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ユーが圧倒的スペック見せて初優勝、田知本愛は「本気のオルティス」破る殊勲で銀メダル獲得・アスタナ世界選手権78kg超級レポート

(2015年8月30日)

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。
ユーが圧倒的スペック見せて初優勝、田知本愛は「本気のオルティス」破る殊勲で銀メダル獲得
アスタナ世界選手権78kg超級レポート
【成績上位者】 エントリー34名
1.YU, Song(CHN)
2.TACHIMOTO, Megumi(JPN)
3.ORTIZ, Idalys(CUB)
3.YAMABE, Kanae(JPN)
5.CHIBISOVA, Ksenia(RUS)
5.MA, Sisi(CHN)
7.KONITZ, Franziska(GER)
7.ZAMBOTTI, Vanessa(MEX)

決勝に進んだのは圧倒的な内容で勝ち進んだ第1シード配置のユー・ソン(中国)とトーナメント最大の激戦ブロックを勝ち上がった田知本愛。

ワールドマスターズ2連覇を果たしたばかりの本命・ユーは2回戦から登場。まずベテランの実力者ベルキスゼラ・カヤ(トルコ)を問題にせず左大外刈「技有」、左内股「有効」と連取し、袈裟固で抑え込む。カヤの「参った」表明で一本勝ち(3:47)を決めると、3回戦はラリッサ・セリック((ボスニア・ヘルツェゴビナ)から隅落「技有」で勝利。準々決勝は山部佳苗と対戦、山部の右大内刈と自身の左小外掛の崩し合いを右外巻込で強引に収拾、抱えた腕を離さず袈裟固に抑え切って一本勝ち(2:35)、準決勝は国内で五輪代表を激しく争う立場のマー・スースー(中国)を右大内刈「有効」で下して決勝進出決定。相手を1度も投げずに12個の「指導」を積んで勝利したワールドマスターズとは全く違う、仕掛けて投げるユー本来の柔道を披露し余裕を持って決勝に進出した。

一方の田知本は初戦からエミリー・アンドル(フランス)とマッチアップするという大変な組み合わせだったが、この難敵を払腰「一本」で一蹴。3回戦はキム・ミンジョン(韓国)に「指導2」対「指導3」の反則累積差で競り勝つと、大一番のイダリス・オルティス(キューバ)戦は大熱戦の末にGS延長戦「指導3」で勝利、オルティスの世界大会4連覇の夢を阻む。準決勝はこの日絶好調のクセニア・チビソワ(ロシア)の圧力に手を焼いたがGS延長戦の大内刈「有効」で勝ち抜け、キャリア初の世界選手権決勝進出を果たす。

決勝は頭ひとつ大きいユーが、釣り手を掴む動作を投げの軌道内に組み込む右払腰、さらに柔道衣を田知本の頭に被せてしまう圧力で展開をリード。しかし田知本は歯ぎしりするようなこの状況に過剰反応せず足技と丁寧な組み手で形を直し続け、57秒には大型選手を投げる技の典型である斜めから崩しての左内股を見せる。

しかしユーは具体的な技を以て主導権の委譲を峻拒、奥襟を叩きながらの右払腰に同じく奥襟を叩きながらの右小外刈で山場を作り「指導」2つをリード。田知本の抵抗も主審にアドバンテージを認めさせるところまでは至らず、そのままユーの優勢勝ちが決まった。

ユーは来年に五輪を控え、どうやら大本命に挙げて良いだけの完成度の高さをみせつつある。マー・スースーと並べた2枚看板は豪華そのもの、中国はトウブン(トン・ウェン)後に焼け野原と言って良い状況であった伝統の重量級を7年かけて完全に立ち直らせたと言える。

敗れた田知本だが、こちらも大いに評価されるべき。準々決勝で下したオルティスは過去の優勝時なみ、いやそれ以上の仕上がりの良さを見せており、敗者復活戦でフランジスカ・コニッツ(ドイツ)を秒殺した豪快な裏投、3位決定戦で見せたマー・スースー(中国)に放った「やぐら投げ」などは鳥肌ものであった。2012年以来ハイコンディション期のオルティスを倒した選手はおそらく田知本が初めて。手応えを得た大会と思われる。

