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インターハイ柔道競技男子団体レポート⑤準決勝

(2015年8月16日)

※ eJudoメルマガ版8月16日掲載記事より転載・編集しています。
⑤準決勝
インターハイ柔道競技男子団体レポート
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大成は満を持して、この準決勝から決戦戦力である古賀颯人を投入

大成高 - 日体荏原高
(先)前濱忠大 - 松井海斗
(次)古賀颯人 - 長井晃志
(中)神鳥剛 - 藤原崇太郎
(副)友田皓太 - 長井達也
(大)並木泰雅 - 東部雄大

高校選手権、金鷲旗大会とここまで連続で準優勝している大成高と、同じく連続3位の日体荏原高による対決。高校選手権準決勝では4勝3敗という乱戦の末に大成が勝利している来歴のある一番だ。

その際に直接対決した選手の組み合わせは今回は1試合もなく、盤面はまことに様相読み難い情勢。
大雑把にいって、双方攻撃力が売りのチームだが、全戦線に渡って「仕事」の出来る選手を揃えているのは大成。選手5人全員に押し退き、まとめ方を心得た試合が期待出来る。

一方の日体荏原、この「仕事」という観点で期待できるのは藤原崇太郎と長井晃志の2年生コンビ。松井海斗、長井達也、東部雄大の3年生3人は強さの一方意外な脆さを見せ続けて来た選手でもあり、飛び道具的な足技と後の先がある東部はともかく、松井と長井の戦術ディティールはオーソドックスそのもの。「仕事」モードに入ったときの、大成の練れた柔道を突破出来るかというと、事前評としてこれを推しておくのは少々難しい。また、東部が敗れるときにはサイズとパワーのある相手に自身の戦術を塗りつぶされてしまう「地力負け」のケースが多いことにも留意しておきたい。

以上踏まえて。穏当な事前評としては、失点少なく着々加点するであろう大成が有利と見ておくべき。先鋒戦は引き分け濃厚だが会話を拒否して担ぎ技を仕掛け続ける前濱に十分チャンスあり、次鋒戦は柔道の綺麗な古賀に対してサイズに勝りかつ左右どちらからのアプローチでも一発担げる長井晃が具体的な得点を挙げる可能性が高く、中堅戦のエース対決は事前予測としては引き分けが穏当。副将戦はサイズのある相手を担ぐことに長けた友田の得点濃厚で、大将戦は並木がサイズで東部の仕掛けを塗りつぶす。結果最終スコア3-1から2-1という幅で大成の勝利という予想はまずまず最大公約数として納得できるセンではないだろうか。

不確定要素としては、金鷲旗大会以来異常な充実を示す、松井以下の日体荏原の3年生勢の意気込みと勢い。特に松井の出来の良さは今大会も出色であり、この選手が盤面全体を照らす先鋒に座っていることは日体荏原にとっては非常に心強い。もし日体荏原の勝利あるとすれば、この先鋒戦の松井の勝利が必須ということだけは事前に織り込んでおいて良いかと思われる。

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先鋒戦、松井海斗が前濱忠大を攻める

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松井海斗が左大外刈、前濱仰け反って落ちこれは「有効」

先鋒戦は大成・前濱忠大と日体荏原・松井海斗ともに左組みの相四つ。松井釣り手を肩越しに入れての左内股で先制攻撃、前濱左背負投で打開するが、松井は丁寧に形を作ると取り味のある左大外刈を2連発。松井の集中力の高さ際立つ序盤戦の攻防は、1分39秒前濱への「指導1」となって結実する。

前濱、松井の隙のない組み立てと攻撃意欲にやや戸惑い気味で試合の方向性を決めかねる印象。リアクションとして組み手に拘った結果、2分48秒には「取り組まない」咎で2つ目の「指導」を宣告されてしまう。イコール試合の勝敗に関わる、決定的なポイント。

この「指導」による場の流動化を的確に捉えたのは松井。早く「指導」ひとつを取り戻さねばならない前濱の焦りを見透かしたように、組み際に一段スピードアップ、一呼吸で左大外刈に飛び込み鮮やかに「有効」を奪う。松井は以後も守るのではなく左大内刈、さらにこの技から繋いだ右小外刈と素晴らしい技の閃きを見せ、前濱に付け入る隙を与えず。この試合は松井が「有効」優勢で勝利、日体荏原まことに貴重な先制点を得る。

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「技有」をリードした古賀颯人は長井晃志に右一本背負投「一本」でトドメを刺す

