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インターハイ柔道競技男子団体レポート②3回戦

(2015年8月15日)

※ eJudoメルマガ版8月15日掲載記事より転載・編集しています。
②3回戦
インターハイ柔道競技男子団体レポート
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大成高の次鋒清水祐希が水戸啓明高・黒田悠正から大外巻込「有効」奪取

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大成高の副将友田皓太が奥谷政城から一本背負投「一本」

【Aブロック】

大成高 4-0 水戸啓明高
(先)前濱忠大×引分×筒井大介
(次)清水祐希〇袈裟固(3:58)△黒田悠正
(中)神鳥剛〇優勢[技有]△小野瀬優人
(副)友田皓太〇一本背負投(0:28)△奥谷政城
(大)並木泰雅〇支釣込足(1:33)△木戸裕太郎

大成高が危ない場面なく4-0で勝利。上位対戦に向けてサイズのない古賀颯人の登場を1試合でも減らすべく、この試合も継続起用された次鋒清水祐希が奮戦。黒田悠正を相手に遠間から踏み込む大外刈で攻め続け、当初取れる気配の薄かった試合は清水の一発一発を投げ切らんとするしつこさとエンジンを吹かし続ける連続性に様相一変。最終盤ついに黒田が陥落、清水が大外巻込「有効」からの袈裟固「一本」で試合を決めてチームに貴重な先制点をもたらす。

続く大成の後衛の強力3枚は清水の頑張りを受けてしっかり仕事を果たす。神鳥剛の内股「技有」で追加点を得ると、副将友田皓太は一本背負投、大将並木泰雅は支釣込足といずれも早い時間で「一本」を獲得。順当にベスト8に名乗りをあげることとなった。

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東海大仰星高・池上大貴(右)と福井工大福井高・利根琢也による先鋒戦

東海大仰星高 4-0 福井工大福井高
(先)池上大貴〇縦四方固(1:03)△利根琢也
(次)岡虎〇優勢[技有]△ダシドラム イシドルジ
(中)深山将剛〇優勢[技有]△宮浦司
(副)山内凌太〇払腰(0:30)△中川清志郎
(大)海江田充輝×引分×牧野祐也

好調・東海大仰星が前戦で鎮西と大熱戦を演じたばかりの福井工大福井高を一蹴。先鋒のエース池上大貴から副将山内凌太まで一気呵成の4連勝で全く相手を寄せ付けなかった。仕上がりの良さに加えてここまで勝ち上がりの好内容もあり、畳に上がる各人の立ち振る舞いからは自信が立ち上る。西の強豪東海大仰星、堂々ベスト8進出決定。

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日体荏原高の先鋒松井海斗が木更津総合高・仲佐怜優から小外刈「有効」を奪う

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長井晃志は苦戦を一撃で打開、山下魁輝の右内股の戻りに合わせて左小外刈に体を捨てて「有効」

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藤原崇太郎が和田樹希也を攻める

【Bブロック】

日体荏原高 3-0 木更津総合高
(先)松井海斗〇上四方固(3:32)△仲佐怜優
(次)長井晃志〇優勢[有効]△山下魁輝
(中)藤原崇太郎〇反則(3:42)△和田樹希也
(副)長井達也×引分×中村拓夢
(大)東部雄大×引分×楠竜童

日体荏原が木更津総合の挑戦を跳ね除ける。先鋒戦では松井海斗が小外刈「有効」から相手の脚を両脚でまとめて縦四方固を狙い、粘る相手をコントロールして横四方固、上四方固と繋いで「一本」。続く長井晃志はエース格の山下魁輝のサイズと圧力に4分通じて苦戦したが、嵩にかかって攻め込んで来た相手の右内股の戻りに、座り込みの左小外刈を合わせる粘りの一撃で「有効」を獲得して勝利。続いて藤原崇太郎がエース対決で和田樹希也に「指導」4つを奪って勝利した中堅戦で早くも日体荏原の勝利は確定、副将戦と大将戦は引き分けてこの試合は3-0の大差に終着した。

