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インターハイ柔道競技男子団体レポート⑥決勝

(2015年8月17日)

※ eJudoメルマガ版8月17日掲載記事より転載・編集しています。
⑥決勝
インターハイ柔道競技男子団体レポート
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27年度インターハイ決勝は日体荏原高と国士舘高、東京勢同士の対決

インターハイ連覇、そして今季高校「三冠」を狙う国士舘高は圧倒的な前評判を背に順当な勝ち上がり。2回戦は秋田工高(秋田)を5-0、もっとも厳しい試合と思われた3回戦の作陽高(岡山)は2-0で突破。この山を越えて吹っ切れたか以後は「三冠」の呪縛から解き放たれたように先鋒磯村亮太と次鋒河田闘志の前衛2枚が決意溢れる攻撃を見せてチームを牽引、準々決勝は東海大四高(北海道)を4-0、昨年と同じ顔合わせとなった準決勝では神戸国際大附高(兵庫)をなんと5-0という規格外のスコアで破って決勝進出決定。他チームに比べ組み合わせに恵まれた感はあるが、今季全ての全国大会で入賞している神戸国際大附を5-0で屠り去る力はやはり尋常ではない。最強と称された今代最後の試合で、高校三冠、インターハイ連覇、そして最多タイとなる13回目のインターハイ制覇に挑む。

一方の日体荏原高は2012年インターハイ以来3年ぶり2度目の全国大会決勝進出。金鷲旗大会準決勝での大将同士に縺れ込んだ大熱戦をテコに、今大会は打倒国士舘を目指して充実の勝ち上がりを見せて来た。滑り出しの2回戦で沖縄尚学高(沖縄)を5-0、3回戦では木更津総合高を3-0、勝負どころの準々決勝では東海大相模高を相手にせずこれも3-0と圧勝。そして準決勝では高校選手権と金鷲旗の準優勝チーム大成高(愛知)を相手にしぶとくディティールを拾い続けて3-2の逆転勝利。6月の東京都予選では国士舘に0-4の大敗を喫しているが、以降の大会では松井海斗らが吹っ切れたかのように素晴らしい試合を披露し、チームは明らかに一段階上の位相にある。この上昇ベクトルを背に、全国大会初優勝を狙う。

オーダー順は下記。

国士舘高 - 日体荏原高
(先)松井海斗 - 田嶋剛希
(次)長井晃志 - 河田闘志
(中)藤原崇太郎 - 飯田健太郎
(副)長井達也 - 竹村昂大
(大)東部雄大 - 山田伊織

日体荏原のオーダーは準決勝までと変わらず、国士舘は決戦兵力として先鋒にファイター田嶋剛希を入れて来た。

対戦相性は国士舘高が全戦線に渡って有利。オーダー順が公開された7日の段階で既に日体荏原のオーダーが「対国士舘向きではない」ことを多くのファンが感じていたのではないかと思われるが、並べてみると改めてその厳しさを感じざるを得ない。

日体荏原が勝利を挙げるには対戦相性をピタリと嵌めて、自軍のポイントゲッターである藤原らを「獲れる相性」の相手に、絶対値の高い山田と飯田には出来得れば「カベ」になり得る長井達也や曲者の東部を手当てして損耗を少しでも減らす必要がある。具体的に金鷲旗大会で日体荏原が勝利した(ことごとく相手の2戦目であるが)カードは

松井 - 磯村
長井 - 河田
東部 - 飯田
藤原 - 竹村

の4戦である(この試合全戦通じて引き分けはなし)。しかし「カスタムオーダー」とでも評すべく対戦相性が嵌ったこの顔合わせは今回1試合もなく、重要なポイントでことごとく国士舘に蓋をされてしまった印象だ。エース藤原崇太郎は自分と同様技が切れてサイズが2階級上、そして絶対値の高い飯田健太郎、自在の攻撃パターンを持ちながら金鷲旗大会で磯村亮太のサイズに柔道を塗りつぶされてしまった長井晃志は磯村以上にサイズがあって柔道が手堅い河田闘志、相手との組み手のやりとりの中で罠を仕掛けることが得意な曲者東部には駆け引き少なく絶対値の高さをそのまま柔道に反映してくる山田伊織、粗いがパワーがある長井達也には組み手の隙をついて懐に潜り相手のサイズをそのまま投げの威力に変換できる竹村昂大がマッチアップしている。先鋒松井も田嶋相手には東京都予選で僅か1分9秒で一本負けを喫するなど力比べをする以前に柔道の構成が噛み合っていない印象で、全くやりやすいタイプではない。

