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全日本学生柔道優勝大会男子レポート③準決勝

(2015年7月30日)

※ eJudoメルマガ版7月30日掲載記事より転載・編集しています。
③準決勝
全日本学生柔道優勝大会男子レポート
■ 準決勝
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山場の天理大戦を乗り越え、準決勝で東海大に挑む国士舘大

開示されたオーダー順は下記。

東海大 - 国士舘大
(先)香川大吾 - 塚本健太郎
(次)阪本健介 - 小川竜昂
(五)ウルフアロン - 砂田勇登
(中)倉橋功 - 釘丸将太
(三)ベイカー茉秋 - 江畑丈夫
(副)影浦心 - 佐藤正大
(大)長澤憲大 - 遠藤翼

戦域全てに渡って東海大が優位。東海大としてはミスなく試合を進めて、最悪でもウルフアロンが登場する五将戦、倉橋功が1年生の釘丸将太とマッチアップする中堅戦、エースのベイカー茉秋が畳に上がる三将戦と3つのポイントをしっかり押さえれば勝利はまずまず確実。この3戦以外もリスク管理をしっかり行いつつ、取れるところをしっかり取るという順行運転の戦略で十分得点の積み上げが可能な陣容、そして布陣と評して良いかと思われる。

一方の国士舘としては、ロースコアゲームに持ち込む以外に勝利への道はない。抑えるべきところを抑え続けて、柔道に大物食い要素のある副将佐藤正大、サイズと組み手で相手の柔道を塗りつぶせる可能性のある遠藤翼の後衛2枚に望みを繋ぎたいところ。より良いシナリオとしては、柔道の絶対値の高い小川竜昂で得点、相手の焦りを誘ったうえで、かつてのベイカーのライバルであり一発の威力で名を打った江畑丈夫で相手の強者から獲る「プラスマイナス合わせて2点」のプレミア得点を狙うということになるだろう。

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東海大・阪本健介が小川竜昂を相手に果敢に攻め込む

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ウルフアロンが砂田勇登を激しく攻め続ける

しかし試合はのっけから東海大ペース。先鋒戦は東海大・香川大吾が左相四つの塚本健太郎を相手に体力差が展開に表れ始めた終盤一気に加速、3分22秒に左袖を両手で押し込みつつ、斜め前隅への左大外刈を押し込み「有効」を獲得。さらに「指導」2つを追加する盤石の試合ぶりで先制点を得る。次鋒戦も阪本健介がソツなく攻め続け、大枠撃ち合いの様相も局地戦においては手数、有効打ともに常に勝って残り25秒までに4つの「指導」を得て勝利確定。開始から2連勝という最高のおぜん立てを得た五将ウルフアロンは3分52秒の時点までに3つの「指導」を得る快走、後のなくなった砂田勇登が上から被せて来た右小外掛を左大内刈に切り返し、3分19秒「一本」を獲得。3戦終了時でスコア3-0とこれ以上ないシナリオで試合を進める。

意気消沈した国士舘に対し、東海大は矛を収める気配まったくなし。中堅戦は倉橋功が釘丸将太を開始26秒の内股「一本」で仕留めて、先鋒戦から4連勝。この時点で早くもチームの勝利を確定した。

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東海大・倉橋功が釘丸将太から内股「一本」

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東海大・倉橋功が釘丸将太から内股「一本」(連続写真)

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ベイカー茉秋が江畑丈夫から大内刈「有効」

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大将戦、長澤憲大が貪欲に攻め続け、遠藤翼から次々「指導」を奪取