力で圧倒して、あるいは一瞬の隙をついてと日体荏原がその強さをしっかり結果に結びつけた一番。木更津総合は持ち前の強気で得意の乱戦に持ち込みたかったところだが、日体荏原がその意図に取り合わず、地力の高さとディティールの巧さ、勝負強さと自軍の良いところだけを発揮して、木更津総合に力を出させないまま駆け抜けたという印象の一番であった。

木更津総合は高校選手権、金鷲旗といずれも16強入り。敗れた試合も前者では天理と、後者は神戸国際大附と大乱戦を演じて存在感を発揮し、今大会序盤戦は両大会の経験をテコにすっかり「強豪の顔」で畳に登場。インターハイ独特の雰囲気にもまったく怖じずに自信溢れる試合を繰り広げていたが、この試合は持ち味を発揮出来ず。日体荏原が一段違う力を見せたと評して良い試合だった。殴り合いの出来るメンタリティという点では両軍似たところのあるチームであり、その分力の差がわかりやすい形で出たと評しておきたい。

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東海大相模高・杢康二郎はサイズ差に怖じることなく並里樹と引き分け、リードを守る

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天理高・田中慎太郎が左内股「有効」から河内優斗を抑え込みに掛かる

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熱戦決着、東海大相模高の大将辻湧斗が内股返「一本」

東海大相模高 2-1 天理高
(先)島田陸〇裏投(2:27)△笠原大雅
(次)杢康二郎×引分×並里樹
(中)中尾旭×引分×矢野真我
(副)河内優斗△後袈裟固(3:49)〇田中慎太郎
(大)辻湧斗〇内股返(1:10)△山崎壱盛

昨年来全国大会で振るわぬ東海大相模、一方地元の期待を受けてどうしても勝たねばならぬ天理、ともに譲れぬ事情を背に抱えた一番は初戦で激しく試合が動く。先鋒戦における島田陸の裏投「一本」で東海大相模が見事先制。次鋒戦は杢康二郎が体格差に怖じず並里樹を止め、中尾旭と矢野真我がマッチアップした中堅戦も引き分けに終着する。3戦を終了して東海大相模が1-0とリード。

このままでは終われぬ天理は副将田中慎太郎が迫力の試合を展開、後袈裟固「一本」で河内優斗を下し、1-1のタイスコアで勝負の襷を大将戦に繋ぐ。

場が沸騰しきったこの大将戦では辻湧斗がオールラウンダーとしての本領を発揮。山崎壱盛の内股を返し、1分10秒「一本」で勝利。この瞬間地元天理のベスト16敗退が決定。東海大相模が準々決勝に駒を進めることとなった。

東海大相模は久々チーム一丸となった、「らしい」試合。ここで負けるわけにはいかないというプライドと集中力が全員に染みた好試合だった。

敗れた天理は初戦から動きが硬かったが、そのパフォーマンスは大枠金鷲旗大会の延長線上に収まるもので、敗退の因を一に地元開催のプレッシャーに帰するのは難しい。過度な緊張によるパニックを起こすことも、逆に地元開催ゆえの異常な気合でパフォーマンスに上向きの化学変化を起こすこともなく、意外にあっさりと試合を終えたという印象。

地元とはいえ会場の声援は穏やかそのもので、例えば詰めかけたOBの怒声が響いて現役選手が青ざめ、勝たねばならぬとのプレッシャーに目を吊り上げて畳に上がるというような、他校がその様に震え上がるような「アウェイ」感はなかった。高校生の試合は高校生のもの、とばかりに「大人」な雰囲気の地元の声援の中、しかし骨太の抵抗なく試合を終えた今大会の出来はファンとしては少々残念。古田伸悟や正木聖悟ら技の切れるいかにも天理らしい選手を擁して全国の強豪に「上から目線」で堂々渡り合った前代の印象が強いだけに、やや物足りなさを感じる今夏の戦いぶりだった。

【Cブロック】

東海大四高 1-0 東海大甲府高
(先)五十嵐大海×引分×熊野暢彦
(次)鎌田龍翔×引分×西野孝祐
(中)藤井峻将×引分×南條伯彬
(副)岡部光紀×引分×鈴木連次
(大)瀬川勇気〇優勢[僅差]△山崎優介