つまりはカスタムオーダーで対戦順を嵌めるどころか、もっとも力の差が出やすい対陣となってしまったというのが率直な感想だ。最良の道として、好調松井が2か月前とは違うパフォーマンスを見せて1点獲得、以降が引き分けで粘って相手の焦りを誘うという一本橋のシナリオを描くところまでは可能だが、後衛2枚がその1点を守れるかというとこれは現実的ではない。勝利には少なくとも2点以上の得点が必要であり、先に取る、粘る、その中で追加点を得る、焦った相手を凌いで終戦まで持ち込む、と難しいミッションを2段、3段と重ねていかねばならない厳しい状況だ。

一方の国士舘としては、各人持てる力をある程度以上発揮して勝ちと引き分けを積み重ねれば勝利自体はほぼ確実というだけの力の差、そして対戦相性の良さがある。三冠達成のプレッシャーという「内なる敵」との戦いが最大の課題になるはずだ。

勝負の分水嶺は先鋒戦。日体荏原としてはここを取り、以後を「凌ぐ」ことをテーマに設定、引き分けを続けて金鷲旗大会の接戦の空気に持ち込み、国士舘サイドにミスがミスを呼ぶ負の連鎖を発火させるしか勝利の道はない。

一方の国士舘にとっても、勝負のステージを「圧勝した都大会」に設定するのか「接戦を演じた金鷲旗大会」をセットされ直してしまうのかを決めるであろう先鋒戦が非常に大事。ここで失敗すれば前衛3枚は接戦の可能性あり、取れば一気に走り抜けること可能な「シナリオの取り合い」が起こるこの試合の最重要局面だ。予選ラウンドと打って変わって出色のパフォーマンスを見せていた磯村を敢えて下げ、心のブレが少なく攻撃のバリエーションが多い田嶋を突っ込んで来た意図はまさしくそこにあるはず。高校選手権90kg級で優勝しながら個人代表を逃した田嶋を団体戦で起用せずここまで「取り置いた」策が田嶋のモチベーションアップという良い目に出るか、初のインターハイ出場に体が固まってしまうのか、どちらの目に出るかに注目。試合の様相は、先鋒戦で決まる。

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先鋒戦、開始早々に田嶋剛希が松井海斗を抑え込む。これは8秒で「解けた」

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田嶋は肘抜きの右背負投に手応えを感じ、この技を連発

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松井が左内股を回しこんで抗戦

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田嶋、幾度も仕掛けた肘抜きの右背負投でついに松井を捕まえ「技有」奪取

先鋒戦は日体荏原・松井海斗が左、国士舘・田嶋剛が右組みのケンカ四つ。

勢いのある松井に対して明らかに寝技を武器として用意してきたの田嶋、開始するなり寝勝負に持ち込み「国士舘返し」でめくり返す。手順は着々進行、主審は田嶋の縦四方固に「抑え込み」を宣告。

早い時間の一本負けがあれば実質この決勝は終わってしまう。松井必死に逃れ、これは8秒で「解けた」。経過時間は45秒。

田嶋右の片手背負投で攻める。抗する松井、1分24秒の組み際に回し込みの右内股、間合いを取る田嶋に自身の長い脚が届き、松井は手応えを感じた様子。続く展開も組み勝ち、遠間から足を差し入れて田嶋に大内刈と内股のプレッシャーを掛ける。

この状況を打開すべく田嶋が採った策は肘抜きの右背負投。距離を詰めることに成功した田嶋の力が良く伝わり、松井は場外に逃れて転び伏せる。

続くシークエンスは膠着し、2分24秒双方に「指導1」。田嶋の内股の掛け潰れをきっかけとした寝技の攻防で松井が激しく攻める場面があったが、試合は双方ポイントないまま終盤へ。

