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リネールが「100-0」志向あくまで緩めず7連覇達成、七戸龍は2大会連続の銀メダル・アスタナ世界選手権100kg超級レポート

(2015年8月30日)

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。
リネールが「100-0」志向あくまで緩めず7連覇達成、七戸龍は2大会連続の銀メダル
アスタナ世界選手権100kg超級レポート
【成績上位者】 エントリー42名
1.RINER, Teddy(FRA)
2.SHICHINOHE, Ryu(JPN)
3.KHAMMO, Iakiv(UKR)
3.OKRUASHVILI, Adam(GEO)
5.BREITBARTH, Andre(GER)
5.KIM, Sung-Min(KOR)
7.BOR, Barna(HUN)
7.HEINLE, Sven(GER)

絶対王者テディ・リネール(フランス)が余裕を持って世界選手権100kg超級7連覇達成。

2回戦は右相四つのユーハン・メティス(エルトニア)から「指導」2つを積んだ末に右払巻込「一本」(4:15)、3回戦はツアーの強豪、ケンカ四つのユーリ・クラコベツキー(キルギスタン)から引込返「技有」、右大外刈「一本」(2:43)と連取して快勝。準々決勝は右相四つのアンドレ・ブライドバルト(ドイツ)から右内股で「技有」奪取、さらに抑え込みながら中途で相手の肘関節を極めて腕挫手固「一本」(1:51)で勝利、準決勝はこれも右相四つ、北京-ロンドン期からの生き残りのキム・スンミン(韓国)との試合をもはや楽しむかのように開始20秒の引込返「技有」、そのまま抑え込んでの横四方固「有効」、さらに3分46秒に再び引込返「技有」を奪って合技の一本勝ち。

迎えた決勝の相手は、昨年唯一苦戦を強いられた七戸龍。七戸は2回戦でダビド・モウラ(ブラジル)に「指導1」優勢、3回戦のダニエル・アレストルフェル(オーストリア)は右内股「有効」による勝利と序盤は手堅さ優先の慎重な立ち上がりだったが、準々決勝ではこの日絶好調のイアキフ・カモー(ウクライナ)を素晴らしい大外刈「一本」(1:28)に下し、準決勝ではこれもこの日出色の出来を見せたアダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)を横四方固「一本」(5:00)に下す素晴らしい出来。満を持してリネールとの対決に挑む。

七戸はこれまでと組み手の構成を少々変え、リネールが初動を起こす制空圏外から一呼吸で「一気に二本持つ」強気の組み手を敢行。左構えからまず引き手で襟を抑える手堅い組み立ても混ぜ込んだこの「先に組む」戦術はどうやら嵌ったが、リネールは「どんな組み手でも一回切って自分の形に塗りつぶす」良い意味での思考停止で試合を平常運航に持ち込む。結果形はリネールが釣り手で奥、引き手で袖を掴む一方的な形に収束。リネールは掴んだ袖を相手の腹側に織り込み奥襟で圧を掛け、相手が前屈するところまで組み手の占有率を上げると反時計回りの浮技。座り込みながら仕掛けたこの技に七戸転がり「技有」。

七戸は度々引き手で袖を確保し少々意外なほどに良い形を作り出すがリネールはことごとく切って塗りつぶし、自分が持ち、相手には持たせない「100-0」の組み手にあくまで拘る。失点につながる僅かな可能性すら残さないこの徹底ぶりは最後まで続き、残り30秒には再び七戸の右袖を腹側に織り込む「100-0」現出。七戸を前屈させるところまで圧し掛かり、攻防切れたと思われたタイミングから再びの浮技「有効」。以後は七戸の突進に取り合わずそのまま「技有」優勢で勝利を決めた。

リネール自身が引込返、浮技とデビュー時を彷彿とさせる捨身技を多く投入したこと。ケンカ四つの試合が1試合しかなく、かつその相手が力の差があるクラコベツキであったことでリネールのケンカ四つに対する戦い方のデータが得られなかったこと、七戸龍にリネールが最も嫌うはずの「釣り手の袖を先んじて掴まれること」を意外なほどの回数許したこと、などの注目ポイントはあったが、大枠リネールはこれまでのやり方通りに圧勝。全試合通じて「自分も有利だが、相手もそこそこ戦える」持ち合いを受け入れる場面はほとんど全くなく、自分だけが有利で相手は全く柔道が出来ない「100-0」を目指す臆病さは健在、どころかますますその特徴は色濃くなっている印象。隙を探すことが難しい大会であった。

七戸は敗れたが健闘、情報の少なさと一種の噛み合わなさを利用して善戦した昨年の対戦、リネールのシナリオに1から10まで付き合わされて一発投げられたワールドマスターズの対戦に比べると取り組んでリネールと肉体的会話をかわす時間自体は長くなっており、むしろもっとも「やれた」対戦であった。リネール打倒のため周囲の目線が高くなっている感があるが、北京-ロンドン期にどうしても届かなかったリネールの「次点」の座を確たるものにしていることは注目に値するかと思われる。敗れたりとはいえ一定以上の成果のあった大会であった。