ユー、オルティス、田知本以外で目立っていた選手はクセニワ・チビソワ。準々決勝でフランジスカ・コニッツ(ドイツ)に決めて見せた支釣込足「一本」、そして田知本を苦しめた準決勝の出来は見事であった。

マリア・スエレン・アルセマム(ブラジル)はキム・ミンジョンとの初戦で古傷の足首を負傷。棄権負けで大会をさった。

山部佳苗は3位入賞も、メンタルの波の激しい山部の今大会で出た目はコインの「裏」。煮え切れないパフォーマンスで本戦を終え、敗者復活戦以降に立ち直るという道筋は個人戦で全く力を出せず団体戦の頑張りでなんとか次への道を繋いだ昨年大会と相似。客観的には評価しにくい戦いぶりだった。

【準々決勝】

ユー・ソン(中国)○袈裟固(2:35)△山部佳苗(日本)
マー・スースー(中国)○払巻込(2:13)△ヴァネッサ・ザンポッティ(メキシコ)
田知本愛(日本)○GS優勢[指導3](GS1:31)△イダリィス・オルティス(キューバ)
クセニア・チビソワ(ロシア)○支釣込足(3:32)△フランジスカ・コニッツ(ドイツ)

【敗者復活戦】

山部佳苗(日本)○優勢[指導3]△ヴァネッサ・ザンポッティ(メキシコ)
イダリィス・オルティス(キューバ)○裏投(0:26)△フランジスカ・コニッツ(ドイツ)

【準決勝】

ユー・ソン(中国)○優勢[有効・大内刈]△マー・スースー(中国)
田知本愛(日本)○GS優勢[有効・大内刈](GS0:15)△クセニア・チビソワ(ロシア)

【3位決定戦】

山部佳苗(日本)○横四方固(1:36)△クセニア・チビソワ(ロシア)
イダリィス・オルティス(キューバ)○縦四方固(1:01)△マー・スースー(中国)

【決勝】

ユー・ソン(中国)○優勢[指導2]△田知本愛(日本)

【日本代表選手結果】

田知本愛(ALSOK):2位
山部佳苗(ミキハウス):3位

【日本代表選手勝ち上がり】

[2回戦]

田知本愛〇払腰(1:17)△エミリー・アンドル(フランス)

ケンカ四つ。得意の両襟を握った払腰で「一本」。

山部佳苗〇払腰(2:15)△マリナ・スルツカヤ(ベラルーシ)

右相四つ。じっくり「指導3」まで状況を積み右払腰「一本」。

[3回戦]

山部佳苗〇優勢[指導2]△ヤスミン・クルブス(ドイツ)

クルブスに消極的「指導」、その後膠着し双方に「指導」。
大枠押し引きを繰り返すのみで、山部は懐に入っていけない。そのままタイムアップ。トップ選手の「度胸」を測る水準点とも言えるクルブス相手に煮え切らない試合で、山部の今後に不安漂う。

田知本愛〇優勢[指導3]△キム・ミンジョン(韓国)

左相四つ。キムは両手をスイングさせるように交互に叩き入れてくる。田知本負けじと応じるが双方結果的に組めず、15秒両者に「取り組まない」判断による「指導」。続くシークエンスは脚を蹴り合う牽制の応酬となり1分33秒双方に「指導2」。

田知本大内刈に支釣込足で良い攻めも見せるが、キムは片襟の左背負投に潰れて田知本の優位シークエンスを単発に収め続ける。3分を過ぎたところで田知本は支釣込足フェイントの大内刈、これは返され掛かったが怖じずに今度は支釣込足で攻め、残り29秒でキムに「指導3」。田知本、支釣込足でキムを蹴り伏せさせると「腰絞め」。絞めたまま時間が過ぎ去り、キムが耐えたまま終了ブザー。「指導3」対「指導2」で田知本勝利も、コーチングボックスの塚田真希コーチは明らかに不満の表情。

[準々決勝]

山部佳苗△崩袈裟固(2:35)〇ユー・ソン(中国)