残り1分を切ったところで田嶋が肘抜きの右背負投を連発。1度、2度と仕掛けて3度目に松井の重心を捕まえると担ぎ回して決定的な「技有」奪取。経過時間は3分10秒、残り時間は50秒、松井痛恨の失点。

田嶋は有効な手立てと捉えた肘抜きの右背負投を徹底して仕掛け松井に攻めの形を作らせない。松井残り22秒で回し込みの左内股、残り7秒で脚を先に差し入れての左内股と激しく攻めるが田嶋は間合いを確保して取り合わず、攻防に乗ってこない。

このままタイムアップのブザーが鳴り響き、試合終了。田嶋の「技有」優勢による勝利で国士舘が1点を先制した。

松井の長い脚と体格差を生かした「先に差し入れる」左内股、長井の短躯と腰の強さを生かした「肘抜き」の右背負投。ともに試合の中、攻防の中で有効な手立てを発見する勝負勘の良さを見せた試合だったが、この「発見」比べに勝利したのは田嶋。大事な先鋒戦を国士舘が取り、盤面は一気に国士舘有利。日体荏原は以後凌ぐのではなく取りに行かねばならぬ試合を余儀なくされることとなる。

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河田闘志が長井晃志の支釣込足を押し潰し、抑え込みに掛かる

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河田の大外巻込が「技有」

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河田が思い切り大外刈、長井為すすべなく「一本」

次鋒戦は長井晃志、河田闘志ともに右組みの相四つ。

長井まず気概を示さんとばかりに体格差に怖じず釣り手で奥襟を叩く。続いて支釣込足を放つが河田委細構わず掛けさせながら前に出て逆に潰し、その体の上に乗りかかって抑え込む。長井必死に逃れて1秒で「解けた」が宣せられるが、最初のシークエンスからサイズの差を存分に見せつけられてしまった格好で非常に苦しい情勢。

続くシークエンスの50秒に河田思い切りの良い右内股、さらに前に出て引き手を確保しこれも思い切った右大外刈と存分に攻めて畳上を快走。これを受けて主審は1分36秒に長井に「指導1」を宣告する。

奮起した長井は右大外刈に左袖釣込腰と方向を変えながら技を繰り出すが、河田は技の来週の都度圧力を一層強めて前進。1分59秒には長井耐え切れず自ら膝を屈して潰れてしまう。

2分36秒、機は熟したとばかりに河田は右大外巻込に乗り込んで「技有」獲得。
圧を掛けられ、技を塗りつぶされ、しかもポイントまで失った長井にもう出来ることは残っていない。2分57秒、河田再度の右大外刈は豪快に決まって「一本」。国士舘、2点のリード。

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中堅戦、藤原崇太郎が左背負投に打って出るが飯田健太郎は揺るがず

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飯田は内股、大内刈、内股と全てケンケンで技を繋ぐが藤原脚を揚げて耐え切る

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最終盤、飯田が藤原の大内刈を押し戻し返して「有効」

中堅戦は日体荏原・藤原崇太郎に国士舘・飯田健太郎がマッチアップ。
藤原が左、飯田は右組みのケンカ四つ。飯田試合が開始されるなり思い切り右内股。藤原脚を高く揚げて捌き切る。続いての引き手争いは飯田が組み勝ち、59秒藤原に「指導1」。

奮起した藤原左背負投に打って出るが飯田しっかり潰して揺るがず。
1分を過ぎたところで飯田が仕掛ける。右内股、右大内刈、さらに右内股と全てケンケンで繋ぐ凄まじい攻撃、しかし藤原もこの迫力の攻めを相手の作用足を股中に入れさせたまま片足で耐えきって「待て」。攻めも攻めたり、守りも守ったりというこの攻防に場内どよめく。

藤原左背負投に巻き込みと技を出して展開を持ち直しにかかり、2分を過ぎたところで奥襟を確保し大枠組み勝つことに成功。しかし飯田が膝を低くしてその力をずらすと左背負投に自ら潰れてしまい、主審は2分47秒偽装攻撃の咎による「指導2」を宣告する。

