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羽賀龍之介が初優勝飾り「エース階級」復活の狼煙、得意の内股生かす忍耐力光る・アスタナ世界選手権100kg級レポート

(2015年8月30日)

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。
羽賀龍之介が初優勝飾り「エース階級」復活の狼煙、得意の内股生かす忍耐力光る
アスタナ世界選手権100kg級レポート
【成績上位者】 エントリー55名
1.HAGA, Ryunosuke(JPN)
2.FREY, Karl-Richard(GER)
3.NIKIFOROV, Toma(BEL)
3.PETERS, Dimitri(GER)
5.KRPALEK, Lukas(CZE)
5.MARET, Cyrille(FRA)
7.MAMEDOV, Chingiz(KGZ)
7.NAIDAN, Tuvshinbayar(MGL)

決勝に進んだのは昨年3位のカールリヒャード・フレイ(ドイツ)と世界選手権初出場の羽賀龍之介。強者に巧者、本格派に曲者と魅力的な選手でトーナメントが埋め尽くされた100kg級には楽なブロックなどなく、両者の通った後にはこれら強豪の屍が累々。

フレイは初戦で2013年世界ジュニア王者のカヨル・レイズ(カナダ)を内股「有効」で下し、3回戦は前戦でルシアーノ・コヘア(ブラジル)を下したベンジャミン・フレッチャー(イギリス)を左内股「有効」、左内股「技有」、左腰車「一本」と3度投げつけて快勝。準々決勝は1回戦で昨年2位のホセ・アルメンテロス(キューバ)を肩固「有効」、3回戦でシード選手マーティン・パチェック(スウェーデン)を崩上四方固「一本」で下しているツブシンバヤル・ナイダン(モンゴル)をGS延長戦の末に飛び込んだ左大外刈「技有」(GS0:45)で退け決勝ラウンド進出決定。準決勝は昨年王者のルーカス・クルパレク(チェコ)と激戦、残り時間僅かとなったところで相手の左大外刈を膝車で切り返し驚きの「一本」(4:33)奪取でついに決勝進出決定。

一方の羽賀は1回戦でステファン・ユーリック(セルビア)を内股「一本」(3:25)で下すと、2回戦では難敵ヘンク・グロル(オランダ)に「指導2」を奪われながら逆転の内股「一本」(2:56)を奪ってこの試合をクリア。3回戦は階級きっての曲者チョ・グハン(韓国)の、相手をいなして一方的に担ぎ技で潰れる粘着柔道に手を焼き「指導3」を失ったまま終盤戦を迎える絶体絶命のピンチ。しかし初めて二本しっかり持った攻防で相手を場外に詰め、左内股一閃「技有」で逆転して優勢勝ち。準々決勝はこの日素晴らしいパフォーマンスを見せていたディミトリ・ピータース(ドイツ)の長い腕を掻い潜って攻め「指導2」対「指導1」で競り勝ち決勝ラウンド進出。準決勝はシリル・マレ(フランス)の巧みな試合攻勢に「指導2」をリードされたまま試合を終盤まで持ち込まれたが、残り17秒の左内股「有効」で劇的逆転、ついに決勝進出を果たす。

決勝は2月のグランプリ・デュセルドルフで思い切り投げ飛ばされているフレイが羽賀の内股を警戒し、序盤は片手の攻防が続くこととなり双方に「指導」。しかし片手技の崩しで攻勢権を得た羽賀は中盤に組み手二本を得て左内股と左大内刈を往復する迫力の攻め、一呼吸で3つの技を繋げたこの攻を受けてフレイに2つ目の「指導」が宣告されることとなる。地力のある羽賀の側がリードを得たことでフレイは攻略の手立てを失った感あり、大技は仕掛けるものの取り味のあるところまで踏み込めないまま時間が過ぎ去りタイムアップ。「指導2」対「指導1」で羽賀の優勝が決まった。

羽賀は初優勝。得意の内股の切れ味と威力はもちろんのこと、苦しい試合が連続する中、幾度も訪れた試合展開の分岐点でことごとく退かず、丁寧に試合を作り続けた忍耐と精神力の強さが何より光る内容だった。井上康生、鈴木桂治、石井慧、穴井隆将と第一人者を輩出し続けた100kg級は日本の伝統的な「エース階級」。近年は世代交代の失敗を若手が引き受ける形で不振、昨年の世界選手権では代表派遣を行わないというところまで追い込まれてていたが、今大会で劇的な復活を遂げることとなった。

3位にはピータースが入賞。敗者復活戦では、3回戦でエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)を打点の高い大外返「一本」で下して喝采を浴びるなど素晴らしい出来を見せていたチンギス・マメドフ(キルギスタン)を右背負投「一本」(3:08)で下し、3位決定戦では前年の王者クルパレクを浮落「一本」(2:09)を以て表彰台の外に叩きだす圧倒的な試合ぶり。羽賀に敗れた準々決勝以外は全て「一本」で勝利を決めており、銀メダルを獲得した後輩フレイを超えるインパクトのある戦いぶりであった。フレイと違いスタイル自体に癖があり、かつ明らかに地力を一段上げているこの選手はまだまだ強くなりそうな予感。来年に向けて要警戒。