右相四つ、山部両襟を掴んでジリジリ前に出、ユーの腕を抱えた巻き込み動作も回転させずに押しとどめる。1分30秒過ぎに山部が大内刈を放つが、そこからユーは釣り手で奥襟を確保してひたすらジワリと圧力を掛ける。長く静かな組み合いが続き、山部の頭が下がり始める。この間の技はユーがユラリと作用足を差し込んだ内股動作ひとつだったが、審判敢えて差をつけるならば、という体で山部に「指導1」を宣告。

山部、右大内刈の動作。ユーは左小外掛で切り返すが山部胸を合わせて押し返す。しかし崩れたユーは膝を着きながら山部の釣り手を抱え込み、右外巻込。そのまま腕を抱えて圧し掛かり抑え込む。山部動けず「一本」。

田知本愛〇GS指導3(GS1:31)△イダリス・オルティス(キューバ)

ケンカ四つ。オルティス新技投入、肘抜きの左背負投。田知本ぶらさがって耐え、オルティスが振り向くとハシゴを外された形で畳に伏せてしまう。主審はこれに偽装攻撃の「指導」を宣告、31秒。

歯ぎしりするように静かな足の蹴り合いが続き、1分4秒双方に「指導」。互いに足技の蹴り合いが続くが、田知本は後ろに体重を置きながら自分を回転軸に反時計回りにオルティスを振り回す面白い試み。360度回ったという印象のこの動きから前に出るとオルティスが畳を割り、場外の「指導」を受ける。これでスコアはタイ。以降はオルティスが大外刈からの左一本背負投、田知本が支釣込足と大外刈のフェイントと出し合い静かな競り合いの中本戦4分が終了、試合はGS延長戦へ。

ペースを上げたオルティスは片手の支釣込足に探りの大外刈、座り込みの左一本背負投と軽い技で手数の弾幕を張る。田知本ジワリと出て左大外刈、そしてついにこの試合初めての左払腰を放って対抗。田知本が両襟を確保で圧を掛けることが2度続いた1分31秒、オルティス座り込みの左背負投に潰れるがほとんど両手を離してしまう。これに偽装攻撃の「指導」が宣告されて熱戦に幕。オルティス3連覇の夢潰える。

[敗者復活戦]

山部佳苗〇優勢[指導3]△ヴァネッサ・ザンポッティ(メキシコ)

ケンカ四つ。ザンボッティは袖を絞り、掛け潰れて決着を先送りすることに腐心。1分1秒に「指導1」、1分28秒に片手による「指導2」、完全に両手を離して潰れた1分48秒に「指導3」とあっと言う間に反則が積み重なる。しかし主審はここからザンポッティの反則を一切取らず。山部は釣り手を立てて前進するが技を仕掛ければ先に潰れ、組めば両手を離して座り込むザンポッティとは全く柔道が成立せず。後半は「この審判は反則を取らない」とばかりにザンボッティの掛け潰れは加速。早い段階でのザンボッティの反則負けが妥当な試合であったが、結果は「指導3」の優勢に留まる。

[準決勝]


田知本愛〇GS有効・大内刈(GS0:15)△クセニア・チビソワ(ロシア)

本日絶好調のチビソワとマッチアップ。
左相四つ。チビソワ長身を利してクロス、奥襟と叩きまくり田知本は苦戦。奥襟の圧から支釣込足と食って頭が下がった33秒田知本に「指導1」。

田知本大枠の苦戦の中も1分33秒から山場を続ける。引き手で袖を抑えることに成功して支釣込足で相手を潰すと、続くシークエンスでは奥襟を持ち、持つなり左大外刈。高く脚を抜き上げて決めに掛かるが、長身の相手の上体まで拘束が届かずチビソワまず膝から落ち、次いで反転して落下「待て」。田知本がさらに支釣込足を積んだ2分13秒チビソワに「指導1」。スコアはタイとなる。