勝利に直結するポイントを得た飯田はあるいは間合いを取り、あるいは背中を掴んで体落で攻める。藤原背中に腕を回して間合いを詰めに掛かるが飯田は取り合わず。

このまま試合が終われば自軍の負けが確定してしまう藤原、残り2秒で抱きつき大内刈の大勝負。しかし待ち構えた飯田落ち着いて藤原の体をキャッチ、前に出て藤原の体を伸ばしながら押し戻し返し「有効」獲得。

主審の「有効」宣告に終了ブザーの音が被る。この試合は飯田の「有効」優勢による勝利に終着、この瞬間国士舘の「三冠」獲得が確定した。

2点のリードを背に受けた飯田の順当勝ちであるが、ここで見せた飯田のメンタルの強さは見逃せない。序盤から攻めてこそいたが、その反面投げに出た、それも絶対投げるとばかりに異常なまでにケンケンで追い続けた得意の内股を受け止め切られた飯田には藤原を仕留めるべき技がなくなったとも言える。飯田はもっとも信頼すべき技に頼れないというこの状況に慌てず、攻めることで「指導」を得て勝利の条件をまず見たし、攻めるしかない藤原の捨て身の攻撃を待ち構えて返し技のポイントを上積みした。難敵藤原との一番、それも日本一が掛かる大勝負の場で、天才肌の選手が起こしがちな「投げられないことによるパニック」と飯田が無縁であったことは以後に向けてひとつ記憶しておくべきだろう。

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副将戦、竹村昂大が長井達也から左小内刈「有効」

副将戦は日体荏原・長井達也が右、国士舘・竹村昂大が左組みのケンカ四つ。引き手争いが続き、21秒、1分1秒と双方に立て続けに「指導」が宣告される。竹村はサイズのある長井に対し慎重にチャンスを伺う気配。

2分、竹村が左小外刈を放つと長井は右内股に切り返し、竹村が崩れて「待て」。

続く展開、竹村が長井の背を上から抱くようにして左内股。長井がガップリ抱きついてこれを迎え撃つと竹村は左大内刈に触っておいて返す刀の左小内刈。抱き合って剛体となっていた長井の巨体は後方にズルリと崩れて2分56秒「有効」。

手堅い柔道から一転、ピンポイントの勝負でキッチリ得点した竹村は再びモードを順行運転にシフト。足技の出し合いに長井を誘導して、反撃のきっかけを与えない。この試合はそのままポイントの積み上げなく終了。この試合は竹村の優勢勝ちに終わり、国士舘は実に4点目を積み上げる。パワーのある長井に対して半端な勝負でチャンスを与えることを避け、勝負どころを極端に絞り、そして着実にポイントを挙げた竹村の完勝。

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大将戦、一矢を報いたい東部雄大はテクニカルな組み手で山田伊織に駆け引きを挑む

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山田が左大外刈、東部転がり伏せてポイントには至らず

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山田が東部の腕を抱え込むように支釣込足、見事決まって「一本」

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もはや国士舘が5-0のパーフェクトスコアを達成するかどうかに興味が絞られる大将戦は日体荏原・東部雄大、国士舘・山田伊織ともに左組みの相四つ。

東部一矢を報いんと開始早々に左大外巻込。しかし山田潰してその体を拘束、抑え込みを狙って寝技を展開し「待て」。

東部は腕をクロスさせて山田の左袖を絞る一手目を開始、持ち前のうるさい組み手で主導権を握りに掛かる。しかし山田は冷静そのもの、まずいったん東部の意図を受け入れて右に組んで相手に「組み合うこと」を強い、次いで左にスイッチして自分の形を作り上げる。そして形が出来上がるなり高速の左大外刈一閃、東部は転がり伏せる。見る角度によってはポイントが宣告されてもおかしくない強烈な一撃だが、山田はノーポイントにも表情を全く変えずに悠々開始線に戻る。

直後の攻防、山田は高く握り込まれた東部の釣り手を抱え極めるように支釣込足。踏み込み効いたこの技を東部回旋の中心部でまともに食ってしまい、円周小さく、急加速しながら宙を舞って背中から畳に落ちる。これは文句なしの「一本」。