次鋒戦は準決勝にしてついに投入された大成・古賀颯人、日体荏原・長井晃志ともに右組みの相四つ。

古賀はしっかり組むと長井の動きをコントロール、59秒には相手を釣り手側にずらしながら素晴らしい右内股を見せる。集中力抜群、たたずまいからオーラ溢れる印象の古賀はさらにタイミングピタリの右内股を見せ、技の出ない長井に対し1分18秒「指導」が宣告されるに至る。

直後、古賀は内股のモーションから体を沈めて右体落。足を引っ掛けられた長井耐え切れず畳に落ち、古賀はグイと引き手を引いて決めのコントロールを呉れる。これは「技有」。

後のなくなった長井右大外刈で遮二無二攻めるが、相手が良く見えている古賀は冷静。長井が組もうと前のめりに右釣り手を伸ばして来たところを、迎え撃って捕まえ打点の高い右一本背負投。

おそらく小学生時代以来試合では見せていないこの技、しかし理合をしっかり満たしたこの大技に長井は反応出来ず。深々担ぎ、長井を背中から叩き付けた強烈な一撃に主審躊躇せず右手を挙げて「一本」を宣告する。

難敵長井をまさしく一蹴。古賀、素晴らしい集中力と技で「一本」を獲得、この時点でスコアは1-1、内容差で大成がリードを得ることとなった。

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藤原崇太郎が左大内刈、しかし神鳥剛まったく崩れず

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神鳥剛が右袖釣込腰、粘り過ぎたその技を藤原崇太郎が後ろにひっくり返し「有効」

中堅戦のエース対決は大成・神鳥剛、日体荏原・藤原崇太郎ともに左組みの相四つ。藤原左内股から得意の支釣込足と繋ぐが神鳥全く崩れず。藤原足を先に差し入れての左大内刈も神鳥は揺るがず、藤原は自ら崩れてしまう。藤原の技を一通り受けきった神鳥が左大内刈、左小内刈、出足払と技を繋ぐと藤原転がり崩れ、直後の1分34秒藤原に「指導」。

移行も神鳥は左大内刈、これをきっかけに釣り手を肩越しに入れての左内股と快調に試合を進める。2分を過ぎてから展開は拮抗するが、双方得点のチャンスは薄く主導権は緩やかながら神鳥。

残り1分を過ぎ、藤原脇を差して突進。試合をまとめることが頭をよぎったか、神鳥敢えて抵抗せずにリスクなく場外まで出て、残り41秒神鳥に場外の「指導」。

これで反則累積差はゼロ、どうやら引き分けが穏当と思われたこの一番だが、最終盤に試合が大きく動く。神鳥が右袖釣込腰、一瞬両足が宙に浮いた藤原は外、内と順に足を降ろしてなんとか踏み止まるがチャンスと見た神鳥あくまで投げ切ろうと粘りに粘る。その「投げ切る」ための長いアクションが熟れ切ったところで、藤原後ろ襟を引っ掴んで隅落を図ると、握り込んだ手に自身が拘束される形になった神鳥は仰け反るように畳に落ち、主審は「有効」を宣告する。

事態の急転に神鳥、そして大成ベンチは色を失うが残り時間は既に20秒を切っており、もはや取り返すことは叶わず。結局この中堅戦は藤原の「有効」優勢で決着し、日体荏原は2-1と再逆転に成功。大成としては失点を織り込まず、どころかむしろ得点の可能性アリと踏んでいたはずの先鋒戦と中堅戦をいずれも失うという非常事態を迎えることとなった。

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副将戦、友田皓太が長井達也から背負投「有効」

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友田ガッチリ抑え込んで一本勝ちを果たす

副将戦は大成・友田皓太、日体荏原・長井達也ともに右組みの相四つ。
長井始まるなり強烈な圧力。前戦終盤におかる情勢暗転のショックを引きずったか友田対応が遅れて潰れてしまい、長井はすかさず脚で相手の両脚を纏める「脚三角」、ほとんど「抑え込み」が宣告されるところまで手順を進めるが友田なんとか粘り「待て」。

嵩にかかった長井は再開後も圧力を掛けて前進。友田明らかに嫌がってまっすぐ下がってしまい1分19秒友田に場外の咎で「指導1」。続く展開で長井が釣り手で奥襟を叩こうとすると、友田一旦組み手を切り離し一本背負投に潰れる。

明らかに平常心を欠いた友田の攻防に、大成ベンチから「お前の柔道をやれよ!」と厳しい喝。友田この檄に応えるかのように粘り強く試合を立て直し、1分40秒には片襟の右背負投を2連発。二の矢で見事長井を転がし「有効」を獲得する。