同じ東海大系列の好チームによる激突は、ここまでの勝ち上がりの勢いそのままに東海大四の勝利に終着。4試合引き分けを受け、最終戦は指導」累積で勝利するという究極の拮抗戦をモノにして、栄光のインターハイベスト8進出を決めた。

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先鋒戦、安田夢飛は磯村亮太に肩越しで釣り手を入れさせると隅落を狙って抱きつき、磯村は腰を切ったまま後退を余儀なくされる

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終盤戦、磯村はこれまで警戒していた安田の大内返を食い掛け大きく体勢を崩す

国士舘高 - 作陽高
(先)磯村亮太 - 安田夢飛
(次)河田闘志 - 岩﨑恒紀
(中)飯田健太郎 - 星野太駆
(副)竹村昂大 - 田村淑真
(大)山田伊織 - 久野壱真

3回戦最大の注目対決。2013年インターハイ準決勝で田崎健祐、江畑丈夫ら「三銃士」世代を擁しながら無名集団と言って良い作陽に食われて以降、国士舘は常に相当の警戒感を持ってこのチームに接してきた。そして川野一道監督以下、実力の練磨はもちろん狙った相手を「殺す」ことに全精力を躊躇せず傾けるこのチームに対して、その国士舘の警戒は決して過剰なものではない。

戦力差はあまりに明らかだが、金鷲旗大会の対戦ではこの国士舘の警戒感の高さが自軍の消極的姿勢を呼び起こし、そのパフォーマンスは以後の試合に伝染。大会通じた国士舘の低調と準決勝、決勝での接戦を呼び起こしたという来歴もある。

勝ち負けは抜き。国士舘が作陽という「嫌な相手」をどう乗り越えるか、おそらく国士舘のオーダーを完璧に読んで布陣している作陽が戦術ディティールにどのような爆弾を埋め込んでくるか、非常に興味深い一番だ。

先鋒戦は国士舘・磯村亮太に右相四つの安田夢飛がマッチアップ。序盤磯村が右大内刈を見せるが効かず、安田は両襟から釣り手を高く握り上げて支釣込足、続いて「決まり事」のように抱きつきの一発勝負に出て、懐に呑んだ刃物で磯村の肺腑を抉る気満々。

地力に大きく勝る磯村は支釣込足、さらに遠間から大内刈に足を差し入れるが、大内返を怖れたか踏み込みを中途で止め、投げることも出来るが返される可能性もある絶対値の高い位置での勝負を避け続ける。2分1秒にも磯村は大内刈で追い込みを試みるが前進の決意に欠け、安田は回り込んで払巻込に変換。安田試合が熟した2分38秒には横落の一発を試みて残り時間の展開に向けて楔を打ち込む。

残り1分、探りの大外刈を入れてしかし飛び込まず、ついで払巻込に潰れる磯村の試合構成はいまだ煮え切らず。残り36秒の大内刈は安田が思い切り大内返に切り返し、あわやポイントという場面も現出。以後はリスクを避けた磯村がやや試合を流し、この試合は引き分けに終わった。

作陽ベンチはスタンドと一体になって「良くやった!」と大盛り上がり。引き分け獲得で勝利感を演出する相手に国士舘は一層のやりにくさを感じること必定という体。

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次鋒戦、河田闘志は圧力の掛け合いから上下のあおりで抜け出し掛かるが、岩﨑恒紀あくまで畳に立ち続けて抵抗

次鋒戦は国士舘・河田闘志に岩﨑恒紀がマッチアップ。岩﨑は右相四つの巨漢という力の差が出やすい相性の河田に対し敢えてガップリ両襟で圧の掛け合いを挑み、河田はこの拮抗展開からなかなか抜け出せない。河田の圧に対し岩﨑が弱気のリアクションを起こせば試合は一気に動くはずだが、岩﨑あくまで右足を引かずに強気の右構えを崩さず、河田この拮抗を崩す行動に打って出ることが出来ない。1分13秒双方に「指導」、2分24秒双方に「指導2」、3分13秒岩﨑に「指導3」が宣告されるが、一貫して圧の掛け合いというこの試合の様相は最後まで変わらず。この試合も引き分けに終わった。