もう1つの3位決定戦は劇的決着。トマ・ニキフォロフ(ベルギー)は序盤に右手指を負傷し、自ら試合を止めるとうずくまって顔をしかめること2度。試合の継続自体が危ぶまれる状態だったが、シリル・マレは情けを掛けたか、一種相手の手の負担が少ない緩やかな相四つ横変形と「指導」奪取による順行運転で、仕留めきれないまま試合を進める。しかし残り時間僅かとなったところでのニキフォロフの突進を忌避し、反転して畳に伏せてひとまず攻防を切ろうとしたところでめくり返されなんと「有効」失陥。もはや投げてしまうしかないと前に出た残り5秒で今度は捨て身の払巻込に捕まり「一本」失陥。どよめきの中、ニキフォロフの3位が確定した。ニキフォロフはその場で雄叫びを上げて大逆転劇を喜び、劇的な結末に会場は大拍手。痛めて試合を自ら止めた2度の行為には本来いずれも「指導」が与えられて然るべきで、であれば試合は早々に決着していたはずだが、最後まで試合を捨てずにチャンスを待ったニキフォロフは見事。一方煮え切らない戦いの罰を受けたマレは実力十分ながら今回も表彰台に上がれず、またもや勝負どころに弱い個性を発揮することとなってしまった。

準々決勝以降の結果と羽賀の勝ち上がり詳細は下記。

【準々決勝】

ルーカス・クルパレク(チェコ)○優勢[有効・引込返]△トマ・ニキフォロフ(ベルギー)
カールリヒャード・フレイ(ドイツ)○GS優勢[技有・大外刈](GS0:45)△ナイダン・ツブシンバヤル(モンゴル)
シリル・マレ(フランス)○大外刈(3:58)△チンギス・マメドフ(キルギスタン)
羽賀龍之介(日本)○優勢[指導2]△ディミトリ・ピータース(ドイツ)

【敗者復活戦】

トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○優勢[技有・引込返]△ナイダン・ツブシンバヤル(モンゴル)
ディミトリ・ピータース(ドイツ)○背負投(3:48)△チンギス・マメドフ(キルギスタン)

【準決勝】

カールリヒャード・フレイ(ドイツ)○膝車(4:33)△ルーカス・クルパレク(チェコ)
羽賀龍之介(日本)○優勢[有効・内股]△シリル・マレ(フランス)

【3位決定戦】

トマ・ニキフォロフ(ベルギー)○外巻込(4:55)△シリル・マレ(フランス)
ディミトリ・ピータース(ドイツ)○浮落(2:09)△ルーカス・クルパレク(チェコ)

【決勝】

羽賀龍之介(日本)○優勢[指導2]△カールリヒャード・フレイ(ドイツ)

【日本代表選手結果】

羽賀龍之介(旭化成)
結果:優勝

【日本代表選手勝ち上がり】

[1回戦]

羽賀龍之介〇内股(3:25)△ステファン・ユーリシック(セルビア)


羽賀が左、ユーリシックは右組みのケンカ四つ。「指導」2つを積んだ後の2分37秒、羽賀が左大内刈。激しく落ちるが尻もちをつかせてしまいノーカウント。
相手の手が詰まった3分25秒に左内股。見事決まって文句なしの「一本」

[2回戦]

羽賀龍之介〇内股(2:56)△ヘンク・グロル(オランダ)

ケンカ四つ。羽賀に連敗中のグロル一計を案じ、両手を振り回すようにして釣り手で羽賀の背中を叩く、あるいは横から手を回して背中を抱えることに腐心。羽賀は対応するためバックステップしながら袖を抑えて対応するが背中を深く叩かれて潰れた41秒に偽装攻撃の「指導1」、距離の出し入れに引っ掛けられて攻防に出遅れた1分18秒「取り組まない」咎による「指導2」を受ける。ここまではグロルのシナリオ通り、羽賀がようやくファーストアタックの右内股を見せたのは試合時間2分にならんとするとする時点でここまでは我慢の試合。

2分30秒を過ぎたあたりからグロル減速。羽賀は大枠組み合ってのやりとりが可能となる。グロルは右内股から右小内刈、手応えをえたかこれを決め切ろうと前に走るが、羽賀一瞬でこの前進を内股に捉えかえす。グロル滞空時間短く畳に叩きつけられ「一本」。

[3回戦]

羽賀龍之介〇優勢[技有・内股]△チョ・グハン(韓国)

羽賀が左、チョが右組みのケンカ四つ。チョは引き手争いの片手柔道に誘い、手数稼ぎの担ぎ技の中に取り味のある一撃を混ぜてくる気の抜けない相手。

引き手を持ち合わない相手に対し羽賀は片手の左内股で崩し、横三角で攻める。チョは引き手で袖を触る動作を見せてはすぐに離すという牽制アクションを繰り返して羽賀を反則に嵌めに掛かる。1分26秒双方に片手の咎で「指導」。続くシークエンスで羽賀が片手の左内股を仕掛けるとチョが崩れ、1分55秒主審やや性急な「指導2」をチョに宣告。