友田この機を逃してはならじとガッチリ袈裟固、長井必死に抗うが着々時間は進み、2分21秒主審は「一本」を宣告。

まさに殊勲の1点。先鋒戦と中堅戦のミスを一気に収拾する価値ある「一本」で大成はスコアを2-2に戻し、内容差で再びリード。勝負の行方は大将戦へと持ち込まれる。

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大将戦、開始早々に大成・並木泰雅が東部雄大から支釣込足「有効」を先制

運命の大将戦は大成・並木泰雅、日体荏原・東部雄大ともに左組みの相四つ。

地力に勝る並木、22秒にステップを切っての支釣込足。並木得意のこの技を東部は止められず転がりこれは「有効」。並木はしっかり寝技で時間を使い、まさしく順風満帆の立ち上がり。

地力のある並木に「有効」ビハインド、盤面を考えればこちらも「有効」以上の投げを決めなければ意味がないというまことに希望の持ちにくい状況だが、それでも東部は袖釣込腰、大内刈と必死の抵抗。技を繋ぎに繋いだ末、1分58秒には左体落に潰れながら並木を転がし伏せさせることに成功。これを受けて主審は並木に「指導1」を宣告する。

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「指導」失陥に動揺した並木は座り込みの右小外刈の選択ミス、東部狙い済まして返し「有効」

バックグランドに抱える盤面も、ポイントも、そして地力から帰納される以後の展開の類推という点でも並木の圧倒的優位は変わらないはず。しかし並木はこの「指導」失陥で平常心を失ったか、直後座り込みの小外刈に体を捨てて相手を捻り伏せる挙に打って出る。

後の先の得意な東部に、もっともやってはいけない体を投げ出しての捨身技。東部受けながら身を翻す得意の体捌きでその上に被り、「有効」を獲得する。その後の寝技の展開を経て「待て」が掛かったときには残り時間は1分39秒。双方立ち上がり、開始線に戻るこのブレイクの間に日体荏原サイドからは「『指導1』があるんだぞ!」の声、続いて小久保純史監督の「状況を考えろ!」とのアドバイスが飛ぶ。このまま試合が進めば引き分けだが、戦術に長けた東部がもしもう1つの「指導」を得れば盤面の全てがひっくり返る。中堅戦終盤に続き、突如狭い一本橋の上に放り出された大成サイドに、戦慄が走る。

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残り22秒、並木痛恨の掛け潰れ

それでもこのまま拮抗が続いて引き分けとなれば勝利するのは大成、依然シナリオとして最も可能性が高いのは自軍の勝利のはず。しかし勢いづく東部の前に並木の様子が少々おかしい。それでも放ったステップを切っての支釣込足に東部は態勢を大きく崩すが、畳に這う暇はないとばかりに立ちあがって突進。するとこれを捌きあぐねた並木は自ら反転、巻き込みの形で両手を放し、背筋を伸ばした東部を後ろに残したまま腹這いに潰れてしまう。

誰がどう見てもかばいようがない、典型的な展開を切るための偽装攻撃。主審ルール通りに「指導2」を宣告、残り時間は僅か21秒。

並木前に出るが、撤退戦の勘所を弁え切った東部は浮腰の形で相手を振り回し、組み合っての会話を拒否しながら自身だけが攻撃する巧みな試合捌き。

試合はこのまま終了、双方「有効」を取り合った結果東部の得た「指導2」が残り、この試合は「指導」差によって東部の優勢勝ちとなった。つまりはまさかの大逆転劇完成、最終スコア3-2で日体荏原が今季初の全国大会決勝へと駒を進めることとなった。

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惜しくも、そしてまたしても日本一に届かず、悄然の大成チーム

日体荏原高 3-2 大成高
(先)松井海斗〇優勢[有効・大外刈]△前濱忠大
(次)長井晃志△一本背負投(3:27)〇古賀颯人
(中)藤原崇太郎〇優勢[有効・大内刈]△神鳥剛
(副)長井達也△袈裟固(2:21)〇友田皓太
(大)東部雄大〇優勢[僅差]△並木泰雅

総合戦力は大成が上との事前評は妥当なものであったと思われるし、これは結果が出た後も覆す必要はないと思われる。ただし「仕事が出来る」人数において日体荏原が劣るという観測は明確に撤回せねばなるまい。