この試合中にアクシデントあり。主審が作陽・川野監督の声援に対して2度目の注意。ルール通りであればここで注意のみで処分を済ませることは出来ず合議の結果、川野監督に退席が命ぜられる。傍で見ている限りでは、川野監督は「待て」の合間に声援を限定して、出来得る範囲で得意の雰囲気づくりを行っていたという印象だったが、ケアシステムで確認した上で為された判定は絶対。川野監督「こういうこともあるさ」とばかりに苦笑い、畳前に控える中堅星野太駆のお腹をポンと叩いて試合場を後にし、試合は中堅戦へと引き継がれる。

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星野太駆が抱き着いて裏投、飯田健太郎を抱え上げるが飯田は腹上から降りてもろとも倒れることで回避

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飯田の出足払のモーションに星野思わず膝を屈し、「指導」

中堅戦は国士舘・飯田健太郎、作陽・星野太駆ともに右組みの相四つ。星野は飯田の右袖を殺し、飯田は掻い潜り直して釣り手を肩越しに入れて持つ。飯田が組み勝つ形をしっかり作った33秒星野に「指導1」。

星野腰を抱くように大内刈、しかし飯田は回り込んで支釣込足、そしてあくまで接近戦を挑みたい星野再び抱きつきを試みる。力の差を無力化する近接戦闘を狙う星野、間合いを取ってからしっかり組んで優位を確保したいという飯田という構図が続き、57秒星野に2つ目の「指導」。

1分35秒、飯田が足技のモーションを起こすと、この状況における飯田の技の選択肢を熟知した星野は逆に素早く反応。足の襲来ないまま自ら畳に膝をついてしまい、1分35秒3つ目の「指導」が宣告される。

後のなくなった星野、抱きつきの仕掛けを試みるが飯田あるいは反転してもろとも倒れ、あるいは突き放して間合いを取ってと、その意図にとりあわず。2分56秒4つ目の「指導」が宣告されて試合終了、この試合は「指導4」の反則を以て飯田が勝利。国士舘は貴重な先制点を得る。

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竹村昂大と田村淑真による副将戦

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大将戦、山田伊織の支釣込足を振り返した久野壱虎は崩れた山田の腕を抱えてあくまで投げ切ろうと図る

副将戦も相四つ対決、国士舘・竹村昂大と作陽・田村淑真ともに左組みの、力の差が出やすい相性での顔合わせ。
開始するなり田村左内股。竹村しっかり潰すがスタンドの大拍手に勇気づけられるように田村は再度の左内股、さらに戻るなりの左背負投と「取りに行く」技を連発。一方の竹村はこの雰囲気に流されまいと殊更スタティックに試合を進める印象で、ガップリ組み合う拮抗の場面が増える。

残り43秒で田村が組みつきの左大内刈を放って会場を沸かすが、大枠試合は荒れることなく終了。この試合も引き分け、スコアは1-0のまま勝負の行方は国士舘の絶対のエース・山田伊織が睨みを利かす大将戦へと委ねられる。

大将戦は山田、久野壱虎ともに左組みの相四つ。
久野開始するなり、両袖を流しての左内股。揺るがぬ山田は得意の支釣込足、立ったまま押し込みを狙うが久野踏ん張ってこれはノーポイント。

久野は釣り手を高く持ち、横変形に位置をずらして組み合い続ける。山田当然ながらこの形に即して得意の支釣込足に打って出るが、久野弾かれたように相手を引き寄せながらハンドルを切り返し、支釣込足殺しの浮落。しかし相手の踏み込みが思ったより浅く、その分この所謂「ナオスペ」の動作だけでは投げ切れず。

久野の技はこれだけでは止まらない。崩れた山田が支釣込足を効かせるためにどうしても離すわけにはいかない釣り手を両腕で抱え込んで大内刈で追いかけ、この二の矢を受けた山田は大きく崩れて伏せ「待て」。