試合時間1分27秒、国士舘の完勝劇はここに完成。なんと5-0という衝撃的なスコアで決勝を勝ち抜き、今季の高校「三冠」、そして最多タイとなる13回目のインターハイ制覇を決めた。

【決勝】

国士舘高 5-0 日体荏原高
(先)田嶋剛希〇優勢[技有・背負投]△松井海斗
(次)河田闘志〇払腰(2:57)△長井晃志
(中)飯田健太郎〇優勢[有効・大内返]△藤原崇太郎
(副)竹村昂大〇優勢[有効・小内刈]△長井達也
(大)山田伊織〇支釣込足(1:27)△東部雄大

国士舘の完勝。出た「目」は金鷲旗大会の苦戦ではなく、これまで東京都予選で繰り広げて来た大勝。先鋒戦の勝利と次鋒戦序盤の様相で試合の行方が決定づけられ、整えられた圧勝への道のりを国士舘が妥協なく進み続けたという体の、史上に残る圧勝劇だった。

かくて金鷲旗大会の接戦は「苦戦してチームが締った、かつ結果を残した」という国士舘にとって最高のステップであったと、この段階に至って照射し直されることとなったわけである。

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5-0の勝利決定、今シーズンの団体戦を最高の形で終えた「最強」布陣の国士舘

三冠のかかるこのインターハイの滑り出しは決して順風満帆ではなかった。特に3回戦の作陽戦におけるあまりにも慎重過ぎる試合ぶりは、岩渕監督が掲げた「用心し過ぎず、開き直って攻める」という三冠奪取の要件を全く満たすものではない、チームの危機であったと考える。

恥ずかしながら筆者はこの3回戦が終わった段階で先鋒磯村を替えるべきではないかと感じていた。以後の盤面を決定づけ、後衛への伝播性が極めて高い先鋒というポジションに、チームがもっともやってはいけない、岩渕監督の言葉を借りれば「用心」し過ぎる選手が座るのはチームの危機だと感じからだ。サイズがある分、慎重さは増幅して印象づけられてしまう。続くポジションに配されているのが同じく巨漢で決して気の強いわけではない河田であることを考えると「蟻の一穴」が広がる可能性は十分。ここはファイター田嶋を投入し、敢えてリスクの高い吶喊ファイトを挑ませて後ろがそれを収拾する試合を経験することを以て、おそらく大成が上がってくるであろう決勝の激戦に備えさせるのが良いのではないかと思ったのだ。それが出来るだけの戦力と、組み合わせの良さというめぐりが今回の国士舘には、ある。このまま慎重な試合で「勝ててしまう」ことを続けると、血みどろの激戦を勝ち上がって乾坤一擲の会戦を挑んでくるであろう大成に切り崩される可能性も十分、むしろ苦戦してでも攻撃性の高い試合を経験しておいたほうが良いと考えたのだ。

しかし岩渕監督はオーダーをまったく変えずに最終日に乗り込んできた。そして畳に現れたのは昨日とは全く違うチームだった。全員がアグレッシブそのもの、なにより先鋒磯村の目の色が違った。三冠を取るにはこれしかないとばかりに試合が始まるなりのラッシュ、腹をつけてのリスクが高い突撃を躊躇せず、覚悟溢れる戦いで以後の「開き直って攻める」国士舘の流れを作った。戦力差があったとはいえ、準々決勝の東海大四相手の内容、結果ともに高い位相で揃えてみせた圧勝劇の時点でこの日の結果は決まっていたのかもしれない。準決勝の先鋒戦における磯村の僅か49秒の勝利、そして最初のチャンスをあくまで逃さず「腰絞め」で獲り切ったその巻き上がりぶりには周囲に国士舘優勝を確信させるものがあった。岩渕監督のチームプロデュース力と三冠に掛ける選手の思いの高さ、そしてなにより今代国士舘の地力の高さをあらためて知らしめる、最終日に起こった国士舘の豹変、いや、本来の姿への「回帰」であった。そして緊張というベールを脱ぎ棄てたその本来の姿は「強すぎる」という言葉以外に表現のしようがなかった。通算21勝0敗4分け、準決勝と決勝を5-0。「メチャクチャ強い」今代の国士舘にふさわしい内容で駆け抜けた、総決算と呼ぶにふさわしいインターハイであった。

