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【eJudo’s EYE】長短いずれの特徴も見せた志々目は銅メダル確保、五輪に向けて着実に楔打ちこむ・アスタナ世界柔道選手権60kg級「評」

(2015年8月25日)

※ eJudoメルマガ版8月25日掲載記事より転載・編集しています。
【eJudo’s EYE】長短いずれの特徴も見せた志々目は銅メダル確保、五輪に向けて着実に楔打ちこむ
アスタナ世界柔道選手権60kg級「評」
60kg級の志々目徹は銅メダルを確保。その戦いぶりは長所、短所ともに志々目の特徴が非常に良く出たものであったと総括出来る。

志々目といえば抜群の技の切れ味の一方で、一発を狙うあまりの攻めの遅さや淡白さ、リードしたあとの守勢が生む意外なほどの弱気が積年の課題として指摘され続けて来た。しかし、初の世界選手権の舞台で志々目はこれを塗りつぶさんと相当の思考量と覚悟を投入してきたように見受けられた。

勝ち上がりは1回戦でモハメド・ジャフィー(モロッコ)を内股「一本」、2回戦でうるさいツァイ・ミンエン(台湾)を内股「技有」、3回戦でエリック・タカバタケ(ブラジル)を「指導2」優勢、そして大山場の準々決勝でキム・ウォンジン(韓国)に「指導2」対「指導1」の優勢というもの。スコアは圧倒的なものではないが、試合内容は丁寧かつアグレッシブ。ケンカ四つの相手に対し、引き手で袖、釣り手で襟か背中という「スポット」を狙うのではなく、積極的に両襟の形を駆使して試合に飛び込んだ。自分だけが一方的に優位(そして相手に嫌われるために組み手のリセットが増える)袖と襟の組み合わせではなく、まず組むという行為自体に相手を巻き込むこの組み手に加え、アプローチが容易かつ自身の得意な「内側の技」(大内刈、内股)ではなく、まず遠い外足に大外刈で攻め込むことで相手の退路に蓋をし、自分のやりたい試合に相手を引きずり込むことが出来ていた。

そして準決勝のキム戦で目立ったのはもともとムラ気の天才肌である志々目に一種似つかわしくない、「我慢」。相手の奥襟に過剰反応せず、直接的な回避ではなく技を撃ち返すことで丹念に展開を紡ぎ、最後は得意の大内刈と内股の連続攻撃で決勝点となる「指導2」を挙げて勝利を得た。

志々目の投げの切れ味を支持するファンからは「いま一つ」と評されかねないスコアであるが、志々目は弱点をしっかり潰しつつ、自身の持ち味を生かして着実に勝ち上がって来たのだ。出来は及第点を十分超えていると思われた。

しかし準決勝、開始早々に釣り手を上から入れた志々目は防御定まらないまま不用意な位置関係に身を置き、イェルドス・スメトフ(カザフスタン)にあっという間の横落「有効」を食ってしまう。しかしスロースターターの志々目にむしろ時間がたっぷりある段階でのビハインドは良い薬にもなり得る。志々目はその見立て通りに前進と攻撃を継続。残り2分からはラッシュが加速し、残り42秒で「指導3」奪取。守勢ベクトルのまま川の流れに乗ってしまったスメトフはもはや死に体、奥襟を叩くだけで勝手に潰れるのではないかという情勢の残り21秒に、しかし志々目の選択は体を相手の真前に捨てての巴投。

「指導」を取るべき展開で、連続攻撃が出来ない捨身技はタブー。追いかける立場にある際は容易に相手に寝技を選択させて時間を消費してしまう捨身技はタブー。後ろ重心で逃げる相手に追い込みの利かない真捨身技はタブー。攻撃の厚み自体で展開を作らねばならぬ「『指導』奪取ミッション」で流れを必ず一回切ってしまう捨身技はタブー。

キム戦の圧を掛けあった場面で鮮やかに相手を転がした横巴の印象が残っていたのか、それとも単に展開を読み誤った場当たり的な選択なのか、志々目のどこかに潜む弱気がリスクと運動量を伴う連続攻撃ではなく一発逆転の捨身技を選択させたのか。

いずれ、志々目はこの試合を、「開始早々の危ない時間帯に奇襲を受ける」「終盤の煮詰まった時間帯に、弱気と取られかねない選択ミスをする」といういかにもこの天才肌らしいミス2つで落とすこととなってしまった。戦後の「まったく満足していない」という仏頂面もむべなるかな。

しかし。優勝を狙う力も十分とされた志々目にとっては、惜しい試合ではあったが、落第点をつけるような成績ではまったくない。むしろ自身の「悪い面」をこれだけ出しながらの銅メダル確保は志々目の力が「銅メダル以上」の水準にあることをしっかり示したと言えるのではないだろうか。イブラエフの準優勝は一種出来過ぎだが、スメトフが優勝、そしてガンバットやムドラノフが「落っこちる」中でのキム・ウォンジンと志々目の銅メダル確保は国際間の評価から言えば妥当の範囲内、自分の仕事をしっかり果たしたと言って良いはずだ。

わざわざこういうことを言うのは、第一人者とされる高藤直寿が2013年度世界選手権ほどの圧倒的な勝ちぶりを示していないからでもある。果たして高藤は本当に、長所短所ともにこれだけさらけだしながら「平均点で銅メダル」を確保した志々目を凌いで代表の座を得るだけの安定感と実力を保持しているのか。この問いと五輪代表争いに、志々目はしっかり楔を打った、そういえるだけの成績であった。「注目されていなかったので」とこれも仏頂面でインタビューに応えた志々目。注目されてないことなどない。選手の情報が回りに回り、互いが互いを研究し尽くして技術革新のスパンが早い最軽量級において、グランプリ・デュッセルドルフを制するという「狙われる」立場から見事銅メダル確保。胸を張って帰って来てほしいものだ。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

※ eJudoメルマガ版8月25日掲載記事より転載・編集しています。

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