リネールと七戸以外で目立っていた選手はオクルアシビリ、キム・スンミン、カモーの3人。

オクルアシビリは欧州競技大会で見せた復活劇が納得できる好コンディション。かつて唯一最大の武器であった裏投ではなく、今回の主戦武器は新兵器の外巻込。組み手争いの段階の遠間で袖を掴み、ほとんど手首と言える浅い位置で相手の腕を抱え込み、体を捨ててからの回転を半回転増やすことで自分の丸い体に引き寄せて投げ切る、それも左右どちらからでも掛ける、というなかなかに面白い技。手堅さが売りで柔道の面白みには欠けるライバル・シウバが欠場する中で、役者としての絶対値の高さを見せた大会だった。今回は3位入賞を果たしし、追い上げて来ていた後輩マティアシビリとの序列の差はほぼ確定、五輪代表は間違いなくこの人だ。

キムは加齢による体力低下と柔道のスタイルの古さでここ2年はシーンに置いて行かれている感があったが、今大会は非常に元気。オール・サッソン(イスラエル)を右外巻込「有効」と崩袈裟固「一本」、ダニエル・ナテア(ルーマニア)を谷落「一本」、そしてバルナ・ボール(ハンガリー)を小内刈「技有」と横四方固での「参った」奪取による「一本」と中堅以上のバタバタと斬り伏せベスト4入り。結果は5位であったが、まだまだ堂々上位を争う力があることを証明してみせた。年齢を考えるとおそらくワールドツアーでは今後も成績の波が相当あるのではないかと思うが、一発勝負の五輪にコンディションを合わせてくれば表彰台以上は十分狙える力がある。落ちるところまで落ちた経験ゆえか、試合内容からは、かつてこの人には薄かった技術獲得への意欲も見え隠れする。警戒怠るべからず。

5月のグランプリ・ザグレブを制して注目されていたカモーは昨年の世界ジュニアに3位入賞したばかりの21歳。今大会は2回戦でレナト・サイドフ(ロシア)を「技有」優勢で食い、大ベテランでメダル奪取の野望に燃えるアブドゥロ・タングリエフ(ウズベキスタン)を「指導4」の反則で潰し、3位決定戦ではキム・スンミンの巨体をあっという間の裏投で叩き付け「一本」奪取、観衆の度肝を抜いた。準決勝で七戸に喫した負けっぷりの良さはキャリア相応の若さを感じさせたが、少なくとも間違いなくツアーの主役になりうる選手。ウクライナの稽古環境を考えると今後もワールドツアー皆勤の可能性が高く、目を離してはならない選手だ。

準々決勝以降の結果と、七戸の全試合の経過詳細は下記。

【準々決勝】

テディ・リネール(フランス)○腕挫手固(1:51)△アンドレ・ブライドバルト(ドイツ)
キム・スンミン(韓国)○横四方固(2:44)△バルナ・ボール(ハンガリー)
アダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)○裏投(3:41)△スヴェン・ハインル(ドイツ)
七戸龍○大外刈(1:28)△イアキフ・カモー(ウクライナ)

【敗者復活戦】

アンドレ・ブライドバルト(ドイツ)○棄権△バルナ・ボール(ハンガリー)
イアキフ・カモー(ウクライナ)○浮落(4:50)△スヴェン・ハインル(ドイツ)

【準決勝】

テディ・リネール(フランス)○合技[引込返・引込返](3:46)△キム・スンミン(韓国)
七戸龍○横四方固(5:00)△アダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)

【3位決定戦】

アダム・オクルアシヴィリ(ジョージア)○優勢[技有・内股]△アンドレ・ブライドバルト(ドイツ)
イアキフ・カモー(ウクライナ)○裏投(0:40)△キム・スンミン(韓国)

【決勝】

テディ・リネール(フランス)○優勢[技有・浮技]△七戸龍


【日本代表選手結果】

七戸龍(九州電力)
成績:2位

【日本代表選手勝ち上がり】

[2回戦]

七戸龍〇優勢[指導2]△ダビド・モウラ(ブラジル)

ケンカ四つ。モウラは釣り手で肩裏、あるいは腰裏を掴んで崩しに掛かる。34秒モウラに片手の「指導」。
七戸は両襟を掴んで相手を引き出し戻す大内刈、釣り手を首裏に当てての右大内刈で攻めるが獲り切れず。2分30秒には引き手で脇を差しての支釣込足と面白いアイデアも見せるがなかなか具体的なポイントに繋がらない。残り1分を過ぎてからモウラは「巴十字」さらに横巴投と取り味のある攻めを繰り出すが七戸崩れず、タイムアップ。

[3回戦]

七戸龍〇優勢[有効・内股]△ダニエル・アレストファレル(オーストリア)

開始40秒、引きずり出して振り回す七戸得意の右内股。腰のあたりを支点にアレストファレルはクルリと回転「有効」。以後も七戸は良く攻め、消極の「指導」、場外の「指導2」と連取。残り1分から技が止まって「指導」ひとつを受けるが大過なく終戦。

[準々決勝]

七戸龍〇大外刈(1:28)△イアキム・カモー(ウクライナ)