国士舘としてはもはやどう意地を見せるかだけがテーマの苦しい試合となったが、この悪い流れは押しとどめようがない。三将戦はベイカー茉秋が江畑丈夫を相手に「指導2」をリードした最終盤、右相四つの江畑が釣り手で奥襟を叩いて来たところを掻い潜り、双差しに帯を掴んで右大内刈「有効」を奪取し、優勢勝ちでさらに1点追加。副将戦は影浦心が佐藤正大の担ぎ技をしっかり凌いで引き分け、大将戦も長澤憲大が遠藤翼から3つの「指導」を得るなどサイズに怖じずに攻め続けて引き分け。結果、なんと5-0という大差で東海大が勝利を得ることとなった。

東海大 5-0 国士舘大
(先)香川大吾〇優勢[有効・大内刈]△塚本健太郎
(次)阪本健介〇反則[指導4]△小川竜昂
(五)ウルフアロン〇大内刈(3:19)△砂田勇登
(中)倉橋功〇内股(0:26)△釘丸将太
(三)ベイカー茉秋〇優勢[有効・大内刈]△江畑丈夫
(副)影浦心×引分×佐藤正大
(大)長澤憲大×引分×遠藤翼

最初から最後まで東海大のシナリオで進んだ試合。流れを増すことも変えることも出来る阪本、取り味のある倉橋、責任感抜群の長澤の4年生3人を分水嶺になり得る位置にそれぞれ配置し、3年生以下の攻撃型選手をポイントゲッターとしてその「流れ」に乗せて戦わせるという布陣も嵌った。決勝に向けて万全の勝ちぶりと評して良いだろう。

一方の国士舘はまったく良いところがなかった。布陣の「名前」比べで想起される以上に差がついてしまったそのスコアには、用兵上の出来不出来より普段の稽古での錬磨の差、「地力」という言葉を考えざるを得ない。そして前述したロースコアゲームを可能ならしめるにはチームの一体感と勝利への渇望という「気持ち」の醸成が必要不可欠だが、この点でも国士舘の選手たちには物足りなさを感じた。本来、強者相手にしぶとく粘ってチャンスを探しながら勝利を得るというのは国士舘の伝統芸のはずだが、その観点で言えば、スコア以上に「国士舘らしさ」が全く発揮できなかった試合と総括出来る。各々が違うモチベーションを抱えているかのような準決勝の7戦からは、国士舘の上がり目を感じることは難しかった。国士舘らしいしぶとい試合を可能ならしめる一体感のあるチームを再び作ることが出来るのか、かつて大学柔道の主役として君臨した国士舘の捲土重来に期待したい。

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3年連続の決勝進出を目指す日本大

日本大 - 筑波大
(先)向翔一郎 - 山本幸紀
(次)本間捻永 - 小林悠輔
(五)佐藤和哉 - 尾原琢仁
(中)レイズカヨル - 永瀬貴規
(三)安達裕助 - 長倉友樹
(副)制野孝二郎 - 神谷快
(大)尾崎央達 - 黒岩貴信

中堅戦ではレイズカヨルに永瀬貴規、副将戦では制野孝二郎に神谷快とポイントゲッター同士が2ポジションでカチあった、双方にとってなかなかに難しい試合。もしこの2戦でいずれかに得点があれば、それはイコールそのままチームの勝敗を決める「質の高い点」になるだろう。まずこれを踏まえた上で。

日本大としては準々決勝勝利の立役者である先鋒の向翔一郎と五将の佐藤和哉に期待したいところ。安定感に欠けるが技一発の威力と勝負力のある向を先鋒に起用したのは、前で獲り、その勢いをテコに中盤以降の主力対決を優位に進めることを企図するからに他ならない。向で取り、次鋒戦を凌ぎ、五将の佐藤で差を広げて中盤戦以降を「上から目線」で戦うという試合進行がもっとも理想的なシナリオ。