田知本駆け引きを最小限に、両手を出して引き手と襟を同時確保に掛かる。これは効果的だったがやり取りの中でチビソワと高い位置を持ちあう展開となり、首が抜けてしまう。チビソワのクロス狙いと「首抜き」いずれか微妙なところだったが、すぐに技を仕掛けねば反則の可能性アリと踏んだ田知本は大外刈に打って出て展開を切る。しかし主審は田知本に首抜きの「指導」を宣告。残り時間は1分18秒のみ、田知本苦しいところ。

田知本前に出て両襟の大外刈、これは手が離れてみずから前に倒れ込んでしまったは続いて左大内刈で崩し落とし、両襟の支釣込足でさらにもう崩す。ようやく疲れの見え始めたチビソワに主審が「指導2」を宣告してスコアはタイ、残り時間は33秒。

疲労したチビソワだが、再びガッチリ奥襟を叩いて圧力。頭を下げられた田知本はしかし下を向かされたまま大内刈と支釣込足で前進、10秒近くを使ってついに顔を上げることに成功。チビソワ圧力を掛ける「絵」による「指導」奪取をあきらめてクロス組み手の大外刈、これに田知本が崩れ、横変形に組み直して逆襲の支釣込足を放ったところで4分間が終了。試合はGS延長戦へ。

田知本、引き手で襟を高く握り、次いで釣り手を奥襟に叩き込みながらの左大内刈。見事決まって「有効」で熱戦決着。大枠の不利を粘り強く押し返し、ついに投げるに至った田知本の精神力は見事。

[3位決定戦]

山部佳苗〇横四方固(1:36)クセニア・チビソワ(ロシア)

田知本と大熱戦を演じたチビソワとマッチアップ。
山部が右、チビソワ左組みのケンカ四つ。49秒、チビソワが前技を狙って腰を切った瞬間山部の小外刈が閃く。真下に滑らせ落として「有効」。

続く展開、チビソワが後方に重心を置いてぶらさがるような支釣込足。山部押し込んで潰すと腕を確保、腕緘を晒しながら胸を合わせて横四方固「一本」。山部は銅メダルを確保する。

[決勝]

田知本愛△優勢[指導2]〇ユー・ソン(中国)

田知本が左、ユーが右組みのケンカ四つ。ユーは頭も腰も田知本より一段高い位置にある巨人。
今大会体が良く動くユーは組みつく行動に回転を入れた右払腰、さらに内股と積極姿勢。圧力で頭を下げられ、柔道衣を頭に被さられた田知本は慌てては全てを失うとばかりに我慢しながら出足払で粘り強く攻め返す。

続く展開、普段は両襟志向の田知本見事な動作で先に袖を掴む。これで手順のイニシアチブを握り、結果 良い角度で両襟を確保。ユーがいなすも妥協せずに持つ続け、57秒左内股。ステップ鋭く、相手の上背と体重を食わぬよう外側から回し込んだこの一撃にユーは大きく崩れる。田知本の巨人打倒に、具体的な道筋が見えた瞬間。

ユーは釣り手を入れながらの右小外刈に、同じく組みつく動作と掛けを同時に行う右払腰。圧力だけでなく極めてまっとうに「投げに来る」ユーに対して田知本はまず相手の右を抱え込むような左払腰を一発仕掛けて、主導権の委譲を拒む。田知本が袖を確保するとユー明らかに嫌って切り離し、試合は拮抗。

主審が試合に差をつけたくなる残り1分30秒を過ぎたところで、引き手で襟を掴んだユーが釣り手の「手四つ」から抜け出して奥襟を叩きながらの右払腰。さらに一旦話した釣り手を再び叩き入れながらの右小外刈。この連続攻撃により田知本に「指導」が宣告される。経過時間は2分35秒。さらに2分53秒、田知本に2つ目の「指導」。

田知本奮起して前に出るが、ユーは奥襟を叩いてクロスへの移行を晒し、田知本の反則を誘いながら時間を使う。田知本釣り手を大きく挙げての内股巻込は潰れてしまい、続いて引き手の袖を確保するもユー素早く切り離し、反時計回りに体を捌いてリセット。最後は前に出る田知本を手を握り合わせてストップを掛け、終了ブザーが鳴り響く。ワールドマスターズで2回優勝のユー、初の世界選手権制覇達成。

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。

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