ケンカ四つ。カモー両襟を掴んでくるが七戸切るなりしっかり引き手の袖を確保、すかさず釣り手で奥襟を叩いて右内股と良いペースで攻める。カモーが引き手を持ちたがらない構図の中。釣り手を高く保ち続けて絵面は常に七戸優位。1分7秒カモーに片手の咎で「指導」。

カモーは打開を狙いいくつか手を打つ。背中を掴んでの抱きかかえは七戸がバックステップで間合いを取り袖を抑えて回避、片襟の右背負投は七戸グイと引き戻して効かせず。

1分28秒七戸遠間から踏み込み、長い脚を伸ばして右大外刈。僅かにケンケンを踏んで位置を変え、拘束を強めると豪快に刈り込んで「一本」。

[準決勝]

七戸龍〇横四方固(5:00))△アダム・オクルアシビリ(ジョージア)

七戸右、両方で組むオクルアシビリは左構えで試合をスタート。オクルアシビリは今大会勝ち上がりの因である「手首を脇で抱え込んでの外巻込」を狙って浅い位置で七戸の右を抱えて反転、突き飛ばした七戸が左引き手で襟を持つと今はその左手首を抱えて再度の反転。新スタイルで七戸に立ち向かう。

オクルアシビリが両袖で前進、1分13秒双方に「指導1」。七戸ここから引き手で袖、切られると襟を握って積極的前進、釣り手を振り立てながらの右大内刈で攻める。この前進にオクルアシビリ左釣り手を突っ張って耐え、直後の2分5秒、オクルアシビリに「指導2」。ここからが大事とばかりに七戸は右大内刈で攻勢継続、抗したオクルアシビリは左で片襟を差して上下にあおり、相手の裏側に左大外刈で乗り込むというこれもこれまでのこの人には珍しい攻めを見せる。

オクルアシビリは右手首を抱え込んでの外巻込、七戸は出足払の牽制を交えながら攻め合う。組み手の切り合いに展開が収束した3分29秒主審は双方への「指導」を宣告。反則累積はオクルアシビリが「3」、七戸が「1」。

残り36秒、オクルアシビリは本来のスタイルである脇を差しての裏側への進出を試みる。これは予測済みの七戸はバックステップで間合いを確保、相手をはたき込んで攻防を切る。

残り時間僅かとなったところでオクルアシビリは相手の背を抱えて体を捨てに掛かる。七戸身を翻してこれを透かし、崩れた相手に被さって横四方固。もはや逆転の望みのないオクルアシビリは「参った」。

[決勝]

七戸龍△優勢[技有・浮技]△テディ・リネール

右相四つ。七戸試合が始まるなりひと呼吸で引き手で袖、釣り手で奥襟を確保。リネール全て切り離し、再び離れたところから試合再開。

リネール引き手で襟を掴むが七戸巧みに流し、引き手で袖をキャッチ。良い形だがリネール顔に手が当たったとアピール、「待て」を貰って試合を切る。経過時間33秒。

七戸はどうやらリネールの組み手構成に対策がある模様、度々、引き手で袖を掴む。一方のリネールはもっとも嫌いな「釣り手の袖を抑えられる」形の頻発を、全て切って組み直し無理やり自分の形に持ち込むという強引なやり方で塗りつぶす。出来上がった「袖と奥襟」の形から七戸の釣り手を切り、袖を腹側に押し込んでさらに一段占有率を上げると、座り込んで反時計回りの浮技。組み手で動きを封じられていた七戸残せず転がり「技有」、1分14秒

続くシークエンスも七戸は一呼吸で一気に袖と奥襟を「掴めてしまう」。おそらくはリネールがその生命線である引き手による袖確保にアクションを起こす、その制空圏の外から一間で飛び込むこの狙いは一定以上の成功をおさめている模様。左構えからまず襟、続いて袖と持ち替える丁寧な手順も交えて七戸の袖確保は頻発。リネールは切ってやり直す塗りつぶしで対応し、2分過ぎには3度に渡る切り離しを試みる徹底ぶり。塗りつぶされる都度動きが止まる七戸に2分8秒「指導1」。続く攻防で七戸が引き手で襟を掴むと嫌ったリネール切り離して立ち位置を変え、相手の左を抱えてこれもリネールが好む「ケンカ四つクロス」の一方的な形に持ち込む。しかし主審はリネールの度重なる切り離し行為に「指導1」を宣告。

七戸による両手同時確保は以後も成功。リネールは大外刈を一回見せるが大枠組み手の管理に腐心し、格上のリネールが駆け引きを志向することで七戸もこの展開に引きずり込まれるを得ない。3分56秒双方に「取り組まない」判断による「指導2」宣告。

リネールやや奮起、引き手で袖、釣り手で奥襟という一方的な組み手で七戸に圧力。徐々に七戸の頭が下がり、やがて前屈。リネール圧し掛かる様に固定を強めた上で、再びの浮技。デビュー時に得意としていた、釣り手で片襟を差して体を捨てるこの技に七戸崩れて「有効」。残り時間は31秒。

七戸突進もリネールは取り合わず。「技有」優勢でリネールの100kg超級7連覇が決まる。

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。

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