筑波大もジョーカー的な駒ながら勢いと一発の魅力がある山本幸紀を先鋒に起用。こちらは前衛最大の得点ポイントは小林悠輔が送り込まれる次鋒戦。山本に殴り合わせることで向の攻撃力を消し、小林が取り、尾原が凌ぐという形で五将戦までに出来得れば1点をリードし、サイズに劣る永瀬がレイズ相手に無茶をしなくても済むようなおぜん立てをしておきたいところ。大将の黒岩貴信は凌ぐことが巧い尾崎央達が相手だが、相手が出て来なければならないバックグランドがあれば十分一発が見込める。なるべく早い段階でリードを得て、中盤から後衛の選手が無理をせずに済む状況を作ったまま大将黒岩に襷を繋ぎたい。

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日本大の先鋒向翔一郎が山本幸紀から支釣込足「技有」

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日本大の先鋒向翔一郎が山本幸紀から支釣込足「技有」(連続写真)

というわけでまことに重要な先鋒戦、結果的に勝ちを得たのは日本大。向が左相四つの山本を相手に1分53秒タイミングぴたりの支釣込足。相手の上半身に蓋をするように深く入った「一本」級の技だったが、勢いが付きすぎて山本の体が回ってしまいこれは「技有」。向は奮起した山本の攻めをしっかり見極め、2分23秒には山本の支釣込足を振り返し、反応よく体を浴びせてその墜落を追い掛ける。これも勢いの良さに手の拘束が負けてしまい「有効」に留まるが、向の優位はもはや明らか。しかし向、以後はやや勢いを失いこの試合はこの2つ以外のポイントの積み上げなく終了。先鋒戦は「技有」優勢による向の勝利に終わった。

次鋒戦は全国体育系大会100kg級王者の日本大・本間捻永が小林悠輔の攻めを巧みに無力化。殴られれば必ず殴り返し、数手先に不利な状況があると見れば先に仕掛けて状況を流す巧みな戦術眼と度胸の前に、小林は大枠の優位を得点に繋げることが出来ない。結果この試合は引き分けとなる。

ここまでは日本大ペースだが、五将戦では得点役を担うべき日本大・佐藤和哉が尾原琢仁との体格差を攻略出来ずに双方「指導3」を失う引き分け。

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永瀬貴規がレイズカヨルの技を捌く

そして迎えたエース対決は永瀬貴規がケンカ四つのレイズカヨルを相手に攻守メリハリのある試合を披露。右内股に、前技から切り返しながらの小外刈、大きく脚を伸ばす右大外刈と攻めどころを弁えた攻めで「指導」3つを得て引き分け。得点こそ1点リードだが、なかなか追加点を積めない日本大の側に緊迫感が強まっていく。

互いに我慢のしどころとなった三将戦は引き分けとなったが、筑波大は長倉友樹が安達裕助を相手に良く攻め込み、1分28秒には安達の出足払に左大内刈を押し込んであわやポイントという場面も現出。終盤にもケンケンの大内刈に、左内股で相手を転がし落とすなど良い攻めを繰り出して「指導」2つを得、「スコアは日本大、状況は筑波大」という前戦までの傾向をさらに加速させることに成功。

ポイントゲッター同士がマッチアップした副将戦は100kg級学生王者の制野孝二郎が右払腰に右背負投と激しく攻めるが、今春の全日本選手権にも出場を果たした重量級の強者・神谷快は揺るがず。少々意外なほどの堅実志向で試合を進め、制野にチャンスをほとんど与えない。冒険をせずに体格を存分に生かす神谷の戦術に攻略のルートを掴めない制野はやや攻め疲れ、3分3秒には背負投を掛け潰れて偽装攻撃の「指導」、残り7秒でも神谷の圧力に引き落とされて2つ目の「指導」を失ってタイムアップ。この試合も引き分けに終わり、1-1、「技有」ポイント1つで日本大がリードという状況のまま勝負の行方は大将戦に委ねられることとなった。