「最強」の評判に恥じぬ戦いぶりで今季の高校柔道界を席巻した国士舘は、今代のレギュラーから飯田健太郎、磯村亮太、河田闘志の強力3枚が来季に残る。圧巻のチームプロデュース力に具体的な戦力が揃った国士舘が挑むのは2年連続の「三冠」と、インターハイ3連覇、そして史上最多となる14回目のインターハイ制覇だ。来期も国士舘が走り抜けるのか、ストップを掛けるチームは登場しうるのか。国士舘に明け、国士舘に暮れた今シーズン。国士舘の史上に残る圧倒的な強さと、国士舘の「王国」継承の予感をお伝えして、27年度インターハイ男子団体戦マッチレポートを終えたい。

文責:古田英毅
Text by Hideki Furuta

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優勝の国士舘高

【入賞者】

優 勝:国士舘高(東京)
準優勝:日体荏原高(東京)
第三位:大成高(愛知)、神戸国際大附高(兵庫)
敢闘賞:東海大仰星高(大阪)、東海大相模高(神奈川)、東海大四高(北海道)、白鴎大足利高(栃木)

※国士舘高は2年連続13度目の優勝

国士舘高・岩渕公一監督のコメント
「チーム結成時から強い強いと言われていて、金鷲旗ではしかし不甲斐ない試合だった。今日はなんとか生徒たちにしっかりした勝ち方をさせてやりたかった。なのでホッとしています。攻める気持ちを出させるために『5-0』と何度も言い続けて試合をさせました。回りの雑音で硬くなっている選手もいましたが、ここまで来たら自分の持っているものを出せ、攻めろ、用心するなと。先鋒の磯村が開き直って攻めてくれたのが大きかったですね。決勝は田嶋とどちらでも良かったが、田嶋と磯村、2人で1人を破った決勝だった思っています。(-昨日とは別のチームでしたね?)そうですね(笑)。3回戦の作陽戦が山場だと思っていました。先鋒を取って3-0、ポカして最悪でも2-0、2-1で勝つというところまでシナリオを想定していて、何があっても慌てるなと話していたのですが、選手がガチガチになってしまいました。そこで試合が終わってから言ったのは、辛うじて失点0で来ているし、大きな山場を越えたんだと。去年の準決勝(神戸国際大附戦)のような山はもう越えたんだから、あとは行くだけだよと。磯村に『先鋒の意味を、わかれ!』と激を飛ばしたのですが、その意志が通じたのが何よりの勝因でしょう。戦力云々ではなく、皆が必死でやって、実力を出してくれた。圧倒的戦力だ、5-0だと言われても、ひとつひとつは接戦なんです。全員が必死で、頑張って力を出してくれたのが良かった。(-金鷲旗の後に「次は内容で強さを証明する」と仰っていました。証明できましたね?)なんとかね (苦笑)。飯田に投げて決めてもらいたかったし、バタバタだったから、70点くらいかな。これでインターハイ制覇は13回目、天理さんに並んだんですが、スタートは斉藤仁が2年生のときだったんです。感慨深いものがあります。来年もまた強いチームを作ります」

日体荏原高・小久保純史監督のコメント
「金鷲旗からチームが波に乗り、決勝も3年生がやってくれるのではないかと期待していましたが、松井が取られて流れが苦しくなってしまいました。手の内は良く知っているのでどの試合も引き分けを狙うことは出来ますし、凌ぎながらミスを見極めることも出来たと思いますが、追うしかなくなってしまいました。ただ、皆そこで退かずに攻めてくれたので、それは良かった。相手の方が強かった、金鷲旗の接戦を受けて気を引き締めて来ていました。国士舘は穴がなかったです。」

【準々決勝】

大成高 1-0 東海大仰星高
日体荏原高 3-0 東海大相模高
国士舘高 4-0 東海大四高
神戸国際大附高 ②-2 白鴎大足利高

【準決勝】

日体荏原高 3-2 大成高
国士舘高 5-0 神戸国際大附高

【決勝】

国士舘高 5-0 日体荏原高

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