いた左小外刈で思い切り転がし豪快な「一本」。あっという間に2点を先制する。

フランスは大黒柱の2014年度世界王者クラリス・アグベニューが強敵マルチナ・トラジドスを相手に1点を挙げるが、GS延長戦に縺れ込む大激戦、「揉めた」と評すべきこの戦いの末に流れを掴んだのは敗れた側のドイツ。続く70kg枠ではスザンドラ・ディードリッヒが個人戦王者のジブリス・エマヌから「指導2」を奪って優勢勝ち、この時点でチームの勝利を決めた。

フランスは前戦から引き続くチグハグさを最後まで払拭出来ず。一方伝統的に団体戦の得意なドイツ、前戦と打って変わった一体感は見事であった。

敗者復活戦もう1試合は韓国が中国を一蹴。前戦のダイレクト反則負けによりキム・センヨンが出場できなかった78kg枠以外の全ての試合を取り、4-1の圧勝で3位決定戦へと進むこととなった。

■ 準決勝
ポーランド 5-0 ロシア
[52kg級]カロリナ・ピンコフスカ〇優勢[技有・内股返]△ユリア・リツォヴァ
[57kg級]アレタ・ポドラック〇優勢[有効・背負投]△タチアナ・カゼニュク
[63kg級]アガタ・オズドバ〇袖釣込腰(2:27)△パリ・スラカトヴァ
[70kg級]カタリナ・クリス〇反則(3:30)△イリーナ・ガズィエワ
※「足取り」によるダイレクト反則負け
[70kg超級]ダリア・ポゴジャレッツ〇優勢[有効・一本背負投]△クセニア・チビソワ

前戦でドイツを破った勢いに乗り、ポーランドがロシアをも粉砕。あっという間の3連勝で試合を決めると、戦力拮抗の70kg枠ではカタリナ・クリスの右大外刈をイリーナ・ガズィエワが股に手を入れて防いでしまい、ダイレクト反則負けで勝負あり。必敗と目された70kg超枠でもダリア・ポゴジャレッツがクセニア・チビソワから左大外刈「有効」、右内股「有効」、左一本背負投「有効」と3ポイントを連取して勝利し、なんと5-0で決勝進出を決めることとなった。

日本 5-0 モンゴル
[52kg級]中村美里〇GS指導1(GS1:35)△ムンクバット・ウランツェツェグ
[57kg級]山本杏〇優勢[有効・小内刈]△ドルジスレン・スミヤ
[63kg級]田代未来○縦四方固(1:44)△ツェデフスレン・ムンクザヤ
[70kg級]新井千鶴〇内股(0:20)△ツェンドアユシュ・ツェレンナミド
[70kg超級]山部佳苗〇崩袈裟固(1:00)△バトゥルガ・ムンクフツヤ

優勝候補の日本、3試合目も困難なカードは前衛に集中。中村美里には13年リオ世界選手権48kg級王者のムンクバット・ウランツェトセグ、山本杏にはワールドマスターズ2連覇の実力者ドルジスレン・スミヤがマッチアップする。後ろ3枚の力関係を考えれば万が一連敗してもチームの勝ちは動かないはずだが、52kg級の世界王者として一階級下の選手に負けるわけにはいかない中村、同階級の松本薫が圧倒的な内容で個人戦を制してもう誰にも負けている暇がない山本、いずれも譲れないバックグランドを抱えている。

中村-ムンクバット戦はムンクバットが中村を格上と規定し、両袖を絞り、左右の低い袖釣込腰に巴投という厄介な構成で手数を取りに来る。中村は得意の足技でその出足を止め、さらに2分過ぎには左体落で足を継いでおいての左背負投という良い連繋も見せて展開を譲らず。2分57秒、ムンクバットの前技フェイントを中村谷落で畳に叩き落とすがこれは「有効」宣告ののち取り消し。勝敗の行方はGS延長戦に持ち込まれる。
ムンクバットは手数志向をさらに加速させ、左袖を両手で握る右袖釣込腰という「投げることは出来ないが、掛けられる」組成の崩し技を連発する。しかし中村慌てず背筋を伸ばして技を撃ち返し、GS1分35秒に鋭い左小内刈。後方に崩されたムンクバット片手の背負投を偽装して反転、なんとか逃れたかに思われたが主審的確に偽装攻撃の反則を宣告。「指導1」で中村の勝利が決まった。

山本-ドルジスレン戦は前2戦に引き続き山本が素晴らしい体のキレを見せ、序盤は快走。鋭い左背負投と左小内刈を連発し、ドルジスレンはそのスピードについていけない。2分45秒には反転の切れ味だけで相手を吹き飛ばす感ありの左小内刈で「有効」。しかしドルジスレンの圧が効いたか突然疲労が襲来し、残り1分から「指導」3つを立て続けに失ってしまう。しかしなんとかタイムアップまで耐え、結果は「有効」による優勢で山本の勝利。

このおぜん立てを受けた後衛3名は快勝続き。田代はツェデフスレン・ムンクザヤを左大外刈で引き倒して「有効」を奪うと、右腕を固めて相手の体の右側に降りる変則の縦四方固(所謂「シバロック」)で「一本」、前戦でベンチを温めた新井千鶴も僅か20秒の内股「一本」、山部佳苗もファーストアタックの右大外刈「有効」からの袈裟固「一本」と3戦連続の一本勝ち。苦戦を勝ち抜いた前衛2試合、快勝の後衛3試合と合わせてこの試合も5-0。強さに試合の巧さ、使命感の高さと、日本の試合ぶりはまさに別格。余裕を持って決勝へと駒を進めることとなった。