松井勝利の因は大外刈一発の強さではなく、手堅く「指導」を積んだ序盤戦の集中力の高さであり、藤原の勝利は神鳥がいわば「ロスタイム」と判断した最終盤の攻防を勝敗の分水嶺と捉える戦術眼の高さに基づく一撃だった。そして東部の勝利を呼び込んだのは、一見「無駄な抵抗」に見えた、勝敗に関わる可能性僅少と思われた序盤の「指導1」の獲得であり、投げる材料少なくとも体格に勝る並木の背中を果敢に抱えに行った強気であった。今代のチーム結成以来、試合構成の粗さと勝負どころの淡白さが指摘され続けて来た日体荏原だが、この試合の勝利の因となったのは今代の高い評価の所以であった才能や地力の強さではなく、勝負どころを見極める集中力の高さと攻め続ける勤勉さ、あきらめない心の強さだった。松井の集中力の高さが以後の4人に伝染したかのような、かつての「弱点」を逆に勝利の因として難敵大成を破った日体荏原チームの戦いぶりはまさしく見事。大健闘を演じた金鷲旗大会からさら、一皮剥けて、今代の日体荏原ここに完成とでも評すべき素晴らしい試合であった。

敗れた大成、国士舘に抗し得るおそらく唯一のチームであったがこの試合はミスに泣かされた。持ち直すべき場面で絶対に与えてはならない2つ目の「指導」を失った前濱、行かなくても良い場面であくまで「足し算」の攻めに打って出て思わぬ失点を喫した神鳥、そして格上の力関係にありながらあまりの接戦にパニックを起こして自滅した並木。古賀と友田が見せた攻撃性の高さと「一本」獲得劇、そしてあくまで攻めに出た神鳥の姿勢は攻撃柔道を標榜する大成らしいものであったが、「蟻の一穴」とでもいうべき「指導」失陥から試合を壊してしまった悔しい試合となった。

金鷲旗大会決勝での敗退について石田輝也監督は「神鳥が興奮して冷静さを欠いた。あの強気が神鳥の良いところだが、あの場面で冷静さを保つ選手を作ることが日本一への道」と語っていた。地力も攻撃性も十分、しかしディティールとメンタルコントロールで試合を落としてしまったというこの結果は、まさにこの時に為された石田監督自身の分析通り。昨年、今年と素晴らしいチームを作って来た大成、またしても届かなかったこの経験はどう次代のチームに生きるのか。以後も高校柔道の主役を担う存在として、さらなる好チームの育成に期待したい。

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国士舘・河田闘志が神戸国際大附・倉見潤から崩袈裟固で一本勝ち

国士舘高 5-0 神戸国際大附高
(先)磯村亮太〇送襟絞(0:49)△田上英也
(次)河田闘志〇崩袈裟固(1:02)△倉見潤
(中)飯田健太郎〇合技[出足払・横四方固](0:48)△福井優駿
(副)竹村昂大〇優勢[技有・内股]△新井滉燿
(大)山田伊織〇裏投(0:42)△石山潤平

同時進行で行われた国士舘-神戸国際大附による準決勝第二試合は国士舘が圧勝。
先鋒磯村亮太は前戦に引き続き躊躇ゼロの早い攻めを見せ、開始するなり右小外刈で「有効」、伏せた相手を「腰絞め」に捉えてあっという間の一本勝ち。次鋒河田闘志も難敵倉見潤を僅か1分2秒の崩袈裟固「一本」に仕留める。

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飯田健太郎が福井優駿から出足払「技有」

攻撃力のある田上、サイズのある倉見と前衛の橋頭堡2つをあっという間に抜かれた神戸国際大附は絶対絶命。その煮詰まった状況下で行われた中堅戦は国士舘・飯田健太郎が開始早々の左出足払で福井優駿に宙を舞わせ19秒「技有」獲得、そのまま崩袈裟固、横四方固と繋いで合技の一本勝ち。

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エース対決、山田伊織が石山潤平を抱え上げて豪快な裏投「一本」

ここまでの「3タテ」に要した試合時間は僅か2分39秒。国士舘まさしくあっという間に決勝進出を決め、決勝に向けて試合をまとめるべく新井滉燿と石山潤平の神戸国際大附が誇るエース2枚を畳に迎え入れることになる。

そして国士舘の攻撃は既に勝利が決まったこの段に至っても止まず。竹村昂大は巨漢新井滉燿必殺の抱きつき小外掛を呼び込み、自身の左内股に載せかえて「技有」獲得の完勝。最終戦は山田伊織が石山潤平の大外刈を高々と裏投に捉えて「一本」で試合を締め、辿り着いた最終スコアはなんと5-0。インターハイ準決勝という場にあるまじき凄まじいスコアで、国士舘が順当に決勝進出を決めた。

結果決まった決勝カードは、東京都予選の再現。

日体荏原高 - 国士舘高


となった。

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