久野狙い通りの、それも明らかに事前にプログラムされた一撃だったが、起動の早さを意識するあまり過剰反応して掛りが浅くなった感あり、惜しくもポイントには至らず。山田得意の支釣込足に敢えて罠を仕掛ける作戦は見事だが、興味深いのは「二の矢」の釣り手の抱え込み行動。山田の支釣込足の生命線は高く強く握った釣り手の拘束であり、これだけは絶対に離さないはずで、それを逆に利用したという体のアクションだ。相手のもっとも重要視するポイントにこそ罠を、それも確実に取るべく二段三段の攻めを仕掛ける作陽の戦術性の凄まじさはここに端的。そして、そこまで狙われながらポイントを許さない山田のバランス感覚はこちらも怪物級。
他に比類なき「狙った」ときの戦術性の高さと、これを跳ね除けるモンスター級の地力。5戦通じた作陽-国士舘の対戦構図はこの対戦、この攻防にまさに端的。

山田左大外刈、膝をついて追いかけるが久野肩越しに釣り手を入れ直して制し、ノーポイント。経過時間は1分16秒。

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山田は大外刈を耐えさせておいた久野の腕を確保、抑え込みへと繋ぐ

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健闘の作陽、ほぼ全勝で大会を終えることとなる最強チーム国士舘から3引き分けを獲得した

続く展開、山田呼吸を整えて左大外刈。敢えて細かい作りを入れないこの技に久野膝を着きながら踏ん張って耐えると、山田耐えさせておいたその腕を極めて、上体を制して押し込む。初動の体勢のあまりの悪さに久野に抗する手立てはなく、山田粛々と手順を進行しこの攻防は山田の上四方固「一本」で決着。結果、スコア2-0を持って国士舘が勝利、準々決勝へと駒を進めることとなった。

国士舘高 2-0 作陽高
(先)磯村亮太×引分×安田夢飛
(次)河田闘志×引分×岩﨑恒紀
(中)飯田健太郎〇反則(2:56)△星野太駆
(副)竹村昂大×引分×田村淑真
(大)山田伊織〇上四方固(1:53)△久野壱虎

作陽は試合場の至るところに地雷を埋めていた。磯村の大内刈に対する安田の呼び込みと自身の支釣込足から抱き着くという異様な連携、相四つ巨漢が苦手なはずの岩﨑恒紀が、相手の回避行動につけこむことが巧みな河田に対して採った決して右足を引かない強気の拮抗組み手、飯田がこのところ得意にしている出足払に対する星野の過敏過ぎるほどの反応、そして格上相四つの山田に対して敢えて横変形で釣り手を高く入れてルートを限定し、そのルートに得意の支釣込足で入り込んで来た山田に浴びせた久野の浮落による銃撃。おそらく、筆者の目に見えないところでの駆け引きと仕掛けは、まだまだ質量とも相当なものが隠れているはずだ。

そして、みっしり仕掛けられた地雷を、踏むことなく、決定的戦闘行動を起こすことがないまま周到に回避することだけで地雷源を「抜けてしまった」のが国士舘。4戦通じて、挑む立場の作陽を利する、リスクを呑んでの攻撃行動はほとんどなし。獲りに行く色気は隙に繋がるとばかりに優位確保に徹し続けてまず1点を確保し、最後はもっとも戦力差の大きい大将戦の順行運転の1点でまとめるという非常に手堅い試合だった。

「それだけで」勝ててしまう国士舘の地力の高さはやはり尋常ではない。しかしこの試合の国士舘の戦いぶりは「用心するな」「攻めろ」「攻めなければ三冠はない」という岩渕公一監督が掲げた今大会の大方針とは真逆の様相であった。失点を警戒するあまり、そして順行運転で勝利出来る戦力があるがゆえに自縄自縛に陥り、大苦戦を演じた金鷲旗大会における「負の流れ」がいまだ払拭出来ていない、国士舘の状態はあの金鷲旗の延長線上にあると周囲が確信できる、一言で言って煮え切らない試合だった。勝負を先送りしたが試合には勝ったという、明らかに指揮官が指し示す道と進むべき方向がずれてしまったこの試合を経て、国士舘は最終日に行われる上位対戦に向けどうチームを立て直すのか。大会の分水嶺として、非常に興味深い一番であった。