■ 3位決定戦
ドイツ 3-2 モンゴル
[52kg級]マレーン・クラエー〇払腰(0:42)△ムンクバット・ウランツェツェグ
[57kg級]ミリアム・ローパー△優勢[指導1]〇ドルジスレン・スミヤ
[63kg級]マルチナ・トラジドス△一本背負投(0:26)〇ツェデフスレン・ムンクザヤ
[70kg級]スザンドラ・ディードリッヒ〇浮落(3:53)△ツェンド アユシュ・ツェレンナドミド
[70kg超級]ルイーズ・マルツァーン〇腕挫十字固(3:00)△オドクー・ジャブズマー

マレーン・クラエーがムンクバット・ウランツェツェグを豪快な払腰「一本」で破った先鋒戦のインパクトが最後まで効いた試合。モンゴルは63kg枠でツェデフスレン・ムンクザヤがマルチナ・トラジドスを一本背負投「一本」に屠り去る殊勲を演じたが、2-2のタイスコアで迎えた3位決定戦ではルイーズ・マルツァーンが体格差をものともせず、オドクー・ジャブズマーの背後から腕を確保し、腕挫十字固「一本」。劇的勝利でドイツが銅メダル獲得を決めた。

ロシア 3-2 韓国
[52kg級]ユリア・リツォヴァ〇合技[大腰・崩上四方固](3:36)△キム・ミリ
[57kg級]イリーナ・ザブルディナ△優勢[有効・大腰]〇キム・ジャンディ
[63kg級]エカテリーナ・バルコワ〇腕挫十字固(0:39)△バク・ジユン
[70kg級]イアナ・クリユコワ〇不戦△
[70kg超級]アレクサンドラ・バビンチェワ△払巻込(2:59)〇キム・ミンジョン

70kg枠に代替選手を補充出来ない韓国は少しでも早く点を積み上げたいところだが、ロシアは52kg枠でユリア・リツォヴァが合技、63kg枠でエカテリーナ・バルコワが腕挫十字固と「一本」を連発してその意図を弾き返し続ける。70kg枠でイアナ・クリユコワの不戦勝ちが宣せられた時点で試合は決着、ロシアは準決勝で意外な敗退もなんとか3位を確保した。

■ 決勝
日本 5-0 ポーランド
[52kg級]中村美里〇横四方固(2:59)△カロリナ・ピエンコウスカ
[57kg級]山本杏〇腕挫十字固(3:16)△アルレタ・ポドラック
[63kg級]田代未来〇後袈裟固(0:59)△アンナ・ボロウスカ
[70kg級]新井千鶴〇優勢[指導1]△カタリナ・クリス
[70kg超級]山部佳苗〇払腰(0:25)△ダリア・ポゴジャレッツ

決勝も日本が圧勝。52kg枠では中村美里が開始早々カロリナ・ピエンコウスカの巴投に大きく崩されるが、再びの巴投を待ち構えて横四方固に捉え「有効」を先取。さらに左小外刈を当てて崩しておいての浮落「有効」、右袖釣込腰「有効」とポイント大量奪取の末に横四方固で一本勝ち。

前戦までの勢いを畳に持ち込みたいポーランドであったが、単に「一本」を取られるよりも、このポイント大量失陥はダメージが大きかったという印象。ポーランド陣営に苦しい雰囲気漂う中、57kg枠では山本杏が得意の小内刈に寝技と自在に試合を展開、終盤、アルレタ・ポドラックの右小内刈を出足払で切り返して鮮やかな「有効」獲得。間を置かずに寝技に繋いで腕挫十字固で一本勝ち。

これに勝てば優勝決定という第3試合では田代未来が開始14秒に左内股を撃ち込み「有効」を先制。そのまま後袈裟固に抑え込むとアンナ・ボロウスカは捉えられた手を引き抜こうと必死の抵抗を試みるが、田代動ぜずそのまま「一本」。日本、3連勝で早くもこの時点で優勝を決めた。

金メダル獲得を決めた日本、もはや残る課題は全試合5-0勝利という偉業への挑戦のみ。

70kg枠の新井千鶴はポーランドの5人の中でもっとも手ごわいカタリナ・クリスとの対戦。開始早々に決めた大内刈「有効」は取り消しとなったが、残り50秒から見せた連続攻撃が功を奏し3分29秒相手に「指導1」。このポイントひとつを以て勝利を決めた。

70kg超枠は据え物斬り。山部佳苗があっという間の右払腰でダリア・ポゴジャレッツを宙を舞わせ文句なしの「一本」。

日本はこの試合も5-0で勝利。全試合5-0という記録的なスコアで優勝を決めた。

ライバルのフランスが早々に敗れた運の良さもあったが、日本の勝因は何と言っても各人に染みた責任感。特に厳しい相手とマッチアップし続けた52kg枠の中村の奮闘はMVPものであった。

決勝で対戦したポーランドはこれぞ団体戦という覚悟ある試合ぶりで決勝まで進出して来たが、日本戦に関しては、誤解を怖れずに言えば、戦力差以上に「自分たちがなぜ勝利したか」の所以を理解出来ていなかったという印象であった。というよりも、長年国内で団体戦を戦い、あるいは見ることで「勝負の法則」の妙を知り尽くし、練れた知見を持つ日本の選手たちに、まさにその点が争点となる「番狂わせ戦」を挑むのは無理がある。戦力差と掛け算すれば、これは大人と子供の戦いであった。

接戦であればこそ決して譲らず1点を積み上げる。国内の団体戦文化に育まれた日本選手の責任感と使命感が他国を圧した、快勝劇であった。

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