チョは2分30秒過ぎから座り込みの左一本背負投で試合を作り始め、2度続けたところで主審先ほどの埋め合わせのごとく非常に早い判断で羽賀に「指導2」を宣告、3分19秒。

柔道衣をはだけたチョに対し、主審服装を直すように指示する。チョは羽賀の拘束から逃れるためか帯だけ結んで柔道衣の裾を帯に入れず、はだけたまま試合を継続。直後、羽賀に襟を隠したとの判断で痛恨の「指導3」。ついに羽賀はビハインド。

前に出るしかない羽賀は両襟の内股で前進、しかしチョは左背負投に変換してヌルリと逃げる。絶体絶命の羽賀だが、残り40秒を過ぎて初めて釣り手で襟、引き手で袖とまともに組むことに成功。左内股を連発して場外際までチョを詰めると、「場外」の反則を怖れて足の止まったチョに左内股。見事決まって「技有」。

チョ必死で前進も羽賀はいなし流してタイムアップ。逆転勝利で難関突破。


[準々決勝]

羽賀龍之介〇優勢[指導2]△ディミトリ・ピータース(ドイツ)

ケンカ四つ。引き手争いが続き46秒双方に「取り組まない」判断の「指導1」。
ピータースは長い腕を利して釣り手を奥襟、あるいは樽を抱えるように羽賀の背中のカーブに沿わせて横腹まで持ち、羽賀の釣り手を殺しに掛かる。羽賀は足技でいなして間合いを保つが、攻撃に至る道筋がなかなか見いだせない。

2分40秒を過ぎたところで、ピータースの「樽抱え」の箍を左内股で剥がした羽賀、逆襲の左大内刈。ピータース上体を捻ってなんとか回避。直後ピータースに「指導2」、

ピータースは帯、背中、奥と釣り手を深く入れながら大内刈で攻めて優位を作ろうとするが羽賀は的確に出足払で楔を入れてその意図を減速。内股と大内刈を打ち返す。3分47秒に羽賀が放った内股フェイントからの大内刈、残り52秒でピーターが放った組み際の大内刈とそれぞれ良い技があったが、そのままポイントの積み上げはなくタイムアップ。「指導2」の優勢で羽賀の勝利が決定。

[準決勝]

羽賀龍之介〇優勢[有効・内股]△シリル・マレ(フランス)

羽賀が左、マレは右組みのケンカ四つ。片手の引き手争いが長く続き、1分12秒双方に「指導1」。
マレは長いリーチを生かして先に釣り手で脇下を持つと、肘を上げてアーチを作り羽賀のアプローチを阻む作戦。羽賀は生命線である一手目の釣り手を確保に時間と手数の消費を強いられる。それでもなんとか良い位置で釣り手を確保するが、マレは左一本背負投で展開を切り、2分56秒に現出した羽賀が引き手で袖を掴む良い形もマレは全く間を置かずに巴投に逃れ、羽賀の攻撃のきっかけを掴ませない。マレが片手の右内股を放った直後の3分26秒、羽賀に2つ目の「指導」。

マレは組み際の巴投に釣り手で脇を突いての間合いの確保、前技の掛け潰れと抜け目なく時間を消費し、羽賀はまともに組むことすら出来ず。しかし遮二無二突進してアプローチを続けると、残り20秒を過ぎたところでついに引き手で袖を確保。羽賀間を置かずに左内股、肘を脇下に突っ込んでこじ上げ、引き手の牽引を思い切り利かせたこの技にマレは横から崩れ、肩を引っ張られながら畳に落ち「有効」。残り17秒に挙げたこのポイントで羽賀は逆転、勝利決定。

[決勝]

羽賀龍之介〇優勢[指導2]△カールリヒャード・フレイ(ドイツ)

ケンカ四つ。フレイの慎重さに誘発される形で引き手争いの片手の攻防が続く。双方片手の内股による崩しがあり、1分13秒には羽賀がケンケンの左大内刈、しかしフレイは耐える。1分42秒「取り組まない」判断により双方に「指導1」。

中盤、羽賀が取りに出る。左内股から大内刈、さらに再び左内股とケンケンで技を繋いで投げに掛かり、フレイが左内股を跨いだまま双方縦に転がり落ちる。羽賀が三角を狙って「待て」、直後の2分42秒フレイに「指導2」宣告。

フレイは左背負投に左腰車とアプローチがしやすい逆方向への技で攻めるが、投げ切る決意としつこさに欠ける。左背負投は潰れかかるが踏み止まって体勢を立て直し、腰車は回した腕がスッポ抜けて自らたたらを踏む。投げるというよりはまず「指導」奪回を志向しての大技という印象。

残り1分を切り、フレイが組むなりの右内股に大外刈と遮二無二攻めに出る。続く残り30秒を過ぎてからの大事なシークエンス、羽賀はしっかり前襟を握り込んでフレイの攻めを制限、組み手をいったんリセットしたい相手に切り離すことも許さずあくまで持ち続ける。以後試合が動くことはなく、「指導2」対「指導1」で羽賀の初優勝が決定。

※ eJudoメルマガ版8月30日掲載記事より転載・編集しています。

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