【Dブロック】

白鴎大足利高(栃木) 3-1 新田高
(先)長島立弥△横四方固(3:48)〇立川新
(次)薄井裕太〇反則(0:43)△米澤航春
(中)釜石康太×引分×信岡弘太
(副)太田彪雅〇小外刈(2:57)△伊藤好信
(大)河村貴文〇払巻込(2:07)△高橋隆吾

新田高のポイントゲッターは立川新、信岡弘太、伊藤好信の3名。当たり前だが5人制団体ではそのままチームの勝利を決める「3」という数字の持つ意味は大きい。
ということは白鴎大足利としてはこの3名のうち、具体的に誰が誰を止め、どこで得点するかという単純な「算数」にどう答えを出すかが最大の課題。幸い副将戦で自軍の絶対のエース太田彪雅が伊藤とマッチアップしており、「エースをエースで潰す」もっとも有利な戦術行動がじゅうぶん可能。あとは立川と信岡、この2枚のうち最低限1枚を止めるという仕事を誰が行うかが問題だ。

この役割を担ったのが、佐俣楓の負傷欠場により緊急出動した2年生の釜石康太。1勝1敗を受けた中堅戦で信岡と引き分ける殊勲を演じ、副将の太田に襷を繋ぐ。太田は難剣タイプの伊藤に対し動じることなく、フェイントを入れた小外刈を決めて期待通りに鮮やかな「一本」奪取、白鴎大足利はこの時点で逆転に成功。代表戦までを入れた星勘定上まず負けがなくなったこの状況で行われた大将戦も河村貴文が払巻込「一本」で高橋隆吾を破り、最終スコア3-1という会心のスコアで勝利を得ることとなった。

新田の3枚に対して1勝1敗1分け、得点ポイントとなるこれ以外の2ポジションでしっかり2点を挙げた白鴎大足利としては、まさしく勝つにはこれしかこれしかないという試合。良くも悪くも試合ぶりが派手で場を荒らすことが多い佐俣に代わって、何をやっても「足し算」としてチームを盛り上げられる立場の釜石が入ったことで逆に試合が締った感すら漂わせ、白鴎大足利みごとベスト8進出決定。

昨年の国民体育大会の好パフォーマンスにより、年間通じて上位候補に挙げられ続けた新田は高校選手権のベスト8を最高成績として今代を終えることとなった。

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大将戦最終盤、神戸国際大附の石山潤平が西田将樹を大内刈で畳に落とすが、西田尻もちで耐えて惜しくもノーポイント

神戸国際大附高 3-2 大牟田高
(先)田上英也△〇内股(2:54)△立野宏輔
(次)倉見潤△送襟絞(3:43)〇浜野大生
(中)福井優駿△腕挫十字固(3:11)〇西山瑠星
(副)新井滉燿〇合技(1:06)△久保大喜
(大)石山潤平〇優勢[僅差]△西田将樹

先鋒戦を落とした大牟田だが次鋒浜野大生、中堅西山瑠星とポイトゲッター2枚でしっかり2点、いずれも「一本」を獲得する最高の仕事を果たして3戦終了時で1点のリード。試合は神戸国際大附の強力2枚が控える後半戦へと引き継がれる。大牟田が守りきるか、2連勝しか道のない神戸国際大附がまたもや「まくる」のか、第4試合場はまことに緊迫の展開。

迎えた副将戦は新井滉燿が僅か1分6秒、合技「一本」で勝利し、神戸国際大附があっさり試合をタイに戻す。ポイントゲッター同士が対峙した大将戦は神戸国際大附の石山潤平が「指導」累積差でしっかり勝利し、再逆転劇完成。神戸国際大附が準々決勝へと駒を進めることとなった。

神戸国際大附は前半で抑え、後半の強力2枚でめくるという今大会の必勝パターンを接戦の中でも完遂。好チーム大牟田は先鋒戦の「一本」失陥が最後まで響き、高校選手権ベスト4の栄光から一転、2大会連続入賞なしで今シーズンを終えることとなった。

結果決まった準々決勝カードは、

大成高 - 東海大仰星高
東海大相模高 - 日体荏原高
東海大四高 - 国士舘高
白鴎大足利高 - 神戸国際大附高

の4試合となった。

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