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大将戦、黒岩貴信が尾崎央達から試合を決める「一本」

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大将対決は日本大・尾崎央達に筑波大・黒岩貴信がマッチアップ。尾崎は準々決勝でもしんがりのまとめ役として名垣浦佑太郎と引き分けている巧者だが、体格に勝る黒岩が組み勝って右大外刈に左の前技の「腰切り」動作と連続させると、自ら畳に膝を屈して「待て」。日本大としては相当な消耗戦を覚悟せざるを得ない状況。

尾崎それでも怖じずに両襟で間合いを取ってしぶとく試合を進めるが、57秒再び自ら膝を屈してしまい偽装攻撃の判断で「指導」失陥。
尾崎活路を見出さんと片襟の左大内刈、さらに足を飛ばして間合いを作って左外巻込を試みるが黒岩回転を許さず押しとどめる。黒岩が左払腰の動作に腰を切り返すアクションを入れて戻ると、尾崎再び自ら潰れ、黒岩の優位は時間が経つことにジワジワ加速。

尾崎は左一本背負投に外巻込と技を撃つことで展開を取り戻さんと必死の抵抗を試みるが、1分58秒には黒岩が尾崎の両襟組み手を上から乗り越えて右大外刈一発。これは不発だったが、この大技一発で細かく積み上げた尾崎の手数はリセットされてしまった印象。

そして尾崎の抵抗もついに決壊。状況を積みながらなかなか得点に繋げられない筑波大ベンチに焦りが見え始めた2分30秒、左襟を掴んだ尾崎の左引き手を切り離す動作を一瞬見せた黒岩、ふとこの意図から切り替えて組み合いに応じ、右手を上から叩き入れるなり両襟の右大外刈。入りの深さ自体で体が固まってしまった尾崎、鉈を振り下ろすようなこの一撃には我慢が利かずに宙を舞い豪快な「一本」。

筑波大ベンチは総立ち、黒岩は観客席に向かって拳を突き上げて会心の表情。

大逆転劇現出。筑波大が1-1の内容差を以て勝利し、決勝への勝ち上がりを決めた。

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劇的な逆転勝利に拳を突き上げる黒岩

筑波大 ①-1 日本大
(先)山本幸紀△優勢[技有・支釣込足]〇向翔一郎
(次)小林悠輔×引分×本間捻永
(五)尾原琢仁×引分×佐藤和哉
(中)永瀬貴規×引分×レイズカヨル
(三)長倉友樹×引分×安達裕助
(副)神谷快×引分×制野孝二郎
(大)黒岩貴信〇大外刈(2:30)△尾崎央達

大将戦の帰趨がそのまま勝負を決めた形だが、負けた尾崎は責められない。この一番は単に個の戦闘能力比べではなく、「スコア的には日本大リード、状況は筑波大有利」という状況がジワジワ積み重なったそれまでの試合内容が正当に反映されたもの。筑波大が外堀に粛々と湛え続けた水量がついに堤を破って日本大を落城ならしめたという、七戦合計した状況が現出させたものだ。眼前の敵・黒岩の膂力に加えて重石のように圧し掛かった七戦分の状況を一手に引き受けながら試合時間の半分まで抵抗を続けた尾崎はむしろよく戦ったと言える。

日本大は2度「一本」に近い崩しを見せながら試合を終わらせることが出来なかった先鋒戦、柔道の質自体は勝りながら相手の体格と戦術性に対して攻略ルートを見つけられなかった五将戦という前衛の戦いでの詰めの甘さがスコア的には響いた形だが、それ以上にレイズと制野の大会通じての不調が大きかった。勝ち抜くにはこの2人がスコア、そして戦いぶり自体でもう一段高いレベルで牽引車としての役割を果たすことが必須だったように思われる。この点、これまで淡々とした試合ぶりが目立った永瀬が必死にレイズから「指導3」を奪って見せた筑波大は、リーダー対決という観点でも日本大を凌ぐ要素を揃えていたと見る。

いずれ会場白熱の、紛うことなき好試合であった。

結果決まった27年度学生優勝大会決勝カードは、

東海大 - 筑波大

となった

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